KIT航空宇宙ニュース2024WK08

2月22日に月面着陸に成功した米宇宙民間企業インテュイティブ・マシンズの無人月着陸船「NOVA-C」(想像図)
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK08

海外のニュース

1. KLM、機内食ロスAIで削減 出発20分前まで予測

KLMオランダ航空は、搭載する機内食数をAI(人工知能)で調整するシステムを導入している。同社では予約したものの搭乗しない「ノーショー」が3-5%程度生じており、機内食の製造・搭載数をAIで予測することで食品ロスの削減につなげている。機内食数を予測するAI「TRAYS」は、蓄積されたデータに基づき出発17日前からビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーの各クラスごとに搭乗者数を予測。KLMの機内食システム「MOBS」と共有する。予測は出発20分前まで継続し、余剰が出ない搭載数を決定する。TRAYSは2023年後半に導入。3カ月経過後のデータ分析では、食品ロスを導入前から約63%削減できることを実証したという。導入により改善が最も進んだのは、アムステルダム・スキポール発の長距離国際線で、1便あたり2.5食分(1.3キロ相当)の廃棄削減につながった。スキポール空港で用意する機内食の重量に換算すると、年間で約111トンのロス削減に相当する。KLMは機内食のほか、各部門でAIの導入を進めている。メンテナンスでは保守点検計画や部品管理などの運用に、運航管理部門では天候予測に基づいた運航計画などに活用。このほか、旅客の旅行ニーズに最適な情報提供にもつなげている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:KLMの機内食】

2. 米無人宇宙船が月面着陸 民間企業が初の成功

米宇宙企業インテュイティブ・マシンズの無人月着陸船が米東部時間22日午後(日本時間23日午前)、月面着陸に成功した。民間企業としては世界で初めて。米国としても、米航空宇宙局(NASA)による最後の有人着陸となった1972年のアポロ17号以来となった。今回は人類の月面再訪を目指すNASAの「アルテミス計画」の一環。着陸船「ノバC(愛称オデュッセウス)」が月の南極に近い地点に降り立った。ノバCは今月15日、米南部フロリダ州から米宇宙企業スペースXのロケットで打ち上げられた。NASAの観測機器のほか、米著名芸術家ジェフ・クーンズさんの月に関連する彫刻作品も載せている。これまで月面に探査機の着陸を成功させたのは米国、旧ソ連、中国、インド、日本の5カ国のみ。日本は1月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機「SLIM(スリム)」で初めて成功した。 【ワシントン時事通信】

【読売新聞提供:月面着陸に成功したインテュイティブ・マシンズ社の月面着陸船「NOVA-C」】

3. エアタクシーベンチャーのウィスク・エアロが米国ヒューストンでのサービスを計画

ウィスク・エアロ社はテキサス州シュガーランド市と提携し、グレーター・ヒューストンでの自動運転エアタクシーの運航を検討している。ボーイング社の自動飛行電動垂直離着陸(eVTOL)エアタクシーベンチャーであるウィスク・エアロは、立ち上げ市場の一つとしてテキサスに注目している。同社は水曜日、シュガーランド地域空港(KSGR)にバーティポートを建設する計画を含め、ヒューストン都市圏に高度エアモビリティ(AAM)を導入するため、テキサス州シュガーランド市との提携を発表した。ウィスクと市は、ヒューストンのジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港(KIAH)とホビー空港(KHOU)の救援空港として指定されている空港にバーティポートと潜在的な訓練・メンテナンス施設の設置場所を評価する予定だ。最初のパートナーシップは、ヒューストンのダウンタウンとヒューストン空港システムの間のルートなど、地域全体を接続する大規模な ウィスクネットワークを確立することを目的としている。ウィスクの4人乗りの第6世代プロトタイプの航続距離は90マイル (78 nm) です。推定充電時間は15分で、ウィスクは2022年に乗客1人あたりわずか3ドルの1マイルあたりの価格を目標にしていると述べた。翼に取り付けられた12個の電動プロペラ (前部6 個と後部6個) が航空機に動力を供給し、後部に取り付けられたモーターが垂直揚力を提供します。前進飛行では、後部プロペラがオフになって格納され、前部プロペラが前方に傾いて固定翼で 110~120ノットでの巡航を可能としている。【Flying News】

【Wisk Aero提供:Wisk Aero社のeVTOL機】

4. Joby Aviationが FAA認証プロセスの第3段階を完了

Joby Aviationは、4人乗りeVTOL航空機のFAA型式認証の確保に関わる5 つの段階のうち3 段階を完了した。認証プロセスの第3段階で、FAAはジョビーが提出した航空機の構造、機械、電気システムのすべてをカバーする計画を受け入れた。提出書類には、サイバーセキュリティ、人的要因、騒音への対処に対する同社の意図するアプローチも含まれていた。第3段階の完了により、 2025年に商業運航が開始される予定の航空機の認証への明確な道筋が得られた。同社は今後、詳細なテスト計画を提出し、プログラムのあらゆる側面をカバーする信頼度テストを開始する予定。2023年の第4四半期に、Jobyはいくつかの飛行電子機器ユニットと構造材料を対象とした 30 件の信頼度テストを完了した。同社のエンジニアリングチームは現在、認定プロセスの第4段階を開始している。Jobyは、オハイオ州デイトンの新しい施設で部品の製造を開始する準備を進めているほか、カリフォルニア州マリーナの少量生産工場の着工も行っている。また、国防総省との既存の契約に基づき、米空軍による試験用にさらに2機を配備する計画もある。同社は同機が時速200マイルまでの速度で飛行すると予想しているが、その飛行可能範囲はまだ確認していないと述べた。【Flightglobal News】

【Joby Aviation提供:Joby Aviationが開発中の4人乗りeVTOL機】

5. オーストラリアの水素スタートアップ AMSL Aero が長距離運航エアタクシーヲ計画

オーストラリアの水素電気航空機開発会社 AMSL Aero は、開発中の Vertiia 航空機の潜在的な使用例を長距離使用に検討しており、都市部のエアタクシーサービスではなく都市間での運航をターゲットにしている。【Flightglobal News】

【AMSL提供:AMSLが開発中の水素燃料電池駆動のeVTOL機】

6. CFM社が風洞試験でオープンファンエンジンの性能が「予測よりも優れている」と発表

CFMインターナショナルのRISE(Revolutionary Innovation for Sustainable Engines)プログラムを支援して評価されている5分の1スケールのオープンファンエンジンの風洞試験の初期結果は、予測よりもさらに優れていたと推進専門家が明らかにした。【Fligtglobal news】

【CFM International社提供:風洞試験中の1/5スケールモデルOpen Fan Rotor Engine】

日本のニュース

1. 関西3空港、高周波「バードソニック」でバードストライク対策 

関西3空港を運営する関西エアポート(KAP)は、新たなバードストライク対策として、人体に影響のない高周波を発する鳥類防除装置「バードソニック(鳥ソニック)」の試験運用を関西・伊丹・神戸の3空港で実施する。いずれも着陸帯付近に設置し、3月1日から約1年間検証する。バードソニックは、自動車用品などを手掛けるT.M.WORKS(山梨・南都留郡)が開発。シカなどの野生動物が道路で自動車にひかれて亡くなる交通事故「ロードキル」を防ごうと開発された「鹿ソニック」を基に、鳥類が嫌がる高周波を発生させ、鳥を傷つけることなく回避行動を促す。鹿ソニックとバードソニックは、ロードキル対策を研究してきた岡山理科大学基盤教育センターの辻維周(つじ・まさちか)教授が実験や検証などに協力。バードソニックは島根県の萩・石見空港や鹿児島県喜界島の喜界空港で検証が行われている。辻教授によると、喜界空港の周辺には設置前日まで千鳥が多数飛来していたが、バードソニックを2基設置したところ、装置を稼働させた日はまったく現れなくなったという。音波の照射距離は150メートルから200メートルで人体に影響はなく、周波数や照射パターンを変えることで鳥類の「音慣れ」を防ぐようにしている。KAPでは、バードストライクが航空機の損傷や欠航、遅延などにつながることから、鹿ソニックや他空港で効果が確認されているバードソニックの実証実験を実施することで、発生頻度の低減を目指す。【Aviation wire news】

【読売新聞提供:「バードソニック」による鳥衝突回避の原理】

2. JAL、ラウンジ余剰米をクラフトビールに 社外コンテストで新事業、非航空強化

日本航空は2月21日、スタートアップ企業などを対象とした社外ビジネスコンテスト「JAL Wingman Project(JALウイングマンプロジェクト)」で最優秀賞に選出した企業と協業し、新規事業を始めると発表した。JALが中期経営計画で経営の軸としている「ESG(環境・社会・企業統治)戦略」により、非航空領域での新規事業創出を狙う。初回はクラフトビールを製造するBeer the First(横浜・神奈川区)を選出し、ラウンジで出た余剰米を活用したクラフトビール「Japan Arigato Lager」を3月1日に発売する。JAL Wingman Projectは2023年7月に始まった社外向けビジネスコンテストで、初年度のテーマは「より良い社会を目指し、社会に価値を生む新規事業を共に生み出す」とした。JALが持つ人・モノ・ノウハウ・場所などを活用し、コンテストで最優秀賞に選出されたパートナーとJALが、東京・天王洲のJAL本社近くにある研究拠点「JALイノベーションラボ(JAL Innovation Lab)」で研究を重ね、おもに非航空事業で連携していく。初回は52社が応募し、9月の最終選考でBeer the Firstを最優秀賞に選出した。同社には協業や期間中に実施する実証実験などの費用支援として最大1000万円(人件費除く)を用意し、航空券も支援。半年間の試験協業のほか、2024年度以降の中長期的な協業も検討する。JALは2021-2025年度の中期経営計画で、ESG戦略を経営の軸に据えており、今回のコンテストを通じ、社外のパートナーと中長期的に新しい価値を共創したい考え。Beer the Firstを選出した理由については、「ESG戦略に合致してしたのが最も大きかった」とした上で、「一緒にやっていけそうだと感じた。初回の取り組みなので『手触り感』が必要だと思った」と、具体的な事業化へのビジョンが明確だったことを挙げた。JALとBeer the Firstの協業は試験的となる。今後はクラフトビールの購入客などからのアンケートなど「販売2カ月で成果を判断」し、長期的な協業も検討する。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ラウンジの余剰米で作った「Japan Arigato Beer」】

3. JAL、丸紅と産直事業で協業 環境配慮の供給網、高鮮度で消費者へ

日本航空は、丸紅と産直事業での協業への覚書を締結したと2月16日に発表した。産直品の販売を、JALが開設済みの消費者向け産直ショップのほか、4月をめどに飲食店向けでも展開する。生産者から消費者へ環境に配慮した商品を届けるサプライチェーンを構築し、農畜水産業の発展を目指す。JALは2023年に開設した産直オンラインショップ「SORAKARA OTODOKE」で、日本全国の旬の食材を産地から直送。今回の協業を通じ、提携先や生産者のネットワークを拡大し、生産者と地域社会が抱える環境課題や物流課題の解消を目指す。丸紅は、畜産生産者から回収した糞尿由来の堆肥を農業用肥料として販売しており、生産された農作物を消費者へ販売する循環型の枠組みの構築に取り組んでいる。水産分野では、低魚粉飼料の導入などにより環境負荷の低減を図っている。今回の協業では、JALグループの高速鮮度輸送ネットワークや顧客基盤と、丸紅グループが持つ生産者とのネットワークや、環境負荷低減につながる知見を融合させる。生産者の新規開拓により販路を拡大することで、環境に配慮し品質を追求した商品を多くの消費者に高鮮度で届ける「プレミアム市場」の構築する。【Aviation wire news】

4. アストロスケールが商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」を打ち上げ、軌道投入に成功

アストロスケールは2月19日、自社で設計・製造した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan:アドラスジェイ)」が2月18日23時52分(日本時間)にニュージーランドのマヒア半島にあるRocket Labの第1発射施設(Launch Complex 1)より打ち上げられた後、無事に軌道投入されたことを確認したと発表した。ADRAS-Jを搭載したRocket Labのロケット「Electron(エレクトロン)」は、予定時刻の打ち上げ後、計画通りに飛行を続け、高度約600kmにてADRAS-Jを分離。アストロスケールは衛星分離後、ADRAS-Jからの信号の受信に成功し、正常に通信ができることを確認したという。この後、ADRAS-Jは対象デブリであるGOSATを打ち上げた「H-IIAロケット15号機」の上段に徐々に接近。最終的には手を伸ばせば届く距離まで近づき、デブリの運動や損傷・劣化状況に関する情報取得のための撮像に挑むこととなる。この取り組みについて同社では、今後のデブリ除去を含む軌道上サービスにおいて不可欠な要素となるものだと説明している。なお、現在ADRAS-Jは、搭載機器のチェックなどを行う初期運用フェーズに移行しており、この完了後、ランデブや近接接近、近傍運用などの技術実証に挑むこととなるという。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:打ち上げに成功した「ADRAS-J」を搭載したエレクトロン・ロケット】