KIT航空宇宙ニュース2024WK26

インドの空港、デリーのターミナルの屋根崩落で死亡事故、構造上の安全性を検査へ
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK26

海外のニュース

1. フォッカー・ネクスト・ジェン社はF100の水素燃料推進への改造を断念し再設計

フォッカー・ネクスト・ジェン社は、フォッカー100を改造して水素動​​力で動くようにする計画を断念し、2035年の就航を目指して、排出ガスゼロのクリーンシート航空機の開発に全力を注ぐことにした。当初の計画では、将来のまったく新しいプラットフォームへの「足がかり」として、水素燃焼のロールスロイス・パール15ビジネスジェットエンジンを旧型のF100に後付けすることを計画していた。改修の概念設計作業は2024年末までに完了し、2028年の初飛行が予定されていた。フォッカー・ネクスト・ジェン社の新たな設計では、極低温水素燃料システムが客室後方の機体後部に配置され、全長34メートル(111フィート)のエアバス A319neoや全長35.5メートルのボーイング 737 Max 7など、既存の150人乗り機よりもわずかに長い航空機となり、航続距離は1,400海里を目指している。エンジンは、現行世代の小型ナローボディ機に搭載されているエンジンと同等の推力クラス、つまり約18,000~20,000ポンド(80~89kN)の推力を生み出す必要がある。このプロジェクトにはどの動力装置も選定されておらず、特に、必要なサイズの液体水素燃焼エンジンの製造を約束しているメーカーは今のところないが、すべてのOEMとの協議は続いているという。フォッカー ネクスト ジェンの目標は、2026年または 2027年までに水素貯蔵および分配システムをTRL6へ持ってくることです。航空機のデジタル・ツインを完成させることも初期の優先事項であり、これにより同社はプログラムの「開発を加速」できるようになる。設計・開発活動は2029年から2030年にかけて技術的に完了させ、2032年までに試作機の飛行が可能となり、その3年後に就航する予定です。【Flightglobal news】

【フォッカー・ネクスト・ジェン社提供:構想中の液体水素燃料航空機のイメージ】

2. インドの空港、デリーのターミナルの屋根崩落で死亡事故、構造上の安全性を検査へ

インドの民間航空大臣は、デリーのインディラ・ガンディー国際空港でターミナルの屋根が崩落し、2日間で2件目の空港ビル構造事故となったことを受けて、インド政府が全国の空港を検査する予定であることを示唆した。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:崩落したインドのデリー空港No1ターミナルビルの屋根】

3.スペースX、国際宇宙ステーションを軌道から外す契約を獲得

NASAは水曜日、国際宇宙ステーション(ISS)が運用終了となると予想される2030年までに、ISSを軌道から外すための宇宙船の製造にイーロン・マスク氏のスペースX社を選んだと発表した。スペースXは、米国の軌道離脱機を「開発・納入」する推定8億4,300万ドルの契約を獲得した。この宇宙船は最終的にNASAが所有し、ミッション全体を通じて運用することになる。NASAは、この宇宙船の主な目的は、居住地域にいかなる危険も及ぼすことなく宇宙ステーションを軌道から離脱させることだと述べた。NASAによると、この宇宙船と宇宙ステーションは再突入時に「破壊的に分解」すると予想されるという。「国際宇宙ステーションに米国の軌道離脱機を選定することは、NASAとその国際パートナーがステーションの運用終了時に安全かつ責任ある低地球軌道への移行を確実にするのに役立つだろう」とNASA宇宙運用ミッション局のケン・バウワーソックス副局長はプレスリリースで述べた。宇宙ステーションは1998年以来、NASA、カナダ宇宙庁、欧州宇宙機関、宇宙航空研究開発機構、ロシア国営宇宙公社ロスコスモスの5つの宇宙機関によって運用されている。宇宙ステーションの運用寿命は2030年に終了する予定である。【Flightglobal news】

【NASA提供:2030年に運用が終了する国際宇宙ステーション】

4. magniX が革新的なバッテリー製品を発売

電動航空革命を推進するmagniXは、画期的なバッテリーラインであるSamsonの発売を発表した。magniX Samsonバッテリーは、高いレベルの性能、安全性、信頼性が求められる航空および産業や用途向けに設計されている。Samsonバッテリーは航空規制の下で認証可能であり、業界をリードするエネルギー密度、比類のないサイクル寿命、特許取得済みの安全機能を提供する。SamsonバッテリーをmagniXの飛行実証済み電動エンジンと組み合わせることで、航空宇宙向けに完全に最適化され統合された電動パワートレインを顧客に提供する。magniX Samson300はバッテリー製品ラインの最初の製品であり、エネルギー密度を最大化して航続距離と積載量を増やすことに焦点を当てた設計になっている。Samsonバッテリーの主な特徴は次の通り。

  • 300ワット時/キログラム(Wh/kg)という比類のないエネルギー密度
  • 1,000回以上の完全放電サイクルを超えるバッテリーサイクル寿命により、運用コストを削減
  • 熱暴走からのセルレベルの保護や、ゼロ充電で長期間バッテリーを保管する機能など、特許取得済みの安全技術
  • 充電中の地上でのアクティブ冷却と飛行中のパッシブ冷却のオプションにより、航空機のターンアラウンド時間が短縮され、航空機の重量と複雑さが最小限に抑えられる。
  • 推進システムへの電力供給管理を改善する統合パワーエレクトロニクスと配電システム
  • 大型航空機に電力を供給し、簡単に交換できるモジュール式バッテリーアーキテクチャ
  • 航空規制に基づく認証のために設計された包括的なシステム 【magniX社HP】

【magniX社提供:高エネルギー密度のeVTYOL機用バッテリーSamson300】

日本のニュース

1. ORCのQ200、23年で全退役 最終3号機、6/30に運航終了

長崎空港を拠点とするオリエンタルエアブリッジは6月20日、残り1機となったボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-Q200型機(1クラス39席)の運航を、30日に終了すると発表した。最終日となる30日は長崎発着の定期便3路線6便に投入し、同日付で退役する。Q200は導入から約23年で幕を閉じる。退役するのは3号機で、2020年に中古で導入した。ORCは23年前の2001年にQ200の初号機と2号機を導入。初号機は2022年8月23日に、2号機は2023年9月21日にそれぞれ最終運航を迎え、すでに退役している。3号機の最終日となる30日は、長崎-対馬線、長崎-五島福江線、長崎-壱岐線の3路線6便に投入。最終便は壱岐を午後4時40分に出発する長崎行きOC44便で、長崎空港には午後5時10分に到着する。ORCはQ200の後継機として、仏ATR製ATR42-600型機(1クラス48席)を2機導入済み。このほかDHC-8-Q400(同74席)も3機保有。Q400は全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスからのリース機で、ANA塗装のままORCのパイロットと客室乗務員が運航している。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:6月30日で全機退役となるORCのDHC-8-Q200型機】

2. 暴言や不当要求「毅然と対応」ANAとJAL、カスハラ対応を共同策定

全日本空輸と日本航空は6月28日、利用者が従業員に対して理不尽な要求や非人道的な対応を強要する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の対処方針を共同で発表した。人としての倫理観が欠落した一部利用者による暴言や暴行などから従業員を守るとともに、安全性やサービス品質の向上を図る。両社が策定したカスハラに対する基本方針では、カスハラの定義を、顧客または第三者(取引先など含む)からの優越的な立場を利用した「航空法、その他関連する法規に反する行為」および「これらにつながりかねない行為」、または「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」により、従業員の就業環境が害されること、と定めた。カスハラの行為例を9つに大別。1)暴言・大声・侮辱・差別発言・誹謗中傷など、2)脅威を感じさせる言動、3)過剰な要求、4)暴行、5)業務に支障を及ぼす行為 (長時間拘束・複数回のクレームなど、6)業務スペースへの立ち入り、7)社員を欺く行為。8)会社や社員の信用を棄損させる行為(SNS投稿など)、9)セクシャルハラスメント(盗撮・わいせつ行為・発言・つきまといなど)とした。具体的な事例としては、大声で罵声を浴びせたり、「SNSで拡散する」「殴るぞ」「殺すぞ」などの脅迫、反社会勢力の関係をほのめかす発言、規定やルールを超えた多額の補償やアップグレードなど「特別対応」、土下座の要求、殴る、身体を押す、肩をつかむ、ものを投げる、飲み物をかける、傘を振り回す、居座り、長時間の電話や長時間拘束、話のすり替え、揚げ足取り、機内・空港・予約センターのやり取りを録音・録画しSNSで拡散などを挙げた。【Aviation wire new】

【Aviation wire提供:カスハラ対処方針を説明するANA宮下CS推進部長(左)とJAL上辻CX推進部長】

3. JALとKDDI、ドローン3機を1人で操縦 都内から遠隔操作、秩父で食品配送

日本航空とKDDIは6月28日、1人の操縦者がドローン3機を同時に運航する実証に成功したと発表した。今回の実証は都内からドローンを遠隔操作し、埼玉・秩父市で防災用品と食品を配送した。今後は1人で複数のドローンを運航する「1対多運航」のビジネスモデルを確立し、ドローンの社会実装を目指す。KDDIとKDDIスマートドローン(東京・虎ノ門)が共同開発する運航管理システムに、JALの知見・ノウハウに基づく手順やルール「オペレーション・プロシージャー」を組み合わせ、複数機を遠隔操縦できる体制を構築。今回の実証はPRODRONE(名古屋市)製のドローン「PD6B Type3」を使用し、秩父市の吉田総合支所と道の駅 龍勢会館から、2.5キロ離れた阿熊地区へ防災用品と食品を同時配送し、有用性を検証した。今回の取り組みは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の公募事業である「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMo(リアモ)プロジェクト)」の一環で、ドローンの搭載カメラから歩行者を確認するなど、一定条件を満たした場合に地上の補助者や立ち入り管理措置が不要となる「レベル3.5」飛行で実施した。【Aviation wire new】

【Yahooニュース提供:3機のドローンを都内のオフィスから遠隔操縦】

4. エアアジアX、日本国籍CA募集 7月に選考

エアアジアX(XAX/D7)は、日本国籍を持つ客室乗務員の採用を始めた。応募締切は7月10日。同社のSNSに掲載しているGoogleフォームのURLにアクセスし、選考通過者に連絡。面接は7月13日に大阪で実施する。エアアジアXは、台北(桃園)-関西線を現地時間8月1日に開設予定。台湾からの以遠権を活用して運航する。【Aviation wire new】

5. 羽田の国内線発着枠、配分見直し延期 ANA系コードシェア「国が注視」

国土交通省航空局(JCAB)は6月26日、羽田発着枠配分基準検討小委員会(委員長:竹内健蔵東京女子大学教授)の4回目となる最終会合を開いた。2025年以降の国内線発着枠配分に対する考え方を検討する有識者会議で、新型コロナの影響で航空各社の状況を評価することは困難だとして、配分見直しは延期が決まった。新たな評価期間は、新型コロナが「5類」へ移行した2023年度から2027年度までの5年間とし、2028年に配分を見直す。一方、論点となっていたエア・ドゥとソラシドエア、スターフライヤーの3社が実施している全日本空輸とのコードシェアや、筆頭株主が日本政策投資銀行(DBJ)のエア・ドゥとソラシドエアが共同持株会社リージョナルプラスウイングス傘下となった経営統合については、公正な競争を阻害していないかを、国が注視していく必要があるとした。【Aviation wire new】

6. 運航整備士の業務拡大や外国人操縦士の切替迅速化(国交省人手不足対策中間とりまとめ)

国土交通省航空局(JCAB)は、航空業界で課題となっているパイロットと整備士の人材確保に向けた有識者会議「航空整備士・操縦士の人材確保・活用に関する検討会」(座長:李家賢一・東京大学大学院工学系研究科教授)の中間とりまとめを公表した。新型コロナで志望者が急減した整備士は、資格の業務範囲拡大や型式別ライセンスの共通化などを進める。パイロットは世界的に需要がひっ迫した状況が続いているため、即戦力となる外国人パイロットの受け入れ円滑化や、シニア人材によるシミュレーターを使った技能審査や訓練教官への活用推進などが可能になるよう、今年度内をめどに制度を見直す。検討会では、整備士・パイロットの確保へ優先的に進める重点テーマを設けて議論を重ね、政府が掲げる2030年の訪日客6000万人達成に向け、航空業界の安定的な成長を目指す。整備士のリソース有効活用は2点。整備現場の実態や作業内容の変化、海外の状況などを踏まえて整備し制度を大幅に見直し、資格の業務範囲を広げ、1人でできる作業の範囲拡大を目指す。現在の資格は、日々の運航間に実施する点検などを念頭におき、養成期間が約2-3年の「運航整備士」と、機体のすべての整備が可能な養成期間5年程度の「航空整備士」があり、便間の「ライン整備」を運航整備士が現状よりも作業できるよう、今年度中に業務範囲を決め、2025年度早期に制度改正を目指す。航空局によると、現状では運航整備士の業務範囲は、ライン整備で実施する作業の6割程度にとどまっており、結果として高いスキルを持つ航空整備士を多く配置する必要があり、欧州などの事例を基に実情にあった業務範囲に見直す。また、機体の型式別ライセンスを共通化し、ベースとなるライセンスで、ボーイング737型機やエアバスA320型機などの運航整備を可能とし、タイヤ交換など軽微な作業は型式別ライセンスを不要にする。パイロットのリソース有効活用も2点。即戦力外国人操縦士の受け入れを円滑化し、ライセンス切替手続きのデジタル化や、海外向けに日本ライセンスへの切替をウェブサイトで案内するなどの対策を検討する。シニア人材の活用も推進し、身体検査証明を取得できなくなった機長経験者がシミュレーターによる訓練審査を可能とするなど制度を見直す。【Aviation wire new】

7. ANA、世界一の空港サービス受賞 英SKYTRAX調査2部門でNo.1

全日本空輸を中核とするANAグループは6月24日、英国を本拠地とする航空業界調査・格付け会社SKYTRAX(スカイトラックス)社が航空会社を表彰する「ワールド・エアライン・アワード」のうち、空港サービス全般を評価する「World’s Best Airport Services」など2部門で、もっとも優秀な航空会社に選ばれたと発表した。また、世界一の航空会社を選ぶ「World’s Best Airlines」は4位に入った。ANAが1位を獲得した部門賞は、「World’s Best Airport Services」とアジアを拠点とする航空会社の中から空港スタッフや客室乗務員によるサービス品質を評価する「Best Airline Staff in Asia」の2部門。空港サービスは11回目で5回連続、スタッフのサービス品質アジア部門は9回目で4回連続の受賞となった。World’s Best Airport Servicesは、空港サービス全般で最も評価の高い航空会社に贈られる賞。2位は日本航空、3位はキャセイパシフィック航空だった。【Aviation wire new】

【Yahooニュース提供:航空業界格付調査会社Skytraxから空港サービス2部門でNo1を受賞したANAスタッフ】

8. ANAウイングス、パイロットのインターンシップ シミュレーター体験や座談会

ANAホールディングス傘下のANAウイングスは6月24日、運航乗務職掌(自社養成パイロット)のインターンシップを9月に実施すると発表した。昨年初開催して好評だったというセミナーやシミュレーター体験、社員との座談会などを通じて同社を知ってもらう。対象は学生(学年・学部不問)と既卒者、社会人で、エントリー期間は7月1日から15日。AコースとBコースを設けて4日間ずつ実施する。9月1日に2コース共通の1日目のプログラムをオンラインで開催し、2日目から4日目は羽田空港に集合して、Aコースは9月7日から9日、Bコースは14日から16日に実施する。申し込みは同社の採用サイトから。参加に伴う交通費や宿泊費は同社の基準に基づいて支払うが、報酬(日当)はなし。参加者は多数の応募が予想されることから、選考を実施する。ANAウイングスは、自社養成パイロットの採用を2019年度から開始。全日本空輸(ANA/NH)グループの事業拡大と、パイロットの安定的な養成を図っている。インターンシップは2023年9月に初めて開催した。【Aviation wire news】

9. SkyDriveら3社、タイでの空飛ぶクルマ事業検討に向けた基本合意書を締結

次世代エアモビリティである空飛ぶクルマの開発・製造を行うSkyDriveと、東急、タイのサハグループの中核企業であるサハ・パタナ・インターホールディング(SPI)の3社は6月28日、タイ王国における将来的な空飛ぶクルマを用いた事業実現可能性調査のための基本合意書を同日付で締結したことを発表した。東急とサハグループは2014年、タイの首都バンコクからら南東約100kmに位置し、周辺には製造業を中心とした日系企業が集積しているチョンブリ県シラチャ郡における日本人向け賃貸住宅事業を推進する合弁会社「サハ東急コーポレーション」 を設立し、協力して事業を展開してきた。また、シラチャはタイ政府が産業誘致を進めるEEC(東部経済回廊)内にも位置するなど、今後も日系企業をはじめとする工業団地への進出などの期待から、さらなる発展が見込まれているが、シラチャに限らずタイ国内では自動車による交通渋滞や排気ガスによる環境汚染が深刻な社会課題となっており、渋滞の緩和や環境への配慮から、多様な移動手段の活用が期待されるようになっている。今回の合意は、そうしたタイの状況を踏まえ、シラチャにおいて新産業誘致に伴う関連企業の集積や就労人口、居住人口の増加による不動産サービス需要の拡大を目指しているサハ東急、消費財事業、食品・飲料事業、工業団地開発およびその他新規事業への投資事業を行い、持続可能なビジネスの価値向上を目指すSPI、「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに掲げ、アジア地域においても「日常の移動に空を活用する」未来の実現を目指すSkyDriveの3社の意思が合致したことを踏まえたもの。同合意に基づき、今後3社は、シラチャを出発点とし、パタヤ、プーケットなどにおいてSkyDriveが開発を進めている空飛ぶクルマ「SKYDRIVE (SD-05)」を活用したユースケースを検討していくとしているほか、これらのユースケースを日本に逆輸入する形で、東急グループの街づくりにおけるエアタクシー事業の検討などにもつなげていきたいとしている。【マイナビニュース】

【東急提供:バンコクにて行われた基本合意締結式の様子】

10. 北海道スペースポートの滑走路が1300mに延伸、宇宙往還機などにも対応

商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」を運営する北海道大樹町とSPACE COTANは6月25日、2022年9月より進めていたHOSPO内の滑走路延伸工事が完了したことを発表した。HOSPOは垂直/水平型などのさまざまな打ち上げに対応した国内唯一の「複合型」宇宙港。民間による宇宙利用が拡大している中で、ロケットやスペースプレーンの射場・実験場を整備することで、航空宇宙産業のインフラとして、国内外の民間企業や大学のビジネス・研究開発を支援してきた。今回の滑走路延伸もそうした取り組みの一環で、元々は1995年に当時の宇宙開発事業団(NASDA)と航空宇宙技術研究所(NAL。2003年にNASDA、NAL、そして宇宙科学研究所(ISAS)が統合して宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発足)が研究開発していた日本版スペースシャトル「HOPE」の実験誘致を目指して大樹町が建設し、1998年に舗装化した1000m滑走路を、東に50m、西に250mの合計300m延伸したもので、これによりスペースプレーン(宇宙往還機)の離着陸試験など、従来よりも規模の大きい実験や機体の受け入れが可能になったという。【マイナビニュース】

【北海道スペースポート提供:滑走路延伸工事を完了した北海道スペースポート(HOSPO)】

11. 関大などが共同開発した超小型人工衛星「DENDEN-01」が完成 – 今秋打ち上げへ

関西大学(関大)、福井大学、名城大学、アークエッジ・スペースは、共同研究グループが開発する1Uサイズ(10cm×10cm×10cm)の超小型人工衛星「DENDEN-01」が完成し、6月4日に宇宙航空研究開発機構(JAXA) 筑波宇宙センターへの引き渡しが完了したことを発表した。昨今、地球観測や通信などさまざまな分野で注目が集まる人工衛星において、特に100kg未満のものは“超小型衛星”と呼ばれ、その中でも1辺が10cmの立方体を基本構造として規格化されたキューブサット(CubeSat)は、容易に入手可能なキット化されたコンポーネントの普及により開発が迅速に進められる点や、コスト効率が高い点などを背景に、その打ち上げ数が年々増加している。また従来は教育や技術実証を目的とした開発がほとんどだったのに対し、近年では民間による開発も活発に行われ、リモートセンシングや衛星通信などの宇宙ビジネスにおける重要な役割を果たすようになっている。このように用途の幅広さや利便性から広く普及しつつあるキューブサットだが、さらなる技術的進化の要求も集まっており、特に商業利用の拡大に伴って、ミッションの複雑化や要求性能の向上が不可欠となる一方で、同時にキューブサット自体の高機能化および信頼性向上も求められている。そのため衛星に搭載される各機器に対しては、高品質かつ安定した電力の供給技術が必要とされるが、キューブサットは電力や質量、サイズなどの制限がある上、熱容量も小さいため、宇宙空間特有の急激な温度変化の影響を受けやすい。実際に地球周回軌道で運用されているキューブサットの電源温度を解析したところ、比較的低温で推移し、-15℃に到達するケースも見られたとのこと。こうした低温環境では電源性能が急激に低下するため、衛星におけるさまざまなミッションの制限や衛星自体の運用に重大なリスクが生じるとする。こうした課題に対して、関大と名城大は2020年からキューブサット搭載電源の温度管理手法を共同で検討。その中で固-固相転移型潜熱蓄熱材(SSPCM)の活用可能性を検討してきたという。このSSPCMは、熱エネルギーを蓄えるために化学変化を利用する固形の蓄熱材で、温度が変化すると、物質がある結晶構造の固体から別の結晶構造の固体へと相変化する性質をもつことから、液漏れや気化の危険性を排除できるとのことだ。そしてこの成果を実際のキューブサットで実証することを目指し、福井大やアークエッジ・スペースを加えた共同研究グループが始動。今後の超小型衛星の進化を支える革新的な電力供給・エネルギー技術を実現すべく「DENDEN-01プロジェクト」を推進し、2022年度より衛星開発を行ってきたとする。同プロジェクトにより生まれたDENDEN-01は、打ち上げ時の大きさが100mm×100mm×113.5mmで、軌道上における太陽電池パドル展開時のサイズは309mm×204.5mm×113.5mm(1.32kg)となる。同衛星では、先述したSSPCMを活用した電源温度安定化デバイスの軌道上実証をはじめとする複数のエネルギー技術実証、および高品質で安定した電力を活かした高負荷ミッションに挑戦するとしている。【マイナビニュース】

【アークエッジ・スペース提供:DENDEN-01の宇宙空間での展開イメージ】