KIT航空宇宙ニュース2025WK25

1つの推力レバーで両方のエンジンを制御するダッソーファルコン10Xの操縦室
お知らせ

KIT航空宇宙ニュース2025WK26

海外のニュース

1. EASA、シングルレバー推力制御コンセプトに関する協議を開始

欧州の安全規制当局は、大型航空機の推力制御の新しい方法についての協議を開始した。この方法では、1つのレバーを使って両方のエンジンの動力を制御することになる。欧州航空安全機関は申請者を明らかにしていないが、ダッソー社は2027年に就航予定のビジネスジェット機「ファルコン10X」にそのような設備が搭載されることを以前に明らかにしている。欧州の認証要件では、航空機は各エンジンごとに個別の推力レバーを備え、それらを個別かつ同時に使用できる必要がある。シングルレバーコンセプトとは、パイロットのレバーの動きによって各エンジンに統合された独立した推力コマンドが生成されることを意味する。エンジン故障により、乗組員が各エンジンごとに異なる推力レベルを選択する必要がある場合に備えて、バックアップ制御ノブが装備される。この回転式ノブにより、パイロットは故障したエンジンを特定し、その推力を設定することができる。EASAは、このシングルレバーコックピットコンセプトについて、同等の安全性に関する提案に関する協議を開始した。「通常の運航条件下では、各エンジンの推力を個別に制御する必要はありません」とEASAは述べている。さらに、エンジン故障の場合でも、スラストレバーで作動中のエンジンを「直感的に」制御できるため、回転ノブは連続的な推力制御には使用されないとも付け加えている。【Flightglobal news】

【ダッソーアビエーション提供:1つの推力レバーで両方のエンジンを制御するダッソーファルコン10Xの操縦室】

日本のニュース

1. P-1、不具合と部品不足で稼働率低下 会計検査院が指摘

会計検査院は6月27日、海上自衛隊が運用する国産哨戒機P-1について、エンジンや電子機器の不具合、交換部品の調達遅延が要因で稼働率が低下しているとの報告書を公表した。他機から部品を取り外して修理に充てる「共食い整備」を実施していたことも指摘し、運用体制に影響が及んでいる実態が明らかになった。報告書は「国内開発された固定翼哨戒機(P-1)の運用等の状況について」と題したもので、2019-2023年度の5年間を対象に分析。P-1は川崎重工業が製造する国産機で、ターボプロップ機であるP-3Cの後継機として2013年から配備が始まり、2023年度末時点で35機を保有し、鹿屋、厚木、下総の各航空基地に配備されている。P-1の稼働を阻害する大きな要因として、IHI製ターボファンエンジン「F7-10」やミッション系電子機器の不具合が繰り返し発生していた。海上で運用する任務の特性上、エンジンの一部素材に空気中の塩分が付着し、腐食が生じることによる性能低下もみられた。搭載機器のうち、目標の情報収集に用いる「搭載電子機器A」の一定数が継続定期に使用不能となっており、搭載武器BからEの4種類は機体との接続不具合、搭載電子機器Fは地殻性物質の固着による不具合が指摘された。このうち、搭載電子機器Aは開発段階から不具合が出ており、「搭載した際の影響を十分に予見できていなかった可能性あり」、搭載武器の不具合は「仕様の検討が不十分だった可能性あり」と報告された。搭載電子機器Aの修理などにかかった費用は、合わせて8億9000万円となった。もう一つの深刻な要因が、交換部品の調達遅延と慢性的な不足だった。報告書では、定期修理に要する部品の入手に3年以上かかった例も確認され、緊急請求を受けても調達まで1年以上かかったものが全体の3割弱あった。このため、修理や定期整備の必要がある機体に対し、在庫が確保できない状況が続き、結果として運航可能な機数が不足する状況を招いていた。また、稼働率を維持するために、他の機体から部品を取り外して修理に用いる「部品取り」(共食い整備)を行っていた。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:国産哨戒機P-1】

2. スカイマーク、737-10を追加発注 27年度から導入

スカイマークは、737 MAXのうち最大サイズの737-10(737 MAX 10)を3機追加発注すると6月20日に発表した。同日に開催した取締役会で決議したもので、2027年度以降に受領する見通し。このほか、発注済みの737-8(737 MAX 8)のうち2機を737-10に機種変更し、今回の追加発注を含め7機導入することになる。同社は2023年1月に737-10を発注済みで、確定発注2機に加え、1機分のオプションを設定していた。今回の追加発注は1機分のオプションを行使し、新たに2機を追加発注。このほか、2023年1月に同時に発注していた737-8のうち2機を-10に機種変更した。今回の追加発注により、スカイマークは737-10を7機、737-8を13機導入する。スカイマークの737-10は座席数が1クラス210席で、現行の737-800(1クラス177席)と比べると約19%増える。当初は2026年度から受領する予定だったが、機体の安全性を示す「型式証明」をFAA(米国連邦航空局)から取得できていないため、2027年度に後ろ倒しする。737-10の導入は日本初となる。【Aviation wire news】

Skymark Airlines Announces Intent to Acquire Boeing 737 MAX Airplanes. (PRNewsfoto/Boeing)

【Yahooニュース提供:スカイマークが導入する737MAX-10 とー8(上)】

3. 大阪航空局、RACを厳重注意 整備記録の未作成で

国土交通省大阪航空局は6月20日、琉球エアーコミューターに対し、デ・ハビランド・カナダ(旧ボンバルディア)DHC-8-Q400CC型機の整備記録が未作成だったことなどを受け、行政指導の「厳重注意」を行った。昨年11月23日に同機が那覇空港を離陸直後、前脚のグラウンドロックを解除し忘れていたことで前脚を格納できない状態に陥り、引き返した事案に端を発するもので、安全管理体制の不備も指摘した。大阪航空局は、7月11日までに再発防止策を文書で提出するようRACに求めた。RACでは、当該便の出発前に那覇空港で実施した、前脚をジャッキアップして実施したタイヤのローテーション点検や、プロペラバランスデータの点検作業について、整備記録を作成していなかったことが判明。その後の調査と2月25-26日、4月9-10日、5月12-13日に実施した立入検査で、非定例整備時の記録未作成、機体整備マニュアル (AMM)などの未参照、整備記録のないまま基準適合確認を実施、一部作業の出発後記録作成といった実態が確認された。大阪航空局は、整備士の規程理解不足に加え、管理職が違反を認識しながら是正せず、報告や相談も行っていなかったと指摘。安全に関する情報が社内で共有されておらず、安全管理システムが十分に機能していないと判断し、規程の遵守と基本動作の徹底、安全管理体制の是正を求めた。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:RACのDHC-8-Q400CC】