KIT航空宇宙ニュース2023WK03
海外のニュース
1. NASAとボーイング、極薄主翼の次世代小型機 燃費3割減、30年代実用化へ
ボーイングは、NASA(米国航空宇宙局)が進める持続可能な実証機プログラム「サステナブル・フライト・デモンストレーター」(SFD、Sustainable Flight Demonstrator)について、開発パートナーに選定された。次世代の単通路小型機開発につなげるもので、燃料消費とCO2(二酸化炭素)の削減を目標に掲げており、ボーイングはパートナー企業と開発を進めて2030年代の実用化を目指す。SFDプログラムで新たに開発する機体は、極薄で長い主翼を胴体から斜めに伸びる支柱で支える「遷音速トラス支持翼」(TTBW、Transonic Truss-Braced Wing)を採用。NASAによると、この設計により空気抵抗が従来機よりも少なく、燃料消費とCO2排出量を最大30%抑える効果があるという。NASAはSFDプログラムに対し、7年間で4億2500万ドル(約547億2700万円)を投資。ボーイングとパートナー企業は7億2500万ドルを開発に投じる。試験完了は2020年代後半で、2030年代の実用化を目指す。航空業界は、2050年までにCO2排出量をゼロにする目標を掲げている。今回の実証機開発による技術進歩が、目標達成につながりそうだ。【Aviation Wire News】
【Boeing提供:ボーイングとNASAが開発予定のTrass-Braced Wing機】
2.ZeroAviaが、水素燃料電池パワートレインで改造されたDo 228の初飛行成功
ZeroAviaは、部分的に水素燃料電池で動作するように改造されたドルニエ228の初飛行を成功裏に完了した。航空機はイングランド南西部のケンブル飛行場から10分間の飛行を行った。マイルストーンを開示して、ZeroAviaは、その600kW ZA600パワートレインが「期待どおりに機能した」と述べた。ZeroAviaは、Do228の左側のハネウェルTPE331 ターボプロップ エンジンを電気モーターに置き換え、燃料電池、ガス状水素タンク、およびテストベッド用のバッテリーは胴体内に収容した。商用機では、これらは航空機の外部に設置する予定。飛行中に電力の 50% を供給したバッテリーパックは、離陸時のピーク電力サポートに加えて、安全なテストのための追加の冗長性を提供する必要があると述べた。現時点では、販売する機体デザインは明らかにされていない。ヴァル・ミフタホフ最高経営責任者(CEO)は、10~20席クラスの航空機になると述べているが、それ以上の詳細は明らかにしていない。【Flightglobal News】
【Zero Avia提供:水素燃料電池推進に改造されたDo228の初飛行】
日本のニュース
1. ORC、新機材ATR42は7/1就航 長崎離島路線
オリエンタルエアブリッジは、新機材となる仏ATR製ATR42-600型機の初号機(登録記号を7月1日から定期便に投入する。長崎離島路線用の機材で、拠点の長崎空港には2022年12月21日に到着しており、パイロットや客室乗務員、整備士などの訓練を重ねて就航に備える。初受領したATR42から機体デザインを刷新。「飛翔する海鳥」がコンセプトで、五島灘を大きく羽を広げて悠々と飛ぶ海鳥をイメージし、白い機体の前方と後方にラインを配した。また、新しいロゴマークを制定。「空」「海」「島」をビジュアルイメージとし、空を水色、海を青色、島を緑色で表現した。座席数は1クラス48席で、2機のATR42を順次受領し、現行のボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-Q200型機(1クラス39席)を更新していく。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:ORCの新機材ATR42-600型機】
2.ANA、羽田空港の旅客係員やグラハン採用 24年度新卒と既卒
ANAホールディングス傘下のANAエアポートサービスは、羽田空港の旅客サービスを担うグランドスタッフ(地上旅客係員)と、航空機の牽引などグランドハンドリング(地上支援業務)の正社員を募集している。専門学校の新卒者と大学や専門などの既卒者が対象で、応募締切は新卒が1月25日、既卒が2月28日。2024年度の採用人数は300人程度を予定。応募時にグランドスタッフかグラハンを選択する。新卒の応募資格は、2024年3月までに専門学校を卒業見込みで、今年10月以降の会社が指定する時期に入社できること。既卒は今年9月末までに専門、高専、短大、4年制大学、大学院を卒業・修了または見込みの人で、今年7月以降の会社が指定する時期に入社できること。新卒と既卒ともに、旅客志望者は英検2級以上またはTOEIC550点以上の英語力が望ましく、グラハン志望者は普通自動車免許(AT)が必要になる。【Aviation Wire News】
3.トキエア、那覇に2号機到着 初のカーゴフレックス仕様
新潟空港を拠点に就航を目指す「TOKI AIR(トキエア)」は1月18日、仏ATR製ATR72-600型機の2号機が那覇空港へ到着したと発表した。客室前方を貨物室に変更できるオプション「カーゴフレックス(Cargo Flex)」を同社で初採用した機体で、1月末に新潟へフェリー(回航)する見通し。2号機は現地時間14日にフランスのトゥールーズを出発し、ギリシャ、オマーン、インド、タイのバンコクを経由。那覇には午後3時47分ごろ着陸し、同53分ごろ到着した。新潟の天候を考慮したもので、雪の影響を避けて那覇で通関手続きと機体の登録を日本国籍へ変更後に新潟へフェリーし、運航を想定した訓練に使用する。トキエアでは2号機が初採用したカーゴフレックスは、客室前方の座席を取り外し、貨物搭載用コンテナを最大4つ設置できる。座席数は1クラス72席の場合、貨物搭載時は44席になり、1.4トンの追加貨物を搭載できる。トキエアが航空会社として事業を行うためには、国土交通省からAOC(航空運送事業の許可)を取得する必要があり、安全性や持続的な運航が可能かを規定や訓練体制などを基に審査される。同社は11月30日に国交省の東京航空局(TCAB)へ申請した。計画路線は、新潟-札幌(丘珠)、仙台、中部、神戸の4路線。年内の就航を計画しており、最初の就航地は丘珠、2路線目は仙台、その後に中部や神戸への就航を目指す。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:那覇空港に到着したトキエアのATR72-600型2号機】
4.HAC、8年ぶり新卒採用 既卒は運航管理・整備技術系を重視
日本航空傘下で、札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステム(HAC)は、パイロットや運航管理系などの採用を始める方針を固めた。仏ATR製ATR42-600型機の4号機を10月にも就航させ、これまでの3機体制から増機し、運航規模を拡大していく。2024年度入社の新卒採用も予定しており、HACでは8年ぶりとなる。1998年3月に就航したHACは、サーブ340B型機(1クラス36席)を3機運航してきたが、22年ぶりの新機材として同数のATR42(同48席)を2020年4月から順次導入。2021年11月の3号機就航で機材更新を終え、就航25周年を迎える今年からは北海道や札幌市と歩調を合わせて4機体制にする。採用は2023年度入社の既卒と、2024年度入社の新卒を計画。「北の運航のプロフェッショナル人材」をテーマに採用を進める。既卒は機長と副操縦士、客室乗務員、業務企画職を採用予定で、企画職は運航管理と運航整備技術を優先して採用していく。8年ぶりとなる新卒は、客室乗務員と業務企画職を採用する見込み。拠点とする丘珠空港は、滑走路長が現在1500メートルだが、1800メートル程度の延伸を検討しており、ターミナルの拡張なども視野に入れている。HACは就航から四半世紀が過ぎたことで、地域の雇用拡大や活性化につなげていく。【Aviation Wire News】
5.ANAとJAL、米ベンチャーからSAF調達 伊藤忠と合意、25年以降導入
全日本空輸と日本航空は1月17日、代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」の供給について、伊藤忠商事)と米レイヴェンの2社と合意したと発表した。ANAはレイヴェンが米国で生産するSAFを、2025年以降に調達する見通し。レイヴェンは、植物系廃棄物や都市ごみから出るメタンガスから水素やSAFなどの燃料を製造する技術を持つベンチャー企業で、2024年初頭に水素製造プラントの商業運転開始を見込む。2025年には米カリフォルニア州でSAFの生産を目指しており、2034年までに欧米で年間20万トン規模の生産体制を構築する。伊藤忠商事は2021年8月に同社へ出資し、商業生産や販売で協業している。またANAと日本航空は、SAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を2022年3月2日に設立。日揮ホールディングス(1963)とレボインターナショナル(京都市)とともに、国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組んでいる。【Aviation Wire News】
6.宇宙気分が味わえる気球による高度30kmの成層圏の旅をHISが販売
エイチ・アイ・エス(HIS)は1月18日、宇宙ベンチャーの米Space Perspectiveが提供する気球型宇宙船「Spaceship Neptune(スペースシップ・ネプチューン)」の専用サイトを開設したことを発表した。Spaceship Neptuneは、高度約30kmの成層圏までの旅を楽しめる最大8名搭乗可能な高高度気球。宇宙飛行士のような特別の訓練を必要とせず18歳以上であれば誰でも参加可能で、約2時間をかけて上昇し、高度30kmを2時間浮遊、その後、2時間かけて降下するというスケジュールとなっている。販売を担当するのはHIS子会社のクオリタで、打ち上げは海洋宇宙港「ボイジャー」(海上)もしくはフロリダ州スペースコーストの陸上を予定。価格は1人あたり12万5000ドルで、別途1人あたり2万5000ドルの申込金(2022年12月時点での価格で変更される可能性あり)ならびに手配料金55万円も必要となっている。また、すでに世界各地から1000名以上の申し込みがあり、2024年分のフライト分は完売しているという。そのため、これから申し込んだ場合、2025年10月以降のフライトとなるという(予定されているフライトの1年前に、正確な前後の詳細が知らされる予定)。【マイナビニュース】
【Yahooニュース提供:高高度気球Spaceshipネプチューン想像図】