KIT航空宇宙ニュース2024WK20

エアバスが構想している水素エネルギー推進航空機への空港における水素燃料供給想像図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK20

海外のニュース

1.スイス、777全機に“サメ肌”フィルム 空気抵抗減で燃費改善

スイス インターナショナルエアラインズは、燃費を改善するフィルム「AeroSHARK(エアロシャーク)」を長距離機材のボーイング777-300ER型機全機に導入した。サメの肌をモチーフにしたフィルムで、飛行中の空気抵抗減少させることで燃費を改善し、CO2(二酸化炭素)削減につなげる。AeroSHARKは50マイクロメートル(1000分の50ミリ)の「リブレット」を備えた特殊フィルムで、気流の方向に合わせてリブレットを配置することで、サメの皮膚を再現。機体胴体とエンジンナセルに装着し、飛行中の空気抵抗を約1%減少させる。ルフトハンザ ドイツ航空を中核とするルフトハンザ・グループの整備会社ルフトハンザ・テクニークと、化学薬品・塗料メーカーの独BASFの2社が共同開発した。スイスは現時点で、AeroSHARKを777のみに導入している。同社の777-300ERは12機あり、5月初旬に12機目(登録記号HB-JNF)にフィルムを装着。1機目は2022年10月に導入しており、約1年半で12機への導入を完了した。2023年は燃料を2200トン以上削減でき、約7100トンのCO2排出削減にもつながった。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:スイス・インターナショナルの777型機】

2.エアバス主導の水素プロジェクトで計画されている給油の実証実験

エアバスは、欧州のいくつかの空港で小規模で新しい燃料の地上取り扱い業務を実証するため、新しい水素の取扱いおよび燃料補給プロジェクトを主導する予定である。EUが支援するこのプロジェクトには、ヨーロッパ全土の水素専門家や学術パートナーも参加している。このプロジェクト「GOLIAT構想」はEUから総額1,080万ユーロ(1,170万ドル)を受け取り、4年間実施され、2027年にヴァンシ空港運営のリヨン・サンテグジュペリでの水素航空機デモンストレーションを行うことになっている。このプロジェクトの目標は、大流量液体水素 (LH2) の取り扱いおよび燃料補給技術を開発し、空港運営に安全かつ確実に使用できる方法を実証することです。計画されている活動には、将来の大型民間航空機向けにスケールアップされた水素給油技術の開発と実証、空港での小規模なLH2航空機の地上運用の試験などが含まれる。さらに、このプロジェクトは、将来の水素運用のための規制枠組みを開発し、空港用の水素燃料の経済性を評価することを目的としている。【Flightglobalnews 】

【エアバス提供:空港での水素燃料供給想像図】

3.Heart社がES-30を再設計し、既製のハイブリッドパワートレインに切り替える

スウェーデンのハート・エアロスペース社は、開発中のES-30ハイブリッド電気リージョナル航空機を根本的に再設計し、既存のターボプロップ・エンジンと電気モーターを組み合わせた、ハイブリッド推進システムに切り替え、ストラットブレース付き翼や大型エンジンなどの特徴的な特徴を取り除いた。胴体下の大きなバッテリーベイも無くなった。

【Heart Aerospace 社提供:再設計された、電動ハイブリッド航空機「ES-30」想像図】

日本のニュース

1.JAL、バッテリー式地上電源を初導入

日本航空は5月17日、リチウムイオンバッテリー式の地上電源装置「eGPU」を松山空港で9日から導入したと発表した。ディーゼルエンジンを使う従来のGPUと比べ、バッテリー式はCO2(二酸化炭素)排出量削減や低騒音化といった導入効果が期待できる。eGPUはこれまでJALグループ各社で導入実績があったが、JAL本体が導入するのは今回が初めて。導入するeGPUはデンマークのITW GSE製「7400 eGPU」で、多摩川エアロシステムズ(東京・大田区)が輸入代理店を務める。同製品は全世界で400台以上の実績があり、JALが羽田-松山線に投入するボーイング737-800型機の場合、航空機が到着してから出発するまでの「ターンアラウンド」約14便分で電気を供給できるという。JALグループでは、鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューターが2023年3月から、札幌・丘珠空港を拠点とする北海道エアシステムが今年3月から、それぞれeGPUを導入済み。JACは種子島、屋久島、喜界島、奄美大島、徳之島、沖永良部、与論の7空港、HACは丘珠、利尻、奥尻の3空港で運用し、仏ATR製ターボプロップ(プロペラ)機へ電気を供給する。eGPUはジェット機用の充電設備の設置と交流電源の確保が課題となっていたが、松山空港では除雪車の車載ヒーター用電源プラグを変換することで課題を解決した。今後は他空港への展開も検討するという。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:バッテリー式地上電源ITW GSE製「7400 eGPU」と従来のGPUとの比較】

2.JAL、非航空連携の社外コンテスト継続 新興と協業、新規事業創出へ

日本航空は5月14日、スタートアップ企業などを対象とした社外ビジネスコンテスト「JAL Wingman Project(JALウイングマンプロジェクト)」を今年度も実施すると発表した。JALは中期経営計画で「ESG(環境・社会・企業統治)戦略」を経営の軸としており、コンテストで最優秀賞に選出した企業と協業し、非航空領域での新規事業創出を狙う。JAL Wingman Projectは2023年7月に始まった社外向けビジネスコンテストで、今回は「ヒト・モノ・コトの距離を縮め、豊かでサステナブルな社会を実現する新規事業」をテーマとする。JALが持つ人・モノ・ノウハウ・場所などを活用し、コンテストで最優秀賞に選出されたパートナーとJALが、東京・天王洲のJAL本社近くにある研究拠点「JALイノベーションラボ(JAL Innovation Lab)」で研究を重ねる。選出企業とはおもに非航空事業で連携し、中長期的な協業も検討する。応募と書類提出は6月20日まで受け付ける。書類による1次選考を6月下旬に、対面面接の2次を7月9日と10日、最終選考を同月24日に実施する。協業期間は8月1日から2025年3月31日まで。期間中の実証実験費用として、最大1000万円をサポートする。初回となった2023年度は52社が応募した。最優秀賞にはクラフトビールを企画・販売するBeer the First(横浜・神奈川区)を選出し、ラウンジで出た余剰米を活用したクラフトビール「Japan Arigato Lager」を開発した。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:昨年度のコンテスト参加者記念写真】

3.ANAとJAL、グラハン7資格を相互承認 地方10空港でマーシャリングなど

全日本空輸と日本航空は5月14日、空港でのグランドハンドリング(グラハン、地上支援)業務の資格を相互承認する取り組みを、仙台空港で報道関係者に公開した。両社の業務委託先が同じ地方10空港を対象に今年4月からスタートした制度で、全国的に人手不足が課題となっているグラハン業務の資格を相互承認することで、有資格者の早期養成や業務効率化などにつなげ、グループの垣根を越えた協力を深める。ANAとJALが資格を相互承認する業務は、機体の牽引や誘導、貨物・手荷物の搭降載・搬送など「ランプハンドリング」と呼ばれる業務。およそ100あるグラハンの資格のうち、基礎的なものを中心に7資格「1. トーイングトラクター」「2. ベルトローダー」「3. 旅客搭乗橋(PBB)」「4. 安全監視・駐機」「5. 航空機誘導(マーシャリング)」「6. プッシュバック/7.トーイング」を対象とした。トーイングカー(牽引車)で機体を動かすプッシュバックとトーイング、PBB以外は、グラハン業務を始めたばかりの人も資格を取得することから、早期育成が期待される。ANAによると、今後は対象資格の拡大を検討していきたいという。【Aviation wire news】

4.誰でも宇宙旅行できる2050年の暮らしを体験! SusHi Tech Tokyo 2024が開幕

東京・有明アリーナにて2024年5月17日より「SusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラム」が開幕した。SusHi Tech Tokyo 2024は、「自然」と「便利」が融合する未来の都市モデルを東京から発信することを目的として開催され、有明アリーナのほか、日本科学未来館、シンボルプロムナード公園、海の森エリアでも開催されている。有明アリーナ会場では、衣食住、買い物、乗り物などテーマに合わせた演出が用意されており、テクノロジーの力によって、2050年の東京にタイムスリップしたような“未来の一日”を体験できる。メインフロアに入ると「MOVEエリア」「SHOPエリア」「WORKエリア」「LEARNエリア」「LIVEエリア」「PLAYエリア」などのさまざまなエリアに分けられており、自分が興味あるエリアに赴いてコンテンツを楽しむことができる。例えば、MOVEエリアはラストワンマイルから宇宙旅行まで、未来のモビリティを体験できるエリア。近年、有人宇宙活用に向けた研究が活発化してきたこともあり、エレベーターで誰もが気軽に宇宙へ行ける時代がやって来るとも言われるようになってきた。同イベントでも宇宙軌道エレベーターの模擬体験として、地上3万6000kmにある宇宙観光の拠点「静止軌道ステーション」を目的地として、360度映像と振動装置で本当に宇宙軌道エレベーターに乗っているような感覚を味わうことができる。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:未来の東京が体験できるSusHi Tech Tokyo 2024に来場した小池知事】