KIT航空宇宙ニュース2023WK32

JAXA等3者が共同で開発中の、通信衛星システムを利用した後乗せ自動運転システムYADOCAR-iドライブのイメージ図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK32

海外のニュース

1. NASAの火星ヘリコプター、緊急着陸後飛行再開

NASAのインジェニュイティ・マーズ・ヘリコプターは、7月に緊急着陸して数週間飛行を停止した後、再び赤い惑星の上空を飛行している。NASAは8月7日、インジェニュイティ・ヘリコプターが8月3日に54回目の飛行を成功裏に完了したと発表した。この飛行は、前回の飛行中に自律回転翼機が計画外の着陸を行った理由を検証するための25秒間の短い「上下ホップ飛行」だった。NASAのジェット推進研究所(JPL)は、7月22日に発生した緊急着陸の53回目の火星飛行について「緊急飛行プログラムが発動され、インジェニュイティは自動的に着陸した」と述べた。インジェニュイティは、火星の表面の画像を収集するための136回の偵察任務を目的としている。NASAは、この目標を、複数の上昇と下降、ホバリング、および4.8kt(9km/h)の飛行速度と最大高度33フィートを含む「複雑な飛行プロファイル」と説明している。同庁はヘリコプターを使用して、地上の探査機母船の前方の地形を偵察している。【Flightglobal News】

【NASA提供:火星で活動中のインジェニュイティ・マーズ・ヘリコプター】

2. Vertical Aerospace 社のVX4 eVTOL機がイギリスで試験飛行中に墜落

8月9日VX4 eVTOL (電動垂直離着陸) 実験プロトタイプ機は、英国のコッツウォルド空港 での無人試験中に墜落事故を起こした。バーティカル・エアロスペース社は、「航空機は遠隔操作で操縦されており、負傷者はいなかった」と強調した。同社は声明で次のように付け加えた。「私たちの飛行試験プログラムは航空機の性能の限界を確立するように設計されており、事故はモーター故障試験シナリオでの航空機の操縦性の無人試験中に発生した。これは有人運航に進むための重要な要件である。」同社は航空機が受けた正確な損傷については明らかにしなかった。しかしバーティカル・エアロスペース社は「関係当局と緊密に連携している」と述べた。墜落前にVX4 eVTOL プロトタイプ機は高度約 20 フィート (6 メートル) に達していた。同社は試験飛行後、パイロットを航空機に乗せて行う最初の試験を含め、今後数カ月間にさらなる試験飛行を計画していた。墜落後、同社はそのような試験を実施するための試作機を1機しか保有していないため、試験飛行を続けるには、組み立て中の2機目のプロトタイプの完成を待つ必要がある。【Simple Flyingニュース】

【Flightglobal提供:英国のコッツウォルド空港墜落したVX4 eVTOL機】

3. 太陽光発電UAVが3日間の飛行で耐久記録を更新

太陽光発電のクラウス・ハムダニ・エアロスペースK1000超長距離無人航空機システム(UAS)が、オレゴン州ペンドルトンで75時間のノンストップ飛行を完了し、新たな耐久記録を樹立した。この性能は、小型クラスの航空機におけるこれまでの記録のほぼ2倍に相当する。【Flightglobal News】

Flightglobal提供:クラウス・ハムダニ・エアロスペースK1000超長距離無人航空機システム(UAS)】

日本のニュース

1. 機体見学や進路相談も JAC、パイロット職業体験会8/20開催

日本エアコミューターは、職業体験「エアラインパイロットという進路選択」を拠点の鹿児島空港で8月20日に開催する。パイロットを含む航空業界に興味がある15歳以上35歳未満の人が対象。今年3月に続き2回目の開催で、教官経験があるパイロットが、映像を交えてエアラインパイロットの仕事や必要な知識を説明し、実機や空港内の見学、進路相談などを実施。昼食はパイロットが食べている弁当を提供する。料金は税込1万500円で、事前振込。会場までの交通費は各自の負担となる。定員は15人で、応募多数の場合は先着順。時間は鹿児島空港内に午前10時10分集合、午後4時30分まで。申し込みは電子メールで、参加者の名前・生年月日・住所、連絡先の携帯電話番号とメールアドレスを記載し、 JACパイロット職業体験係(jac-pljobtaiken[アットマーク]jal.com)まで。18歳未満の場合は保護者の同意が必要になる。【Aviation wire news】

2.  22年度定時性、スカイマークが6年連続1位 上位7社が90%超え=国交省情報公開

国土交通省航空局(JCAB)は、日本航空や全日本空輸、LCC 3社など、特定本邦航空運送事業者10社に関する「航空輸送サービスに係る情報公開」の2022年度(22年4月から23年3月)分を公表した。各社とも復便が進み空港や空域の混雑も戻ったことから、定時運航率は前年度を下回るところが多くみられた。定時運航率は、スカイマークが6年連続で1位となった。通年の欠航率が最も低かったのもスカイマークだった。10社全体の定時運航率は前年度と比べ3.60ポイント低下し90.99%、遅延率は3.60ポイント悪化し9.01%、欠航率は0.42ポイント改善し1.25%だった。遅延の原因は「機材繰り」が、欠航は「天候」が目立った。スカイマークの定時運航率は95.90%。2位はスターフライヤーで95.35%だった。3位は日本トランスオーシャン航空で95.03%だった。値がもっとも低かったのは、ピーチ・アビエーションの81.35%。以下、エア・ドゥの87.59%、ジェットスター・ジャパンの87.79%が続いた。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:国交省データ】

3.  JAXAなど3者、後のせ自動運転システムの実用化に関する共創活動を開始

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東海クラリオン(TCL)、アジア・テクノロジー・インダストリー(ATI)の3者は8月9日、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の枠組みのもと、2023年6月より「後のせ自動運転システムYADOCAR-i(ヤドカリ)ドライブ」に関する共創活動を開始したことを発表した。全国に2000か所以上ある限界ニュータウンや、過疎地の限界集落などにおいて、お年寄りなどの交通弱者における生活の足として自動運転車が期待されており、各地で実証実験が行われている。特に過疎地での高齢者の日常の移動に対しては、決まったルートかつ狭い道を低速で走行する安価な自動運転車が求められている。これらのニーズに応えるべくTCLとATIが共同開発しているのが、既存のモビリティに最小限の機材の追加搭載で自動運転を実現するシステムのYADOCAR-iドライブだ。追加機材を最小化するため、また、国内用と国外用のシステムを共通化するため、YADOCAR-iドライブでは、走行ルート作成に準天頂衛星「みちびき」を主軸にしたQZSSの位置情報が用いられている。具体的には、みちびきの利用が可能なアジア太平洋地域への展開などが想定されており、みちびき2号機~4号機および初号機後継機のL6Eチャンネルで送信される実証実験向けのセンチメートル級測位補強信号を活用した高精度単独測位(MADOCA-PPP)が利用されている。そして3者によると、JAXAが行うMADOCA-PPPの高度化と、TCL/ATIが行う自動運転システムの現場環境での走行実証を組み合わせることで、レベル4の自動運転の実現が期待できるという。3者の役割について、まずTCLは、自治体および観光関連業界に対し、低価格自動運転の活用モデルとしてYADOCAR-iドライブを提案、自動運転走行のデモンストレーションを実施し、システムの有用性や利便性を可視化する。ATIは、MADOCA-PPPに対応したマルチGNSS(衛星測位システム)受信機の開発・製造を行うコアと連携協力し、現場ごとに違う環境に適応した自動運転システムの開発を実施するとのこと。また、走行結果を受信機開発にフィードバックすることで、受信機の自動運転利用への最適化を行い、自動運転システム全体の高度化を目指すとしている。そしてJAXAは、衛星測位利用者が世界中で時間と場所を問わずセンチメートル級の高精度測位を行えるよう、MADOCAおよびMADOCA-PPPの技術開発に継続的に取り組み続け、その社会実装を目指すとする。【マイナビニュース】

【JAXA提供:YADOCAR-iドライブによる自動運転のイメージ】