KIT航空宇宙ニュース2025WK04
海外のニュース
1. プロペラ機も機内インターネット ATR、Starlinkで年内商用化
仏ATRは、ATR72-600型機など自社のターボプロップ(プロペラ)機で高速機内インターネット接続サービスを提供するため、米スペースXの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」を導入する。StarlinkのサービスをATR機で提供するための認証をEASA(欧州航空安全庁)から取得したことから、年内にもニュージーランド航空がサービスを始める見通し。ATRは、ATR72-600の試験機で試験飛行を数カ月実施。ATR72向けのStarlink対応改修は、PMVエンジニアリングが手掛けるATR72-500とATR72-600向けのレトロフィット(既存機改修)オプションで、STC(追加型式設計承認)を取得して運航できる。スターリンクは、地球低軌道に配置された衛星群を用いた世界最大のシステムで、通信速度の速さと遅延の少なさが特徴。地上では、ストリーミングやビデオ会談などに使用されている。ニュージーランド航空は、年内にもニュージーランド国内線で運航しているATR機に導入を予定している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ATR72-600型機のスターリンク用アンテナ(丸印)】
2.スペースXの「スターシップV2」宇宙船初飛行
イーロン・マスク氏率いるスペースXは2025年1月17日、巨大宇宙船「スターシップ」の7回目の飛行試験を実施した。今回の試験では、2段目に新設計の「スターシップV2」宇宙船を初めて使用した。しかし、飛行中に機体は爆発し、打ち上げは失敗に終わった。一方、1段目の「スーパー・ヘヴィ」ブースターはほぼ完璧に飛行し、前々回の飛行試験に続き、発射塔での回収にも成功した。スペースXの新たな挑戦は、一進一退の結果となった。それでも同社は決して歩みを止めることなく、今後の開発と試験に期待を寄せている。【マイナビニュース】

【スペースX提供:第1段ブースター「スーパー・ヘヴィ」の帰還の様子】
3.インドの研究所がスクラムジェットのテストを実施
インド政府の防衛研究所は、極超音速ミサイルの開発の一環として、スクラムジェットの試験に成功した。インド国防省によると、国防研究開発研究所(DRDL)はハイデラバードの施設で超音速燃焼ラムジェット(スクラムジェット)の120秒間の試験を実施した。スクラムジェットは、燃焼前に可動部品なしで吸入空気を圧縮することにより極超音速で作動する空気吸入式ジェットエンジンです。防衛省によると、2分間の実証実験では、安定した点火・燃焼や、冷却効果を高めながら点火を緩和する国産の吸熱スクラムジェット燃料の使用など、いくつかの成果が得られたという。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:ハイデラバードにあるスクラムジェットリグでの燃焼試験】
4.北欧の「e-Fuel(合成燃料)」生産者ノルスクがボーイングから投資を獲得
ボーイングは、持続可能な航空燃料(SAF)の生産と供給の増加を促進する取り組みの一環として、ノルウェーの燃料開発会社Norsk e-Fuelに非公開の金額を投資した。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:Norsk社の「e-Fuel」製造施設】
5.中国の新興企業、高速弾道航空機の開発に着手
中国の新興企業が、ラムローターデトネーションエンジンを搭載した「弾道飛行用航空機」の研究を行う。国営紙チャイナ・デイリーが同社の説明を引用して伝えたところによると、北京に拠点を置く凌空天星科技は、2026年に「飛翔猿」実証機による試験飛行を行うことを目指している。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:中国凌空天星科技社が開発する弾道飛行航空機「飛翔猿」】
日本のニュース
1.JTA、初の国際定期便就航へ 那覇−台北、25年度開設
日本航空グループで沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空は1月21日、那覇−台北(桃園)線を2025年度中に開設すると発表した。同社初の国際定期便で、旺盛な訪日需要に対応する。就航日は決定後に発表する。JTAはこれまで、那覇−台北間の国際チャーター便を運航。沖縄県内と台湾の旅行会社がツアーを企画するチャーターとして設定した。また、石垣−台北間の国際チャーター便も運航し、那覇同様に双方向の観光需要を掘り起こしてきた。【Aviation wire news】
2.屋久島空港、滑走路延長で3月に公聴会 首都圏からジェット機就航目指す
国土交通省航空局(JCAB)は1月20日、屋久島空港の施設変更に関する公聴会を3月4日に開くと発表した。同空港の設置管理者である鹿児島県から空港等施設変更許可申請があり、滑走路の延長により進入表面などが変更されるため。今回の公聴会は、県が滑走路長を現在の1500メートルから2000メートルに延長することで、進入表面などが変わることから開催が決まった。公聴会は同日午後2時から屋久島町役場やくしまホールで開催予定する。公述申出は郵送で受け付け、公述申込書と公述書を2部ずつ航空局まで郵送で提出する。締め切りは2月7日午後5時。また、公聴会の傍聴希望者は当日午後1時から会場で受け付け、先着100人となる。屋久島空港は県が管理する地方管理空港で、1963年7月23日に供用開始。当初の滑走路長は1100メートルで、1975年4月10日に1200メートル、1976年12月20日に現在の1500メートルに延長された。屋久島は日本で初めて世界自然遺産に登録されたことで県外からの来島者も多いものの、滑走路長により関東などの都市圏からのジェット機就航が実現できておらず、現在は多くが鹿児島空港で乗り継いで来島している。県は、滑走路の延長事業を2024年度に採択。総事業費約169億円を投じ、ジェット機での首都圏路線就航を目指す。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:屋久島空子の滑走路延長計画】
3.国管理18空港、羽田2年ぶり黒字転換=23年度収支
国土交通省航空局(JCAB)は、羽田空港など国が管理する18空港の2023年度の収支を公表した。着陸料など空港の収支(航空系事業)のみの営業損益は羽田を除く17空港が赤字だった。前年度は2年ぶりに赤字だった羽田は、黒字転換した。18空港全体の営業収益は、前年度比242億1400万円増の903億5200万円。営業費用は19億1900万円減の1151億3100万円、営業損益は247億7900万円の赤字(前年度は332億2600万円の赤字)となった。新型コロナの水際措置緩和以降、個人旅行再開などにより訪日需要が急速に回復。国際線の着陸回数が大幅に増加したことで着陸料収入増につながり、損失額は前年度比で縮小傾向となった。【Aviation wire news】
4.スターフライヤー、A320シミュレーター体験会 1/25と27開催
スターフライヤー(SFJ/7G、9206)は、エアバスA320型機のフルフライトシミュレーター(FFS)の「お試し体験会」を1月25日(土)と27日(月)に北九州空港の同社訓練施設で開く。シミュレーター体験1時間のうち操縦体験は約20分間で、税込1組2万2000円。20分間のシミュレーター体験では、離陸・旋回・着陸の操縦を体験。通常は10万円以上するFFS体験イベント「Dream Flight」のお試し版で、パイロットによるブリーフィングなどはなく、操縦サポートはFFSのオペレーターが担当する。両日とも4回実施し、1回に2組最大4人が参加。時間は1回目が午後4時20分から、2回目が午後5時30分から、3回目が午後6時40分から、4回目が午後7時50分から。スターフライヤーのFFSは、パイロットの訓練や審査などに使用しているもので、自社訓練施設「SFJトレーニングセンター」に設置されている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:スターフライヤー所有のA320フライトシミュレーター】
5.三菱電機/JAXAの観測衛星「だいち4号」がギネス認定、“最速の地上局直接伝送”
三菱電機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から受注して開発した先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)が、「最速の地球観測衛星から地上局への直接伝送」を達成したとして、ギネス世界記録に認定されたことを1月23日に発表した。今回の記録は2024年7月、だいち4号に搭載したKaバンド(26GHz帯)の電波による直接伝送系を用いて、衛星と地上局の間で3.6Gbpsという高速データ伝送に成功した際のもの。同年12月19日にギネス世界記録に認定されたという。三菱電機では、この3.6Gbpsという速度での直接伝送について「家庭の一般的なインターネット回線の伝送速度(1Gbps以下)の約4倍以上の速さで、衛星から最大2,000km以上離れた地上局に向けてデータを伝送するもの」と説明。JAXAも、「3.6Gbpsは1秒間で450MB、1分間で27GBのデータを送れる速さ。日頃使っているスマートフォンで考えると、50GBプランを契約していても2分も使えない」と伝送速度のイメージを解説している。

【JAXA提供:JAXAと三菱電機の開発チームとギネス世界記録公式認定員(最前列右から7人目)】
6.CFRP製主翼の形状詳細解析を実現 – 次世代型航空機設計への貢献に期待
東北大学と上智大学の両者は1月22日、近年増加している炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用い空気抵抗を低減した航空機の主翼のうち、大きくたわむため通常の線形数値解析を用いた予測ではその変形を正確に捉えることができなかった、高アスペクト比で細長い形状のものについて、複合材主翼の空気抵抗と構造重量の最小化を目的とした多目的最適化フレームワークを構築することで、空気抵抗と構造重量をバランスよく低減できる主翼形状を数値的に明らかにしたことを共同で発表した。さらに、既存の線形解析にのみ基づく設計を採用すると、予想よりも大きな力が主翼にかかり、危険な設計となりうることがわかったことも併せて発表された。これまでの航空機の材料には主に金属が使われてきたが、近年は軽量・高剛性・高強度という特性を持つCFRPが使用される割合が増えている。しかし、CFRPは炭素繊維と樹脂を組み合わせた複雑な複合材料であり、内部で生じる数μmの破壊現象が数十mの主翼全体に及ぼす影響の予測は、まだ完全ではないとのこと。しかし航空機の実寸での実験や飛行試験は容易ではないため、主翼の性能を予測する別の手段が求められていたのである。【マイナビニュース】

【東北大/上智大共同プレスリリース:複合材航空機主翼の空力構造最適設計】