KIT航空宇宙ニュース2025WK36
海外のニュース
1. 777-300ERSF改修貨物機、FAAとCAAIからSTC取得 最大100トン搭載
イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)は、ボーイング777-300ER型機を旅客機から貨物機に転用する「777-300ERSF」の開発で、改修初号機がFAA(米国連邦航空局)とイスラエル民間航空局(CAAI)の双方からSTC(追加型式設計承認)を取得したと現地時間9月1日に発表した。777の貨物機改修に対するSTC取得は世界初で、最大搭載量は約100トン。双発旅客機を改修した貨物機としては最大クラスとなる。ローンチカスタマーは航空機リース大手のエアキャップで、運航を担うローンチオペレーターは貨物専業のカリッタ航空。今回のSTC取得により、IAIは777型機の貨物機改修に世界で初めて成功した企業となった。IAIは旅客機の貨物転用をはじめ、MRO(整備・修理・オーバーホール)やビジネスジェットの改修、機体構造部品の製造など多角的に事業を展開しており、P2F改修では45年以上の実績を持つ。これまでにアマゾンやDHL、ガルフストリームなど大手からの改修実績があり、777向けの改修施設を世界各地で拡充している。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:FAAとイスラエル航空当局(CAAI)からSTCを取得した777-300ERRSF】
2. FAA、航空輸送中にリチウムイオン電池が発火したことを受け罰金を課す
貨物機で輸送されたリチウムイオン電池が関与する最近の火災は、そのような輸送がもたらすリスクを浮き彫りにしており、FAAは貨物航空会社3社に危険物規制に違反したとして、9月5日、罰金を科した。【Flightglobal News】
3. FAA、目視外飛行(BVLOS)ドローン運用規則を最終決定
連邦航空局(FAA)は、目視外飛行(BVLOS)ドローン運用に関する規則を正式に完成させた。これは、様々な分野で商業用ドローンの幅広い活用を可能にする重要なステップです。包括的な申請書として発表されたこの新しいPart 108規則は、操縦者の直接目視外飛行に関するドローンの標準化された規制枠組みを確立し、従来の個別の免除・適用除外制度から脱却する。この画期的な決定は、荷物の配送や農業からインフラ点検や公共の安全に至るまで、様々な産業に変革をもたらすことが期待されている。長年にわたり、米国領空における無人航空機システム(UAS)、いわゆるドローンの広範な展開は、運用者に機体との目視確認を義務付ける規制によって制約されてきた。特定の目視外飛行(BVLOS)運用については個別に免除が認められていたが、このケースバイケースの対応は遅く一貫性に欠け、商用ドローンの活用の拡張性を阻害していると批判されていた。2024年FAA再認可法は、目視外飛行(BVLOS)運用に関する規則Part 108の制定を義務付け、規制アプローチの重要な転換を示唆している。この新しい規則は、重量1,320ポンド(599kg)以下で主に地上400フィート(約120メートル)以下で運航する商用ドローンに適用され、安全で定常的かつ拡張可能なUAS運用のための予測可能で明確な道筋を提供することを目的としている。【Flightglobal news】
4. 気候変動により乱気流が増加すると新たな研究が警告
レディング大学の新たな研究によると、気候変動により大気がさらに不安定になると予想されており、乱気流のリスクが増大すると予想される。この研究は、過去40年間の気候の温暖化に伴い乱気流がすでに頻繁に発生しているという以前の研究結果に基づいている。科学者たちは最新の気候モデル26種を使用し、地球の気温上昇が高度約3万5000フィートの典型的な巡航高度におけるジェット気流にどのような変化をもたらすかを調べた。ジェット気流(高高度で急速に移動する空気の帯)は気候変動によって形を変え、高度による風速の差であるウィンドシアを強めている。大気科学ジャーナルに掲載されたこの研究は、2015年から2100年の間に風のシアが16~27%上昇し、大気の安定度が10~20%低下する可能性があると結論付けている。レディング大学の博士研究員で筆頭著者のジョアナ・メデイロス氏は次のように述べた。「風のせん断の増加と安定性の低下が相まって、晴天乱気流(予期せぬ航空機の揺れを引き起こす目に見えない突然の揺れ)が発生しやすい状況を作り出します。」「嵐による乱気流とは異なり、晴天乱気流はレーダーでは確認できないため、パイロットが回避するのは困難です。」論文の共著者であるレディング大学のポール・ウィリアムズ教授は次のように述べた。「近年、深刻な乱気流事故により重傷者が出たり、悲劇的なケースでは死亡事故も起きています。」「パイロットは飛行中にシートベルト着用サインをより長く点灯させ、機内サービスをより頻繁に停止する必要があるかもしれないが、航空会社は乱気流が到来する前にそれを検知し、空がより混沌とする中で乗客を守るための新たな技術も必要とするだろう。」調査結果は、この問題が地球規模で、両半球に影響を及ぼすことを示唆している。経済的損失も甚大で、リサーチ・アプリケーション・ラボラトリー(RAL)によると、乱気流による損失は既に米国の航空会社に年間1億5,000万ドルから5億ドルの損害を与えていると推定されている。【Aerospace Global News】
日本のニュース
1. JAL、飲酒機長解雇へ ホノルルで自主検査60回もゼロにならず
日本航空は9月4日、男性機長(64)が社内規程に違反する飲酒をしたことで乗務交代が生じ、ホノルル発3便が最大18時間遅れ、約630人に影響が出た問題で、当該機長を解雇も含め処分すると発表した。複数の関係者によると、解雇する方針を固めたもようだ。JALはパイロットの乗務による滞在「ステイ」中の飲酒を2024年12月から禁止しているが、当該機長は10回程度飲酒していたことが社内調査で判明し、アルコール検査器に記録された検査日を改ざんしていたこともわかった。検査器の記録を改ざんしても、会社側のシステムに接続すると正しい日時が記録されるため意味がないものの、飲酒の事実を隠そうとした心理状態が伺える。監督する国土交通省や航空会社がパイロットの飲酒問題に重い処分を下す背景には、飲酒に対しては仮に反省や改善が見られても、他の欲求を自制できる人物であるかなど、安全を守るパイロットとしての資質に疑念が生じるためだ。JALによると、問題が発生したのは現地時間8月28日。ホノルルを定刻午後2時20分に出発予定の中部行きJL793便(ボーイング787-9型機)に乗務予定だった当該機長が、前日27日の昼ごろ、ステイ先のホテルでアルコール度数9.5%のビールを3本飲んだ。翌朝には体内にアルコールが残り、ゼロになることを確認するため、出発予定時刻までの間に自主検査を約60回も繰り返していた。このうち、約10回分の検査日を改ざんしていた。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:記者会見で陳謝する安全統括管理者中川常務執行役員(中央)】
2. 福岡空港、国際線に新商業エリア12/5オープン “機能強化”出そろう
福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は9月3日、国際線旅客ターミナルビルの商業エリアを拡充し、12月5日にオープンすると発表した。家電や雑貨、菓子など13店舗が入居し、このうち6店舗が九州初出店となる。FIACは2022年5月から国際線ターミナルの増改築を進めており、商業エリアのオープンにより“機能強化”がほぼ終了する。新たな商業エリアは制限エリアにある旧出国審査場跡地周辺に展開し、出発客や訪日客に対応した物販ゾーンを設ける。入居する13店舗では和洋菓子や伝統工芸品、キャラクター雑貨などを取り扱う。このうち、家電を販売する「Air BicCamera」など6店舗が九州初出店する。また、ガチャガチャと回すタイプの「カプセルトイ」を取り扱う「ガチャワールド」も同時にオープンする。カプセルトイは訪日客の人気が高いことから、1階の到着ロビーに設置する。国際線ターミナルの増改築は、今年3月20日に供用を開始した第2滑走路の増設に合わせたもの。FIACは2022年5月から増改築を始め、立体駐車場やカードラウンジのほか、北側コンコースの延伸やアクセスホールの新設、複数の乗客が手荷物検査レーンを同時利用できる「スマートレーン」の導入など、機能強化を進めてきた。12月の商業エリアの新設により改修がほぼ出そろう。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:福岡空港国際線ターミナルに12月5日オープンする新たな商業エリア】
3. 関空拠点のジェイキャス、就航延期26年秋に ATR72受領遅れ
地域航空会社の設立を目指す「ジェイキャスエアウェイズ」(JCAS、大阪市北区)は、就航時期を2026年秋への変更を決定したと8月29日に発表した。リース導入する仏ATR72-600型機の受領遅延によるもので、当初の2026年春から後ろ倒しした。同社はシンガポールを拠点とする航空機リース会社Avation PLCと、ATR72-600のリース契約を2024年11月に締結。当初は今年10月の受領を予定していたが、機体の生産遅延により受領時期を2026年2月に変更した。JCASは関西空港を拠点に、富山と米子の2路線の開設を予定する。就航初年度は1機2路線で始め、その後5年間で7機16路線への拡大を目指すという。【Aviation wire news】
4. 日立、次世代エアモビリティの安全運航を支える機体モデリング技術を開発
日立製作所は9月4日、今後の運用拡大が期待されるドローンなどの次世代エアモビリティに対し、突風や強風などの突発的な気象変化による機体の挙動を再現できる新たなモデリング技術を開発したことを発表した。物流量の増加や重要インフラの保守・管理における人手不足など、社会インフラ維持に関する問題が深刻化する近年では、ドローンや“空飛ぶクルマ”などといった次世代エアモビリティが、重要インフラの点検や物流、さらには災害復旧の現場などで活用され始めている。ただ一方で、小型ドローンなどは強風や突風など気象状況の影響を受けやすく、事前に機体ごとの挙動や飛行特性を把握することが難しいため、運行停止や機体破損のリスクが残されていたとのこと。特に都市部のビル密集エリアや山間部などでは、従来の運行管理技術だけでは十分な対応ができていなかったという。そうした背景を受け、ドローンの安全な運用に貢献するドローンソリューションを提供する日立は、これまで培った知見に加え、気象や通信環境などさまざまな環境情報をデジタル化することでリスクを管理し、より安全なエアモビリティの運用を実現するモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発してきた。そして今般同社は、さらなる飛行リスク算出の高精度化に向け、耐風性能を測定し機体応答をモデル化することで、機体ごとの挙動を再現できるモデリング技術を開発したとする。【マイナビニュース】

【日立製作所提供:開発した機体のモデリング技術概要】
5. 宇宙産業の機器開発で都が最大1億円助成 衛星データ利活用は最大2千万円
東京都内の中小企業やスタートアップなどを対象に、宇宙産業における製品・サービス開発に対して最大1億円まで支援する助成金事業がスタート。東京都中小企業振興公社が8月4日から申請前エントリーの募集を開始しており、9月19日から申請書類提出を受け付ける。いずれも期限は10月10日17時まで。助成事業の正式名称は「令和7年度 航空宇宙産業への参入支援事業 宇宙製品等開発経費助成」。宇宙産業をテーマとする機器類の開発や、データ利活用サービスの開発などが対象で、新規開発/改良開発のいずれでも申請できる。助成対象は、原材料費や委託・外注費、直接人件費、広告費をはじめとする各種経費で、「機器開発助成」では最大1億円、「ソリューション開発助成」では最大2,000万円を支援。いずれも助成率は、助成対象と認められる経費の3分の2以内と定めている。採択事業者を効果的かつ的確に支援するため、連携コーディネータによるハンズオン支援も月1回程度実施する。【マイナビニュース】

【東京都提供】
6. ブルーインパルス、国立競技場で9/13展示飛行 世界陸上で
航空自衛隊は9月5日、東京2025世界陸上競技選手権大会が開幕する13日に、国立競技場などの上空でアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行を披露する際の飛行ルートを発表した。展示飛行は13日午後0時25分から50分ごろまでを予定。国立競技場上空を10分程度飛行後、代々木公園から中野区を経て時計回りに新宿区北部、文京区を通り荒川区内で右旋回し、東京スカイツリー、東京駅、東京タワー、渋谷駅、代々木公園、都庁の上空を飛び、帰投する。当日の天候などで、飛行ルートが変更になる可能性があるという。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:展示飛行するブルーインパルス】
7. 皆既月食をスマホで撮ろう。9月8日午前2時半から撮影チャンス到来
夜空を見上げるだけで楽しめる天体ショー「皆既月食」が、今年もやってくる。9月8日未明、天気が良ければ、2時30分から3時53分までの約83分間にわたって皆既食をじっくり楽しめる。【マイナビニュース】

【マイナビ提供:スマホで撮影した皆既月食画像】