KIT航空宇宙ニュース2024WK02

JAXAと清水建設が「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」の枠組みのもと共同研究を進めている金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK02

海外のニュース

1.大韓航空、機内安全ビデオに仮想キャラ 世界初バーチャルヒューマン採用

大韓航空は機内安全ビデオを刷新し、現地時間1月4日から放映を開始した。新しい機内安全ビデオにはCGで制作した仮想キャラ「バーチャルヒューマン」が登場し、仮想空間で機内の安全規則を紹介する。同社によると、安全ビデオにバーチャルヒューマンが出演するのは世界初だという。出演するバーチャルヒューマン「Rina(リナ)」と、4人組のバーチャルガールズグループ「MAVE:(メイブ)」。大韓航空によると、乗客は年齢層や文化背景が多様なことから、安全ビデオにバーチャルヒューマンを登場させることで注目を集めたい、としている。【Aviation wire news】

大韓航空、機内安全ビデオに仮想キャラ 世界初バーチャルヒューマン採用

【Aviation wire提供:大韓航空で機内ビデオに採用された仮想キャラ「バーチャルヒューマン」】

2.737MAXドアプラグ脱落、FAAが緊急耐空性改善命令 ユナイテッド機もボルト緩み

FAA(米国連邦航空局)は現地時間1月8日(日本時間9日)、アラスカ航空が運航するボーイング737 MAX 9のドアプラグが離陸直後に脱落した事故を受け、緊急耐空性改善命令(EAD:Emergency Airworthiness Directive)を承認した。EADの対象は737 MAX 9。アラスカ航空では事故機以外にも一部の機体で問題が見つかったほか、ユナイテッド航空の同型機でもボルトの緩みが事故後の検査で発見された。事故機では、航空会社仕様により非常口ドアとして使用されるドアプラグが離陸時に脱落し、機内で急減圧が起きた。EADでは、ドアプラグ脱落により、乗客および乗員の負傷、ドアの機体への衝突、機体が制御不能につながる可能性を指摘。該当するすべての是正措置が実施されるまで、対象機は飛行禁止とした。事故は5日に米オレゴン州のポートランド国際空港で発生。アラスカ航空のオンタリオ行きAS1282便が離陸直後、後方左側の窓を含むドアプラグ脱落した。乗客171人と乗員6人の計177人はポートランドへ無事戻り、重症者はなかった。事故を調査しているNTSB(米国家運輸安全委員会)は会見で、乗客が客室乗務員の指示を守り、シートベルトを着用していたことが奏功したと指摘している。日本国内では、同型機を運航している航空会社はなく、737 MAXを今後導入する社でも737 MAX 9を発注したところはない。【Aviation wire news】

【Flightglobal提供:飛行中外れた737MAX9の胴体中央Plug-in非常用脱出Door】

3.24年版「安全な航空会社」日系2社ランクイン 首位はニュージーランド航空=豪情報サイト

航空会社を評価する情報サイト「エアライン・レーティング」(AirlineRatings.com、豪州)は、2024年版の「最も安全な航空会社」上位25社を発表した。首位はニュージーランド航空(ANZ/NZ)で、2年ぶりにトップを奪還した。全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)の日本の大手2社も上位25社にランクインし、ANAが7位、JALが20位となった。2位はカンタス航空(QFA/QF)で、前年のトップから順位を1つ下げた。3位はヴァージン・オーストラリア(VOZ/VA)、4位はエティハド航空(ETD/EY)、5位はカタール航空(QTR/QR)がランクインした。エアライン・レーティングのジェフリー・トーマス編集長は上位25社について、安全性、革新性、新機材の投入で最先端を行く航空会社で、いずれも業界で傑出した存在だと説明。各社とも安全性には差がほとんどなく、特に首位のニュージーランド航空と2位のカンタス航空の差は「信じられないほど僅差」(トーマス編集長)だったという。【Aviation wire news】

4.GKN、5,000万ポンドの投資で3Dプリンティング事業を強化

GKN Aerospace 社は、Trollhattan, Swedenにある自社施設に £50Mill (US$63.5Mill) を投資し、additive manufacturing capability(含む、工場、機械、技術開発、新製品の開発)を強化した。今回投資された3Dプリンティング技術は2024年後半に稼働し、約150人の雇用が創出される予定だという。 総投資額のうち約 £12Millは、Swedish Energy Agency’s Industriklivet initiativeによって提供される。同工場では、2023年後半より、P&W製PW1500G Engine用のadditive-manufactured fan case mount ringsの連続生産を開始した。 同製造に3D printing技術を採用することでコンポーネントごとに必要な材料が 72% 削減され、CO2 排出量が 6.5 トン削減に寄与する。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:3Dプリンターで製造されたPW1500Gエンジン用Fan Case Mount Ring】

5.Joby Aviationがエアタクシー用充電ステーションを南カリフォルニアに設置する計画を発表

デイトンで電気エアタクシーの建設を計画しているJoby Aviationは、カリフォルニア州オレンジ郡に初の電動エアタクシーの充電インフラを設置する契約に署名したと発表した。ジョビー・アビエーション社は月曜日、プライベートジェットを運航するクレイ・レーシー・アビエーション社との契約を発表した。充電ステーションはカリフォルニア州オレンジ郡のジョン・ウェイン空港に建設される予定。充電器は、Joby がGlobal Electric Aviation Charging System (GEACS)と呼ぶもので、カリフォルニア州マリーナにあるジョビーの飛行試験センターとエドワーズ空軍基地で使用されており、ジョビーのバッテリー駆動飛行艇を含め、現在開発中のすべての電動航空機をサポートしていると同社は述べた。【Dayton Daily News】

【Flightglobal提供:JObyAviation社のeVTOL機】

6.フラップ・ラダー置き換える実証機X-65 ボーイング系オーロラ、25年初飛行へ

ボーイング傘下のオーロラ・フライト・サイエンスは、米国防総省・国防高等研究計画局(DARPA)の「CRANE(Control of Revolutionary Aircraft with Novel Effectors)」プログラム向けに実証機「X-65」の製造を始めた。2025年夏の飛行試験を目指す。X-65は、戦術速度での飛行制御や飛行エンベロープ全体にわたる性能向上など、複数の効果を目的とした「AFC(アクティブ・フロー・コントロール)」の試験と実証を目的に設計。AFCシステムは、複数の主翼スイープを含むすべての飛行面に埋め込まれた14個のAFCエフェクターに加圧空気を供給する。X-65は、交換可能なアウトボード翼と交換可能なAFCエフェクターを特徴とするモジュール式に構成されており、将来的にAFCの設計を追加するテストが可能だという。オーロラによると、AFCテクノロジーは現在ほとんどの航空機の操縦に使われている既存のフラップやラダーに取って代わる可能性を秘めている。AFCは、空気力学、重量、機械的な複雑さなどの分野で利点をもたらす可能性があるとしており、X-65はAFCの利点を民間と防衛の両分野で実証するために設計された。現在、ウェストバージニア州とミシシッピ州にあるオーロラの施設で、翼幅30フィート(約30メートル)の未搭乗Xプレーンの部品金型製作と部品加工が進められている。計画では、ウェストバージニア州の施設で機体を製造し、バージニア州マナッサスのオーロラ本社でシステム統合と地上試験を計画している。製造工程は、オーロラとボーイングが担う。設計概念化、予備設計、詳細設計、風洞試験、AFCシステム試験など、3年間の作業を経て行われる見通し。マッハ0.7までの速度で、7000ポンド(約3.2トン)の実物大X-65の飛行試験を目指す。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:オーロラ・サイエンス社のAFC実証機「X-65」】

7.NASAとロッキード・マーチンがX-59静音超音速航空機を公開

NASAとロッキード・マーティンは金曜日、同局の静音超音速航空機X-59を正式にデビューさせた。NASAは、この他に類を見ない実験用飛行機を使用して、航空旅行に革命をもたらす可能性のあるデータを収集し、音速を超える速度で飛行できる新世代の民間航空機への道を開くことを目指している。X-59はNASAのクエストミッションの中心となっており、規制当局が陸上での商用超音速飛行を禁止する規則を再検討するのに役立つデータを提供することに重点を置いている。50年にわたり、米国およびその他の国は、地上のコミュニティに大きなソニックブームが引き起こす混乱を理由に、そのような飛行を禁止してきた。X-59は音速の1.4倍、つまり時速925マイルで飛行すると予想されている。その設計、形状、技術により、航空機はより静かな衝撃音を生成しながら、これらの速度を達成できるようになる。ロールアウトすると、クエスト・チームは初飛行に備えて次のステップ、つまり X-59 の統合システムテスト、エンジン作動、タクシーテストに移行する。同機は今年後半に初めて離陸し、その後初の静かな超音速飛行が予定されている。クエストチームは、同機をカリフォルニア州エドワーズにあるNASAのアームストロング飛行研究センターに移送する前に、スカンクワークスでいくつかの飛行試験を実施し、そこが活動拠点となる予定である。【NASA】

【ロッキード・マーチン・スカンク・ワークス提供:NASAの静かな超音速研究機X-59】

8.Supernal、第2世代eVTOLエアタクシーをデジタル技術見本市CESで発表

韓国自動車メーカーのヒュンダイの電気航空機スピンアウト会社のスパーナル社は、「高度なエアモビリティのゴールドスタンダードを確立する」と信じているeVTOLエアタクシーの設計をCESで発表した。スーパーナル社は、新しい機体構造に基づいて構築されたS-A2 プロトタイプを展示した。ヒュンダイ/ウーバー初のeVTOLデザインであるS-A1がCES 2020で披露されてから4年が経ち、S-A2が量産モデルに向けて進めている新しい5人乗りのモデルである。S-A2 は、元の機体をいくらか簡素化している。S-A1は翼の推進ポッドとV尾翼の先端に配置された傾斜プロペラと固定リフトプロペラの寄せ集めを使用していたが、新しいモデルは尾部プロペラを完全に取り除き、代わりに8つの傾斜ローターを使用し、すべて主翼のポッドから吊り下げられている。前列は上向きに傾き、後列は下向きに傾いているため、巡航飛行のために水平方向に移動すると、前列がPullerになり、後列がPusherになる。後列のプロペラ全体が前方のプロペラからの加速された空気流を受けることになるため、これが効率にどのような影響を与えるのか疑問だが、彼らは想定済みと考えている。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:CESで公開されたSupernal社のeVTOL機「S-A2」】

日本のニュース

1.国交省、離陸順序「No.1」当面停止 羽田事故で緊急対策

国土交通省は1月9日、羽田空港で2日に発生した海上保安庁機と日本航空(JAL/JL、9201)機の衝突事故を受け、「航空の安全・安心確保に向けた緊急対策」をとりまとめたと発表した。対策は、1)管制機関及び航空事業者等への基本動作の徹底指示、2)管制官による監視体制の強化、3)パイロットによる外部監視の徹底、視覚支援、4)滑走路進入に関するルールの徹底、5)関係者間のコミュニケーションの強化の5点を柱とした。このうち「管制官による監視体制の強化」については、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員の配置を羽田では6日から実施し、レーダーが設置されている成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の6空港は順次実施を予定している。「滑走路進入に関するルールの徹底」は、滑走路進入に関する管制用語のパイロットへの周知徹底を8日に実施。滑走路進入は「Cleared for take-off(離陸支障ありません)」「Cross runway(滑走路横断支障ありません)」「Line up and wait(滑走路に入って待機してください)」「Taxi via runway(滑走路を地上走行してください)」「Backtrack runway(滑走路を離着陸方向と反対に地上走行してください)」のみとした。これらの許可や指示を受けた場合は確実に復唱するとし、内容に疑義が生じた場合は管制官に確認するよう周知した。滑走路進入に関する管制指示の更なる明確化として、航空機の離陸順序を示す「No.1」「No.2」などの情報提供を当面停止する。また、滑走路周辺の走行に関する要注意事項の航空事業者等への周知徹底を羽田は月内に実施予定で、新千歳・成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の各空港は順次実施を予定している。「関係者間のコミュニケーションの強化」は、管制官とパイロットの交信に関する緊急会議を羽田は月内に実施予定。管制官による管制指示・許可の言い間違いや、パイロットによる聞き間違いにより発生するリスクの低減を図るもので、誤解を招きやすい用語や改善点などを検討する。新千歳・成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の各空港も順次実施を予定している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:2日に羽田空港で海保機と衝突炎上したJAL機(A350型)の残骸】

2.JAXAと清水建設、ロケット液体燃料タンク製造技術の研究を次のステージへ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と清水建設は1月10日、JAXAの「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」の枠組みのもと共同研究を進めている「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関して、将来の大型タンクへの適用に向けサブスケール供試体の試作に向けた検討を開始することを発表した。JAXAの革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム(以下、JAXAプログラム)では、宇宙開発に関する日本の政策に基づき、国が主導する次期基幹ロケットの初号機打上げを2030年ごろに、民間が主導する新たな宇宙輸送システムの実用化を2040年ごろに実現することを目標として、システム技術や要素技術の研究開発が進められている。今回の共同研究は、次期基幹ロケットや民間主導による新たな宇宙輸送システムに向け、ロケット構造の抜本的な低コスト化を実現するため、清水建設が保有する金属積層造形(以下、AM)の一種であるアーク溶接による溶接ビードをロボットアームにより積層することで立体的な造形を達成する技術「Wire-Arc Additive Manufacturing(WAAM)」と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンクなどの大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指していく。2022年7月にJAXAプログラムの第2回研究提案募集の課題解決型研究として採択されて以来、小型部分要素試作により板厚や造形速度、品質、造形品の機械的特性の評価・実証などが行われてきた。そうした中、ロケットの燃料タンクなどの大型構造体は金属組立構造が基本となっており、部品点数が多く加工・組立工数が嵩むため、ロケット構造の高コスト要因の1つとなっていることが課題だったという。そのため、宇宙輸送システムの抜本的な低コスト化を実現するべく、ロケット大型構造/液体燃料タンクの製造にAMを適用し、材料費・加工/組立費を大幅に低減することが目指されている。【マイナビニュース】

【清水建設提供:金属積層技術で製造されたロケット液体燃料タンク】