KIT航空宇宙ニュース2024WK42

エアバスと東芝が共同開発を目指している水素エネルギー推進航空機用超電導モーター
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK42

海外のニュース

1. FAAはボーイングの生産問題を監督する適切な手段を欠いている:政府報告書

米運輸省(DOT)の最高検査官は、連邦航空局はボーイング社の737と787の生産システムに対して効果的な監督を欠いていると述べた。運輸省の監察総監室は10月11日に報告書を発表し、問題を抱える航空機メーカーの監督プロセスをFAAが全面的に見直すよう求めた。「FAAはボーイング製造施設内のリスクを判断するのに十分な情報を持っていない」と10月9日付の報告書は述べている。「FAAの監視プロセスとシステムの弱点により、ボーイングの生産上の問題を特定し解決する能力が制限されている。」40ページに及ぶ文書によると、FAAは依然としてボーイング社の多数の生産施設を「高リスク」とみなしているが、同時に、FAAには実際にそのリスクを評価する効果的な手段が欠けているという。この報道は、ボーイング社が1万7000人の従業員を解雇し、767の生産を終了すること、そして第3四半期に60億ドルの損失を出したことを明らかにした同じ日に発表された。これらはすべて、機械工のストライキが進行中で、多額の費用がかかる中でのことだ。監察総監は、米国議会の要請を受けて、737と787の生産に特に重点を置いた調査を実施した。議員らは、1月5日に737 Max 9の機内中央ドアプラグが飛行中に故障した原因を含む、ボーイングの生産に関わる長年にわたる品質と安全性に関する懸念に対する回答を求めた。報告書は、FAA がボーイングのような広範囲かつ複雑な生産システムを適切に評価できていないと概ね結論付けている。「FAA の現在の監査プロセスは、主要な矛盾や不適合を適切に特定できるほど包括的ではない。」FAAはコメントの要請に応じなかった。FAAは最近、方針で求められているよりも多くのボーイング社の監査を完了したが、FAAの検査官はリスクを正確に評価するために必要な適切な指導を欠いており、ボーイング社が要件を満たしていることを確認する上で監査は効果的ではないと報告書は述べている。たとえば、FAA のガイドラインでは、問題がどの程度の頻度で発生すれば体系的または広範囲に及ぶものと見なされ、より注意を払う必要があるのか​​が明記されていない。その結果、FAA の検査官は「以前に同様の問題が特定されていた場合でも、一般的には不適合を単独の問題として分類する」。【Flightglobal news】

【NTSB提供:今年1月に発生した737MAX9の飛行中にドアプラグが吹き飛ぶ事故】

日本のニュース

1. 宮崎空港、試掘で異常なし 大量の砂鉄が反応

国土交通省航空局(JCAB)は、宮崎空港のS6誘導路周辺で10月16日夜から実施した磁気探査の結果、磁気異常を示した場所が1カ所あったことから、19日夜に試掘調査を行う。試掘するのは、ターミナルから滑走路(RWY09/27)を見て東側にあるS6誘導路の「ショルダー」と呼ばれる路肩にあたる部分。運用終了後の19日午後10時ごろから調査する。宮崎空港では、2日にS6誘導路ショルダーで不発弾が爆発。16日夜から17日早朝にかけて、陸上で不発弾や遺棄砲弾を調べる磁気探査調査を実施した。国土交通省航空局(JCAB)は10月20日、宮崎空港のS6誘導路周辺で19日夜から実施した試掘調査の結果、安全が確認されたと発表した。宮崎空港は通常通り運用しているが、同空港の始発に欠航や遅れが出た。航空局によると、16日夜から実施した磁気探査で異常を示した1カ所を掘り起こしたところ、局所的に大量の砂鉄があったことが、磁気異常を示した要因だったという。安全が確認されたことから試掘部分を埋め戻し、運用開始時刻の午前7時30分から通常通り運用している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:磁気異常が検出された宮崎空港の誘導路箇所】

2. エアバスと川重、関西3空港へ水素機導入で連携 3社インフラ整備へ調査

エアバスと関西エアポート(KAP)、川崎重工業の3社は10月18日、水素インフラ整備のフィージビリティ・スタディ(実現可能性調査)を実施する覚書を締結したと発表した。KAPが運営する関西と伊丹、神戸の関西3空港での水素航空機の導入・運航へ初期調査を進め、機体への水素供給の具体化へ連携を強化する。3社連携では、関西3空港すべてで水素インフラの定義付けと供給へロードマップを作成する。調査結果は技術と経済性、法的適合性、運用の観点で評価。調査で見つかった課題は、実証プロジェクトなどにより、具体的な検証に入る。エアバスとKAPの2社は2022年から、空港での水素利活用で協力している。KAP空港内での水素利活用に取り組んでおり、空港内の水素ステーションを中心とした燃料電池フォークリフトや燃料電池バスなどを運用している。またKAPが運営する関西3空港は、地理的な特徴や機体運用の特徴が異なることから、空港内に水素を供給する複数のケースを検討できるとしている。またエアバスは2022年から、水素社会実現へのインフラ検討で川重とも協力。川重は空港内のハイドラントシステム(航空機給油施設)の整備実績もあり、空港のインフラ整備に知見がある。3社はエアバスの「Hydrogen Hub at Airports」プログラムの一環として連携する。同プログラムは低炭素化を実現する空港運営に向け空港インフラを調査するもので、現在までに、日本、フランス、ドイツ、イタリア、米国、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、韓国、スペイン、豪州、スウェーデン、英国の14カ国のパートナーや空港と合意している。エアバスが調査した3空港での液化水素の需要予測によると、水素航空機が導入される初期段階では1日あたり数トンの液化水素が必要で、2050年ごろには1日あたり数百トンまで増加するという。また関西や周辺地域は水素産業が発展していることから、水素航空機にとって有望な市場であるとしている。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:エアバスが2035年までに導入を検討している水素エネルギー推進航空機】

3. エアバスと東芝、次世代水素機に超電導技術 2040年までに実用化へ

エアバス子会社で次世代航空機を開発するエアバス・アップネクストは10月16日、東芝グループでエネルギー事業を展開する東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS、川崎市)と水素航空機開発に向けた超電導モーター技術の共同研究で協定を締結した。液体水素を使った「超電導技術」を活用するもので、エネルギー効率と性能の大幅な向上につながる。航空業界は脱炭素化を進めており、両社は2040年までに次世代機の実用化を目指す。今回の共同研究で、次世代機に使う2MW(メガワット)の超電導モーターの開発を目指す。エアバス・アップネクストは、2MW級の超電導電気推進システムを使った実証機「クライオプロップ」の開発を進めており、動力として東芝ESSが開発する2MW級の超電導モーターを活用する。エアバスのシニアバイスプレジデント 兼 将来技術研究責任者のグゼゴルツ・オムバッハ氏は、東芝をパートナーに選んだ理由について、東芝が超電導技術を50年以上研究しているとした上で、「信頼できるパートナーで、脱炭素化へ東芝も同じビジョンをもっている」と説明。両社の技術を使った実証機を2030年までに飛行させ、2040年までに新機材に活用したいと述べた。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:エアバスと東芝が共同開発を目指している超電導モーター】