KIT航空宇宙ニュース2023WK42

自動運転車両「macniCAR-01」にドライブレコーダーを設置し滑走路面状況を撮影して、AI画像解析で路面の亀裂・損傷などを自動で検知するシステム
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK42

海外のニュース

1. スペインの「PLDスペース」、欧州初となる民間宇宙ロケットの打ち上げを実施

スペイン発のロケット・ベンチャー企業「PLDスペース」は2023年10月7日、欧州初の民間宇宙ロケット「ミウラ1」の打ち上げを実施した。宇宙空間には到達できなかったものの、目標としていた技術実証は果たした。同社はミウラ1をもとに、小型衛星の打ち上げを目的とした「ミウラ5」ロケットの開発も進めており、早ければ2025年にも初打ち上げに臨む。PLDスペース(PLD Space)は2011年に設立された、スペイン発のロケット・ベンチャー企業である。これまでに6500万ユーロ以上の投資を調達しており、150人以上の従業員を抱える。ミウラ1(Miura 1)は同社が開発したサブオービタル・ロケットで、約100kgのペイロードを載せ、最大高度150kmまで飛行できる能力をもつ。全長は12.7m、直径は0.7m、エンジンの推進剤にはケロシン(Jet A-1)と液体酸素を使う。また、姿勢制御用に窒素ガス・スラスターも装備する。ペイロードや機体は回収することができる。ただし再使用はできない。ミウラとは、スペインの有名な闘牛牧場のミウラ牧場から取られている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:「PLDスペース」による欧州初の民間宇宙ロケット「ミウラ5」の打ち上げ】

2. ついに打ち上げ! Amazonの衛星インターネット「プロジェクト・カイパー」

米Amazonは2023年10月7日、衛星インターネット・システム「プロジェクト・カイパー」の試作衛星2機の打ち上げに成功した。地球のまわりに3000機を超える衛星を打ち上げ、全世界にブロードバンドを送り届けることを目的としたもので、今回の試作衛星による技術実証を経て、2024年末から初期サービスを開始するとしている。衛星インターネットをめぐっては、イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXが「スターリンク」を運用し、すでに世界中にサービスを提供しているほか、米国内をはじめ世界各国で開発が活発になっている。Amazonの参入により、今後この分野での競争がさらに活発になりそうだ。現在、世界では約半数にあたる何十億人もの人々が、ブロードバンドにアクセスするのができない、あるいは難しい状況に置かれている。米国も例外ではなく、シアトルにあるAmazon本社から車で60分以内の場所でもインターネット接続が失われることがあるという。これにより、最新の情報や教育、医療など、さまざまな面で格差--デジタル・ディバイドが生じており、世界的な社会問題にもなっている。そこで、近年注目されているのが「地球低軌道コンステレーション」である。大量の衛星を地球低軌道(地球に比較的近い高度数百kmの軌道)に打ち上げ、地球を覆うように配備して運用することで、世界のどこでも高速・低遅延のインターネットを提供しようというものである。また、こうした人々にブロードバンドを提供できれば、AmazonのKindleやEchoなどといったサービスの利用者も増えることになり、大きなビジネスチャンスにもなる。Amazonにとってカイパーは、ビジネスと社会貢献の両面で大きな意義がある。【マイナビニュース】

【日本経済新聞提供:アマゾンが打ち上げた通信衛星「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」】

3. Rolls Royce Electrical社が重要なテスト段階に挑戦

ロールス・ロイス・エレクトリカル社は、3 つの主要プログラムの地上テストを開始し、年末に向けて準備を進めている。ロールス・ロイス社のネットワーク上の複数の場所にあるテストベンチ上には、タービン発電機システムの一部を形成する予定の新しい小型ガスタービン エンジンや、高度な地域エアモビリティ用途向けの電気モーターが載せられている。おそらく最も進んでいるのは新しい小型エンジン (NSE) で、その初期バージョンは 9月に運転を開始した。出力は約1,070shp(800kW)になるように設計されている。ロールス・ロイス・エレクトリカルの顧客ディレクター、マシュー・パー氏によると、その初は現在、ベルリン近郊のダーレヴィッツにある製造工場のテストスタンドから撤去され、検査のために分解されたという。10月18日にラスベガスで開催されたNBAAビジネス航空ショーでパー氏は、最初のエンジンはアイドリング状態にされただけだったが、「大量の騒音と排出ガスのデータ」が得られたと語った。現在、2台目のエンジンをテストベッドに設置する準備が進められており、「年末までにフルパワーで稼働する予定です」と彼は言う。このシステムの発電機のテストは来年始まり、2025年にタービンと組み合わされる予定で、テストは2026年まで続く予定。同時に、推進専門家はガスタービンの改良、材料とガスパスの最適化に取り組む予定である、とパー氏は言う。完全なシステムのサービス開始は2028年を目標としているが、ロールスロイスはまだローンチカスタマーを確保していない。ロールス・ロイスは最近、アーバン・エア・モビリティ(UAM)用途向けの最初のモーターの組み立てが完了し、空冷150kWダイレクトドライブ電気モーターのテストが今年後半にメーカーのミュンヘン電気研究所で開始されると発表している。【Flightglobal News】

【Rolls Royce提供:UAMアプリケーション向けのデモ用モーター】

4. Archer AviationがUAEアブダビで2026年にエアタクシー事業開始を計画

Archer Aviation Inc.は、2026年までにUAEで電動エアタクシーサービスを開始し、湾岸州に米国以外の初の工場を開設することに向けて取り組むことで、アブダビ政府との予備合意に達した。月曜日の声明によると、カリフォルニアの新興企業はエンジニアリングセンターを開設し、製造パートナーのステランティスと協力して現地生産を確立する予定だという。アブダビ投資事務所はこの取り組みを奨励金でサポートする。事前合意は、アブダビの投資部門ムバダラ・キャピタルからの支援を確保したことに続き、アーチャーと湾岸諸国との関係を深めることを目的としている。同社は、地元企業との提携を含め、さらなる提携に向けた交渉を進めており、ミッドナイト航空機を披露する11月のドバイ航空ショーで発表する予定だと述べた。同社は米国で電動垂直離着陸機(eV-TOL)を製造・運用するための連邦航空局の型式証明獲得に努める一方で、中東とアジアでの拡大を目標にしているため、この契約はアーチャーにとって初の国際提携となる。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:アブダビ政府との合意文書にサインするArcher Aviation】

5. 現代自動車グループのSupernal社とHoneywell社が、無人航空機用の地上管制ステーションを開発

米国Honeywellと韓国現代自動車グループのSupernalスーパーナルは、パイロットレスの高度航空モビリティ (AAM) 運用を可能にする地上管制ステーションを開発するための画期的な提携を発表した。この戦略的提携により、Supernalの飛行試験プログラムが強化され、リモートでパイロットが航空機を安全に監視および操作できると同時に、リアルタイムの航空機データにアクセスできるようになる。Honeywellの地上管制ステーションは、目視を超えた遠隔航空機操作を可能にするソフトウェア・ソリューションであり、開発航空機のテストを最大限に高め、将来のAAM市場を実現するために不可欠な機能です。Honeywellは、アビオニクスの開発における数十年の経験に基づいて、電動垂直離着陸機 (eVTOL) のテストを進めるSupernal社のニーズに応えるソリューションをカスタマイズする。オペレーターのニーズに応じて、Honeywellの地上管制ステーション技術は、一連のステーション全体で数百台、さらには数千台の無人航空機を管理できるように拡張できる。【Honeywell News】

【Supernal社提供:Supernal社が開発中のeVTOL無人試験航空機】

日本のニュース

1. 9月の訪日客、コロナ前ほぼ同等に回復 出国日本人、100万人超え2カ月連続

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2023年9月の訪日客数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前となる2019年同月比3.9%減の218万4300人で、コロナ前の実績近くまで回復した。200万人超えは4カ月連続。国・地域別ではメキシコが単月の最高記録となり、14市場で9月の過去最高を更新した。出国した日本人は42.6%減の100万4700人で、2カ月連続で100万人を突破した。JNTOが重点市場としているのは23カ国・地域で、4月分から北欧地域が加わった。月間の訪日客数は半数以上の市場でコロナ前を上回る回復となり、例年割れの市場もコロナ前の9割近くまで戻した市場が目立った。23市場のうち2019年同月を上回ったのは15カ国・地域で、このうちメキシコは単月の過去最高記録を更新。韓国、台湾、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、豪州、米国、カナダ、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧、中東の残り14市場では9月の過去最高となった。【Aviation wire news】

2. 南紀白浜空港、滑走路の点検自動化へ実証 ドラレコ撮影をAI解析、NECらと

南紀白浜空港を運営する南紀白浜エアポートは10月17日、滑走路の点検自動化に向けた実証実験を開始すると発表した。NECとマクニカ(横浜・港北区)の2社との共同実証で、路面の亀裂・損傷を自動運転技術とAI(人工知能)を活用し検知する。今回の実証実験では、マクニカの自動運転車両「macniCAR-01」にドライブレコーダーを設置し、滑走路を含む制限区域内を走行する。ドライブレコーダーで滑走路の路面状況を撮影し、NECが開発したAIで画像を解析。路面の亀裂・損傷などを自動で検知することで、人力のみに依存しないデジタル技術を活用した点検体制構築していきたい考え。実証実験を通じ、制限区域内を自動走行する際の知見や課題を抽出。運転者や保安要員が乗車しないレベル4相当の自動運転走行を実現するほか、自動走行して集めた映像データを遠隔で点検する「遠隔点検」など、スマートメンテナンスによる空港運用の効率化を目指す。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:自動運転車両「macniCAR-01」と画像解析結果】

3. ホンダ、次世代小型ビジネスジェット機の名称を「HondaJet Echelon」に決定

ホンダの航空機子会社である米ホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company:HACI)が、2023年6月に開発・生産を公表した次世代小型ジェット機の名称を「HondaJet Echelon」としたことを発表した。10月17日から19日まで、米国ネバダ州ラスベガス市で開催されている世界最大のビジネス航空機ショー「2023 ビジネス アビエーション コンベンション アンド エキシビション(2023 NBAA-BACE)」にてモックアップモデルを展示しているという。そんなHondaJet Echelonは現在、米国などでの型式証明取得に向けた開発計画として、2026年の初飛行を予定し、その機体開発を進めているとしている。独自の主翼上面にジェットエンジンを配置する構造を採用しているほか、自然層流翼型・ノーズ、コンポジット胴体を進化させることで、北米などで競合するライトジェット機と比べて20%程度、上位カテゴリの中型ジェット機と比べると40%以上の燃費向上を実現。ライトジェット機でありながらノンストップでの北米大陸の横断が可能だと説明する。また、乗員・乗客合わせて最大11名が搭乗でき、その客室は、長距離飛行に適した広いキャビン空間と優れた静粛性を実現しており、快適で高効率な移動を提供することで高い満足度を提供するとしている。なお名前に用いられた「Echelon」とは「梯形編隊飛行」を意味する言葉で、航空機では高効率な空力性能を実現する飛行パターンを意味しており、HondaJetの特長を表していること、ならびにプレミアムカテゴリを指す言葉としても使われることから、HondaJetブランドの最上級モデルという意味を込めたという。今後の製品化に向けてのスケジュールとしては、2024年半ばに初号機の製造を開始する予定としているほか、2026年に初テスト飛行、2028年に型式証明取得をそれぞれ予定するとしている。【マイナビニュース】

【ホンダジェット提供:「HondaJet Echeron」の想像図】