KIT航空宇宙ニュース2022WK13
海外のニュース
1. A380、代替燃料「SAF」100%で初飛行 使用済み食用油原料
エアバスは現地時間3月28日、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を100%使用して、総2階建ての超大型機A380型機を初飛行したと発表した。SAF 100%で飛行する試験機は、A350とA319neoに続き3機種目となる。同機に4基搭載するロールス・ロイス製エンジン「トレント900」のうち1基に、SAFを100%使用。仏トゥールーズのブラニャック空港を3月25日午前8時43分に離陸し、約3時間飛行した。今回使用したSAFはトタル製のもの27トンで、使用済み食用油や廃棄油脂を原料とした。エアバスは、2035年までのゼロエミッション(排出ゼロ)飛行の実現に向けた取り組み「ZEROe」プログラムを進めている。SAFは現在、既存の化石由来ジェット燃料に50%まで配合して使用することができる。エアバスは今後10年で、100%SAFの認証取得を目指す。【Aviation Wire News】
【Aviation Wire提供:SAF100%で飛行試験したA380型機】
2.ベールを脱いだ、NASAの新たな月ロケット「スペース・ローンチ・システム」
現在NASAは、アポロ計画以来となる有人月探査計画「アルテミス」を進めており、2030年代には有人火星探査も計画。さらに、その両方を実現するため月周回有人拠点「ゲートウェイ(Getaway)」の建設も計画している。SLSは、こうした計画の中で、宇宙飛行士を乗せた「オライオン」宇宙船や、ゲートウェイを構成する各モジュールなどの打ち上げを担う、まさに要となるロケットである。全長は98m、直径は8.4mと、おおよそ30階建てのビルに相当する巨大ロケットで、地球低軌道に95t、月へ向けては27tもの打ち上げ能力をもつ。まさに、かつてアポロ計画で人類を月へ送った「サターンV」を現代に蘇らせたようなロケットである。しかし、その構成はサターンVとは大きく異なる。SLSの機体やロケットエンジンなどは、開発コストや期間の削減などを目的に、スペースシャトルの遺産を最大限に活用しているためである。SLSは2段式で、第1段にあたるコア・ステージのタンクは、シャトルの外部燃料タンク(ET)をほぼ流用。エンジンも、シャトルのメイン・エンジンとして使っていた「RS-25(SSME)」を4基装備する。コア・ステージの両側には固体ロケット・ブースターを装備するが、これもシャトルのSRBを継ぎ足して延長したものを使用する。【マイナビニュース】
【NASA提供:ケネディ宇宙センターの射点に立ったスペース・ローンチ・システムの1号機】
3.デ・ハビランド・カナダ社が消防飛行機プログラムを復活
デ・ハビランド・オブ・カナダ・リミテッド(デ・ハビランド・カナダ)社が、デ・ハビランドDHC-515消防飛行艇(以前はCL-515プログラムとして知られていたもの)を発売すると発表した。同社は2016年にCanadair社から CLプログラムを取得し、2019年から生産への復帰を検討していたが、フリート管理とCOVID-19パンデミックによる財政問題により、計画は停滞していた。今回そのプログラムの復活と包括的な刷新を、デ・ハビランド・カナダの最高経営責任者であるブライアン・チャフェが表明した。このCL-515 飛行艇は、約7,000リットルの最大量の水を運ぶ能力を備え、わずか12秒でタンクに水を補充でき、高揚力翼と新型ターボプロップエンジンを備え、炭素排出量を最大50%削減、燃料消費を25~40%減少させている。【Flightglobal News】
【De・Havilland Canada社提供:デ・ハビランド・カナダ社の消防艇CL-515】
日本のニュース
1.小型月着陸実証機「SLIM」はどんなミッション? ユニークなローバーも搭載
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月15日、小型月着陸実証機「SLIM」(Smart Lander for Investigating Moon)に関する記者説明会を開催し、ミッションの詳細について明らかにした。SLIMは2022年度中の打ち上げを予定。3~4カ月かけて月へ向かい、高精度なピンポイント着陸を目指す。SLIMには2機の小型ローバーも搭載する計画だという。日本の月探査機は、2007年に打ち上げられた「かぐや」(SELENE)以来。かぐやは月周回軌道から月面を詳細に観測したが、SLIMはその次のステップとして、いよいよ月面への着陸に挑む。SLIMが狙うのは、目的地付近に正確に着陸する技術の実証だ。かぐやなどによる観測の結果、現在は月面の様子がかなり詳細に分かっている。月面探査では、「あのクレーターの隣のあの岩石が見たい」というレベルのニーズが大きくなっており、そのためには高精度な着陸技術が必要となる。これまでの月面着陸では、精度は数km以上のオーダーであったが、これではそういった探査は難しい。SLIMプロジェクトマネージャの坂井真一郎氏(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 教授)は、「SLIMでは100mオーダーを目指す」としており、まさに「ピンポイント」な着陸というわけだ。また、小型であるのも大きな特徴だ。SLIMの重量は約200kg(推進剤なし)/約700~730kg(打ち上げ時)、横幅は2.7m。小型機であれば、それだけコストを抑えることができ、限られた予算の中で、探査の高頻度化が可能になる。実際、SLIMはX線分光撮像衛星「XRISM」との相乗り打ち上げにより、低コスト化を実現している。【マイナビニュース】
【JAXA提供:月面探査機「SLIM」ミッションの概要】
2.セントレアでスカイマークが入社式を開催
4月1日は、新年度のはじまり。航空業界でもコロナ禍の厳しい状況の中、空港・航空会社で入社式が開催されました。このうち、中部国際空港はボーイング787初号機が展示されている「フライト・オブ・ドリームズ」で13名、スカイマークは羽田空港の格納庫で13名が出席、新たな門出に誓いを立てていました。セントレアでは、入社式の会場としてフライトパークを利用。2021年12月にリニューアルオープンし、何度来ても楽しめる空間に生まれ変わったことをあげ、セントレアの犬塚社長が厳しい環境でも、工夫をしながら新しい取り組みにチャレンジすることを呼びかけました。さらに、「セントレアに行ったらなんかいい空港だな」や、地域住民を含め「応援したいな」と思ってもらえる空港になるチャレンジを呼びかけました。スカイマークは、2020・21年度とオンラインで実施した入社式を3年ぶりに対面で実施。スカイマーク洞社長は、約2,600名の社員が様々な職種でバトンをつなぎながらワンチームで飛行機を飛ばしているという感動を肌で感じられ、風通しが良くチームワークが強固な企業風土造りと働き方改革を進めていると自社の特徴を紹介。コロナからの回復も期待でき、躍進にむけて力を発揮、羽ばたいていただきたいと祝辞を贈りました。入社式後、スカイマークの新入社員全員で、羽田空港からの出発便の見送る初仕事を行いました。【FlyTeamニュース】
【スカイマーク提供:セントレア フライトパークで開催された入社式】