KIT航空宇宙ニュース2023WK02

2023年中に初飛行が予定されているNASAが開発中の超音速デモンストレーターX-59型機
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK02

海外のニュース

1.ヴァージンの空中発射ロケット打ち上げが失敗、初の英国からの軌道到達ならず

米宇宙企業ヴァージン・オービットは2023年1月10日、小型ロケット「ローンチャーワン」の打ち上げに失敗した。打ち上げは6機目で失敗は2機目。今回が初の英国からの打ち上げだった。過去、英国本土から衛星が打ち上げられたことはなく、成功すれば歴史的快挙となり、また英国の宇宙ビジネスにとって大きなはずみにもなるはずだった。打ち上げの拠点となったコーンウォール宇宙港の代表メリッサ・ソープ氏は、「宇宙は困難な場所ですが、私たちはまだ始まったばかりなのです」とコメントしている。ヴァージン・オービット(Virgin Orbit)は、米国カリフォルニア州に拠点を置く宇宙企業で、小型ロケットによる衛星打ち上げビジネスを展開している。ヴァージン・レコードやヴァージン・アトランティック航空などを傘下にもつことで知られる、英国ヴァージン・グループの一社でもある。同社のロケット「ローンチャーワン(Launcher One、ランチャーワンとも呼ぶ)」は、ケロシンと液体酸素を推進剤とする2段式ロケットで、オプションで3段目を追加することも可能。高度500kmの太陽同期軌道に300kgの打ち上げ能力をもち、小型・超小型衛星に特化した打ち上げサービスを提供している。同社は日本の大分空港からもローンチャーワンを運用する計画を進めており、早ければ今年から運用が始まる予定だったが、今回の失敗により遅れることが予想される。【マイナビニュース】

【ヴァージン・オービット提供:打ち上げに成功した2号機の写真】

2.NASAは現在、超音速機X-59の2023年の初飛行を目指している

NASAは現在、遅れているX-59 Quiet Supersonic Technology (Quest) デモンストレーター航空機が、未解決のシステム評価の完了後、2023年に初飛行させる予定です。代理店とパートナーのロッキード・マーチンは、2023年の初飛行目標を確認している。このプログラムはすでに大幅に遅れており、NASAは以前、2021年秋にX-59を初飛行させることを目指していた。一方、NASAは X-59プログラムについて批判に直面している。NASAは、X-59プログラムは、民間の超音速空の旅の再開を告げる可能性のある技術を開発していると述べているが、ある擁護団体は、航空業界の二酸化炭素排出量を削減するという米国政府の目標に反するという理由で、NASAにプログラムを見直すよう求めている。【Flightglobal News】

【ロッキード・マーチン提供:NASAのX-59超音速デモンストレーターの想像図】

3.FAA のコンピューターの故障により数千のフライトが遅延

連邦航空局の夜間のコンピューターの停止により、旅行者の計画が混乱し、水曜日に何千ものフライトが遅延した。パイロットに安全情報やその他の情報を提供するNOTAM(ノータム)と呼ばれるシステムが故障したため、FAA は東部時間の午前7時過ぎに米国からのすべてのフライトの出発を停止した。FAA は、フライトの再開が許可された午前9時少し前にシステムを復旧させた。水曜日の夜の声明で、FAAは予備調査で「破損したデータベース・ファイル」が機能停止の原因であることが判明したが、「サイバー攻撃の証拠は見つかっていない」と述べた。【ABCニュース】

【Flightglobal提供】

4.米国連邦航空局は、5G耐性の高度計の取付を義務化

米国連邦航空局 (FAA) は、2024年2月までに、約8,000機の民間航空機すべての運航者に、5G Cバンド対応の電波高度計または承認済みフィルターのいずれかを装備することを指示した。当局は、高度計データの誤り、誤った地形および衝突回避システムの警告、および誤った着陸装置の警告を含む潜在的な 5G干渉に関する 100件の報告に対応して、1月9日の規制当局への提出書類で新しい高度計基準を提案している。「乗務員が誤った警告に対して鈍感になるにつれて、正確な警告に反応する可能性が低くなり、警告の安全上の利点が完全に無効になり、破滅的な事故につながる可能性が高くなる」と提案は警告している。2022年1月、米国の携帯電話会社AT&TとVerizonは、電波高度計で使用される4200~4400MHzの範囲に近い 3700~3980MHzの無線範囲を使用する最初の米国5Gネットワークを有効にした。米国の携帯電話会社が5Gネットワークを立ち上げ、使用する帯域幅を拡大するにつれて、リスクが増大すると同機関は警告している。これらの企業は当初、一部の Cバンド5G展開を2023年7月まで延期することに自発的に同意したが、米国の航空会社は、航空機が干渉を受けないようにするために航空機の改造を開始した。FAAは現在、2024年までの指令は、「無線会社が航空の安全性を維持しながらネットワークを最大限に活用できるようにする」長期的な解決策であると述べている。FAAは、一部の高度計は「変更なしで 5G Cバンドに対する耐性をすでに実証している可能性がある」と述べているが、他のものはフィルターを装備するか、交換する必要があるとしている。【Aviation Business News】

【Aviation Week提供】

日本のニュース

1.政府専用機、ユーグレナ「サステオ」使用 国産SAFでCO2削減

ユーグレナは、政府専用機B-777が1月9日に羽田空港からパリへ向かう際、同社が製造・販売する国産の代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」である「サステオ」を供給した。政府専用機にSAFが使用されたのは今回で2回目。前回2022年11月の運航時も、国産SAFであるサステオが使われた。使用量は2回とも同じで、正副2機のB-777(80-1111、80-1112)に1回あたり計5キロリットル給油された。今回使用されたサステオは、原料に使用済み食用油と微細藻類ユーグレナから抽出されたユーグレナ油脂などを使用。従来の石油由来ジェット燃料と混合したもので、国際規格「ASTM D7566」に準拠している。燃料の燃焼段階ではCO2(二酸化炭素)を排出するが、使用済み食用油の原材料である植物とユーグレナは、ともに成長過程で光合成によりCO2を吸収するため、SAF使用時のCO2排出量が実質ゼロになることから、カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)実現に貢献すると期待されている。ユーグレナは、2018年11月にバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを竣工。2021年3月にバイオジェット燃料が完成した。サステオを使ったフライトは2021年6月に実現し、今回で12回目となった。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ユーグレナ社のSAF「サステオ」を搭載した政府専用機777型機】

2.ANAグループ、2022年の定時到着率世界1位 2年連続トップに=英Cirium調査

全日本空輸を中核とするANAグループは1月12日、英国のデータ分析会社「シリウム(Cirium)」が調査した2022年の年間定時到着率で、全世界とアジア太平洋地域で1位を獲得したと発表した。世界1位は2年連続、アジア太平洋地域1位は2018年から4年連続で獲得した。シリウムは定刻に対して15分未満の遅延を「定時到着」と定義。全世界の主要航空会社を対象にした調査のうち、グループ航空会社の運航便を含めた「ネットワーク部門」で首位となった。ANAグループの場合、ANA本体とANAウイングス、エアージャパンの3社が対象で、他社が運航するコードシェア(共同運航)便は含まない。ANAグループの定時到着率は89.79%だった。一方、ANA本体の定時到着率は88.61%で、中核社を対象とした「メインライン」部門で、全世界とアジア太平洋地域で2位となった。【Aviation Wire News】

3.JAL、紙容器で機内食廃プラ削減 メニューは若手シェフ考案

日本航空は1月10日、日本から出発する国際線中長距離線のプレミアムエコノミーとエコノミークラスの機内食をリニューアルした。若手シェフがSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)をテーマとする「未来の食材」を使ったメニューを監修し、食器は紙製に変えることで、機内の使い捨てプラスチック削減を進める。これまで同クラスのメニューは、食プロデューサーの狐野扶実子氏がサイドディッシュ(前菜)、メインディッシュ(主菜)を若手シェフを発掘する競技会「RED U-35」のファイナリストが担当していたが、今回からは前菜と和洋2種類の主菜まで1人のシェフが監修するようにし、ベトナム料理、イタリア料理、日本料理の新進気鋭の3人が、3カ月交代で担当する。1月10日からは、メインディッシュ用の容器とフタを紙製に変更。従来品と変わらない容量と強度で、これに先駆けてトレーマットは2022年8月から紙製のものを導入している。今年秋ごろにはすべての対象路線へ展開できる見通しで、2019年度実績比でメインディッシュ用の容器とフタで年間約150トン、トレーマットで約25トンの計175トン相当の使い捨てプラスチック削減を目指す。容器のフタには、和食用は箸(はし)、洋食用はフォークとナイフのイラストを入れ、和食に接した機会が少ない外国人など、誰にでもわかりやすくした。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:紙容器を使用したJALエコノミークラスの食事】

4.ピーチ、CA採用 5月以降入社50人

ピーチ・アビエーションは1月10日、2023年度入社の客室乗務員の募集を始めた。コロナ後の航空需要回復を見据えたもので、入社時期は5月以降となる。エントリー締切は1月30日正午。勤務地は関西空港や成田空港、那覇空港をはじめ、会社が指定する場所。採用人数は50人程度を予定している。雇用形態は当初は有期雇用契約の訓練生としてスタートし、客室乗務員の辞令が発令されると無期雇用契約の正社員に切り替わる。対象は、3月末までに専門学校、高専、短大、4年制大学、大学院を卒業・修了している人か、卒業見込みの人。最終学歴が高卒の場合は、3年以上の就労経験が必要になる。選考はWebエントリーと面接、筆記テスト、身体検査。エントリーはピーチの採用サイトで受け付ける。1次面接と筆記試験は大阪会場が2月11日と12日のいずれか1日で、東京は14日のみ。2次試験はオンラインで2月25日か26日のいずれか、身体検査は3月5日で、東京で実施する。選考日程や内容、会場などは変更する可能性があり、個別の日程調整は対応できないとしている。【Aviation Wire News】

5.ジェットスター機爆破予告で中部空港、国内線62便欠航

1月7日朝に起きたジェットスター・ジャパンの成田発福岡行きGK501便(エアバスA320)への爆破予告の影響で、同便がダイバート(目的地変更)した中部空港(セントレア)では発着便の運航が昼まで一時見合わせとなり、7日は欠航や遅延などの影響が出た。滑走路の運用は午後0時15分に再開。空港を運営する中部国際空港会社によると、一部便に影響があるものの、午後6時の時点で出発・到着便ともに平常通りの運航だという。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:中部空港滑走路上で乗客を緊急脱出させたJetstar JapanのA320型機】

6.古川聡宇宙飛行士らが研究不正問題の経緯や対応を説明

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、過去に同機構が実施した医学系研究において研究不正が発見されたことを受け、調査結果に基づき、関係するJAXA職員として山川宏理事長ら3名に処分を行ったことを発表。1月12日には、その詳細に関する記者説明会を開いた。今回研究不正が発見されたのは、JAXAが2016年~2017年にかけて実施した「長期閉鎖環境(宇宙居住環境模擬)におけるストレス蓄積評価に関する研究」で、宇宙飛行士の古川聡氏が研究実施責任者を務めた。2022年11月25日には、同研究におけるデータの捏造や改ざんが発覚したことから、厚生労働省が定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に対する不適合があったとして、同省などへの報告、および記者説明会を行っている。なお、今回の不適合を受け、JAXAは古川氏に対し戒告の処分を行ったのに加え、山川宏理事長・鈴木和弘副理事長に厳重注意、佐々木理事に訓告の処分を行っている。古川氏は、研究成果を得るためにデータの捏造などを指示したことはないとする。加えて、再発防止のための対策として「責任者として確認を徹底していく」と話した。また、2023年度内に予定される宇宙飛行士として国際宇宙ステーションへのフライト任務などは予定通り行う見通しだといい、「1つ1つ任務を誠実に遂行することで信頼を回復していきたい」と語った。【マイナビニュース】

【JAXA提供:記者会見に登壇したJAXAの古川聡宇宙飛行士、佐々木宏理事、小川志保事業推進部長】