KIT航空宇宙ニュース2025WK48
海外のニュース
1. EASA、A320系列に耐空性改善命令 ELAC誤作動の可能性
EASA(欧州航空安全庁)は現地時間11月28日(日本時間29日)、エアバスA320ファミリー(系列)のA321、A320、A319の一部機体に搭載されている飛行制御コンピューター「ELAC(エレベーター・エルロン・コンピューター)」が誤作動を起こす可能性があるとして、EAD(緊急耐空性改善命令)「2025-0268-E」を発出した。協定世界時(UTC)29日午後11時59分から発効する。日本では、全日本空輸の運航便に欠航が出ている。EASAによると、最近A320で起きた事象で、意図しない機首下げ(ピッチダウン)が確認された。自動操縦は作動し続けたが、一時的に高度が低下する場面があった。エアバスが実施した初期の技術評価により、飛行制御コンピューター「ELAC B L104」に不具合がある可能性が浮上したという。この不具合は、10月30日に米ジェットブルーのカンクン発ニューヨーク(ニューアーク)行きB61230便(A320)で起きたトラブルを指すとみられる。このまま対策を講じない場合、最悪のケースでは機体の構造限界を超えるエレベーターの作動が発生するおそれがあるとし、EASAは安全上のリスクを認定。エアバスが発行したAOT(運航者向け警告伝達)「A27N022-25」に基づき、対策機器への交換または改修(ソフトウェアの変更)を義務づけた。エアバスによると、太陽フレアに伴う宇宙線によりデータの破損につながる恐れがあると判明。現在運航中のA320系列のうち、影響を受ける可能性がある多数の機体をエアバスが特定した。EADでは、A320ファミリーのA318を除く全型式・全シリアル番号を対象とし、該当する構成に「ELAC B L104」を搭載している「グループ1」の機体に対し、次の飛行前までにサービス可能な「ELAC B L103+」への交換または改修を実施するよう求めている。改修場所への移動を目的とした最大3サイクルまでのフェリーフライト(回航)は認められるが、ETOPS運航や乗客の搭乗は禁止している。また、改修後の機体には再度該当ELACを搭載することを禁止。「グループ2」に該当する機体は、今後新たにグループ1に該当する構成へ変更することを禁止した。該当のAOTは、今後改訂された版も同様の効力を持つとし、技術的な問い合わせはエアバスが窓口となる。エアバスによると、10月末時点で運航中のA320系列の機体は世界で1万1293機。このうち、新型エンジンを搭載する「neo」は4220機で内訳はA320neoが2286機、長胴型のA321neoが1896機、短胴型のA319neoが38機となり、従来型「ceo」は7073機で内訳はA320ceoが4154機、A321ceoが1697機、A319ceoが1222機となっている。この影響で、ANAは29日の国内線65便を整備作業のため欠航し、約9400人に影響が出る見通し。ANAは今年9月末時点で、A321neoを22機、A320neoを11機、A321ceoを4機の計37機を運航している。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:JetBlueのA320neo型機
2. スターラックス、日本人CA募集 成田・関空拠点に26年採用
台湾のスターラックス航空(星宇航空)は、日本人客室乗務員の採用を始めた。成田空港または関西空港を拠点に勤務する。契約期間は3年間で、更新や正社員登用は希望や評価を踏まえて判断される。応募は12月12日まで。業務内容は、航空機内の保安要員としての業務、乗客への接客サービス。勤務はシフト制で、土日祝日や深夜帯(午後10時から翌午前5時)に従事する場合がある。採用後の訓練は、台湾・桃園市のスターラックスのオペレーションセンターで実施。訓練期間は、2026年3月から6月、または6月から9月を予定している。日本国内の居住地から成田または関西空港まで公共交通機関で90分以内に通勤可能であることが条件となる。応募には日本での就労資格が必要で、学歴は文部科学省が認可する国内外の大学・短大の卒業者と、2026年3月卒業予定者が対象。英語力は、TOEIC 600点以上、IELTS 4.5以上など、英語資格スコアの提出が求められる。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:StarLux航空のA350-900型機】
3. 中国の有人宇宙計画で“初の危機” 「神舟二十号」損傷、飛行士は別の宇宙船で帰還
2025年11月5日に地球への帰還を予定していた中国の有人宇宙船「神舟二十号」で、帰還直前の点検中に窓ガラスに小さなひびが見つかった。原因はスペース・デブリ(宇宙ごみ)の衝突とみられ、宇宙飛行士3人は9日後の11月14日、すでにドッキングしていた別の宇宙船「神舟二十一号」に乗り換えて地球へ戻った。運用中の宇宙船が損傷し、宇宙飛行士が別の宇宙船で帰還するのは、中国の有人宇宙計画では初の事態である。【マイナビニュース】

【中国有人宇宙工程弁公室(CMSE)提供:神舟二十号のクルーを乗せて帰還した、神舟二十一号の帰還カプセル】
4. ブルー・オリジン「ニュー・グレン」1段目回収に成功 スペースXに続く再使用ロケットの新たな担い手
打ち上げられたロケットが、エンジンを噴射しながら垂直に着陸する――。そんなSF映画のような光景を、イーロン・マスク氏率いる「スペースX」が日常のものにして、早10年が経った。この間、ロケットの回収と再使用をめざし、多くの企業が開発や試験に挑んできたが、そのなかからついに、衛星打ち上げ用ロケットの第1段を着陸回収することに成功した2社目が現れた。実業家ジェフ・ベゾス氏が率いるブルー・オリジンだ。2025年11月14日5時55分(日本時間)、発射台から飛び立った同社の新型ロケット「ニュー・グレン」2号機の第1段は、打ち上げから9分15秒後、自らのエンジンを噴射しながら減速し、フロリダ沖に待機する着陸船の甲板へと降り立ったのである。【マイナビニュース】

【Blue Origin提供:ロケットエンジンを噴射しながら着陸しようとするニュー・グレンの第1段機体】
5. ジョビー、アーチャーを企業秘密窃盗の疑いで提訴
ジョビー・アビエーションは、競合するエアタクシー開発会社アーチャー・アビエーションとその従業員1人を、企業秘密を盗み、その秘密を利用してエアタクシーの着陸地点に関する不動産取引を妨害したとして訴訟を起こした。カリフォルニア州サンタクルーズに拠点を置くジョビーは、11月19日にカリフォルニア州高等裁判所に訴訟を起こした。同社は、裁判で決定された金銭的損害賠償を求めている。カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くアーチャー社は、昨年夏にジョビー社を退職してアーチャー社の職に就いた元ジョビー社員に関する疑惑を否定している。訴状によると、その従業員ジョージ・キヴォルク氏はジョビー社の州および地方政策の責任者であり、その立場で技術、提携、規制戦略に関するジョビー社の機密情報にアクセスしていたという。【Flightglobal news】
日本のニュース
1. JAL、CA・地上係員志望者向け短期集中講座 26年2月から順次開講
日本航空は11月28日、現役の客室乗務員(CA)などが講師を務める「JALエアラインスクール」の短期集中講座を2026年2月から順次開講すると発表した。客室乗務員コース東京と大阪、名古屋、福岡、鹿児島の5会場で、グランドスタッフコースは東京と札幌で開催する。同日から先着順での受付を開始した。短期集中講座はそれぞれ4日間で、入門から基礎までを学ぶ。対象は18歳以上で客室乗務員やグランドスタッフを目指している人。2コースとも航空業界の現状やJALの取り組みなどを学ぶほか、自己分析や面接個別指導などの就職活動に必要なスキルを習得できるとしている。客室乗務員コースは東京と大阪、名古屋、福岡、鹿児島の5会場で、東京は2月8日から11日、18日から21日、25日から28日、3月11日から14日の4日程。大阪は2月9日から12日、3月17日から20日の2日程で開催する。名古屋と福岡、鹿児島1日程のみで、名古屋は3月23日から26日、福岡は2月16日から19日、鹿児島は3月24日から27日となる。定員は東京の2月8日開催分と鹿児島が10人、そのほかは20人。グランドスタッフコースは、東京が2月22日から25日と3月から18日の2日程、札幌は3月7日から10日の1日程で開催する。定員は各20人ずつ。料金は客室乗務員・グランドスタッフコースともに東京会場が22万円、残りの会場は16万5000円。東京会場のみ、研修施設などの見学や体験などができる。申し込みは同スクールのウェブサイトで受け付けており、定員になり次第終了する。12月25日までに申し込む場合、人数限定で10%割り引く。このほか、入学を検討する人向けの説明会をウェブで開催。客室乗務員やグランドスタッフなどの講師が講座内容やクラスの雰囲気、合格実績などを説明する。客室乗務員コースは11月29日、グランドスタッフコースは30日で、それぞれ午前10時から午前11時まで。また、講師による個別相談会も随時設ける。【Aviation wire news】
2. ICAO、新議長に大沼氏 日本から初選出
国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)は現地時間11月26日、執行機関である理事会の新たな議長に、日本の大沼俊之・ICAO日本政府代表部特命全権大使を選出した。任期は2026年1月1日から3年間で、日本からの選出は初めて。前任となるサルバトーレ・シャキターノ氏(イタリア)は、2020年から2期にわたり議長を務めた。ICAO理事会は、加盟36カ国で構成される執行機関。議長は193の加盟国を束ねる。シャキターノ氏は「全ての人のための航空輸送」というビジョンの下、死者ゼロ・排出ゼロの2050年目標に向けて各国をまとめてきたと述べ、「合意形成は多国間協調の根幹であり、議長の重要な責務だ」と語った。サラザールICAO事務総長は「世界の航空が転換点を迎える中、大沼氏の選出は国際社会の信頼と期待の表れだ」と評価した。大沼氏は航空局次長を経て、2024年12月からICAO日本政府代表部特命全権大使として理事会に参加。航空分野で20年以上のキャリアを持ち、国際・国内の政策立案に携わってきた。脱炭素化をはじめとする国際的な航空課題に関しては、国土交通省航空局(JCAB)の審議官や国際航空担当の大臣官房審議官などを歴任している。これまで日本からICAO議長が選出されていないことから、大沼氏は航空各社が加盟する世界最大の業界団体IATA(国際航空運送協会)のAGM(年次総会)など、国際イベントにも出席。世界の航空関係者に支持を求めてきた。日本はICAOに1953年10月8日加盟。加盟3年後の1956年から理事国を務めている。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供ICAO新議長に選出された大沼俊之ICAO日本政府代表部特命全権大使】
3. ENEOS/東農大/名鉄観光サービス、SAFをテーマに探究学習プログラム実施
ENEOS/東京農業大学/名鉄観光サービスの3者が、北海道オホーツクで中学生と高校生を対象とした探究学習プログラムを実施した。プログラムでは、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)をテーマに、地域の農作物や廃棄物を活用する可能性について生徒が考察した。このプログラムには、恵泉女学園中学・高等学校、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校、東京都立園芸高等学校、東京農業大学第一高等学校・中等部の4校から計39名が参加。ENEOSによる事前授業でSAFについて学習した後、8月25日から28日にかけて北海道で現地研修を行った。現地研修では「農業とバイオ燃料原料の関係」などをテーマに、生徒が学校混成のグループで農家や企業を訪問した。現地での体験や関係者との交流を通じ、SAFへの理解を深めたという。研修後、生徒はグループごとにENEOSへプレゼンテーションを実施。北海道の気候や地域課題を踏まえ、魚のあらや内臓、甜菜、スイートコーン、家庭からの廃食油などをSAF原料として活用するアイデアが示されたとのこと。3者は今後もSAFの普及や温室効果ガス排出削減に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:生徒によるプレゼンテーション終了後の様子】
