KIT航空宇宙ニュース2025WK18
海外のニュース
1. FAA、タイ当局「カテゴリー1」に格上げ タイ航空各社、米路線開設可に
FAA(米国連邦航空局)は、タイ航空当局のタイ民間航空局(CAAT)に対し、安全評価を「カテゴリー1」に格上げしたと現地時間4月23日に発表した。国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)の安全基準を満たしたことによりカテゴリー1へ復帰し、タイの航空会社は米国への新路線開設や、米航空会社とのコードシェア(共同運航)を無制限に設定できるようになる。タイは2015年12月に「カテゴリー2」に格下げとなっており、9年4カ月ぶりのカテゴリー1復帰となる。CAATによると、FAAによる再評価は2024年11月に開始。是正措置を必要とする指摘事項が36項目あり、CAATは関連規則を改正し、国内の航空関係者と協力し、指摘された欠陥へ対処した。最終審査は今年3月10日から12日まで進められたという。タイは1996年にカテゴリー2の評価を取得し、翌1997年にはカテゴリー1に格上げ。2001年と2008年の再評価時も、カテゴリー1を維持していた。その後2015年3月に、ICAOから「重大な安全上の懸念(SSC)」の指摘を受けた。当初はFAAやEASA(欧州航空安全局)が、タイ当局の安全性問題について、対外的には大きく取り上げていなかったものの、同年7月の再評価でタイ当局が安全基準を満たしていないことが発覚。10月28日に格下げを決定し、12月1日付でカテゴリー2に格下げとなった。【Aviation wire news】
2. SiriNor社、電動ダクトファンエンジンへの大きな野望を表明
ノルウェーの新興企業は、無人航空機(UAV)用の小型電動ダクテッドファンエンジンが、重量クラスを上げて商業航空用途に進出する先駆けとなることを期待している。インドにエンジニアリング子会社を持つ、ノルウェーのスタヴァンゲルに本拠を置くシリノール社は、その「先端駆動エンジン」の小型概念実証版の地上テストを行っており、22ポンド(0.09kN)の推力を生成することに成功し、基本アーキテクチャを技術成熟度レベル6(TRL6)に引き上げたと同社は主張している。しかし、同社の最初の商用製品は桁違いに大きいものになる。200ポンドの推力を生み出し、直径30センチ(12インチ)のファンを搭載し、重量は15キログラム(33ポンド)になるとイヴァル・アウネ最高経営責任者(CEO)は語る。必要な離陸推力を得るには100kWの電力が必要となり、巡航時には約55~66ポンドの出力を得るためには35kWまで電力を低下させる必要があります。無人航空機(UAV)による飛行試験は第3四半期に実施される予定です。SiriNor の設計では、空気の流れの一部を、二次ダクトを通して、小型電気モーターで駆動される 1 段または 2 段の軸流圧縮機アセンブリに導きく。圧縮された空気はチップタービンファンの先端に送られ、必要に応じてギア機構を介して別のファンに接続できます。Aune氏によると、この「先端駆動ファン」構成では、ハブ駆動設計に比べてファンを回転させる力が20~30%少なくて済む。さらに、燃焼がないため、このエンジンは、現代のジェットエンジンの超高温動作に耐えるために必要な特殊な超合金ではなく、標準的な航空宇宙材料で作ることができ、製造の複雑さとコストの両方を大幅に削減する。Aune氏は、「材料の柔軟性」により、エンジン部品の大部分を3Dプリントできるようになり、試作プロセスを加速し、「より地理的に多様で、弾力性があり、コスト効率の高いサプライチェーンへの扉を開く」と述べている。シリノール社は、無人機のプロトタイプの試験を継続する一方で、地上効果機向けに設計され、約5,600ポンドの推力を生み出すことができる直径1メートルの大型エンジンの組み立てを開始する予定だ。このエンジンは、いくつかのビジネスジェット機に搭載されているウィリアムズ・インターナショナルFJ44よりも強力だ。Aune氏は、UAVエンジンのサービス開始が2026年、続いて地上効果機のモデルが2027年に開始されると見ている。しかし、シリノールの野望はそれだけではない。同社は、設計の拡張性により、商業航空の脱炭素化計画にも参入できると主張している。このようなエンジンはファンの直径が2メートル以上となり、今後10年以内に就航可能となる予定だ。同社の計算によれば、直径3メートルのエンジンは56,000ポンドの推力を生み出すことができるはずで、これはロールスロイスRB211とほぼ同等の力だ。同社がUAV市場のみに注力することを選択した場合、エンジンの商品化に成功するために約500万〜1000万ドル、地上効果航空機市場に対応するために2500万〜3500万ドル、商用航空機アプリケーションに7500万〜1億500万ドルが必要になると予測している。【Flightglobal news】

【Sirinor社提供:軸流圧縮機を搭載した電気エンジン】
3. 大韓航空、富川市に1兆2000億ウォン(約1200億円)規模の都市型航空モビリティハブ建設計画を発表
富川の施設は、航空技術、訓練、安全性の向上を目的とした 3 つの戦略的要素 (UAV 研究、飛行訓練、安全体験センター) を統合している。富川センターはサッカー場10面分に相当する65,800平方メートルの広さを誇り、専門の研究者やインストラクターを含む1,000人以上のスタッフを雇用する予定だ。富川アートセンターで行われた正式な調印式には、大韓航空(KE)の禹基鴻副会長、富川市の趙容益市長、韓国土地住宅公社の李漢俊社長、富川市都市開発公社の元明熙社長など、主要人物が出席した。このプロジェクトは、アシアナ航空との統合後の大韓航空の進化における重要な一歩。大韓航空は、この投資が、この移行期における能力強化と、航空イノベーションにおけるグローバルリーダーとしての地位確立に不可欠であると考えている。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:富川アートセンターで行われた調印式に出席した関係者】
4. Joby、初の有人移行飛行に成功
電気エアタクシーメーカーのJoby Aviationは、初の有人移行飛行を完了し、垂直離陸から前進巡航に移行し、またその逆の飛行ができることを実証した。電気エアタクシーの開発会社であるJoby Aviationは火曜日、有人による初の移行飛行に成功したと発表した。同社は機体が垂直離陸から前方巡航飛行へ、そして再び垂直離陸から前方巡航飛行へ完全に移行することを実証した。この歴史的な飛行は4月22日、カリフォルニア州マリーナにあるJoby Aviation社の試験施設で行われ、チーフテストパイロットのジェームズ・“バディ”・デナム氏が操縦した。60機種以上の航空機の操縦経験を持つベテランパイロットであるデナム氏は、Joby Aviation社の最新鋭機で垂直離陸を行い、その後スムーズに翼上飛行に移行し、滑走路に垂直着陸した。Joby Aviation社はその後、3人のパイロットが搭乗し、複数回の垂直離陸を成功させていると述べている。Joby Aviation社は予定通り2025年半ばまでに航空機をドバイに納入する予定で、同地域で旅客サービスを開始する前に最終的な飛行試験が行われる予定だ。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:Pilot有人飛行に成功したJoby Aviation社のeVTOL機】
日本のニュース
1. ANA、26年3月期純利益20.3%減予想 補助金減少で費用増
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが4月30日に発表した2025年3月期通期連結決算(日本基準)は、純利益が前期(24年3月期)比2.6%減の1530億2700万円だった。売上高は過去最高を更新した。同時に発表した2026年3月期の通期業績予想のうち、純利益は2025年3月期比20.3%減の1220億円を見込む。2025年3月期通期の売上高は前期比10.0%増の2兆2618億5600万円、営業利益は5.4%減の1966億3900万円、経常利益が3.6%減の2000億8600万円の増収減益。売上高は過去最高を記録したが、運航規模拡大に伴い整備費や人件費をはじめ、営業費用が増加したことなどが減益要因となった。2026年3月期通期の連結業績予想は、売上高が2025年3月期比4.8%増の2兆3700億円、営業利益が5.9%減の1850億円、経常利益が12.5%減の1750億円、純利益が20.3%減の1220億円を見込む。減免・補助金の減少などによる費用増加が減益要因となる見通し。【Aviation wire news】
2. 国交省、再エネ・省エネ補助金 空港の脱炭素化促進
国土交通省航空局(JCAB)は、空港の施設や車両の脱炭素化を支援する「空港脱炭素化推進事業費補助金(設備導入支援)」の今年度公募を4月25日から開始した。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、空港での再生可能エネルギー導入や省エネルギー化を促進するもので、応募締切は6月13日午後5時必着。対象となるのは、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入、空港内車両のEV・FCV化に必要なインフラ整備、建築施設の省エネルギー化に関する取り組み。空港管理者や空港内事業者、関連する民間事業者(JV含む)が応募でき、全空港が対象となる。支援対象となる事業は、空港全体の脱炭素化計画に沿ったものであることが求められる。特に、エネルギーマネジメントの効率化や照明・空調設備の高効率化に加え、早期の効果発現が見込める事業を優先的に採択する。太陽光発電に関しては、発電電力の7割以上を空港内需要に充て、売電制度(FIT/FIP)や自己託送に頼らないことが条件となる。補助率は対象経費の2分の1以内。1件あたりの補助対象経費が100万円以上となる事業を対象とし、単年度または2カ年にわたる事業が認められる。内定通知は7月を予定している。【Aviation wire news】
3. Dawn製スペースプレーンで“1日複数回の宇宙実証サービス”提供へ 全日空商事
全日空商事は、ニュージーランドのスタートアップ企業・Dawn Aerospaceと基本合意書を締結し、後者が開発するスペースプレーン「Mk-II Aurora」を活用した宇宙実証サービスを日本市場へ提供することを4月23日に発表した。Mk-II Auroraは、2017年設立のDawn Aerospaceが開発中のスペースプレーンで、全長4.8mの機体にロケットエンジンを搭載し、マッハ3.5で高度100kmまで上昇して帰還するサブオービタル(準軌道)飛行が可能。2025年4月時点で58回の試験飛行に成功しており、最高速度マッハ1.1、到達高度は約25km(82,500ft)に達している。全日空商事では「開発中のスペースプレーンとして、世界でも有数の実績を誇る機体」だと説明している。この機体に実証機器や観測機器を搭載することで、微小重力などの宇宙環境下における技術実証や研究開発、高高度の気象観測が行え、機体は安全に地球へ帰還するため、データ収集だけでなくペイロード回収もできるという。1日に複数回という高い頻度で運航できるのも大きな特徴で、従来の宇宙実証に比べて低コストでフレキシブルにサービスを提供。「従来はコストや機会の制約により限られていた宇宙空間の利用が、より身近になり活用の幅が広がる」(全日空商事)とのこと。想定する用途は、真空・微小重力・放射線などの宇宙環境下での技術実証や、高高度の気象観測、超音速飛行環境下での風洞実験など。価格については、実証内容に応じて個別に案内するとしている。【マイナビニュース】

【Dawn Aerospace提供:スペースプレーン「Mk-II Aurora」】