KIT航空宇宙ニュース2025WK44

NASAの超音速実装機X-59が初飛行に成功
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1. ボーイング、純損失53億ドル 777X納入遅延で損失計上=25年7-9月期

ボーイングが現地時間10月29日に発表した2025年7-9月期(第3四半期)決算は、純損益が53億3900万ドル(約8140億3700万円)の赤字(前年同期は61億7400万ドルの赤字)で、13四半期連続の最終赤字となったものの、赤字幅を縮小した。民間機納入の回復が続いていることから3四半期連続で増収となり、主力小型機の737 MAXと中型機の787は増産体制に入った。一方、開発中の次世代大型機777-9(777X)の型式証明(TC)に遅れが生じたことを受け、49億ドルの税引前損失を計上。777Xの初納入は、早くても2027年にずれ込むことが確定した。737 MAXは月産38機で安定させ、10月には米連邦航空局(FAA)が月産42機への引き上げを承認した。787も月産7機で生産を安定させており、サウスカロライナ工場の設備投資を進めている。一方、開発中の777-9はFAAからの型式証明の取得遅れにより、納入開始が2027年になる見通し。【Aviation wire news】

2. NASAの静かな超音速ジェット機X-59が初飛行

NASAの実験的超音速航空機X-59 Quiet SuperSonic Technology (QueSST)は、カリフォルニア州パームデールの米国空軍プラント42にあるロッキード・マーティンのスカンクワークスから2025年10月28日に初飛行に成功した。ソニックブームは、超音速で飛行する航空機の前方に発生する衝撃波によって引き起こされます。簡単に言えば、空気は逃げることができず、円錐状の波に圧縮されます。この衝撃波が地上のある地点を通過すると、110dBから140dB、つまり雷鳴と同等の大きな爆音として聞こえる。現在、超音速旅行を大規模に復活させたいという希望が高まっており、世界中の多くの企業がマッハを超える次世代輸送機の開発に取り組んでいる。この取り組みを促進するため、NASAはロッキード・マーティンと共同で、21世紀の超音速飛行を実現可能かつより静かにするための方法を模索する技術実証プロトタイプであるX-59の開発に取り組んでいる。【Flightglobal news】

【ロッキードマーチン社提供:離陸する超音速実証機X-59 】

日本のニュース

1. ANA系AirJapan、3月で運航終了 787はエンジン捻出検討

ANAホールディングスは10月30日、100%子会社のエアージャパンが運航する自社ブランド「AirJapan」便の運航を、冬ダイヤ最終日の2026年3月28日で休止すると発表した。アジアからのインバウンド(訪日客)をメインターゲットに、2024年2月に就航したが、2年1カ月と20日で幕を下ろす。エアージャパンは全日本空輸の国際線も一部運航しており、コロナ前の体制に戻す。ロシア上空の通過回避が長期化し、欧州路線の飛行時間が約3割増加したことで、機材やパイロット、客室乗務員の必要数が高止まりしていることに加え、ボーイング787型機の新造機受領が遅れ、エンジンの不具合改修で運航可能な機材が不足していることなどから、見直しを決めた。ANAグループは現在、FSC(フルサービス航空会社)のANA、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーション、ハイブリッドのAirJapanの3ブランドで「マルチブランド戦略」を展開。今回の発表でこれを見直し、ANAとピーチの「デュアルブランド戦略」に切り替える。ANAHDの芝田浩二社長は、AirJapan仕様の787について、「アジアを念頭に作った仕様。(ほかのANA機との)客室のコモナリティ(共通性)もあるので、どういう使い勝手があるか、しっかり検証したい」と述べ、3機しかないAirJapan仕様機の塗装や客室仕様を維持するかなどを検討するという。また、エンジン不具合で整備中の787がまだあることから、「3機の使い勝手を検証したい」と語り、3機で計6基あるエンジンを有効活用し、機材稼働を高める案も示した。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:AirJapanの787型機】

2. ANA、全国規模2回目のグラハンコンテスト 鹿児島が涙の初優勝

全日本空輸グループは10月28日、空港で貨物・手荷物の搬送や航空機への搭降載を担当するグランドハンドリングスタッフ(グラハン)の技量を競う「ANAグループグランドハンドリングスキルコンテスト」を伊丹空港のANA格納庫で開いた。今回が2回目となる全国規模でのスキルコンテストで、従来はエリアや会社単位で実施していたが、2024年からは規模を拡大しANAグループ全体のスキル底上げを狙う。第2回の決勝には10空港13社のグラハンが2人1組で出場し、鹿児島空港の宮原知也さん(入社7年目)と青山祐也さん(同6年目)のペアが初優勝した。【Aviation wire news】

3. 新型補給機「HTV-X」ISSドッキングに成功

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機が、国際宇宙ステーション(ISS)に到着。油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアームで把持され、ISSへのドッキングも完了した。JAXAでは、H3ロケット7号機による打ち上げからISS到着までをまとめたダイジェスト動画を公開している。今回が初飛行となるHTV-Xは、2020年に運用終了した「HTV」(愛称:こうのとり)の後継機にあたる日本の宇宙機で、側面に翼のように大きく展開する太陽電池パドルを備えている点が、パッと見てすぐ分かる「こうのとり」との大きな違いだ。【Aviation wire news】

【JAXA提供:ISSのロボットアームに捕えられた新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)1号機】

4. “宇宙産業の集積地”日本橋で今年も宇宙ビジネスイベントが開幕!

10月28日から31日までの4日間、“宇宙産業の集積地”である東京・日本橋エリアを舞台に、グローバル規模の産官学にまたがる宇宙ビジネスのキーパーソンたちが一堂に会するアジア最大級のイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK 2025」が開催されている。今年で5回目の開催となる同イベントには、国内外から100以上の企業・団体が参画。約60の宇宙ビジネス団体が出展する「EXHIBITION」に加え、4日間合計で30以上もの宇宙関連イベントが行われ、最新の宇宙ビジネス動向に触れる機会を創出するとともに、さまざまな共創の種となりうる交流のきっかけとなる場だ。【マイナビニュース】

【マイナビ提供:クロスユーの中須賀真一代表理事(写真中央)や三井不動産の山下和則常務執行役員(写真最右)などが登壇したNIHONBASHI SPACE WEEK 2025のオープニングイベント】

5. リコーのペロブスカイト太陽電池がJAXAの打ち上げたHTV-X1に搭載

リコーは10月27日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し10月26日に打ち上げられた新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」に搭載されたSDX(次世代宇宙用太陽電池実証装置)に、リコーが開発するペロブスカイト太陽電池が搭載されたことを発表した。HTV-X1では、従来は機体に貼り付ける方式が採用されていた太陽電池について、展開型のソーラーパドルへと構造が刷新された。従来の衛星用太陽電池における課題として、重量が大きいことに起因する打ち上げコストの増大や、宇宙線による劣化、充分に太陽光が当たらないと発電できないなどの点が挙げられており、今回の新方式実現には太陽電池の軽量化や高耐久性などが不可欠となる。そのため今回は、低照度での高い発電量や、宇宙線に対する高い耐久性、さらに将来的にはフレキシブル化や軽量化も可能とされる素材であることから、宇宙空間での活用への期待が高まっていることも受け、リコーのペロブスカイト太陽電池が採用されたという。【マイナビニュース】

【リコー提供:HTV-X1に取付けられたぺブロスカイト太陽光パネル(黒い部分)】