KIT航空宇宙ニュース2025WK27
海外のニュース
1. EveがコスタリカのeVTOLエアタクシーパートナーと契約を締結
イブ・エア・モビリティは、コスタリカで運航可能な4人乗りeVTOL機を50機追加販売する意向書に署名した。6月30日、エンブラエル傘下の同社は、6月のパリ航空ショーでエアタクシー事業を手掛けるレボ社およびフューチャー・フライト・グローバル社と契約を締結したが、今回の契約は、この勢いをさらに加速させるものだ。エアロソリューションズとの提携は、同社がコスタリカで「エアロス・エレクトリック・エアライン」という新たな事業を立ち上げる計画に基づいている。同社はEve機を用いて、コスタリカの太平洋沿岸にある空港とリゾート、いわゆるエコリゾート地を結ぶ、最大約30海里の区間を運航する予定です。グローバルビアとブルーネスト社との契約は、コスタリカにおける垂直離着陸場(バーティポート)の設置と運用支援の提供を網羅している。グローバルビア社は既に同国の主要高速道路を運営しており、グアナカステ近郊におけるインフラ整備と試験運用において、Eve社を長年支援してきた。【Aviation International News】

【Eve提供:コスタリカの海岸を飛行するEve社eVTOL機(想像図)】
日本のニュース
1. ブルーインパルス、万博会場で7/12-13展示飛行 関空離陸し4月と同ルート
航空自衛隊は7月1日、大阪・関西万博会場の上空でアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行を披露する際の飛行ルートなどを発表した。12日(土)と13日(日)に実施するもので、4月の開幕日に予定していたルートと同じく関西空港を離陸後、「太陽の塔」や大阪城などの上空を通過し、大阪府の夢洲会場上空で演目を披露する。開幕日は悪天候で中止となり、大阪府などが調整していた。展示飛行は、両日とも午後3時から15分間を予定。関空を午後2時40分ごろ離陸し、大阪府南部から大阪湾沿いを飛行して大阪城を目指し、時計回りに太陽の塔、ひらかたパーク付近で右旋回して再び大阪城を通過。通天閣周辺の西側を通って南下し、大阪府河内長野市の岩湧山などのあたりで時間調整のため旋回して待機して、夢洲会場上空へ向かう。当日の天候などにより飛行ルートは変更する場合があるという。また、2025年日本国際博覧会協会からは、夢洲駅を万博来場目的以外で訪れることを「ご遠慮くださいとの連絡を受けています」(空自)としている。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:ブルーインパルスの飛行予定ルート】
2. モバイルバッテリー、手荷物棚に収納“禁止” 国交省が安全対策強化
国土交通省航空局(JCAB)は7月1日、モバイルバッテリーの機内持ち込み方法を変更すると発表した。8日以降は頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)へ収めず、手元で保管するよう求め、措置を強化する。機内に持ち込んだモバイルバッテリーによる発煙・発火などの事例が国内外で発生しているとを受けた措置で、日本航空や全日本空輸など国内の航空会社19社が加盟する「定期航空協会(定航協)」と連携し、客室の安全性向上を図る。8日以降は、モバイルバッテリーを収納棚に入れないよう求めるほか、使用時は状態を常に確認するよう要請する。海外の航空会社への搭乗時は、各社の指示に従う。モバイルバッテリーは航空法第86条により、機内預け入れ荷物に入れることを禁止されている。予備のバッテリーパックには、端子への絶縁テープなどにより短絡を防ぐことも定められている。また持ち込み数にも制限があり、100ワット時(Wh)以上160Wh以下のものは2個まで持ち込める。160Wh以上のものは持ち込みを禁じている。韓国で今年1月、出発前のエアプサン(ABL/BX)の釜山発香港行きBX391便(エアバスA321型機)で火災が発生したした。乗客のモバイルバッテリーが火元となった可能性が指摘されていることから、海外の航空各社は飛行中のモバイルバッテリーの使用や充電を禁止する動きが出ている。定航協の調査によると、国内線での発煙・発熱・膨張の事案は、直近1年で数件発生。常に状態を確認できる場所に収納していたことから、発生時は乗務員がすぐに対処し、運航への影響はなかったという。【Aviation wire news】
3. ANA、大西宇宙飛行士と子供たちのISS交信イベント 無重力下の生活紹介
全日本空輸は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の大西卓哉宇宙飛行士との交信イベント「感動!!宇宙航空教室」を開き、約200人が参加した。大西さんは元ANAのパイロットで1998年に入社。2009年3月に退社してJAXA(宇宙航空研究開発機構)へ転じるまでは、ボーイング767型機の副操縦士として乗務していた。これまでも大西さんがANAのイベントに登壇することはあったが、宇宙から交信するのは初となった。イベントはANAグループの総合訓練施設「ANA Blue Base(ABB、ANAブルーベース)」で6月25日に開かれ、小学生から高校生までの子どもたちを対象に実施された。大西さんは、マイクを無重力下で手から離すなどの実演を通じて、宇宙での暮らしの特徴や工夫を説明した。大西さんは、子どもたちの質問に答え、宇宙飛行士を志したきっかけや、ISSでの自由時間の過ごし方、シャワーや洗濯ができない生活の工夫、緊張する場面で普段通りの力を発揮する重要性、リーダーとして緊急時に乗員を守る船長としての責任感などを語った。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ANA訓練施設にいる子供たちとISSから交信する大西宇宙飛行士】
4. ISCとLetara、「CAMUI型合成ゴム燃料ロケットエンジン」の燃焼試験に成功
将来宇宙輸送システム(ISC)は7月2日、Letaraと共同で、燃料内部に複数の中空筒を通すことで燃焼面積を保ち燃焼を安定させる「CAMUI型設計」を採用したハイブリッドエンジンの燃焼試験を実施したことを明らかにした。宇宙輸送の高頻度化と低コスト化を目指すISCは、日本発の再使用型ロケット開発プロジェクト「ASCA(アスカ)ミッション」を推進している。現在取り組まれている「ASCA 1.0ミッション」は、このプロジェクトの初期フェーズとして位置づけられた技術実証機で、高度0.1km以上への上昇および着陸目標地点への誤差5m以内の着陸を目標とした各種データの取得が目的とされている。今回は、Letaraと共同開発するハイブリッドエンジンに関する成果を目指し、7月1日に北海道赤平市のLetara試験場にてハイブリッドロケットエンジンの燃焼試験を実施。推力を効率的に維持しながら燃焼を継続できる構造であるCAMUI型の合成ゴム素材による固体燃料の着火・燃焼確認、7秒間の安定燃焼の達成、5000N推力の達成を目的とした試験を行い、3つの目標の達成に至ったとした。なおISCによると、今回の試験ではHTPB(合成ゴム)という特殊なゴム素材を燃料に使用したとのこと。これまで広く用いられてきたプラスチック系燃料とは異なる新しい選択肢であることから、HTPBを用いたCAMUI型ハイブリッドロケットの燃焼試験を通じてその特性を把握することは、人工衛星打ち上げ用ロケットの開発に向けて必要な取り組みであるという。ISCは、今回の安定燃焼時間7秒・推力5000Nを目指した燃焼試験の成功は、極めて大きなマイルストーンだとする。7秒間の連続燃焼は、燃焼挙動の安定性を確認するのに十分な時間であるうえ、この間に得られる大量のデータからエンジン内部の流れや燃焼の様子の精密分析が可能となる一方、5000Nという推力レベルでの試験を通じて、エンジン設計の信頼性に関するデータも得られたとのこと。同社は今後、得られた試験データに基づいて、Letaraと共同でハイブリッドエンジンを用いた人工衛星打ち上げ用ロケットの開発に関する検討を進めていくとしている。【マイナビニュース】

【ISC提供:CAMUI型設計採用ハイブリッドエンジンの燃焼試験】
5. さらばH-IIAロケット、種子島から最後の旅立ち。いぶきGW打上げ成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月29日、H-IIAロケット50号機を打ち上げた。種子島宇宙センター 大型ロケット発射場から1時33分3秒に離昇した50号機は順調に飛行を続け、打上げ後約16分07秒に地球観測衛星「いぶきGW」を正常に分離、所定の軌道への投入に成功した。H-IIA50号機は、日本の基幹ロケットとして20年余りにわたって運用を続けたH-IIAシリーズの最終号機。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や三菱電機らが開発した、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)の軌道投入が最後のミッションとなる。2001年の初号機打ち上げ以来、H-IIAは「はやぶさ2」などの探査機や、日本の重要な人工衛星、海外の商業衛星など、さまざまなペイロードを宇宙へ送り届け、日本の宇宙開発における重要な役割を果たしてきた。今回の50号機をもって退役し、H3にその役割を引き継ぐ。【マイナビニュース】

【JAXA提供:H-IIAロケット50号機の離昇直後の姿】