KIT航空宇宙ニュース2022WK24

学習院大学が超電導磁石による磁気浮上コンセプトの運用試験に成功「高勾配型超伝導バルク磁石装置の概略図」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK24

海外のニュース

1. エアバス、A321XLRが初飛行に成功

エアバスは現地時間6月15日、開発が進む小型機A321XLRが初飛行したと発表した。単通路機では世界最長となる最大11時間飛行できる機体で、ハンブルクのフィンケンヴェルダー空港を午前11時5分に離陸し、約4時間35分飛行した。2024年の就航を目指す。機体の飛行制御やエンジン、主要システムを高速と低速両方で試験した。A321XLRは、A321neoの航続距離を延長した超長距離型で2019年6月にローンチ。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味し、燃料タンクを増設することで単通路機では世界最長の航続距離4700海里(約8704キロ)を実現し、最大11時間飛行できる。エアバスによると、東京を起点とした場合、シドニーやデリーなどへ直行便を運航できるという。最大離陸重量(MTOW)は101トン。メーカー標準座席数は2クラス180-220席、1クラスの場合は最大244席設定できる。座席当たりの燃費は、旧世代機と比べて30%改善される。最初の機体は5月にロールアウトした。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:フィンケンヴェルダー空港を離陸するA321XLR型機】

2.中国、「神舟十四号」宇宙船の打ち上げ成功 – 独自の宇宙ステーション完成へ

中国有人宇宙飛行工程弁公室は2022年6月5日、3人の宇宙飛行士を乗せた「神舟十四号」宇宙船を打ち上げた。宇宙船は約7時間後に、中国が建設中の「中国宇宙ステーション(CSS)」とのドッキングに成功。宇宙飛行士はこれから約半年間滞在し、CSSの完成という重大なミッションに挑む。そして、そのために神舟十四号にも特別な装備が施されている。神舟十四号には、指令長(コマンダー)の陳冬宇宙飛行士のほか、劉洋宇宙飛行士、蔡旭哲宇宙飛行士の3人が搭乗。陳氏と劉氏は今回が2回目、蔡氏は初の宇宙飛行となる。3人はCSSに約半年間滞在。CSSの建設や運用、保守のほか、ロボットアームの操作、船外活動、宇宙科学実験や技術試験などを実施する。今回のミッションのハイライトは、7月に打ち上げ予定の「問天」、10月に打ち上げ予定の「夢天」という2基の新しい実験・居住モジュールを出迎え、天和への接続や機器の立ち上げなどの作業を行うことである。この問天と夢天の接続によってCSSは完成し、本格的な運用が始まる予定で、3人のクルーはCSSを完成させるという重大な使命に挑むことになる。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:今回の3人の乗組員の内の一人は中国初の女性飛行士(右端)】

日本のニュース

1. ZIPAIR、尾翼「Z」消え新デザインに

ZIPAIRは6月15日、機体デザインの一部を変更すると発表した。2019年4月の機体デザイン発表時から垂直尾翼に掲げてきた「Z」の文字を消し、コーポレートカラーのグレーとグリーンを基調としたデザインに改め、18日から運航を開始する。成田空港を拠点とするZIPAIRは、2020年6月に就航。機材はボーイング787-8型機で、親会社の日本航空から転籍した4機を運航している。18日から導入する新デザインは、既存機にデカールを貼付し変更する。デカールは7月上旬までに既存の4機に導入を終え、12月からは新デザインの塗装機に塗り替える。2023年春までに全機体に新デザインを導入する見通し。「Z」の文字は、ウクライナに侵攻したロシア軍が自軍の象徴として導入している。新デザインの導入について、同社の西田真吾社長は「(軍を象徴するようなつもりで)付けたロゴではないが、初見では何か感じられる方もいらっしゃるかもしれない」と、一部SNSなどで懸念する声が上がっていたことを明かした。西田社長は「今回のデザイン変更は『成長・覚悟』を示す」と強調した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:美容区から「Z」マークが消えたZip Airの新たなロゴマーク】

2.磁気浮上による擬似微小重力環境を作り出す超伝導磁石、学習院大が開発

学習院大学は、「強磁場と装置汎用性の両立」をコンセプトに、磁気浮上を容易に行える装置として「高勾配型超伝導バルク磁石(HG-TFM)」を提案し、運用試験として初期温度21Kでの着磁実験を行った結果、捕捉磁場8.57T、磁気力場-1930T2/mの発生に成功し、浮上力の指標となる水の磁気浮上(>-1400T2/m)を大気中で実証したことを発表した。同成果は、学習院大 理学部物理学科の高橋圭太助教、岩手大学 理工学部 物理・材料理工学科の藤代博之教授、英・ケンブリッジ大学 工学部のマーク・D・エインズリー研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英国物理学会が刊行する超伝導に関する全般を扱う学術誌「Superconductor Science and Technology」に掲載された。生体物質に加え、一般的な金属の多くが磁石に反応しない「反磁性体」であるが、磁気的な反発力が地球重力を打ち消すほどの強い磁場環境では、浮上現象を観測することが可能とされており、この磁気浮上を活用した浮上技術は、容器なしで行えるクリーンな結晶成長や細胞培養などの材料開発に応用が期待されている。超伝導状態にある高温超伝導材料の結晶塊(バルク)は、電磁誘導で電流を誘起する“着磁過程”を経て、永久磁石と同等のサイズでテスラ級の強力な磁場を発生することができることから、この超伝導バルク磁石は、小型-強磁場源として従来の大型電磁石を置き換えることが期待されている。超伝導線材の運用と同様に、超伝導バルク磁石は真空容器内で低温に保つと共に機械的な補強を行う必要があるが、超伝導の臨界特性は低温であるほど優れるため、真空容器内の限られた空間で磁場強度・冷却効率・機械補強を両立した能率的な構造設計が求められることとなる。【マイナビニュース】

【学習院大学提供:高勾配型超伝導バルク磁石装置の概略図】