KIT航空宇宙ニュース2024WK04
海外のニュース
1. アラスカ航空、737MAX9運航再開へ FAAが検査手順承認、ボーイングの監視強化
アラスカ航空は現地時間1月24日、ボーイング737 MAX 9(737-9)の運航を早ければ26日から順次再開すると発表した。同社が運航する737 MAX 9のドアプラグが離陸直後に脱落した5日の事故後、FAA(米国連邦航空局)が同型機の検査整備指示書を24日に承認したことで、整備作業の準備が整ったため。アラスカ航空は、737 MAX 9(3クラス178席)を65機保有。点検には1機あたり最大12時間かかり、来週には全機完了する見通し。同社によると、耐空性が確認できた場合に限り、最初の数機を26日から定期便の運航に戻すという。FAAの要請により、2週間前に20機の予備検査を終えており、データはFAAに提供された。79機保有するユナイテッド航空(UAL/UA)も、28日までには運航を再開できる見込み。FAAが24日に承認した整備プロセスでは、1)特定のボルト、ガイドトラック、金具の点検、2)機体中央の左右にあるドアプラグと関連部品数十点の詳細な目視点検、3)ファスナーの増し締め、4)損傷や異常状態の修正の4点を、必要な作業として求めた。FAAのマイケル・ウィテカー長官は24日、「このプロセスで明らかになった品質管理上の問題が解決されたと我々が納得するまで、ボーイングからの生産拡大要請や、737 MAXの生産ライン増設の承認には応じない」との声明を発表。今回の運航再開で「ボーイングが通常通りのビジネスに戻ることはない」(ウィテカー長官)とクギを刺し、安全が確認された機体に対する運航再開は認めるものの、今回の事故機が2023年10月に引き渡されたばかりの新造機だったことや、ボーイングで品質問題が多発している事態を重く見た。ボーイングの生産体制に対するFAAの監視は強化され、1)737 MAXの生産拡大に上限を設け、説明責任と要求される品質管理手順の完全遵守を確保する、2)ボーイングが製造要件を遵守しているかを精査する調査の開始、3)ボーイングの全施設で立会いを強化し、新型機の監視を積極的に拡大する、4)リスクを特定するためにデータを綿密に監視する、5)品質管理と権限委譲に関する、安全に焦点を当てた潜在的な改革の分析を開始する、といった項目が加わった。【Aviation wire news】
【Bloomberg提供:左後方非常口が脱落したアラスカ航空の737MAX-9型機】
2. ArcherとNASAが「AAM業界を前進させる」ためにバッテリーテストで協力
Archer AviationとNASAは、バッテリーの性能と安全性に焦点を当てた初期プロジェクトで、先進的エアモビリティ(AAM)業界向けの将来の研究とテストに協力する予定。パートナーらは、米国が「今後数十年にわたって」航空宇宙産業におけるリーダーシップを維持するためには、Space Act協定を通じた協力が不可欠であると述べている。アーチャー社の「Midnight」電動垂直離着陸機(eVTOL)用に提案されているバッテリーセルの主要な高速X線試験は、スイスのジュネーブにある欧州放射線施設(ERSF)で行われる。NASAは「AAM業界全体を前進させるために」Archerのバッテリーセルとシステム設計をテストし、その結果を分野全体で共有する予定。【Flightglobal news】
【Archer Aviation提供:電動垂直離着陸機(eVTOL)「Midnight」】
日本のニュース
1. ANA、NCA子会社化を再延期 4月予定
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは1月25日、日本貨物航空の子会社化の予定日を4月1日に再延期したと発表した。国内外の関係当局による企業結合審査の完了までに要する時間などを勘案し、改めて延期したという。当初は2023年10月1日を予定しており、その後今年2月1日に延期。今回のNCA完全子会社化により、ANAHDの2025年3月期第1四半期(4-6月期)連結決算から貸借対照表と損益計算書を連結する予定で、2025年3月期以降の業績に与える影響は「精査中」としている。ANAHDによると「進捗はしているものの、調整に時間を要している」状況だという。ANAは、かつてNCAに27.59%出資していたが、2005年に全株式を日本郵船(9101)へ譲渡。欧米への貨物便を多く運航するNCAを傘下に収めることで、航空貨物事業を拡大する。 NCAの子会社化は簡易株式交換により実施し、株主総会の決議による承認を受けずに行う見通し。将来的にANAの貨物事業との統合・再編を目指す。ANAグループの貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)は、貨物専用機を11機運航。内訳は大型貨物機のボーイング777Fが2機、中型貨物機の767Fが9機で、2028年以降に次世代大型機777Xの貨物型777-8Fを2機受領する見通し。NCAは大型貨物機の747-8Fを8機運航中。過去に保有していた747-400Fは、他社へリースしている。また、NCAが自己株式として保有してた全部取得条項付種類株式の全7億9097万3000株は、8月25日付で消却している。【Aviation wire news】
2. JALのA350-1000就航 20年ぶり旗艦機刷新
日本航空は1月24日、新たな国際線フラッグシップとなるエアバスA350-1000型機を1路線目の羽田-ニューヨーク線に就航させた。当初は隔日運航で、2月2日から毎日運航する。約20年ぶりのフラッグシップ刷新で、ファーストクラスとビジネスクラスはJAL初のドア付き個室タイプとなった。コロナ後の旺盛な訪日需要を取り込むほか、日本発需要の活性化にもつなげる。A350-1000は、長距離国際線機材であるボーイング777-300ER型機の後継機。24日の初便に投入された初号機は、現地時間2023年12月11日にエアバスの最終組立工場がある仏トゥールーズで引き渡されて14日に出発し、羽田へ15日に到着した。就航前の整備作業は羽田で行われ、機体後部に赤い「A350-1000」ロゴが大きなデカールで描かれたほか、客室最前方のファーストクラス付近には金色の「鶴丸」ロゴが掲げられた。座席数は4クラス239席で、ファーストクラスとビジネスクラスはJAL初の個室タイプのシートを採用。ファーストが6席(1列1-1-1席)、ビジネスが54席(同1-2-1席)、プレミアムエコノミーが24席(同2-4-2席)、エコノミーが155席(同3-3-3席)の「X35」と呼ばれる座席配置になっている。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:JALのエアバスA350-1000型機】
3. ANA国内線、PWエンジン減便解消へ 787-10導入加速=24年度計画
全日本空輸グループは1月23日、2024年度の事業計画を発表した。国内線はエアバスA320neoファミリーのエンジン点検に伴う影響が段階的に解消し、7月下旬以降はほぼ全便運航となる見通し。また400席超のボーイング787-10型機の国内線導入を加速し、羽田発着の幹線を中心に投入する。エンジン点検はA320neoファミリー全33機に搭載するに搭載する米プラット&ホイットニー(PW)製エンジン「PW1100G-JM」が対象で、1月から3月までに国内線・国際線合わせて22路線2412便、1日あたり約30便を減便。影響は段階的に解消する見通しだという。国内線仕様の787-10の座席数は2クラス429席で、プレミアムクラス28席、普通席401席。大型機の777-200ERの置き換えを進めてCO2(二酸化炭素)排出量の削減につなげていく。777-200ERは2クラス405席仕様(プレミアムクラス21席、普通席384席)と同392席仕様(プレミアムクラス28席、普通席364席)の2種類で、777と比べて提供座席数が増え、約25%の燃費改善が見込まれる。国内線機材では、500席を超える777-300(2クラス514席:プレミアムクラス21席、普通席493席)に次ぐ座席数となる。787-10は当初、2023年度に4機導入する計画だったが、受領が遅れている。ANAによると2023年度は数機導入し、2024年度から本格導入するという。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:ANAのボーイング787‐10型機】
4. 国交省と資源エネ庁、SAF活用へ「空のカーボンニュートラル」シンポ2月開催
国土交通省と経済産業省資源エネルギー庁は1月22日、代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ、持続可能な航空燃料)」への理解促進や利用拡大を目的に「空のカーボンニュートラル」シンポジウムを2月に開催すると発表した。2023年2月に続き2回目の開催で、今年度は「SAFの環境価値の見える化」がテーマ。航空の物流を中心に、自社の事業活動に関連する他社の温室効果ガス排出「Scope3(スコープ3)」をはじめとした国内外の脱炭素化を取り巻く最新情勢や、企業の取組状況、今後の課題などをさまざまな業界を交えて議論し、SAFの利用拡大につなげていくための方策を考えていく。世界の航空業界は、2050年までにCO2(二酸化炭素)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現を目指しており、SAFは有効な対応策とされている。一方で、SAFの生産は廃食用油の収集といった原料の調達や生産規模の拡大など、さまざまな課題を克服しなければならない。日時は2月21日午後1時から午後5時まで。場所は東京・内幸町の飯野ビルディング4階イイノホール&カンファレンスセンタ-Room Aで、定員約300人、YouTubeによるライブ配信も実施するハイブリッド開催となる。参加は無料だが事前登録が必要となる。期限は会場参加が2月16日午後5時まで、オンラインが20日午後5時までで、特設サイトから申し込む。【Aviation wire news】
【Aviation Wire提供:「空のカーボンニュートラル・シンポジウム」ポスター】
5. JAC、パイロット職業体験会2/3開催
日本エアコミューター(JAC/JC)は、職業体験「エアラインパイロットという進路選択」を拠点の鹿児島空港で2月3日に開催する。パイロットを含む航空業界に興味がある15歳以上35歳未満の人が対象。現役パイロットが、航空管制や気象座学体験などを通じてエアラインパイロットの仕事や必要な知識を説明。実機の見学、進路相談などを実施し、昼食はパイロットが食べている弁当を提供する。料金は税込1万500円で、事前振込。会場までの交通費は各自の負担となる。定員は15人で、応募多数の場合は先着順。時間は両日とも鹿児島空港内に午前10時10分集合、午後4時30分まで。申し込みは電子メールで、参加者の名前・生年月日・住所、連絡先の携帯電話番号とメールアドレス、参加希望日を記載し、 JACパイロット職業体験係(jac-pljobtaiken[アットマーク]jal.com)まで。18歳未満の場合は保護者の同意が必要になる。【Aviation wire news】
6. スペースワン、カイロスロケット初号機の打ち上げ予定日を3月9日に設定
キヤノン電子などが出資するロケットベンチャーのスペースワンは1月26日、同社が開発を進めている小型ロケット「カイロス」の初号機の打ち上げ予定日を3月9日に設定したことを明らかにした。打ち上げ場所は同社が整備を進めてきた和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」。打ち上げ予定時刻は同日11:00~12:00ころとしており、打ち上げ予備期間としては3月10日~31日までが設けられている。なお、射場内に見学場所はないことに注意する必要がある。また、同社では当日は射場の周辺は交通渋滞が予想されること、ならびに交通規制も検討されていることなどといった注意喚起を行っている。【マイナビニュース】
【スペースワン提供:小型ロケット「カイロス」の概要】
7. JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」、ピンポイント着陸に成功 – 月面で撮影した画像も公開
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月25日、1月19日~20日に行われた小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸降下運用の結果や得られた成果に関する記者会見を開催し、SLIMが月面への着陸および地球との通信を確立し、主ミッションであった100m精度でのピンポイント着陸に成功したことを報告するとともに、同実証機に搭載されたマルチバンド分光カメラ(MBC)が撮像した月面画像を公開した。そして会見では、探査機の電源をオフにするまでに取得した各データの分析を行った結果、SLIMが当初の目標着地地点から東側に55mほどの位置で月面に到達していることが確認できたとした上で、運用に関する分析結果が報告された。SLIMの月面着陸シーケンスにおいては、高度50m付近までの運用は正常に進行し、特に14回実施された画像照合航法については、その航法結果も含め正常であったという。またピンポイント着陸性能を示す障害物回避マヌーバ開始前(高度50m付近)の位置精度としては、10m程度以下であったと評価しているといい、今後詳細データの評価は継続する必要があるものの、SLIMの主ミッションであった100m精度のピンポイント着陸の技術実証が達成できたとしている。しかしながら、SLIMの着陸時の姿勢が正常でなかったなどの理由から、2段階着陸については技術実証に至らなかったとのこと。その要因については、高度約50m時点で障害物回避マヌーバを開始する直前に、2基搭載されているメインエンジンのうち1基の推力が失われた可能性が高いとする。現状の分析では、エンジン脱落後にはSLIM搭載ソフトウェアが自律的に異常を判断し、徐々に東側へと移動するSLIMの水平位置をなるべく保つよう制御しながら、降下を継続し着陸したと予想されるという。またSLIMは着陸後の約45分間にわたって、MBCによる月面観測運用を実施。探査機の送信機温度が動作保証温度を超過しないよう、当初予定されていた35分程度の観測を15分に短縮し、結果として257枚の撮像・ダウンリンクに成功したとする。なお今回の観測運用により得られた画像は、JAXAより公開された。【マイナビニュース】
【Yahooニュース提供:月面探査機「SLIM」が月面着陸後撮影した月面写真】