KIT航空宇宙ニュース2024WK05

月面探査ロボ「SORA-Q」が撮影した月面探査機「SLIM」(逆さまに、なっているのが良くわかる)
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK05

海外のニュース

1. ボーイング、5年連続最終赤字 民間・防衛で圧縮も納入一時停止響く=23年通期

ボーイングが現地時間1月31日に発表した2023年通期決算は、純損益が22億4200万ドル(約3290億円)の赤字(22年通期は50億5300万ドルの赤字)で、赤字幅は縮小したものの通期として5期連続の最終赤字となった。民間航空機部門と防衛・宇宙・セキュリティ(BDS)部門でそれぞれ赤字幅が縮小したものの、一時的な納入停止や製造コスト増などにより赤字を計上した。売上高は17%増の777億9400万ドル、営業損益は7億7300万ドルの赤字(同35億1900万ドルの赤字)、年金や退職金給付の経費を除外した中核営業損益は18億2900万ドルの赤字(同46億6200万ドルの赤字)だった。【Aviation wire news】

2.ローガンエア、2027年までに水素アイランダー便の運航を目指す

英国の地域航空会社ローガンエアは、クランフィールド・エアロスペース・ソリューションズ(CAeS)との新たな契約に基づき、2027年までにオークニー諸島のカークウォール基地から水素燃料電池を搭載した航空機を運航したいと考えている。両社間の覚書(MoU)に基づく「戦略的提携」により、CAeSが開発中の水素燃料ブリテン・ノーマンBN-2アイランダーの運用開始を確実にするために両パートナーが協力することになる。ローガンエアは、協定の「具体的な目標」は、2027年までに「世界初の水素電気ブリテン・ノーマンBN2・アイランダー号をオークニー地域内で運航する」ことであると述べている。航空会社は航空機の供給元を明らかにしていない。この覚書に基づいて対処されるトピックには、運用要件と設計、標準と規制、インフラストラクチャ開発、および利害関係者の関与が含まれる。CAeSは、2026年までにアイランダーの燃料電池パワートレイン転換を認証したいと考えている。英国政府の資金提供によるプロジェクトの一環である実証機の初飛行は、今年後半に予定されている。【Flightglobal News】

【ローガンエア提供:オークニー諸島間で運航されているローガンエアの9人乗りアイランダー機】

3. 中国のEHangがeVTOL機の価格を240万元と初めて明らかに

中国のアーバンエアモビリティ企業EHangは、新たに認定されたEH216-S電動垂直離着陸(eVTOL)航空機の希望小売価格を公表し価格情報が初めて公開された。 広州に本拠を置く同社は、旅客機EH216-Sが4月1日から中国で、1台当たり240万人民元(約33万8000ドル、約5000万円)近くで販売されると発表した。EH216-Sは2023年10月に中国の認証を獲得した。約2か月後、プログラムは耐空証明書を受け取り、最初の納入を開始できるようになった。EH216-S は、パイロットレスでバッテリー駆動の eVTOL機で、2人の乗客を運ぶことができる。EHangは、低空観光や都市観光などのさまざまなミッションに対するEH216の能力を宣伝してきた。中国以外では、同社はインドネシアやマレーシアを含むアジアの顧客から注文を獲得している。【Flightglobal news】

【EHang提供:eVTOL機「EH16-S」】

日本のニュース

1. ANAのDash8、伊丹で翼端同士接触 松山行きと福岡発

伊丹空港で2月1日午前10時すぎ、全日本空輸の伊丹発松山行きNH1637便(デ・ハビランド・カナダDash 8-400〔旧称ボンバルディアQ400〕)と、福岡発伊丹行きNH422便の右翼端同士がスポット(駐機場)で接触した。乗客乗員にけがはなく、NH1637便は機材を変更し、定刻から1時間26分遅れの午前11時31分に再出発した。接触したのは、いずれもANAウイングスが運航するターボプロップ(プロペラ)機のDash 8-400。スポットを出て一時停止していたNH1637便と、着陸後にスポットへ進入してきたNH422便の右翼端同士が接触した。接触した原因は現在調査中で、1日はこの影響で伊丹発着10便が欠航。ANAの出発と到着5便ずつが欠航した。今年に入ってから、空港内での航空機衝突事故はこれが3件目。【Aviation wire news】

2.トキエア、丘珠からも出発 週4日運航でスタート

新潟空港を拠点とするトキエアは1月31日、1路線目の新潟-札幌(丘珠)線を開設した。約2年遅れの商業運航開始で、当面は週4日運航で1日あたり2往復し、週7日へ増便を経て2路線目の新潟-仙台線就航を目指す。トキエア初便の新潟発丘珠行きBV101便(ATR72-600)は、乗客71人(幼児なし、社員3人含む)と乗員4人(パイロット2人、客室乗務員2人)の計75人を乗せ、新潟空港を定刻より7分遅れの午前9時37分に出発し、丘珠空港には定刻の午前11時10分に到着した。機材は仏ATR製ATR72-600型機(1クラス72席)。初便は乗員編成外で乗る客室乗務員の教官や整備士ら社員3人分の座席を除いた69席を販売し完売したが、購入者のうち1人は搭乗しなかった。折り返しの丘珠発新潟行きBV102便は、乗客48人(幼児なし)と乗員4人(同)の計52人を乗せて午後0時1分(定刻午前11時50分)に出発。午後1時47分(同午後1時35分)に新潟へ戻った。新潟-丘珠線の運航日は、就航初日の31日を除き、月曜と金曜から日曜の週4日で、1日あたり2往復4便。運航スケジュールは、1往復目の丘珠行きBV101便が新潟を午前9時30分に出発し、午前11時10分に着く。折り返しの新潟行きBV102便は午前11時50分に丘珠を出発して午後1時35分に着く。2往復目の丘珠行きBV103便は午後2時15分に新潟を出発し、午後3時55分着。新潟行きBV104便は午後4時35分に出発して午後6時20分に到着する。2機あるATR72-600は、1機を当面予備機として使う。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:丘珠空港を離陸するトキエアの新潟行き初便のATR72-600型機】

3.防衛装備庁、シンガポール航空ショー出展 国内13社と情報発信

防衛装備庁(ATLA)は、2月20日に開幕するシンガポール航空ショーに出展する。アジア最大級の航空ショーに出展することで、日本の装備品の魅力や高い技術力を発信するという。防衛装備庁のブースには、民間企業13社が展示。一部の小型航空機部品などを除き、模型やパネルなどを展示するという。川崎重工業はP-1やC-2、ターボファンエンジン、SUBARUはUH-2、日本電気(NEC)は移動式警戒監視レーダ、移動式タカン、移動式ラプコン、沖電気はコックピットディスプレイ、日本無線は可搬型LTE基地局システム、旭金属工業(京都市)は航空機複合材部品、EdgeCortix(東京・中央区)はエッジAI推論プロセッサ、クリモト(愛知・岩倉市)は3D金属造形エンジン部品、ジュピターコーポレーション(東京・港区)は軌道衛星ユニット2型、スカパーJSAT(東京・港区)は衛星通信サービス、タカギスチール(名古屋市)は航空機向け金属材料、日本特殊光学樹脂(東京・板橋区)は特殊レンズとミラー、ミツフジ(京都・相楽郡)は電磁波シールド、リストバンド型ウェアラブルデバイスをそれぞれ展示する。期間は2月20日から23日までで、場所はチャンギ・エキシビション・センター。【Aviation wire news】

【Yohooニュース提供:シンガポールエアショーでレンジされる防衛装備庁ブース】

4.SLIMは10m精度の超ピンポイント着陸に成功! SORA-Qからは歴史的な画像も!!

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月25日、小型月着陸実証機「SLIM」に関する記者会見を開催、19日~20日に実施した月面着陸の結果や成果を報告した。注目のピンポイント着陸は、目標を大幅に上回る精度10mを達成。また分離した2台のローバーの動作も確認され、日本初の月面着陸と同時に、日本初の月面走行も実現したという。SLIMの実際の着陸地点は、当初の目標位置から、東側に55m程度離れた場所だと推測されている。ピンポイント着陸のキー技術は、画像照合航法である。高精度に着陸するためには、まず自分が今どこにいるのかを、高精度に知る必要がある。通常、自己位置は機内のIMUからのデータで計算するが、これは相対的なもののため、時間経過とともに誤差が累積する。画像照合は、地形という絶対的なものを指標にし、誤差をリセットする役割がある。今回の着陸では、降下開始前に3カ所、前半の動力降下フェーズで2カ所、後半の垂直降下フェーズで2カ所の計7カ所で、画像照合を実施。いずれも正常に完了し、自己位置の補正を行った。地上側でも同じ画像から自己位置の推定を行い、異常時には支援することも考えていたそうだが、全て正確だったという。高度50mではホバリングを行い、降下を一旦停止。このときに地表を2回撮影し、画像認識で危険な岩などを検出、東南東に11.8m離れたポイントを、安全な着陸地点として、新たに設定した。SLIMはこれを全て、自律的に行っている。この高度50mでの誤差は、撮影画像から判断できるが、これは1回目の画像で3.4m、2回目の画像で10.2mだった。この結果から、JAXAは精度を「10m程度以下」と評価。ただし、2回目は後述のエンジントラブルの影響があったと推測されており、SLIMの実力としては、「3~4m程度」だった可能性が高いという。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:月面探査ロボ「SORA-Q」が撮影した月面探査機「SLIM」】