KIT航空宇宙ニュース2022WK16
海外のニュース
1.米航空各社、マスク義務終了 TSAが公共交通機関での着用見直し
米国運輸保安局(TSA)は、航空機を含む公共交通機関でのマスク着用義務を現地時間4月18日付で取りやめた。米フロリダ州の連邦地裁が18日に、公共交通機関でのマスク着用義務を「無効」と判断したことを受けた措置で、米航空各社も同日付けで追随する動きがみられる。マスク着用を事実上撤廃した航空各社のうち、アメリカン航空は、利用客と従業員は米国内の空港と国内線でマスク着用が不要となったと18日に発表。一方で「地域の条例や国際線の搭乗時にはマスクが必要な場合がある」と注意を呼びかけている。アラスカ航空も18日に、「2年近く前から搭乗券のようなものだった」(同社)マスクの着用を任意とすると発表。カナダ発着の国際線ではマスク着用が引き続き必要で、カナダのほかベリーズとコスタリカ、メキシコの各国の空港では必要だとしている。サウスウエスト航空も、マスク不要の方針を18日に発表。機内とほとんどの空港で不要となったものの、一部の都市や州、国では着用が求められる可能性があることから、渡航先の情報を確認するよう呼びかけている。【Aviation Wire News】
2.史上初「民間宇宙飛行士」が宇宙ステーションへ – 宇宙飛行の新時代の幕開け
史上初となる国際宇宙ステーション(ISS)への民間宇宙飛行ミッション「Ax-1」が、2022年4月9日から始まった。米宇宙企業アクシアム・スペースが企画したもので、4人の「民間宇宙飛行士」が参加。スペースXの宇宙船クルー・ドラゴンでISSを訪れ、約8日間滞在し、実験や研究を行う。ISSへの宇宙旅行はこれまでも行われてきたが、今回は民間主導による、民間宇宙飛行士のミッションという点で一線を画する。そして、将来の宇宙ステーションの商業化という目標に向けた大きな一歩ともなるものである。アクシアム・スペースは2016年に設立された企業で、テキサス州ヒューストンに拠点を置く。宇宙飛行、旅行の手配や仲介、サービスの販売を行うほか、将来的にはISSに自社製のモジュールを結合したり、単独で商業用の宇宙ステーションを運用したりすることも目指している。同社は2020年3月、宇宙企業スペースXとの間で、クルー・ドラゴン宇宙船を使ったISSへの飛行を契約。「Ax-1 (Axiom Space-1)」と呼ばれるミッションが動き出した。これまで、ISSへの飛行・滞在ミッションはすべて、国の宇宙機関が主導する形で行われてきた。ロシアの「ソユーズ」宇宙船を使った宇宙旅行も行われているが、いずれもロシアの宇宙機関・宇宙企業の宇宙飛行士が指揮を執っていた。だが、今回のAx-1は、純粋な民間企業が、民間人のみを乗せ、民間の宇宙船を使って宇宙ステーションに飛行、滞在する、史上初のミッションとなる。【マイナビニュース】
【Yahooニュース提供:「Ax-1 (Axiom Space-1)」の4人の民間宇宙飛行士】
3.英国は、業界を超えた新たな取り組みにより、ゼロエミッションのフライトリーダーシップを目指す
英国政府の大臣は、新しい航空機タイプの開発を推進し、インフラストラクチャをサポートするための新しい組織の創設により、国の航空宇宙産業をゼロエミッション航空のリーダーとして位置付ける計画を推進すると述べた。4月20日に発表されたゼロエミッションフライト(ZEF)デリバリーグループは、ゼロエミッションフライトを実現するため、業界と政府から横断的に集められた「航空専門家」で構成され、今年初めに終了したAerospace Technology Institute(ATI)が主導するFly Zeroプロジェクトによって実施された研究を引き継ぐ。今年初め、英国政府は、Innovate UKのFuture Flight Challengeプログラムに1億2500万ポンドに加えて、今後3年間で6億8500万ポンド(8億9500万ドル)をATIに提供すると発表している。【Flightglobal News】
【Fly Zero提供:Fly Zeroが発表した水素エネルギー推進中型航空機の想像図】
日本のニュース
1.三菱重工、航空エンジン向け燃焼器の工場拡充
三菱重工業は、航空エンジン部品の製造を手掛ける三菱重工航空エンジン(MHIAEL)の工場拡張を決定した。MHIAELは長崎造船所内にあり、第2期棟を2024年3月に完成させる計画を進める。エアバスA320neoのエンジン「PW1100G-JM」向け燃焼器を手掛けており、コロナ後の成長につなげる。今回の第2期投資では、第1期棟の北側と東側に隣接して第2期棟を建設し、工場を現在の約5400平方メートルを約2倍となる1万1000平方メートルに拡張。計画では、現在は海外メーカーに委託している一部の製造工程を取り込むことで、燃焼器の完全一貫生産を実現し、生産設備を増強して大幅な増産に備える。MHIAELは長崎工場の第1期を2020年11月に稼働。米プラット&ホイットニー(PW)製PW1100G-JMの燃焼器部品を製造している。第2期棟を建設することで、内製力とコスト競争力を強化する。三菱重工によると、エアバスはA320neoの段階的な増産を計画しており、PW1100G-JMの燃焼器部品とアフターサービスの需要は、今後数年間で倍増する見通し。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:MHEL航空エンジン長崎工場拡張後の想像図】
2.風を細かく予測、ヘリ・ドローン運航支援 ウェザーニュース「FOSTER-GO」機能強化
ウェザーニュースはこのほど、航空事業者向けの航空気象サービス「FOSTER-GO」の機能を強化し、「強風リスク」と「瞬間風速」の2種類の風予測を追加した。風向きや風速を細かく予測することで、ヘリコプターやドローンの運航支援を強化する。追加した風予測のうち「強風リスク」は、上空150メートルまでの風向・風速を高度10メートル単位、250メートル四方のメッシュ(マス目)の高解像度で予測。専用ウェブサイトのマップ上に「安全」「注意」「危険」の3段階で表示する。「瞬間風速」は全国約1000地点の瞬間風速を、1時間ごと48時間先までグラフで確認できる。「FOSTER-GO」はヘリコプターに特化した気象情報を提供するサービスで、2021年4月に運用を開始。現在はドクターヘリや消防、警察や自衛隊のヘリコプターで導入が進んでいる。これまで提供していた風のデータは空港や代表的なヘリポートなど特定の地点が対象で、3時間ごとの予測となっていた。今回の機能強化では予測エリアを細分化。運航管理者は運航に影響があるエリアや突風の可能性を一目で把握することができるようになった。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:ウェザーニュースの「FOSTER-GO」】
3.QPS研究所とIHI、イプシロンロケット6号機での衛星打ち上げ契約を締結
九州のQPS研究所とIHIエアロスペースは4月18日、QPS研究所の小型SAR(合成開口レーダー)衛星「QPS-SAR」の3号機および4号機の同時打ち上げをIHIエアロスペースに委託する契約を締結し、2022年度中にイプシロンロケット6号機で打ち上げる予定であることを発表した。IHIエアロスペース(IHIグループ)ならびにイプシロンロケットの商業衛星打ち上げ受注は今回が初となるという。QPS-SAR衛星は、収納性が高く、10kgと軽量でありながら大型の展開式アンテナを備えるのが特徴で、この大型アンテナによって強い電波を出すことが可能になり、従来の2トン級大型SAR衛星に対して約20分の1の質量(100kg以下)、かつ約100分の1のコストで、地上解像度1mを実現している。現在、1号機「イザナギ」ならびに2号機「イザナミ」の2機が運用されている。今回の3号機および4号機は、2号機をベースとし、太陽電池パネルとバッテリーを追加し、使用できる電力量を増やすことで、さらに精細な観測データをより多く取得できるよう改良が加えられる計画だという。また、JAXAとアルウェットテクノロジーによって共同開発された「軌道上画像化装置」を搭載することで、SAR観測データを軌道上の衛星内で画像処理を行えるようにすることで、衛星からのダウンリンク量の圧縮が可能となり、即応性の高い観測ニーズに応えられるようになることが期待されるとしている。【マイナビニュース】
【QPS研究所提供:QPS研究所が開発した小型合成開口レーダー衛星「QPS-SAR」】