KIT航空宇宙ニュース2025WK38

2010年に打ち上げられて以来運用が続けられていた金星探査機「あかつき」(PLANET-C)について、2025年9月18日の午前9時より停波作業を実施し、同探査機の運用を終了した(金星周回軌道投入イメージ)
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KIT航空宇宙ニュース2025WK38

海外のニュース

1. RTXのプラット・アンド・ホイットニーとPBSグループが次世代補助動力装置を開発

RTX(レイセオン)傘下のPratt & Whitneyは、プラハに本社を置くPBS Groupと、戦闘機、回転翼航空機、ビジネスジェット機などの商用および軍事用途向けの次世代補助動力装置(APU)を開発する契約を締結した。この協力は、チェコ防衛産業の革新的潜在力を強化することを目的として長年にわたり主要プロジェクトの実施を支援し、国内外のパートナーを結びつけてきた国防省産業協力課の主導と支援によって確立された。次世代APUは、同出力クラスの従来のAPUと比較して大幅に小型・軽量化され、高高度でも迅速な起動・運用が可能。これにより、新たな航空機設計の可能性が広がり、軍事用途および民間用途における電力増強、熱管理の強化、電子戦技術など、様々な機能の拡張が可能となる。【RTXニュース】

2. デルタ航空、メイブ・エアロスペースと提携しハイブリッド地域航空機の開発を推進

デルタ航空は、メイブ・エアロスペース社と提携し、地域路線向けにメイブ社の革新的なハイブリッド電気航空機の開発を推進する。メイブ・ジェットは、従来のジェット燃料を使用した場合、現在の地域路線用航空機と比較して、燃料消費量と排出量を最大40%削減するように設計されており、持続可能な航空燃料(SAF)を使用することで、ライフサイクル全体での排出量をさらに削減することが可能。この提携は、デルタ航空が現在進めている、より燃費の良い代替航空機ソリューションの特定、燃料節約の推進、顧客エクスペリエンスの向上、そして2050年までのネットゼロエミッション達成に向けた取り組みにおける最新のマイルストーンとなる。デルタ航空は、サステイナブル・スカイズ・ラボを通じてグリーン・タクシー・エアロスペースと提携し、燃料消費量、運航コスト、地上走行時間、そして二酸化炭素排出量の削減を目指す電動航空機タキシング技術の開発に取り組んでいる。デルタ航空のサステイナブル・スカイズ・ラボは、数十年にわたる航空会社の運航経験を活かし、グリーン・タクシーが地域航空機向けに空港で電動タキシングシステムを最適化するのを支援している。しかし、そのビジョンは単一の航空機モデルや航空会社にとどまらない。グリーン・タクシーとの提携は、持続可能な航空燃料の拡大や革新的な航空機開発といった将来の技術革新を進めながら、現在制御可能な範囲にまで影響を与えようとするデルタ航空のアプローチを示す、もう一つの例です。【デルタ航空広報】

【Maeve Aerospace提供:Maeve Aerospaceが開発中の電動ハイブリッド・リージョナル機】

3. 米国、空飛ぶタクシーの導入加速に向けた試験プログラムを開始

トランプ政権は12日、企業が先進的な航空移動に関する規制上のハードルを乗り越える取り組みを進める中、空飛ぶタクシーの導入を加速させるための新たな試験プログラムを発表した。

連邦航空局は、このプログラムには、電動垂直離着陸機(eVTOL)の安全な運航を可能にするために、州政府や地方自治体、民間企業との官民パートナーシップによる少なくとも5つのプロジェクトが含まれると述べた。ドナルド・トランプ大統領は6月に大統領令でこのプログラムの創設を指示した。インド、中国、アラブ首長国連邦を含む他の多くの国々もeVTOLの導入を加速させるべく取り組んでおり、早ければ来年にも有料の乗客の輸送が開始される可能性がある。FAAのブライアン・ベッドフォード長官は、同局はパイロットプロジェクトから得た教訓を生かして、全国で安全かつ拡張可能な運用を実現していくと述べた。【ロイター通信】

【Flightglobal提供:Joby Aviationが開発中のeVTOL機】

4. FAAは広範な安全違反を理由にボーイングに310万ドルの罰金を課すことを提案

FAAは、ボーイング737工場と下請けスピリット工場で数百件の品質システム違反を発見したと発表した。ボーイングは罰金に対し30日以内に回答しなければならない。2024年1月にアラスカ航空737 MAX9の空中緊急事態に関連した行為を含む一連の安全違反と安全当局の独立性を妨害したことに対しての310万ドルの罰金であり、FAAは、ワシントン州レントンのボーイング737工場とボーイングの下請け企業スピリット・エアロシステムズの工場で数百件の品質システム違反を発見したとしている。FAAは依然として737MAXの月間生産上限を38機に設定している。【ロイター通信】

日本のニュース

1. JAL、飲酒機長を懲戒解雇 鳥取社長ら全役員も処分

日本航空は、ハワイで8月に飲酒問題を起こした男性機長(64)を9月11日付で懲戒解雇した。また、鳥取三津子社長ら全役員の報酬を減額する処分も17日に決定している。JALの定年は60歳。解雇された元機長は定年退職後、1年契約の嘱託として乗務していた。今回の飲酒問題で、乗務予定だった現地時間8月28日のホノルル発中部行きJL793便(ボーイング787-9型機)が定刻より2時間8分遅れ、ほかのホノルル発2便もパイロット手配の関係でそれぞれ18時間以上の遅延が生じ、3便合わせて約630人に影響が出た。国土交通省航空局(JCAB)は、JALに対して行政指導にあたる「厳重注意」を10日に行っており、元機長はその翌日に解雇された。厳重注意に至ったことを受け、鳥取社長は月額報酬を2カ月間30%減額。安全責任を負う「安全統括管理者」の中川由起夫常務と南正樹運航本部長は同20%減額を1カ月間、社外取締役を含む全取締役と全執行役員も同10%減額を1カ月間とした。また、30日までに再発防止策を国交省へ提出する。国内では2018年以降、パイロットの飲酒に起因する遅延などが各社で発覚。JALでは、8月の問題以前では豪メルボルンで2024年12月1日に起きており、機長2人が解雇されている。JALが実施しているパイロットのアルコール検査は、自主的なものも含め4段階で、このうち最後に国交省が定める本検査「乗務前検査」を行っている。一方、海外では本検査にあたる検査のみで、アルコールが検知されると即解雇される「一発アウト」の国が多い。問題発生後、飲酒に対しては反省や改善が見られても、他の欲求を自制できるかなど、安全を守るパイロットとしての資質に疑念が生じるためだ。日本のアルコール検査体制は「検査のための検査」が行われている状態で、将来見直しが行われない場合、採用競争力の低下や離職といった別の問題に波及する可能性があり、慎重な判断が求められる。【Aviation wire news】

2. ZIPAIR、CA正社員120人募集 新卒・既卒、26年度入社

ZIPAIRは9月16日、2026年度に入社する社員の新卒・既卒採用を始めた。客室乗務員(CA)として乗務も行う正社員「Z_ONE」で、入社後は空港旅客業務やサービス企画業務などの地上業務にも従事する。採用人数は新卒・既卒合わせて120人程度を予定している。応募資格は、2026年3月末までに専門学校、高専、短大、大学、大学院を卒業・修了または見込みで、4月以降の会社が指定する時期に入社できる人。TOEIC600点以上の英語力が望ましく、視力や健康状態、成田空港への通勤時間なども条件となり、入社時には残存期間が1年以上あるパスポートが必要になる。客室乗務員としての乗務経験の有無は問わず、入社後は経験に応じて客室業務または空港旅客サービス業務から従事する。その後は全員が両業務を担当し、一部はサービス企画業務にも従事。本人の希望や適性を踏まえて、最短で入社4年未満で管理職登用の道もある。訓練期間中は有期雇用で、Z_ONEとして発令後は正社員となる。応募は同社のウェブサイトで受け付け、エントリーシートとWeb適性検査の提出は10月9日まで、AI面接の受検期限は10月17日まで。書類選考の結果は10月20日ごろに通知を予定している。【Aviation wire news】

3. 金星探査機「あかつき」の運用が終了 – 約15年にわたる長旅に幕

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2010年に打ち上げられて以来運用が続けられていた金星探査機「あかつき」(PLANET-C)について、2025年9月18日の午前9時より停波作業を実施し、同探査機の運用を終了したことを明らかにした。日本初の地球以外の惑星周回機として、2010年5月21日に種子島宇宙センターよりH-IIAロケット17号機で打ち上げられた「あかつき」は、金星大気の3次元的な動きを明らかにすることを主目的に開発された探査機。特に大きな謎が残されていた“金星の大気の流れ”を明らかにするため、異なる高さでの大気の動きの観測を通じて、3次元的な大気の流れを解明することが目指された。また同時に、金星を覆う分厚い雲の成因や、雲の中での雷の有無にも迫るなど、金星の気象学を確立するとともに、より普遍的な惑星気象学の樹立に貢献することが期待された。同探査機は、打ち上げから5年以上が経過した2015年12月に金星周回軌道への投入に成功。以降8年間以上にわたって金星大気の観測を継続して行い、これまでには太陽系最大の山岳波の発見や、高速大気回転(スーパーローテーション)維持メカニズムの解明、地球の気象学研究において用いられるデータ同化手法の導入など、惑星気象学にも関わる重要な科学成果を創出してきた。しかし同探査機は2024年4月末の運用において、姿勢維持の精度が高くない制御モードが長く続いたことを発端として、通信を確立できなくなったとのこと。その後、通信の回復に向けた復旧運用が行われていたものの、計画的な通信の復旧が見込めないうえ、すでに設計寿命を大幅に超え後期運用の段階に入っていることから、今般の運用終了が決定されたとしている。【マイナビニュース】

【JAXA提供:「あかつき」の金星周回軌道投入イメージ】