KIT航空宇宙ニュース2023WK14

IHIと秋田大学が航空機推進用高出力電動機の試作に成功
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK14

海外のニュース

1. ヴァージンの宇宙ベンチャー子会社が破産申請、打ち上げ失敗とSVB破綻が追い打ち

英国の富豪であるRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏のVirgin Group(ヴァージン・グループ)傘下にある宇宙ベンチャーのVirgin Orbit(ヴァージン・オービット)は4月3日、米国で破産申請を行った。ヴァージン・オービットは、Branson氏の宇宙旅行企業であるVirgin Galacticからのスピンオフとして、2017年に設立されたロケットベンチャー。同じVirgin GroupのVirgin Atlanticが保有していたBoeing 747を改良した「Cosmic Girl」を発射プラットフォームとし、空中発射ロケット「Lancher One」を発射する。米カリフォルニア州に拠点を持ち、2022年1月にNasdaq上場を果たしている。2021年に初めて衛星の軌道投入に成功、これまで33基の衛星を正確な軌道に乗せることに成功していた。一方で、1月に英国から初となる衛星打ち上げに失敗していた。BBCによると、元Virgin Galacticの社長Will Whitehorn氏は、英国での打ち上げ失敗後に新たな資金調達を模索していたところにSilicon Valley Bank(SVB)が破綻したことで、さらなる打撃を受けたと述べている。【Tech+ニュース】

【Virgin Orbit社提供】

2.インド再使用型ロケットの着陸実験に成功

インド宇宙研究機関 (ISRO) によると、再利用可能なロケット技術実証 (RLV-TD) プログラム実験機の構成は航空機の構成に似ており、ロケットの複雑さと複雑さを兼ね備えている。ISROは日曜日、チトラドゥルガのチャラケレにある航空試験場でRLV-TD)プログラムの着陸実験を成功裏に実施した。【Flightglobal News】

【インド宇宙研究機関提供:再利用可能なロケット技術実証 (RLV-TD) プログラムの着陸実験】

3.DHC-8-300、水素燃料電池で初飛行 三菱HCキャピタル出資の米ベンチャーUH2

三菱HCキャピタルが出資する米国の水素航空機関連のベンチャー企業ユニバーサル・ハイドロジェン(Universal Hydrogen、UH2社)が、水素燃料電池を主な動力源とした航空機では世界最大の座席数となる40人乗り規模のターボプロップ(プロペラ)機による初の試験飛行に成功した。初飛行した機体は、UH2が保有するボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-300型機。UH2によると、2基あるエンジンのうち、進行方向右側の第2エンジンにあたる1基を同社が手掛ける燃料電池式メガワット級パワートレイン(駆動装置)に換装した。米モーゼスレイクのグラント・カウンティ国際空港を現地時間3月2日午前8時41分に離陸し、15分間飛行して高度3500フィート(MSL)に到達したという。UH2は、水素航空機用の水素貯蔵カプセルや水素で駆動するパワートレインの開発を進めている。ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)が世界的な脱炭素の目標を掲げる中、水素はCO2(二酸化炭素)を排出しないクリーンエネルギーとして注目されており、UH2は2025年までに水素バリューチェーンを構築し、同社の技術で既存の航空機を改修して水素で飛行する「ゼロ・エミッション機」の商用運航を目指している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:モーゼスレイクを離陸する水素燃料電池に換装したUH2社のQ300型機】

4.Xwing が 100% 無人飛行技術の認証計画を提出

自律型航空機を開発しているXwing社は、「スーパーパイロット」技術の認定に一歩近づき、無人貨物輸送の開始に向けて一歩前進した。カリフォルニアに本拠を置くこのスタートアップ企業は、4 月6日、プロジェクト認証計画 (PSCP) を連邦航空局に提出したと発表した。この申請により、Xwing社の無人航空システム (UAS) は、標準カテゴリの耐空証明のために FAAのリソースを割り当てられた最初のものになる。「スーパーパイロット」システムは、貨物輸送用に設計されているが、既存の旅客機の安全基準に対してベンチマークされる。【Flightglobal News】

【XWing提供:自律型無人航空機を開発中のXWing社の試験機】

日本のニュース

1.羽田空港、グラハン会社等運航支援17社が合同説明会 4/16開催

羽田空港のグランドハンドリング(グラハン)会社など17社が参加する合同企業説明会が、4月16日に開催される。グラハンのほか保安検査や手荷物取扱会社など、運航を支える地上支援業務の各社が集う。参加費は無料。会場は羽田空港第1ターミナル6階ギャラクシーホール。午前10時から午後4時までで、受付開始は午前9時45分から。予約は不要だが、参加後にアンケートへの回答が必要となる。【Aviation Wire News】

2.IHIが航空機推進用高出力電動機の試作に成功

IHIは、秋田県立大学(学長:小林順一)、秋田大学(学長:山本文雄)、秋田県内の地元企業と共同で、航空機推進用250kW高出力電動機の試作に成功した。電気モーターは、電気ハイブリッド推進システムとして開発されている。モーターの出力は250kWで、乗用車用3リッターターボエンジンに匹敵する高出力を誇り、永久磁石と鉄心で構成されたモーターの心臓部はコンパクト設計。容量約3リットル。本開発は、秋田県立大学と秋田大学が共同で運営する電気建築共同研究センター(センター長:榊淳一)と、地方大学・地域産業創造事業費補助金による内閣府事業の連携によるものです。産業創造、IHI、秋田県内の地元企業向け。永久磁石を高密度磁石配列(ハルバッハ配列)に基づいて配置することで、磁石の利用効率を最大限に高め、高出力(高効率)・小型化・軽量化を実現。※永久磁石の特別な配置。一般的な磁石配置では、両側が同じ磁力ですが、配置の片側の磁力を高め、反対側の磁力をほぼゼロにすることで、磁石の利用効率を最大化する。今回の開発では、IHI が試作機の構造​​設計に協力し、ステーター(モーター部品の非回転部分)の製造上の問題を解決した。小型・軽量・高出力のモーターを実現するためには、ローターには磁石を高密度に配置して個々の磁石の反発力を高め、ステーターには高出力コイルを高密度に配置する必要がある。従来の製造方法では工業化が難しいとされていた多数のスロット(溝)に、IHIはコイルとコア(鉄心)の製造方法を開発することで、これらの問題を克服した。IHIは、2030年代の実用化を目指し、航空機の電動化に向けた電動ハイブリッド推進システムの開発に引き続き取り組むとともに、航空機システム全体の電動化と最適化にも取り組んでいる。【IHIニュース】

【秋田大学提供:250kWの大電力モーターの試作品】

3.JAC、バッテリー式GPU国内初導入 日産リーフのバッテリー使い環境負荷軽減

鹿児島空港を拠点とする日本航空グループの日本エアコミューター(JAC)は、奄美空港に環境負荷や騒音の軽減につながるリチウムイオンバッテリー式電源装置「eGPU」を国内の航空会社では初めて導入した。同社が就航する鹿児島県内の全就航離島に導入する。飛行機を空港に駐機中、次便の出発準備などで使う電力を供給するため、JACはこれまでディーゼルエンジン式の電源車両を移動式の「GPU(地上動力設備)」として使用してきた。3月22日から導入を始めたeGPUは、バッテリー式で使用時に排気ガスが発生せず、低騒音でエンジンによる振動もないため、消耗品や故障頻度が少ないことが特徴だという。JACが導入したのはデンマークのITW GSE製「7400 eGPU」で、多摩川エアロシステムズ(東京・大田区)が輸入代理店を務める。バッテリーは日産自動車の電気自動車「リーフ」のものを搭載しており、JACが運航する仏ATR製ターボプロップ(プロペラ)機のATR42-600型機(1クラス48席)とATR72-600(同70席)に電力を供給できる。【Aviation Wire News】

【JAC提供:奄美空港に駐機中のJACのATR42と導入したITW GSE製「7400 eGPU」】

4.羽田空港アクセス線、新駅は2タミ付近 東京駅から18分、31年度開業へ=JR東日本

JR東日本(東日本旅客鉄道)は4月4日、都心から羽田空港へ乗り入れる「羽田空港アクセス線(仮称)」の新線について、2031年度に開業すると発表した。当初の計画から2年遅れとなる。起工式を6月に開き本格的に着工し、羽田新駅は第2ターミナル付近への設置を計画する。アクセス線の開業により、東京駅-羽田空港間を乗換なしの約18分で結ぶ。【Aviation Wire News】

5.スカイマーク、整備士と旅客係員募集 24年度新卒採用

スカイマークは、2024年度入社の新卒採用の職種を追加した。整備士と地上旅客係員(グランドスタッフ)を新たに募集する。整備士の採用予定は20人程度。応募資格は、今年4月から2024年3月までの間に国内外の理系学部学科の4年制大学または大学院(修士課程)を卒業・修了見込みの人で、入社時に普通自動車運転免許を所持している人。免許はマニュアルが望ましいとしている。旅客係員は30人程度を採用予定。2024年3月に専門学校を卒業見込みの人と、今年4月から2024年3月までに国内外の2年制短大、4年生大学、大学院(修士課程)を卒業・修了見込みの人。両職種とも選考は書類、適性検査、面接などを予定している。これまで発表済みの職種も含めると、総合職(総合企画コース、技術企画コース、 ITコース)と整備士は4月7日からエントリーの受付を開始。自社養成パイロット訓練生候補、客室乗務員、旅客係員の受付開始時期は、学生向け就職情報サイトに掲載する。【Aviation Wire News】

6.萩・石見空港、高周波「鳥ソニック」でバードストライク対策検証

島根県の萩・石見空港で、バードストライク対策として鳥が近寄らないよう、高周波を発する装置「鳥ソニック」の試験運用が行われている。岡山理科大学教育推進機構ロードエコロジー研究室の辻維周(つじ・まさちか)教授がT.M.woks(山梨・南都留郡)と共同開発したもので、辻教授によると設置翌日から鳥の侵入がほぼなくなったという。鳥ソニックの原型となった装置は、シカなどの野生動物が道路で自動車にひかれて亡くなる交通事故「ロードキル」を防ごうと開発された「鹿ソニック」。動物が嫌がる高周波を発生させ、自動車に近づかないようにする装置で、T.M.woksが開発し、ロードキル対策を研究してきた辻教授が2018年から協力している。高周波を発する鹿ソニックと鳥ソニックのほか、低周波を使ったイノシシ用「いのドン」、クマ用「くまドン」も誕生している。萩・石見空港には、ターミナルビル屋上に鳥ソニックを3月14日に1基設置し、午前7時から午後7時まで運用。農地に飛来するカラスや、海苔(ノリ)の芽を食べてしまうカモ対策として開発したものを、バードストライク対策に転用できるかを検証している。鳥ソニックの電源はソーラーパネルで、高周波を出すスピーカーは1ユニット2個入りのものを4ユニット設置。有効距離は120度200メートルで、周波数12khzから15khzの高周波をランダムに発射する。辻教授は「設置型はどうしても(動物や鳥に)“音慣れ”が発生しますが、周波数や発射パターンを変更して対応します。人体やペットなどにも影響はないことを確認しています」と話す。【Aviation Wire News】

【岡山理大・辻教授提供:萩・石見空港に設置された鳥ソニック】