KIT航空宇宙ニュース2023WK39
海外のニュース
1. NASAは国際宇宙ステーションを無事に地球に帰還させるための新しい宇宙船を開発中
アメリカの宇宙機関NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)の退役に重要な役割を果たす新しい軌道船の開発を模索している。NASAは9月20日、老朽化したISSを安全に地球に帰還させるために使用されるUS Deorbit Vehicle(USDV)と同局が呼んでいるプラットフォームに対する業界の募集を発表した。「この契約の主な目的は、NASAのISSの耐用年数終了後の軌道離脱ミッションの要件を満たす、安全で信頼性が高く、費用対効果の高い軌道離脱機を調達することです」とNASAは述べている。保存された航空機とは異なり、ISS は長期保管のために倉庫や墓地施設に輸送することができない。周回研究室が寿命を迎えると、理想的には計画された軌道に沿って地球に墜落させる。「国際宇宙ステーション計画の終了後、ステーションは人口密集地を避けるために制御された方法で軌道から外される予定だ」とNASAは述べている。NASAによると、国際宇宙機関連合はISSを地球に安全に帰還させるためのいくつかの選択肢を検討し、新しい宇宙船が必要であると判断したという。検討された他の選択肢の中には、ロシアからの複数のエネルギア・プログレス無人宇宙船の使用や、地球から遠く離れたいわゆる「墓場軌道」にISSを押し上げることが含まれていた。理論上のUSDVがその使命をどのように達成するかについて、NASAは、この車両は「ISSとランデブーしてドッキングし、さらにISSの姿勢制御、ISSの並進運動、そしてISSの最終的な軌道形成と再突入燃焼を実行する」と述べている。【Flightglobal News】
【NASA提供:2030年に退役が予定されているISS】
2. Jobyが初のeVTOL機を予定より早く米国空軍に納入
Joby Aircraft が米空軍に納入された初の電動エアタクシーとなる。米国で最初に納入された電動エアタクシーと考えられる。納入された機体は基地内での兵站任務をデモンストレーションするために使用され、米空軍パイロットが操縦する。納品はJobyと国防総省との1億3,100万ドルの契約の一部である。このは、カリフォルニア州マリーナにあるジョビーのパイロット生産ラインで最初に製造されたもので、少なくとも来年1年間はエドワーズ空軍基地に配備され、Jobyが基地内に提供した充電および地上支援機器が配備される。米空軍とジョビーは共同飛行試験と運用を実施し、現実的な任務設定で航空機の能力を実証する予定。基地内での運用には空軍パイロットと航空機整備員の訓練も含まれ、これにより国防総省はeVTOL機の性能に関する貴重な洞察を得ることができ、JobyはeVTOL航空機の準備に向けて地上での運用と訓練の経験を得ることができ、2025年に商業旅客サービスを開始する予定。【Joby Aviation】
【Joby Aviation提供:エドワーズ空軍基地へ納入されたJoby eVTOL機】
3. ロールス・ロイス、水素燃料でパール700エンジンを運転
ロールス・ロイスとそのパートナーは、2030年代半ばまでに狭胴旅客機用の水素燃焼エンジンを開発する長期作業の一環として、パール700ビジネス航空機エンジンを100パーセント水素燃料で運転させた。英国のラフバラー大学とドイツの航空宇宙研究機関DLRと協力して、航空エンジングループは、全環状(Annular)燃焼器でのテストにより、水素が最大の離陸推力を出すことができることが証明されたと述べた。ロールス・ロイスによると、この画期的な技術は、燃焼プロセスを制御する新しい燃料スプレーノズルに基づいている。「水素は灯油よりもはるかに高温かつ急速に燃焼するため、これには重大な技術的課題を克服する必要があった」と同社は9月25日発表の声明で説明した。「新しいノズルは、空気と水素を徐々に混合するシステムを使用して火炎の位置を制御することができ、水素燃料の反応性を最大化する。」と述べた。個々のノズルは、当初、国立燃焼・空気熱技術センターにあるラフバラー大学の新しい試験施設で、中間圧力で試験された。その後、ドイツのケルンにある DLRの施設でハードウェアがテストされ、同機関の推進技術研究所のリグを使用して最終的な全圧燃焼器の評価が行われた。【Aviation International News】
【Rolls Royce提供:水素燃料用環状燃焼器】
日本のニュース
1. 空自、虎ノ門ヒルズに宇宙協力オフィス 民間技術の活用加速
航空自衛隊は、宇宙分野で民間企業と意見交換などを行う「宇宙協力オフィス」を東京・虎ノ門ヒルズに開所する。期間は10月2日から当面の間としている。民間企業などとの意見交換により、進歩の著しい宇宙利用の分野で最先端の民生技術の知見を得る。また、得られた知見を将来の装備品導入などに反映し、民生技術の防衛分野への活用を加速し、日本全体で宇宙での能力向上につなげる。同オフィスには数人が常駐。調査研究や情報収集、空自の活動周知のためのセミナーなどの開催を予定している。場所は虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階、CIC Tokyo内。【Aviation wire news】
【防衛省提供:「宇宙協力オフィス」のロゴマーク】
2. 空港満足度、中部が大規模部門トップ 中規模は神戸=J.D.パワー調査
顧客満足度を調査するJ.D.パワー ジャパン(東京・港区)は、国内線利用者を対象に実施した空港への満足度調査で、「大規模空港部門」の1位に中部空港を、「中規模空港部門」の1位に神戸空港を選出した。設備や店舗など3項目で調査したもので、J.D.パワーが国内空港の顧客満足度を調査するのは、今回が初めて。国内航空需要の増加が予想されることから調査した。空港のカテゴリーを年間乗降客数で分別し、新型コロナ前の2019年の乗降客数が1000万人以上を「大規模空港」、300万人以上1000万人未満を「中規模空港部門」と定義。それぞれ8空港ずつを対象とした。調査対象は直近1年以内に国内線を利用した18歳から74歳までの人で、空港の利用状況や各種経験、満足度を聴取。今年6月中旬にインターネットで調査し、大規模空港部門は5324人から、中規模空港部門は2265人から回答を得た。顧客満足度は「ターミナルビル設備」「チェックイン/手荷物対応/保安検査」「商業店舗」の3ファクター(満足度領域)で測定し、各ファクターの総合満足度に対する影響度を、総合満足度スコアを1000ポイント満点で算出。総合満足度への影響度は「ターミナルビル設備」が51%で最も高く、「チェックイン/手荷物対応/保安検査」の29%、「商業店舗」の21%と続いた。J.D.パワーでは「空港での滞在時間を快適に過ごせるような設備環境が重要」と分析した。【Aviation wire news】
3. スターフライヤー、顧客満足度で首位 サービスなど4項目でトップ=J.D.パワー調査
顧客満足度を調査するJ.D.パワー ジャパン(東京・港区)は、国内線利用者を対象に実施した航空会社への満足度調査で、1位にスターフライヤーを選出した。乗務員や機内サービス、料金などの5項目で調査したもので、J.D.パワーが国内線で顧客満足度を調査するのは、今回が初めて。コロナで打撃を受けた航空需要のうち、国内線がコロナ前の2019年水準に回復しつつあることから調査した。調査対象は直近1年以内に国内線を利用した人で、航空会社の利用状況や各種経験、満足度を聴取。今年6月中旬にインターネットで調査し、18歳から74歳までの4470人から回答を得た。顧客満足度は「フライトクルー(客室乗務員など)」「機内設備・機内サービス」「チェックイン/手荷物対応/搭乗手続き」「予約」「料金(航空券や各種追加料金)」の5ファクター(満足度領域)で測定し、各ファクターの総合満足度に対する影響度を、総合満足度スコアを1000ポイント満点で算出。総合満足度への影響度は「フライトクルー」が27%で最も高く、「機内設備・機内サービス」の22%、「チェックイン/手荷物対応/搭乗手続き」の21%、「予約」の15%、「料金」の14%と続いた。J.D.パワーでは「機内での顧客対応が、満足度に最も大きな影響を及ぼしている」と分析した。今回の調査で1位となったスターフライヤーは、1000ポイント中729ポイントを獲得。「料金」をのぞく4項目で最高評価を得た。2位はスカイマーク(SKY/BC、9204)で715ポイントを獲得し、「料金」で最高評価となった。3位は全日本空輸(ANA/NH)で709ポイント、4位は日本航空(JAL/JL、9201)で705ポイント、5位はエア・ドゥ(ADO/HD)で703ポイントだった。【Aviation wire news】
4. 月刊航空情報、年内で休刊 72年の歴史に幕
月刊航空情報(せきれい社)が年内で休刊する。最終号は10月発売の2023年12月号で、72年の歴史に幕を下ろす。同誌のウェブサイトによると、航空情報は酣燈社(当時)が1951年10月に創刊。日本の航空業界が戦後再開する1952年に先立つもので、その後は「世界航空機年鑑」などムックや増刊号、関連書籍も発行してきた。2014年に発行・発売を、音楽雑誌などを手掛けるせきれい社(東京・港区)に移管。今年7月21日発売の9月号からは、税込1426円だった販売価格を1540円に値上げした。創刊した酣燈社は1946年3月設立で、移管後の2016年2月に破産。東京商工リサーチによると、酣燈社の負債総額は当時約4億円だった。【Aviation wire news】
【Aviation Wire提供:月間航空情報誌】
5. 三菱UFJ銀行など4社が宇宙産業の発展に向けたパートナーシップ契約を締結
米Sierra Space、三菱UFJ銀行、兼松、東京海上日動の4社は9月27日、アジア太平洋地域における戦略的パートナーシップ契約を締結し、三菱UFJ銀行、兼松、東京海上日動の3社がSierra Spaceへ出資したことを発表した。Sierra Spaceは、米国コロラド州デンバーで宇宙機器や商用宇宙ステーションの開発を行っており、まもなく次世代宇宙往還機「Dream Chaser」による国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションを開始する予定としているほか、2026年には商用宇宙ステーション「Pathfinder」の打ち上げを計画している。Pathfinderでは、宇宙空間の微小重力環境を利用した生命科学や物質・物理化学などの分野における学術的科学実験や創薬開発などの応用利用研究のほか、エンターテインメント分野での利用も期待されている。また、Sierra Spaceは大分空港を「Dream Chaser」のアジア拠点および宇宙港として活用する検討を進めており、日本全体で約3500億円、大分県内で約350億円の経済波及効果が見込まれているという。4社は、2022年10月に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「持続可能な地球低軌道における宇宙環境利用の実現に向けたシナリオ検討調査」に参画し、ISS退役後の地球低軌道活動や、ISSの延長を含む2025年以降の地球低軌道活動の在り方について協議し、課題や事業モデルを提言。宇宙産業の発展に向け連携を強化してきた経緯がある。なお、三菱UFJ銀行、兼松、東京海上日動は、Sierra Spaceが推進する地球低軌道の事業化に参画することで、日本の宇宙産業サプライチェーンのさらなる拡大や、新たな産業創出にむけて前進していきたい考えを示しており、大分県を中心とした地域経済や社会課題の解決に貢献したいとしている。【マイナビニュース】
【Sierra Space社提供:次世代宇宙往還機「Dream Chaser」】