KIT航空宇宙ニュース2021WK21
海外のニュース
1. ATR、STOL型ATR42-600S製造開始へ 800m滑走路でも離陸可
仏のターボプロップ(プロペラ)機メーカーATRは、ATR42-600型機の改良型で短い滑走路で離着陸できる「ATR42-600S」の設計を終えた。サプライヤーは部品の製造を始められるようになった。ATR42-600Sは、800-1000メートルの短い滑走路で離着陸できるATR42-600のSTOL(短距離離着陸)型。座席数1クラス30-50席の市場をターゲットにしており、日本でも離島路線を持つ航空会社などに売り込んでいく。東京都では、現在航空路のなない小笠原島に新たに滑走路を新設し、STOL機による航空路開設を検討している。【Aviation Wire News】
【ATR社提供:ATR 42-600S (STOL型機)想像図】
2.米国のアエリオン社が操業を停止、超音速ビジネスジェットの開発が頓挫
テキサスの億万長者ロバート・バスによって設立され、ボーイング社の支援を受け、日本航空も小額投資していた超音速ジェット機を開発中のアエリオン社は、航空機の製造を開始するのに十分な資金を確保できなかったため、操業を停止すると述べた。AS2プライベートジェットを設計から生産に移行するために必要な多額の投資を調達することは「非常に困難」だったとアエリオン社は述べた。同社は3月に、最初の飛行機の生産はフロリダ州メルボルンの工場で2023年に開始され、最初の飛行機の引き渡しは2027年を予定していると発表していた。【Flightglobal News】
【アエリオン社提供:超音速ビジネス機AS2の想像図】
3.EASAは2024年または2025年に最初の空飛ぶタクシーが飛ぶことを予想している
欧州では、2024年には早くも最初の空飛ぶタクシーが就航する可能性があると、欧州航空規制当局(EASA)が語った。リリウム社 やボロコプター社等、10社以上のヨーロッパ企業が、乗客用または医薬品の配達などの無人貨物用のアーバンエアモビリティ(UAM)機の開発を発表している。EASA事務局長であるパトリック・キー氏は、「(エア)タクシーの商用利用は2024年か2025年に始まり得ると信じている」と語った。EASAは、2030年までにヨーロッパで42億ユーロのUAM市場を示唆し、90,000人の雇用が創出され、新技術の世界市場の約31%はヨーロッパが拠点となると予想している。【ロイター通信】
【ロイター提供:2019年10月22日のシンガポールでのボロコプター・デモフライト。】
4.ボロコプター社が電気推進垂直離着陸機(e-VTOL)固定翼型の開発を発表
ブルッフザール/ミュンヘン、アーバンエアモビリティ(UAM)のパイオニアであるボロコプターがEBACEコネクトで最新の固定翼航空機Volo Connectを発表しました。この電気垂直離着陸機(e-VTOL)は、航続距離52nm (97km)、巡航速度97kt(180km/h)で、郊外を都市に接続するように設計されており、都市内ミッションのために同社の既存の航空機ファミリーを補完。Volo Connectは、今後5年以内に認証を取得する予定。【Flightglobal News】
【ボロコプター社提供】
5.FAAは、今年1 月の墜落事故に対応しボーイングに旧世代737 型機の点検を指示
FAAによれば、点検対象は、すべての737-300、737-400、737-500 型機の計143 機(米国登録分)。機体の推力を自動制御するオートスロットルのコンピューターがフラップの動きに同期するためのワイヤーの不具合を見逃して「機体のコントロールができなくなる」可能性があるとしている。 インドネシア当局が今年2 月に出した中間報告では、事故原因は不明だが墜落機のスロットルには「異常」が見られたと指摘していた。【時事通信】
日本のニュース
1.モデルナ製ワクチン、武田薬品が近鉄エクスプレスやJALなどと低温物流網構築
武田薬品工業と近鉄エクスプレス、日本航空、関西空港を運営する関西エアポート(KAP)など7者は5月20日、武田薬品が日本での製造販売承認を同日取得した米モデルナ製新型コロナウイルス感染症ワクチン「COVID-19 ワクチンモデルナ筋注」の流通を本格化させたと発表した。近鉄エクスプレスは、フォワーダー(利用運送事業者)として欧州から日本までの国際輸送業務全般を請け負い、JALは定期便を運航していないブリュッセル空港から日本への空輸などを担う。モデルナのワクチンは、関空へ第1便が4月30日に到着。ブリュッセルから関空までは、JALのJL6716便(ボーイング787-8型機)で輸送した。JL6716便は旅客機で貨物のみを運ぶ貨物専用便として運航した。【Aviation Wire News】
【Aviation Wire提供:関西国際空港に到着したモデルナ・ワクチン空輸第一便】
2.ANAが仮想空間で旅行や買い物「SKY WHALE」開発、25年度に3000億円目指す
ANAホールディングスは5月20日、スマートフォンを使いバーチャル(仮想)空間での旅行や買い物などを楽しめるプラットフォーム「SKY WHALE(スカイホエール)」を開発し、2022年にサービスを始めると発表。国内外の政府観光局などと連携し、外国人向けのバーチャル京都旅行などの実現を目指す。ANAHDによると、2025年度に3000億円規模の売り上げに成長させたいという。SKY WHALEのコンセプトは「時空を超える旅客機」で、3つのサービスで構成。3D(三次元)CGで描かれた都市や観光名所を最大8人同時に旅行できる「Skyパーク」、空港でのショッピングやエンターテインメントをイメージした「Skyモール」、未来の街をイメージし、バーチャル上での医療や教育、行政などのサービスを提供する「Skyビレッジ」を用意する。【Yahoo News】
【Yahoo News提供:SKY WHALEのイメージ図】
3.関空に自動PCR検査ロボット設置し今夏稼働予定
関西空港を運営する関西エアポート(KAP)は5月20日、自動PCR検査ロボットシステムを空港内に設置した。国際線出発客向けで、約80分で検査できるという。医療機関による検査開始は今年の夏頃を予定している。検査ロボットシステムは川崎重工業製。第1ターミナル4階屋外のバス降車場付近に設置した。16時間稼働の場合、1日最大2500検体を検査できるという。検査方式は世界標準のリアルタイムRT-PCR検査方式で、ロボットによる無人化と自動化により、大量の検査を高精度で実施できるとしている。KAPによると、川重と医療機関が組んで検査サービスを提供するという。【Yahoo News】
【Yahoo News提供:関空に設置された川崎重工製自動PCR 検査ロボット・コンテナ】
4.JAXAと鹿島建設、月や火星での建設に向け遠隔操作と自動運転施工実験に成功
JAXAと鹿島建設は5月18日、2016年から実施している月面での無人による有人拠点建設を目指した「遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現」の共同研究の一環として、建設機械の操作および自動運転による施工実験を実施し、1000km以上離れた場所からの遠隔操作と、自動運転による作業ながら高精度での施工ができることを確認したと発表した。日本も参加することが決定しているアルテミス計画では、単に月面有人探査を実施するだけでなく、月面に基地が建設される予定となっている。最初に建設される小型の基地はまだしも、将来的に建設される予定の長期滞在型の大型基地については、多数の人員を月まで送り込んで人手での建設を行うのは難しいと考えられており、これはアルテミス計画の先として考えられている火星有人探査に関しても同様で、原則として無人での施工が想定されている。【マイナビニュース】
【JAXA提供】