KIT航空宇宙ニュース2023WK09

AutoFlight社のeVTOL試験機「Gen4」が1回の充電で最長の250キロ飛行の記録を無人遠隔操縦で樹立
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK09

海外のニュース

1.大韓・アシアナ航空統合、英当局が条件付き承認 英社参入求める

英国の競争・市場庁(CMA)は、大韓航空が進めているアシアナ航空の買収について、条件付きで承認すると現地時間3月1日に発表した。英国と韓国を結ぶ路線は現在韓国の2社のみが運航しており、英社の参入が条件となる。両国を結ぶ路線はソウル(仁川)-ロンドン(ヒースロー)線のみで、大韓航空が1日1往復(週7往復)、アシアナ航空が週6往復運航している。CMAは「救済措置提案者」がロンドン-ソウル間へ参入することで、大韓航空と2月24日付で合意したと発表している。CMAによると「救済措置提案者」はヴァージン・アトランティック航空で、2025年冬ダイヤ最終日までの開設が条件だという。英ヴァージンは大韓航空らが設立した航空連合「スカイチーム」へ、現地時間3月2日付で加盟した。大韓航空は2021年1月以降、アシアナ航空との合併を14の競争当局へ申請。これまで韓国のほかトルコと台湾、ベトナム、シンガポール、マレーシア、豪州、中国の当局が承認した。今回の英国のほか、報告の対象外となったタイとフィリピンを含め、11カ国・地域で審査が終了した。今後は残りの日本と米国、EU(欧州連合)の3当局が承認手続きを進めていく見通し。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供】

2.  AutoFlightが eVTOL で155海里飛行の記録を樹立

eVTOL機のパイオニアであるAutoFlightは、航空機のリチウムイオン電池の1回の充電で250 キロメートル (約155 マイル)の、史上最長のeVTOL飛行を達成したと述べた。2月23日にAutoFlightのeVTOL試験施設で行われたこの飛行は、AutoFlightの飛行試験チームによって地上から遠隔操作され、事前に定義された飛行トラック上の 20のサーキットで構成されていた。AutoFlightの最新のeVTOL「Gen4」試験機には最新のアビオニクスが装備されているが、この機体に装備された航空部門で広く使用されている独立したシステムであるForeFlightで飛行距離を記録および検証した。この飛行は、航空機が垂直に離着陸する史上最長の完全電気航空機飛行として認識されている。この長距離試験飛行は、量産機「Prosperity I」の開発における重要なマイルストーンであり、2025 年にEASAで耐空証明を取得するという同社の目標に向けて継続的に試験が行われる予定。【Auto Flight社広報】

【AutoFlight提供:長距離飛行試験中のeVTOL試験機「Gen4」】

3.  英国の王立協会が航空のネットゼロエミッション達成は困難であると警告

英国の「ネットゼロ」の野望を実現するために必要となる持続可能な航空燃料を生産するには、今日のレベルで、膨大な量の英国の農地または再生可能電力が必要になるだろうと、英国の科学アカデミーである王立協会は警告している。「ネットゼロ航空燃料: リソースの要件と環境への影響」に関する報告書は、現在の使用と同等の規模での飛行をサポートできる、ジェット燃料に代わる明確で持続可能な単一の代替手段はないと警告しています。 このレポートでは、これらのリソースの可能性に関する課題、可能性のあるコスト、ライフサイクルへの影響、インフラストラクチャの要件、未解決の研究課題について、グリーン水素、バイオ燃料 (エネルギー作物と廃棄物)、アンモニア、合成燃料の 4 つの燃料タイプについて調査している。既存の英国の航空需要をすべてエネルギー作物で満たすには、英国の農地の約半分が必要になると推定されている。一方、十分なグリーン水素燃料を生産するには、2020年の英国の再生可能 (風力および太陽光) 発電量の 2.4 ~ 3.4倍が必要となる。それぞれの燃料の種類には長所と短所があるが、調査結果は、特にさまざまな「ネットゼロ」の目標のための資源が、世界的に需要がある場合、航空の脱炭素化の課題を強調している。これらの課題に対処するには、特に現在と将来の世代の航空機の移行期間をナビゲートするために、グローバルな調整が必要としている。【英国王立協会レポート】

日本のニュース

1.JAC、24年度新卒採用 CA・整備士・総合職

日本エアコミューターは3月1日、2024年度の新卒採用と2023年度の経験者採用を実施すると発表した。新卒は客室乗務員(CA)と整備士、総合職(事務系・技術系)、経験者はCAとなる。整備士は新卒のみで、採用数は数人程度。2023年4月から2024年3月までに航空専門学校、短大、工業高専、4年制大学、大学院修士課程のいずれかを卒業・修了見込みの人で、一定程度の英語力がある人。学部学科は理工系学部学科となる。応募締切は4月14日。総合職は事務系と技術系ともに採用数は若干名で、2021年4月から2023年3月までに4年制大学、大学院修士課程のいずれかを卒業・修了した人と、2023年4月から2024年3月までにこれらの学校を卒業・修了見込みの人が対象で、就業経験がある人も応募できる。学部学科の指定は、事務系はなし、技術系は理工系学部学科となる。応募締切は事務系が5月7日、技術系が4月14日。【Aviation Wire News】

2.  ピーチ新卒採用、自社養成パイロット3年ぶり 総合職は4年ぶり

ピーチ・アビエーションは3月1日、2024年度入社の新卒採用を始めたと発表した。総合職と整備職の2職種のほか、パイロット育成プログラムの4期生も募集する。採用数は整備職が20人、総合職と自社養成パイロットは若干名。整備職は2023年度入社に引き続く採用で、総合職は4年ぶり、自社養成パイロットは3年ぶりとなる。パイロット育成プログラム「Peachパイロットチャレンジ制度 with AIRBUS」は若干名を募集する。新卒・既卒は不問で、開始時期は2024年4月1日、エントリー締切は3月26日午後11時59分。エントリーには同じくANAホールディングス傘下の全日本空輸が実施するパイロット適性テスト「FCAT(Flight Crew Assessment Test)」を受検し合格する必要がある。4年ぶりの採用となる総合職は若干名を募集。関西空港などの事業所で、航空ビジネスに関わる業務全般を担う。2024年3月に大学・大学院を卒業・修了予定の人で、学部学科は問わない。昨年に引き続き採用する航空機整備技術職は20人程度を募集。2024年3月までに大学・大学院を卒業か修了見込みの人で、理工系学部の学生を募集する。普通車運転免許とパスポートを持っていることが条件で、業務上に必要な英語レベルを備えている人を求めている。パイロット育成プログラムはピーチの採用ページからエントリーする。総合職は就活サイト「あさがくナビ」、航空機整備技術職は就活サイト「キャリタス就活2024」でプレエントリーする。選考方法は書類と面接で、航空機整備技術職は色覚・騒音検査も行う。【Aviation Wire News】

3.  スカイマーク、24年度新卒採用 大卒CAは4年ぶり

スカイマークは3月1日、2024年度の新卒採用を実施すると発表した。客室乗務職(CA)とパイロット訓練生、総合職の3職種が対象で、大学卒のCA新卒採用は4年ぶりとなる。客室乗務員は30人程度を採用し、4年制大学か大学院修士課程を、2023年4月から2024年3月までに卒業・修了見込みの人が対象となる。学部学科は不問。乗務に必要な体力があり、呼吸器・循環器・耳鼻咽喉・眼球・脊椎などに支障がなく、心身ともに健康な人を求めている。自社養成パイロット訓練生候補は15人程度を採用し、4年制大学か大学院修士課程を、2023年4月から2024年3月までに卒業・修了見込みの人が対象となる。学部学科は不問。心身ともに健康で、航空機の乗務に支障がない人を求めている。総合職は総合企画、技術企画、ITの3コースで募集する。採用予定は3コース合計で30人程度。2023年4月から2024年3月までに卒業・修了見込みの人が対象となる。学部学科は、総合企画コースは不問、技術企画コースが理系学部学科、ITコースが通信関連学部学科となる。3職種とも書類選考、動画選考、適性検査、面接などでの選考を予定する。詳細は3月下旬以降に、同社ウェブサイトか学生向け就職情報サイト「マイナビ」で発表する。【Aviation Wire News】

4.  JAL、24年度新卒採用 CAは350人、企画職は5コース

日本航空は3月1日、2024年度入社の業務企画職と運航乗務員訓練生(自社養成パイロット)、客室乗務員の新卒採用を開始した。新卒採用は2023年度に卒業見込みの人に加え、2021年度と2022年度に卒業した人も対象にする。業務企画職はコース別採用を導入し、5コース合計で150人程度を採用。運航乗務員訓練生は新卒と既卒の合計で50人程度、客室乗務員が350人程度を予定している。業務企画職では、障がい者採用も実施する。業務企画職は、これまで「事務系」「技術系」「数理・IT系」の3種類としてた採用方法を、「コーポレート」「オペレーション」「ビジネス・マーケティング」「数理・IT」「エアラインエンジニア」の5コースに分類。入社後に「成し遂げたいこと」に応じたコースを用意し、自律的なキャリア形成を目指す。5コースとも、4年制大学または大学院を2021年4月から2023年3月までに卒業・修了している人と、2023年4月から2024年3月までに卒業・修了見込みの人が対象。いずれも学部学科は不問としている。選考はWEB書類選考と適性検査、面接を予定する。【Aviation Wire News】

5. ANA、4年ぶりCA新卒採用 グループ34社2700人、24年度入社

ANAホールディングス傘下の全日本空輸は3月1日、2024年度入社の新卒採用を始めたと発表した。グローバルスタッフ職(旧総合職)の事務職と技術職、客室乗務職、運航乗務職(自社養成パイロット)、エキスパートスタッフ職(障がい者採用)の5職種で、客室乗務職は4年ぶりの採用となる。採用予定人数は事務職が60人、技術職が65人、客室乗務職が430人、自社養成パイロットが未定、障がい者採用が10人程度を予定する。ANAグループ全体では34社約2700人を採用する見通し。このほか、2023年4月以降にANA本体へ入社する新卒社員の初任給を大卒で最大2万円引き上げる。グローバルスタッフ職は事務職と技術職とも、高専か4年制大学、大学院を2020年4月から2024年3月までに卒業・修了、または見込みの人が対象。学部学科は、事務職は不問、技術職は理系学部学科としている。入社予定日は2024年4月1日。ANAのウェブサイトでエントリー後、エントリーシートをウェブから提出する。提出期限は技術職が4月3日午後5時、事務職が6日午後5時で、書類選考を通過した人は6月1日から面接が順次始まる。また、海外留学生と教育実習生のうち、希望者を対象に8月選考を実施する。事務職は主に活躍したいセグメントを選ぶ「セグメント別採用コース」と、入社時から特定分野の専門性を持つ人に早い段階で能力を発揮してもらう「専門採用コース」の2コースを用意。技術職はセグメント別採用コースのみとなる。【Aviation Wire News】

6.  北九州空港の滑走路延長、23年度事業候補に 3000m化で長距離貨物便

国土交通省は2月28日、2023年度の新規直轄事業の候補として、北九州空港の滑走路延長など17件を選定したと発表した。空港整備事業は北九州のみ。北九州空港の滑走路(RWY18/36)は長さ2500メートル。24時間運用のため、旅客便に加えて貨物便も乗り入れているが、滑走路が短いことで搭載できる貨物量に制約が生じる場合があり、航空会社は滑走路が3000メートル以上ある他空港を選ぶことがあるという。周辺地域に貨物需要があるものの、滑走路長が2500メートルであるため、貨物定期便やチャーター便の就航機会を逃しているとして、南側に500メートル延ばして3000メートルとする計画を進めている。工事に着手した場合の予定工期は約4年、概算事業費は約130億円としている。一方、3000メートルを超える滑走路を整備するとなると、進入灯などの海上設備が必要になるほか、環境アセスメントの手続きや関係者調整に多くの時間を要し、早期整備が困難となるとともに、整備費用が大幅に増加すると指摘している。国交省によると、北九州空港の背後圏にあたる九州・西中国地域内では、北米や欧州と結ぶ航空貨物の輸出入空港は、北米では輸出と輸入の約8割ずつが、欧州では輸出の9割、輸入の5割が、成田や羽田、関西など遠方の空港を利用していることがわかった。荷主が北九州空港の代わりに成田を利用する場合、陸送費用は北九州の約6倍、輸送時間は約12倍、走行距離は約14倍になり、大きな損失になっているという。滑走路を3000メートル化することで、北九州空港から直行便が就航できない北米や欧州への貨物便の開設や、火力発電用タービンなど大型重量物のチャーター便が乗り入れられるようになる。今後は自治体などから意見を聞く。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:現在の北九州空港】

7.  JAL、成田で生鮮貨物をワンストップ輸出 翌朝に海外市場着

日本航空とJALカーゴサービス(JCG)は2月27日、成田空港近くの成田市公設地方卸売市場で生鮮航空貨物の輸出を始めた。初荷は鮮魚やイチゴなど生鮮品約2.6トンで、バンコクやシンガポールなど5空港へ出荷された。成田市場は国内では初めて集荷から輸出手続き、航空貨物コンテナへの積み込みまでをワンストップで行えるようにし、海外に到着するまでの時間を短縮。収穫・水揚げ当日深夜に現地へ到着し、翌朝には海外市場に新鮮な農水産品が並ぶ。JCGが成田市場の高機能物流棟に入居し、温度調節機能を持つ市場内でワンストップ物流サービスを構築。収穫や水揚げ当日中の成田空港からの輸送機会が増え、市場と空輸の連携による高速・高鮮度輸送を提供することで、生鮮品の輸出拡大につなげる。これまでの物流では、集荷した翌日に輸出手続きや検疫、通関を経て貨物コンテナに生鮮品を積み込んでいた。成田から香港へ運ぶ場合、水揚げ翌日の深夜に現地へ到着していたが、新サービスでは1日早い当日深夜に着くことで、より鮮度の高い状態を維持できるようになる。千葉県のほか、茨城県や栃木県など関東北部、東北から出荷された生鮮品は、豊洲や大田といった都内の市場を経由して輸出されることが多く、成田で搭載する場合は一度都内に入ってから北上し、成田で集荷するといった経路上のロスがあり、海外で生鮮品が店頭に並ぶまで時間がかかる要因の一つだった。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:貨物室に搭載される「ワンストップ物流」コンテナ】

8.  日本サッカー協会、ANAとパートナー契約 JALから切り替え、26年末まで

日本サッカー協会(JFA)と全日本空輸は2月27日、パートナーシップ契約に基本合意した。男子をはじめとした代表チームの国内外遠征などをサポートする。契約期間は2月27日から2026年12月31日まで。ANAが締結した「JFAメジャーパートナー」は、従来は「日本代表サポーティングカンパニー」と呼んでいたカテゴリーで、協賛対象を拡張。男子の日本代表のほか、女子、フットサル、ビーチサッカーなど、各代表をサポートする、また、指導者や審判の育成など、JFAの事業も対象となる。JFAは2022年12月31日まで、日本航空と「サポーティングカンパニー」契約を締結していた。JFAの田嶋幸三会長はこれまでのJALのサポートに謝辞を述べつつ「航空は1社だけ」と明言。JALとの契約は終了し、ANAに切り替えるとした。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:パートナー契約に調印したJFA田嶋会長(左)とANA井上社長】

8.  JAXA、新たな宇宙飛行士候補者として2名を選抜

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月28日、諏訪理(すわ まこと)氏と米田あゆ(よねだ あゆ)氏の2名を2021年度宇宙飛行士候補者を選抜したことを発表した。今回、宇宙飛行士として選ばれたのは、諏訪理(すわ まこと)氏と米田あゆ(よねだ あゆ)氏の2名。諏訪氏は、1977年生まれの46歳。2007年にプリンストン大学大学院地球科学研究科修了後、青年海外協力隊でルワンダに赴いた後、国際連合・世界気象機関(WMO)に入社。2014年より世界銀行に入行し、現在は世界銀行の上級防災専門官を務めている。これまでの最年長合格者であった油井亀美也 宇宙飛行士(当時39歳)の記録を更新する最高齢での合格者となった。一方の米田氏は1995年生まれの28歳。2019年に東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センターなどで外科医師として勤務。今回の選抜で、向井千秋 宇宙飛行士ならびに山崎直子 宇宙飛行士に続く3人目の日本人女性宇宙飛行士に向けた候補者として選ばれ、宇宙飛行士として認定されれば、日本人の現役宇宙飛行士としては最年少となる。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:JAXA宇宙飛行士候補者に採用された米田氏(左)と諏訪氏(右)】

9.  空気が要らない次世代タイヤ「エアフリーコンセプト」の実証実験が開始!

2023年2月8日、出光興産とブリヂストンは、空気の充填が不要な次世代タイヤ「エアフリーコンセプト」の実用化に向けた実証実験を開始すると発表した。ブリヂストンは、空気の充填が不要な次世代のタイヤとして、2011年にエアフリーコンセプトの開発を発表した。”非空気入りタイヤ”と呼ばれた同製品は、タイヤ側面に特殊な形状の樹脂スポークを張り巡らせることで、車体の荷重を支える仕組み。そのため空気を溜め込む空間は備えていない。利用の際、樹脂スポークに車両の重量や衝撃が加わると、樹脂スポークが変形することで衝撃を吸収、あるいは反発し、従来の空気入りタイヤと同じ役割を果たすのだ。このエアフリーコンセプトのメリットはなんだろうか。まず、空気の充填が不要であるため、空気圧管理などを削減できる省メンテナンス性が挙げられる。さらに、空気入りタイヤで起こりうる空気圧不足によるパンクやバーストなど、車両の走行に支障をきたすリスクを回避できる点も、重要なメリットだ。また、路面に接するゴム部分のみを張り替えることでタイヤを再利用できる上に、独自開発したスポーク部分(接地するゴムとホイールをつなぎ荷重を支えつつ衝撃を吸収する部材)の樹脂がリサイクル可能であるため、資源の効率的な活用とサーキュラーエコノミーの実現に貢献できる点も強みだとしている。【マイナビニュース】

【ブリジストン提供:エアーフリータイヤ】