KIT航空宇宙ニュース2025WK45

米ケンタッキー州ルイビルで現地時間11月4日夕刻に離陸中のUPS のMD-11貨物機からエンジンが脱落し墜落、少なくとも乗員3名含め12人死亡~FAAが全MD-11機の運航停止を命令 
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KIT航空宇宙ニュース2025WK45

海外のニュース

1. エンブラエル、次世代ターボプロップ開発中止

エンブラエルは、次世代ターボプロップ(プロペラ)機の開発を中止した。同社が念頭に置く条件を満たすエンジンがないためで、民間機は世界一のシェアを誇るリージョナルジェットに当面注力する。2021年に明らかにした次世代ターボプロップ機構想は、空港でのPBB(搭乗橋)の使用や騒音低減、振動低減、乗客の個人スペース拡大、機内持ち込み手荷物の収納スペース拡大、上質なギャレー(厨房設備)とラバトリー(化粧室)の設置など、乗客にジェット機と同様の搭乗体験を提供できる機体を目指すとし、就航は2027年ごろを計画していた。今年4月に、Aviation Wireの単独インタビューに応じたエンブラエル民間航空機部門のアルジャン・マイヤー社長兼CEO(最高経営責任者)は、「現在は棚上げしている」と明言。「プラットフォームに適したエンジンがなかった」と述べ、電動や水素など次世代の再生可能エネルギー推進技術を用いた新しい航空機コンセプト「エネルギア・ファミリー(Energia Family)」として、技術検証を進めていると説明した。ターボプロップ機の新規開発は、50-70席クラスの機体を唯一製造する仏エアバスと伊レオナルドの合弁会社ATRも、2024年11月に「ATR42-600S」の開発を中止すると発表。ATR42-600型機の改良型で、短い滑走路で離着陸できるSTOL(短距離離着陸)型だが、サプライチェーンのひっ迫が続いていることに加え、航空需要の成長が見込まれる東南アジアの場合、滑走路延長や新空港建設で、STOL機を必要とする対象空港が大幅に減少しており、この傾向は他の主要な対象市場にも当てはまるとしている。英ロールス・ロイスのリサーチ&テクノロジー部門ディレクター、アラン・ニュービー氏は、ターボプロップ・エンジン市場について「いま飛んでいるエンジンは古いものばかりなので、圧縮比やタービン温度などに(技術的な)伸びしろはあると思うが、マーケット性のほうが足かせになっていると思う」と、エンジンメーカーとしては、市場規模が見込めないとの見方を示している。【Aviation wire news】

【エンブラエル提供:ンブラエルが検討したターボプロップ機のイメージイラスト】

2. ボーイング、Jeppesenなど売却完了 機体製造に集中

ボーイングは、デジタル航空ソリューション事業の一部について、米投資会社トーマ・ブラボー(Thoma Bravo)への売却を完了した。売却額は現金105億5000万ドルで、航空ナビゲーション部門「ジェプセン(Jeppesen)」や、フォアフライト(ForeFlight)、エアデータ(AerData)、オズランウェイズ(OzRunways)を売却した。事業売却は今年4月に最終合意が発表されていたもの。今回の完了で、ボーイングは財務体質の強化と機体製造など中核事業への経営資源の集中を進める。売却後も一部のデジタル航空サービスは社内に残し、機体や機材単位のデータを活用した機能を通じて、民間航空や防衛の顧客に対し、運航や保守、診断、修理などのサービスを継続する。【Aviation wire news】

3. FAA、MD11貨物機の運航停止を指示 墜落原因はいまだ特定されず

米ケンタッキー州ルイビルで4日に墜落した国際貨物大手UPSの貨物機MD11の事故を受け、米連邦航空局(FAA)は8日、徹底的な点検が済むまで、MD11およびMD11F型機の運航を事実上停止する方針を明らかにした。マクドネル・ダグラス製のMD11は空港に隣接する住宅地に突っ込み、少なくとも14人が亡くなった。墜落時に火災が発生して商店を焼き尽くし、パニックになった人々が炎から逃れようと窓から飛び降りる事態になった。FAAの指示は、4日の事故で「離陸時に左エンジンとそのパイロン(つり下げ部)が機体から脱落した」ことを受けたもの。FAAは「同様の設計の他の製品でも、安全性に欠ける状況が存在する、あるいは発生する可能性が高い」と警告している。国家運輸安全委員会(NTSB)の調査官が墜落直前の状況を解明するため証拠を収集する中、UPSと米物流大手フェデックスはFAAの指示に先立ち、自社のMD11全機を直ちに運航停止すると発表していた。NTSBによると、UPS2976便はルイビルにあるモハメド・アリ国際空港から離陸した際、加速中にエンジンとそれを支えるパイロンが左翼から脱落したという。原因はまだ特定されていないが、運航会社は答えが出るまでの間、慎重を期した対応を取っている。UPSは声明で「万全を期して安全を最優先する考えから、MD11の運航を一時的に停止する決定を下した」と説明。「我々にとって従業員と地域社会の安全ほど大切なものはない」と述べた。マクドネル・ダグラスのMD11は貨物専用機で、UPSの保有機のおよそ9%を占める。UPSは、MD11なしでも一時的に業務を続ける緊急対応計画があると説明している。MD11を運用するもう一つの主要米国企業フェデックスの広報も、「メーカーの勧告に基づく徹底的な安全確認」のため、MD11の運航を停止すると明らかにした。一連の決定は米航空大手ボーイングの勧告を受けた対応となる。ボーイングは1997年にマクドネル・ダグラスと合併した。墜落したUPSの貨物機は製造から34年が経過していた。旅客機としては古い部類に入るかもしれないが、貨物機の世界では珍しくなく、MD11の機齢が墜落の要因となった形跡は現時点ではない。【CNNニュース】

【BBC提供:UPS社のMD-11貨物機】

4. エアバスは、オープンファン設計を含め、A320neo後継機のエンジンオプションの道筋を見据えている

エアバスは、新型ナローボディ機にオープンファン式のエンジンを採用する場合でも、次世代シングルアイル機でエンジンサプライヤーの選択肢を提供できると考えている。推進装置メーカーの中で、今のところオープンファン設計を選択し、RISE技術実証プログラムを通じてその構造を検証しているのは、サフラン・エアクラフト・エンジンズとGEエアロスペースの合弁会社であるCFMインターナショナルだけだ。エアバスは2028年にA380にRISEエンジンを搭載して試験する予定で、エンジンの構造やサプライヤーについてはまだ決定していないと主張しているものの、オープンローターの燃費効率のメリットは非常に有望だと考えている。エアバスは、A320neoファミリーのジェット機でCFM Leap-1Aとプラット・アンド・ホイットニーPW1100Gのどちらかを選択できるようにしており、CFM56またはインターナショナル・エアロ・エンジンズV2500のいずれかで提供されていた以前のCeo派生型で見られたモデルを継承している。P&W は、NGSA 向けにダクテッド・ギアード・ターボファンの次世代バージョンを提案する意向のようだが、競合するエンジン・アーキテクチャ間の統合に大きな違いがあるため、以前のデュアルソースモデルを繰り返すことは不可能と思われる。GEの未来飛行担当副社長アルジャン・ヘーゲマン氏は、他社もオープンファン・エンジンを追随すると断言している。「これは革命的なエンジンであり、このアーキテクチャがもたらすメリット、価値提案を証明できれば、次世代製品向けのオープンファン技術に取り組むのは当社だけではないと確信しています。」「シングルソースである必要はありません。今日、ダクト付きエンジンをデュアルソースできるのと同じように、明日はアンダクト付きエンジンをデュアルソースできるのです。」P&Wに加えて、ロールスロイス社も、計画中のナローボディサイズのUltraFan 30デモンストレーターを通じて次世代のダクトエンジンの開発を進めている。【Flightglobal news】

【サフラン提供:CFMでの5分の1スケールのオープンファンエンジンの風洞テスト】

日本のニュース

1. 中部空港、メガソーラーで脱炭素化 ターミナル・貨物施設で自家消費

中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社(CJIAC)と、中部電力ミライズ(名古屋市東区)の2社は11月5日、他社所有の太陽光発電所を自社の敷地に設置し、発電した電気を購入する「オンサイト型」のPPA(電力購入契約)サービスの導入で合意したと発表した。出力1000kw(キロワット)超の出力太陽光発電設備「メガソーラー」を同空港内に初設置し、空港内への電力供給を2027年4月から始める見通し。太陽光パネルは第1(T1)と第2(T2)の2つある旅客ターミナルの屋根のほか、貨物地区の従業員駐車場に設置。出力は旅客ターミナルが3542kw、貨物地区が412kwの計3954kwで、旅客ターミナルと貨物施設に供給し自家消費する。年間の想定発電量は約434万kWh(キロワット時)で、CO2(二酸化炭素)を約1829トン削減する。PPA事業者は中部電力ミライズで、太陽光発電設備の設置・保有・運営は同社子会社のシーエナジーが担う。中部空港は脱炭素化を進めており、空港地上施設からの温室効果ガス排出量を、2030年度までに2013年度比で46%削減する目標を掲げている。今回のメガソーラー導入によりCO2を約1829トン削減でき、目標削減量の約6.0%に相当するという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:中部空港のソーラーパネル設置場所】

2.関空、EVランプバス国内初導入 万博車両を再活用

南海バス(大阪・堺市)と、関西空港を運営する関西エアポート(KAP)の両社は11月4日、乗客が搭乗・降機時に使う「ランプバス」をEV(電気自動車)化すると発表した。大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)会場への輸送に使用していた車両を活用し、6日から4台導入する。両社によると、EVランプバスは国内空港として初めての取り組みだという。導入するEVバスは、いすゞ自動車の「ERGA EV」(定員68人)を3台、BYD(中国・深セン市)の「K8 2.0(同80人)」を1台。ターミナルと離れた航空機の間を運行し、乗客の送迎に再活用する。EVランプバスの導入は、南海バスが空港内にEVバス用の充電器を整備したことで実現した。南海バスは万博期間中、JR桜島駅と万博会場の間でEVシャトルバスを運行。来場客へのアクセス手段を提供した。【Aviation wire news】

【KAP提供:関空のランプバスとして再活用する「ERGA EV」】

3. 入間航空祭、ブルーインパルスが展示飛行 26万人来場

航空自衛隊入間基地で11月3日、入間航空祭が開かれ、アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」や基地所属機が展示飛行を披露した。入間基地によると、5年ぶりの一般公開となった昨年の25万人を上回る、約26万人が訪れた。今年の展示飛行は、入間基地所属のC-2輸送機、U-680A飛行点検機、U-4多用途支援機、T-4練習機、CH-47J輸送ヘリコプターに加え、ブルーインパルスが参加。C-2から陸上自衛隊第1空挺団がパラシュート降下してスタートし、2機のC-2による急上昇、CH-47Jによる物資輸送など、隊員たちが日ごろの訓練の成果を披露した。ブルーインパルスは、ハートを射抜く「キューピット」や花などを描いたほか、クリスマスをイメージした演目も披露。来場した26万人が、さまざまな演目による約40分間の展示飛行を楽しんだ。【Aviation wire news】

【入間航空祭で展示飛行するブルーインパルス】