KIT航空宇宙ニュース2023WK23

韓国の国産ロケット「ヌリ」3号機が打ち上げに成功、初の実用衛星を地球周回軌道にのせることにも成功した。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK23

海外のニュース

1. コロナ後初のパリ航空ショー、日本企業も出展 スタートアップ2社も、6/19開幕

フランス航空宇宙工業会(GIFAS)の100%子会社SIAEは、現地時間6月19日に開幕する世界最大規模の国際航空宇宙見本市「第54回パリ航空ショー」の出展者が約2500社になると発表した。新型コロナの影響で、4年ぶりの開催となる今回はスタートアップ企業の誘致に力を入れており、世界から300社近い参加が見込まれている。会期は6月19日から25日までで、パリのル・ブルジェ空港で開催。コロナ影響後初となる今回は、スタートアップ企業専用の展示エリアを設け、地域・国際パビリオンにもスタートアップの出展が目立つ。フランス見本市協会によると、スタートアップの出展は世界21カ国から296社となる見通し。期間中に開かれるイベントのうち、「パリ・エアラボ(Paris Air Lab)」では、航空輸送の脱炭素化につながるイノベーションに関して大規模展示を予定。日本では「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)関連企業などに焦点を当てる。eVTOLに特化したイベント「パリ・エアモビリティ (Paris Air Mobility)」も初開催。パリ航空ショーが開かれるル・ブルジェ見本市会場内のホール5を予定しており、各メーカーやスタートアップ企業が製品やサービスを紹介する展示エリアと、次世代エアモビリティ(AAM)市場のカンファレンスプログラムでイベントを構成している。また、パリ航空ショーには日本からは27社の出展が予定されているという。一般社団法人・日本航空宇宙工業会(SJAC)や、あいち・なごやエアロスペースコンソーシアムパビリオン、東レ、TANIDAなどがブースやシャレーを構え、スタートアップはIDDK(東京・江東区)とNABLA Mobility(東京・千代田区)の2社が出展する。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:2019年のパリエアショー風景】

2.IATAの乱気流情報共有、ANAと加ウエストジェット参画

IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月6日、航空会社が乱気流のデータを共有・蓄積する「タービュランス・アウェア・プラットフォーム(乱気流覚知プラットフォーム)」に、全日本空輸とカナダのウエストジェットが新たに参画したと発表した。タービュランス・アウェアは、乗客乗員の負傷や燃料費増加の主な原因となっている乱気流の影響を航空会社が軽減できるよう、2018年にスタート。参加航空会社が運航する数千のフライトから匿名化された乱気流データを蓄積している。リアルタイムで正確な情報により、パイロットとディスパッチャー(運航管理者)は最適な飛行経路を選択し、乱気流を回避して飛行することで、燃料効率を最大化し、CO2(二酸化炭素)排出量を削減できる。ANAは、ボーイング737型機からデータ提供を開始し、将来的には他機種にも拡大予定。ウエストジェットは、すでに24機の航空機からデータを取得しており、今後3年間で60機に拡大する計画を進めている。IATAによると、両社の参加により、アジア太平洋と北米のカバー率が高まったという。タービュランス・アウェアは、デルタ航空とユナイテッド航空、エアリンガスなど20社が参加。1900機以上の航空機がデータを毎日提供しており、2022年は3100万件の報告書が作成されたという。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:IATAの「タービュランス・アウェア」データ】

3.世界の航空会社、23年は純利益98億ドルに IATA第79回年次総会

IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月5日、世界の航空会社による今年の純利益予想は98億ドル(約1兆3757億円)、純利益率は1.2%になるとの見通しを示した。前回2022年12月発表の47億ドルを2倍以上上回り、売上高は前年比9.7%増の8030億ドルを見込む。営業利益は224億ドルを見込み、前回発表の32億ドルを大幅に上回ると予想。2022年見込みの営業利益101億ドルの2倍以上となる見通し。2023年の年間旅客数は約43億5000万人と予測し、2019年に飛行機を利用した45億4000万人に迫る勢いを示した。貨物量は5780万トンと予想。国際貿易量の急激な鈍化により、2019年の6150万トンを下回る見通し。地域別でみると、アジア太平洋地域の航空会社は69億ドルの純損失を見込み、2022年の純損失135億ドルから損失幅を圧縮。有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)は前年比63.0%増、2019年比では29%減、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は48.5%増、2019年比は26%減を見込む。好調な北米の純利益は115億ドル(22年は91億ドル)、欧州は51億ドル(同41億ドル)、中東は20億ドル(同14億ドル)を見込む。中南米とアフリカは純損失となる見通しで、中南米は14億ドルの損失、アフリカは5億ドルの損失と予測している。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:IATA年次総会で業界の業績予想を説明するウィリー・ウォルシュ事務総長】

4.韓国「ヌリ号」ロケット3号機の打ち上げに成功 – 初の実用衛星を搭載

韓国航空宇宙研究院(KARI)は2023年5月25日、国産ロケット「ヌリ号」3号機の打ち上げに成功した。ヌリ号は昨年、2号機で初の打ち上げ成功を収め、今回は初の実用衛星を搭載しての打ち上げだった。また、将来の運用の移管を見据え、打ち上げの準備段階から、民間企業のハンファ・エアロスペースが主体的に参加した。ヌリ号(KSLV-II)の3号機は、日本時間5月25日18時24分(韓国時間同じ)、南西部・全羅南道の羅老宇宙センターから離昇した。ロケットは1段目の飛行やフェアリングの分離、2段目、3段目の飛行を順調にこなし、離昇から約13分後に、搭載していた主衛星の「次世代小型衛星2号」を分離し、所定の軌道に投入した。その後、相乗りで搭載していた7基のキューブサット(超小型衛星)も、次々と分離され、軌道に投入された。ただ、そのうち1機の「トヨサット3号」については、分離が確認できていないとしている。ヌリ号はKARIが開発した韓国の国産ロケットで、機体の全長は47.2m、最大直径は3.5m。高度600~800kmの地球低軌道に約1.5tの打ち上げ能力をもち、小型~中型ロケットに分類される。ロケットは3段式で、1段目に新開発の推力75tf級の大型エンジンを4基束ねて装着。第2段には同じ推力75tf級エンジンを、真空用の大きなノズルに改修したものを1基装着している。第3段には、推力7tf級の小型エンジンを装備する。75tf級エンジンも7tf級エンジンも、推進剤にケロシンと液体酸素を使い、エンジン・サイクル(動かす仕組み)にはガス・ジェネレイター・サイクルを採用している。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:打ち上げに成功した韓国「ヌリ号」ロケット3号機】

5.FAAはAAM(アドバンスト・エア・モビリティ)パイロットと飛行訓練に関する新たな規則を提案

米国の航空規制当局は、電動エアタクシーや同様の開発中の航空機に対する新たなパイロット訓練要件と運用規則を提案した。FAAは、この措置が初期の「高度航空モビリティ」(AAM)部門の立ち上げを支援するのに役立つと述べているが、その提案はパイロット訓練に伴う広範な不確実性を浮き彫りにしている。連邦航空局は6月7日、「パワーリフトパイロットのグループを安全に認証するための代替資格要件」に関する規則制定案の通知を発行した。電動垂直離着陸 (eVTOL) 航空機は、「パワーリフト」航空機のカテゴリに分類されます。「現時点では、民間パイロットがパワーリフトカテゴリーの評価を取得するための確立された道筋はありません」とFAAは述べている。AAMには、都市交通に革命を起こすと主張する電気タクシー、場合によっては自動運転エアタクシーの展開を目指す数十の新興企業が集まっている。しかし、より優れたバッテリーと高価な新しいインフラストラクチャーの必要性、そして不透明な認証経路が依然として商業化への障害となっている。 特に、今回提案された規則では、パワーリフト航空機は飛行訓練のためにデュアルセットの制御装置を備えなければならないと述べており、その多くが1セットの制御装置で設計されているeVTOLの開発経路を妨げる可能性がある。「メーカーは、二重の制御を行わずに飛行訓練を実施するための安全な代替手段があると示唆しているが、FAAはそれらの手段が実証も検証もされていないと判断した」とFAAは述べている。しかし、FAAは6月14日から、飛行教官が「安全に悪影響を与えることなく」単一の制御セットを使用して訓練を提供できる方法について一般からのコメントを60日間受け付け始める。【Flightglobal News】

6.英国民間航空局(CAA)が一酸化炭素検知器に関する調査を開始

英国民間航空局は、英国の一般航空 (GA) コミュニティのメンバーを対象とした活性一酸化炭素 (CO) 検出器の使用に関する調査を開始する。この調査を通じて収集されたフィードバックは、これらのデバイスの将来の使用方法とピストン・エンジン航空機での使用方法を確立することに活用される。これまでの調査によると、聴覚および/または視覚的な警告を介してパイロットに警告できるアクティブ・CO検出器は、パイロットとその乗客にとって安全上の利点であることが示されている。一酸化炭素中毒のリスクは、多くのGAパイロットによって知られ、理解されているが、商業または娯楽目的でピストンエンジン航空機を飛行する消費者や第三者一般には理解されているとは言えない。規制当局の調査は、6月8日木曜日から10日土曜日までの3日間のイベントが始まるエアロ・エキスポで開始される。英国民間航空局の一般航空部門、共有サービスセンター、空域チームの代表者がイベントに出席する。英国民間航空局は、イベント参加者が閲覧して詳しく学べるように一酸化炭素検出器も展示する。【Flightglobal News】

7.多くの航空会社は実質ゼロの目標を達成できないとコンサルタント会社「ベイン」は見ている

ベイン・アンド・カンパニーの新しい研究により、航空会社はエンジンと航空機の効率を改善し、持続可能な航空燃料 (SAF) を広く採用し、航空機の運航を最適化することにより、2050年までに航空排出量を最大70% 削減できるとしている。しかし、現在のテクノロジーには限界があるため、特に航空交通量が GDP を上回るペースで増加し続ける場合、業界が2050年までに実質ゼロに到達するという目標を達成するには、これでは十分ではないとしている。その結果、ネットゼロ移行に資金を提供しようとする航空会社は、2026年までに航空券価格の値上げを開始し、2030年までに予測される世界需要は3.5%減少するとベイン・アンド・カンパニーは予測している。この調査では、現在の政策では、SAFの総供給量は2050年に1億3,500万トンに制限され、これは世界のジェット燃料の予測需要の約35%に過ぎないことが明らかになった。ベイン・アンド・カンパニーの分析によると、2050年のSAF価格は、最も一般的に使用されている航空燃料であるジェットA燃料の過去10年間の平均価格よりも2~4倍高止まりし、2050年の目標を達成するには、業界は最大 2 兆1,000億ドルを投資する必要があるとあしている。これは、新しい航空機の高額な維持コストと組み合わせると、航空会社の総コストが 2050年までに最大18% 増加する可能性があることを意味しする。しかし、ベイン・アンド・カンパニーは、SAFの供給を大幅に増加させる可能性がある3つの政府の行動を強調している:再生可能ディーゼルではなくバイオ燃料精製所にインセンティブを与えること、バイオ燃料原料へのアクセスのために航空を優先すること、そしてフィッシャー・トロプシュ法による合成燃料の収量を高めるためにグリーン水素をSAF精製所に誘導することである。これらの政策により、SAF の総生産量は世界のジェット燃料需要の 60% に達するとしている。【Flightglobal News】

日本のニュース

1. トキエア、8/10に就航延期

新潟空港を拠点に就航を目指すトキエアは6月8日、同月30日に予定していた就航日を延期すると発表した。新しい就航予定日は8月10日で、正式な運航開始日や航空券販売は7月下旬をめどに発表する見通し。同社は延期について、現在実施している路線訓練の慣熟に時間を要すると判断した、と説明している。トキエアは当初、1路線目の新潟-札幌(丘珠)線を6月30日に開設する予定だった。機材は仏ATR製ATR72-600型機で1クラス72席。新潟-丘珠線は週4日間のみの運航で、運航する日は1日2往復設定する。航空会社として事業を行うため必要なAOC(航空運送事業の許可)は、国土交通省東京航空局から3月31日付で取得している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:TOKIエアのATR72-600型機】

2.羽田空港の国際線旅客、3年1カ月ぶり100万人超え=3月実績

羽田空港のターミナルを運営する日本空港ビルデングと東京国際空港ターミナル(TIAT)がまとめた2023年3月の国内線と国際線を合わせた総旅客数は、前年同月比99.5%増の655万2913人だった。このうち、国内線の旅客数は68.0%増の533万4580人。国際線は11.18倍の121万8333人で、2020年2月以来3年1カ月ぶりに100万人を突破した。国際線の内訳は、日本人が7.85倍の48万8811人、外国人が30.52倍の63万7238人、協定該当者(米国と国連の軍関係者)が2.05倍の1万1759人、通過客が4.00倍の8万525人だった。【Aviation wire news】