KIT航空宇宙ニュース2025WK01
2025年最初のKIT航空宇宙ニュースです。本年3月で私は、久留米工業大学を退官いたしますが、4月以降もボランティアで、このニュースを毎週寄稿いたします。引き続きご愛読の程、宜しくお願い致します。皆さんにとって、今年も良い年となりますように又、空の安全が保たれますことを、お祈りしています。
交通機械工学科 小林
海外のニュース
1. チェジュ航空の務安事故、米国でフライトレコーダー解析
韓国の国土交通部(日本の国土交通省に相当)は現地時間1月1日、務安(ムアン)空港で昨年12月29日に起きたチェジュ航空のバンコク発務安行き7C2216便(ボーイング737-800型機)事故。事故機は着陸時にランディングギア(主脚)とノーズギア(前脚)が出ておらず胴体着陸しており、外壁に衝突して炎上した。事故の詳しい原因は調査中。この事故について、CVR(コックピットボイスレコーダー、操縦室音声記録装置)から抽出したデータを音声へ変換する作業に2日程度かかる見通しであることと、FDR(フライトレコーダー、飛行記録装置)は米国で解析する方針を示した。国土交通部によると、FDRは損傷状況から韓国国内での解析は不可能と判断。米国でNTSB(米国家運輸安全委員会)の協力を受け、解析することで合意した。今後はFDRを移送する日程や、韓国側の調査参加者などが決まり次第、米国へ運ぶ見通し。現在の調査団は、韓国側がARAIB(航空・鉄道事故調査委員会)から12人、米国側はFAA(米国連邦航空局)から1人、NTSBから3人、ボーイングから6人の計10人となっている。7C2216便には、乗客175人と乗員6人(パイロット2人、客室乗務員4人)の計181人が搭乗しており、けがをした客室乗務員2人を除く179人が死亡。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:回収されたFlight Recorder】
2. ライトエレクトリック、NEATキャンペーンに先立ち2.5MWモーターのテストを開始
先進的な推進力を開発するライト・エレクトリックは、どの航空機をエンジンの飛行試験台として使用するか検討を続ける中で、新しい高出力電気モーターの初期地上運転を開始した。最大2.5MWの電力を供給できるWM2500モーターは、クラス最高の約18~20kW/kgの電力密度を誇り、前モデルの10kW/kgより40%向上しているとライト社の創設者兼最高経営責任者のジェフ・エングラー氏は語る。モーターと、別途必要となるカスタム 250kW インバータ 8 台の初期地上テストが、ニューヨーク州アルバニーのライト社の施設で最近開始された。モーターとインバーターの両方に対する「一連のテスト」が完了すると、個別のコンポーネントを組み合わせて完全なシステムとして評価する。その後、オハイオ州サンダスキーにあるNASAアームストロング研究センターにあるNASA電気航空機試験(NEAT)施設に輸送され、高度模擬試験を含むさらなる試験が行われる予定。エングラー氏は、高度4万フィートをシミュレートした状態での以前のバージョンのモーターの部分放電テストが成功したと述べ、「これにより、WM2500をNASAの高度試験室に持ち込む自信が得られた」と語った。NEATでのWM2500のテストは2025年に始まり、おそらく2026年まで続く予定で、その後アルバニーに戻され、ライト社が現在構築中の特注のテストスタンドでの追加評価が行われる。「その後、航空機に組み込みみ、地上テストを行い、最終的には飛行テストを行う予定です」とエングラー氏は語る。【Flightglobal news】
【Wright Electric社提供:2.5MW級モーター(WM2500)を組み込んだダクトファンエンジン】
3. ボロコプター、資金不足で破産へ
空飛ぶタクシーの新興企業ボロコプター社は月曜日、通常の事業運営を維持するための新たな資金を調達できないとして破産手続きを申請した。メルセデス・ベンツとハネウェルが支援する同社は、破産手続き中も追加資金を調達しながら事業を継続する予定だ。「最近の集中的な資金調達の取り組みにもかかわらず、破産手続き外で通常業務を維持するための実行可能な解決策を見つけることは不可能だった」とドイツ・ブルッフザールに拠点を置く同社は述べた。電動垂直離着陸(eVTOL)業界は財政難に直面しており、企業は商業運用の準備を進める中で、資本集約型の事業を支えるための新たな投資を絶えず模索している。同業のリリウムは11月、財政難を解決できなかったため、「近日」に破産申請すると発表した。2011年に設立されたVolocopterは、都市型eVTOL機「VoloCity」を2025年に市場に投入する予定だった。【ロイターニュース】
【パリのルブリュージェ空港でデモ飛行した際のVoloCity】
日本のニュース
1. JTA、CA志望者向けオープンカンパニー2月開催
日本航空グループで沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空は、客室乗務員を志望する人向けの「2daysオープンカンパニー」を2025年2月に開催する。参加申し込みは1月12日午後5時まで。2026年度入社の客室乗務員を志望する人向けで、普段見ることはできない空港などの職場見学やグループワーク、現役客室乗務員との交流などを通じ、「よりリアルなJTAを感じて欲しい」という。開催日は、第1回が2月13日から14日、第2回が2月20日から21日。対象は4月1日から2026年3月31日までに、4年制大学、大学院、2年制以上の専門学校を卒業・修了見込みの人となる。エントリーは同社が開設している登録フォームから。【Aviation wire news】
2. 2024年宇宙・航空記事ランキング
1位:探査機「ボイジャー2」のデータが明かす天王星の謎、38年越しの科学的発見
2位:九大、高度80~1000kmほどの「熱圏」における新たな物理法則を発見
3位:H3ロケット2号機はどこが変わった? 機体やミッションについてJAXAが説明
4位:カイロス初号機の失敗原因が判明、対策した2号機は12月の打ち上げを予定!
5位:JAXA、超大質量ブラックホール同士が合体直前の可能性がある銀河を分析
6位:カイロス2号機はなぜ飛行中断? 原因調査中も「1段目ノズル制御で異常発生」と説明
7位:H3ロケット3号機は「もう試験機ではない」 – 打ち上げに向けた計画が明らかに
8位:さらに強く、シンプルに – スペースXが最強ロケットエンジン「ラプター3」公開
9位:H-IIAロケット、最後の旅立ちへ – 四半世紀の想いが詰まった50号機が完成!
10位:ロケットが射場に姿を現す、新装備でゴツくなった移動発射台に注目! 【マイナビニュース】