KIT航空宇宙ニュース2023WK50
海外のニュース
1. スイス航空、実験を経て来年人工知能による乗客カウントシステムを導入へ
スイス航空は、人工知能を利用して搭乗中の乗客数を数える実験が成功したと宣言し、来年からこのプロセスを正式に採用する予定。短距離便では2024年第3四半期に、長距離便では第4四半期から手動カウントを置き換える予定。「新しい(人工知能ベースの)手順が採用されれば、機内で、人が手動で乗客数をカウントする必要はなくなります」と同航空会社は述べている。この航空会社は、ベルリンに本拠を置く企業 Vion AI を、このための技術パートナーとして選択した。「これにより待ち時間が短縮され、お客様により快適な旅行体験が提供されます。新しいデジタルカウントにより、客室乗務員の負担も軽減されます。」と運営責任者のオリバー・ブッホファー氏は述べている。【Flightglobal News】
【スイス航空提供:スイス航空の737-400型機】
2. GEエアロスペース社、回転爆発燃焼を備えた極超音速デュアルモードラムジェット実証に成功
GEエアロスペースは、ニスカユナの研究センターで包括的な極超音速プログラムの幕を開け、世界初と考えられる極超音速デュアルモードラムジェットものを実証した。超音速流中で回転爆轟燃焼 (RDC:Rotating Detonation Combustion) を行う極超音速デュアルモード ラムジェット (DMRJ) のリグテストに成功した。これにより、効率を高めた高速・長距離飛行が可能になる可能性がある。成功した超高速推進 DMRJ 実証は、GEエアロスペースが高温材料や高温エレクトロニクスを含む極超音速能力を推進するために開発している技術プログラムの包括的なポートフォリオの一部です。これらの技術は、GEエアロスペース・リサーチが進めてきた10年以上にわたる極超音速関連の直接的な取り組みと、高温セラミック・マトリックス複合材料 (CMC)、エレクトロニクス、付加技術、高度な熱管理などの主要分野における GEエアロスペース社のエンジンビジネスの数十年にわたる開発の成果です。一般的な空気を飛行速度で圧縮するAir Breathing DMRJ推進システムでは、機体がマッハ3を超える超音速に達した場合にのみ動作を開始できる。GEエアロスペース・のエンジニアは、より低いマッハ数で動作可能な回転爆発デュアルモード・ラムジェットの開発に取り組んでいる。航空機がより効率的に運用され、より長い航続距離を達成できるようになる。【GEエアロスペース社News】
【GEエアロスペース社提供:極超音速機機の想像図】
3. Ampaireのハイブリッド電動デモンストレーター機が12時間のフライトで飛行時間記録更新
ハイブリッド電気航空機を開発しているAmpaireは、この飛行がハイブリッド電気航空機の新記録を樹立すると考えている。この驚異的な耐久飛行は、カナダ、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニアを飛行し、揺るぎないパフォーマンスを発揮し、その信頼性と多様な環境への適応性を証明した。現在AmpaireのEco Caravanで飛行している推進ユニットAMP-H570 AMP Drive™ハイブリッドエレクトリックは、従来のプラット・アンド・ホイットニーのPT6ターボプロップエンジンと比較して、燃料消費量と排出ガスを50〜70%削減可能となっている。【Flightglobal News】
【Ampaire社提供:12時間飛行したセスナキャラバンを改造したハイブリッド電動航空機】
4. FAA、737NGに対するエンジンナセル改修の義務化プロセスを開始
FAAは、ボーイング737次世代 (NG)型機のエンジンナセル設計変更を義務付けるプロセスを開始した。死亡事故に関連するNTSBの勧告であり、世界的に義務化されることが予想される。12月11日にリリース予定の3件のルール策定案通知(NPRM)は、ボーイングによって策定され、2018年4月に当局によって承認された計画を成文化したものです。FAAのタイムラインでは、変更案に対するパブリックコメントの期限が45日間設けられている。最終規則では改修が義務付けられ、影響を受ける航空会社は 2028年7月31日までに航空機を改修することが求めらる。 この変更は、サウスウエスト航空 737-700型機がファンブレードが破損し、影響を受けたエンジンのナセルの部品が機体に衝突するという大規模な損傷を被った 2件の事故を受けて、広範なレビューで指摘された設計上の問題に対処している。 2018年4月に起きた最も注目を集めた事故では、乗客1名が死亡した。両方の事故の調査結果により、 NTSBは 737NGエンジンナセルの再設計を命じている。ボーイングが策定した計画には、新しい吸気スペーサーと留め具、ファン・カウル・サポートビーム、より剛性の高い排気ノズルという 3つの変更が含まれている。FAAの命令は、米国に登録された約 1,900機の航空機に影響を与えるが、世界的に義務化されることが予想される。世界中で6,500機の737NGが運用または保管されている。【Aviation Week】
【Flightglobal提供:2018年に起きたサウスウェスト航空のエンジンナセル破損状況】
5. Maeve、80席の電動ハイブリッド・リージョナル機の計画を発表
オランダに本社を置く新興企業のMaeveエアロスペースは、リージョナルジェット機やデ・ハビランド・カナダダッシュ8-400後継機市場をターゲットにした80席電動ハイブリッドターボプロップ機の研究開発作業を開始した。 M80と名付けられた航空機は2028年末に初飛行し、2030/31年に就航する予定だ。M80は、後退高翼と、離陸時と上昇時にバッテリー電力によって補助される新開発のターボプロップ エンジンを備えたまったく新しい機体です。欧州の新興企業は、非公開のエンジンメーカーとの覚書締結の公表に近づいており、2024年の初めに予定されている。 エンジンのハイブリッド構成とより高い空力効率の組み合わせにより、巡航中の燃料消費量は、代替する航空機よりも約40%削減されると主張している。トリップコストは、同様のサイズのリージョナルジェット機よりも 25%低くなり、座席マイルコストは現在のターボプロップ機より 20%低くなります。 M80は当初から100%持続可能な航空燃料(SAF)の使用が認定される予定。
【Maeveエアロスペース社提供:80人乗り電動ハイブリッドリージョナル航空機「M80」】
日本のニュース
1. ANA、11年連続で5つ星 英SKYTRAX調査
全日本空輸を中核とするANAグループは12月14日、英国を本拠地とする航空業界調査・格付け会社SKYTRAX(スカイトラックス)による航空会社の格付け「ワールド・エアライン・スター・レイティング」で、最高評価の5つ星(5スター)を獲得したと発表した。2013年から11年連続での5つ星となった。5つ星評価を獲得しているのは世界10社のみで、日本勢はANAと日本航空の大手2社。残り8社はABC順で、アシアナ航空、キャセイパシフィック航空、エバー航空、ガルーダ・インドネシア航空、海南航空、大韓航空、カタール航空、シンガポール航空が獲得した。ANAによると、スタッフの接客が一貫して高品質であることなどが評価されたという。【Aviation wire news】
2. JAL、廃棄ライフベストでバッグ2種類 トート・ショルダー数量限定
日本航空グループのJALブランドコミュニケーションは12月13日から、機内に搭載していたライフベストをアップサイクル(作り替え)したバッグ2種類を販売する。トートバッグとショルダーバッグの2種類で、いずれも数量限定で自社のショッピングサイト「JALショッピングJAL Mall店」などで同日午前10時から取り扱う。「JALライフベスト トートバッグ」の大きさは325ミリ×260ミリ×120ミリ。1つ1万3200円(税込)で800個限定で用意する。「JALライフベスト ショルダーバッグ」は365ミリ×395ミリ。1つ1万1000円(税込)で500個の限定販売となる。JALでは年間約2000着のライフベストを定期交換のために航空機から取りおろし、廃棄している。廃材となったライフベスト を再利用して作る小物を、グループの整備会社であるJALエンジニアリング(JALEC)の整備士が発案し、商品化した。ライフベストのアップサイクル品は2021年から商品化。第1弾はポーチ、2022年の第2弾はサコッシュを用意し、いずれも完売した。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:廃棄される救命胴衣からアップサイクルされたバッグ】
3. 阪大が小型ドローン向けミリ波レーダーを高性能化、建物外壁内部欠陥の直接可視化に成功
大阪大学(阪大)は12月7日、小型ドローンに搭載されるミリ波帯超広帯域レーダーの小型軽量化と高速化を実現し、同レーダーを用いて、建造物外壁の内部欠陥(タイルとモルタル層の間の空隙やコンクリート躯体とモルタル層の間の空隙など)を、非接触で直接可視化することに成功したことを発表した。同成果は、阪大大学院 基礎工学研究科の永妻忠夫教授、同・易利助教、同・小藪庸介大学院生、同・王雅珩大学院生(研究当時)、JFE商事エレクトロニクス、東京電力ホールディングス、清水建設の共同研究チームによるもの。詳細は、12月5~8日に台湾で開催された国際会議「アジア・パシフィックマイクロ波会議(APMC2023)」において発表された。タイルなどで覆われた外壁内部の欠陥(空隙など)があると、タイルを含む外壁の剥落、落下の危険性が高まってしまうため外壁調査によって安全性の確認が行われている。その主な手法としては、従来は人の手による打音検査や赤外線調査などであったが近年、ドローンに高精細カメラや赤外線カメラなどを搭載し、構造物の点検や診断を行うケースも増えてきたという。しかし、構造物の表面を観察する場合は可視光や赤外線(レーザ光も含む)でできるが、物体の内部を調べるためには物質透過能力を有するマイクロ波やミリ波などの周波数を用いる必要があり、そうした取り組みの中でも光通信技術を活用したレーダーシステムの開発を行ってきたのが研究チームだという。研究チームが考案したシステムでは、まず光通信波長(1.55μm)帯において、2つの異なる波長の光信号を発生させ、これを光ファイバーで伝送し、光信号を電気信号に変換する光電変換器に与えることにより、2つの光信号の波長差に対応した周波数の電波を発生させるという。光波長を精密にコントロールすることで、およそ4GHzから40GHzの範囲で任意の帯域の電波を作ることが可能だという。この電波の周波数を変えながら対象物に照射し、そこから反射して戻ってきた電波と元の電波との振幅位相関係を計算することにより、外壁内部の欠陥の位置を知ることができる。今回の研究では、4GHzから40GHzの周波数範囲を高速に変化させる技術を開発し、1ミリ秒でレーダーを照射したポイントの欠陥の情報を得られるシステムを開発したという。実際のシステムとしてドローンに搭載される部分は、光電変換器、レーダー回路、ならびにアンテナ(送受信で共有)のみで、ドローンのペイロードの軽量化に成功したとする。光信号の発生や信号処理を行うための制御機器は地上に置かれ、ドローンとは、軽量の光ファイバケーブルと低周波電気信号ケーブルで接続。すでに先行して開発されていた1号機は、プロペラを除くサイズが全長810mm×全幅670mm×全高430mm、重量6.3kg、ペイロード2.7kgという大型ドローンに搭載されていたが、今回開発されたシステムは軽量化された結果、全長290mm×全幅290mm×全高196mm、重量1.45kg、ペイロード500gの小型ドローンに搭載することが可能になったとする。【マイナビニュース】
【マイナビニュース提供:大阪大学が開発したドローン搭載用高性能ミリ波レーダー】
4. ANAホールディングス、Joby Aviation、野村不動産が空飛ぶクルマの離着陸場開発に向けた共同検討を開始
ANAホールディングス、Joby Aviationおよび野村不動産は、日本における電動エアモビリティeVTOLの離着陸場(以下、バーティポート)開発に向けた共同検討に関する覚書を締結しました。日本国内の都市部を中心とし、利便性の高いバーティポート開発に向けた事業的・技術的検討、社会受容性を得るための取組み、戦略的パートナーシップ構築に向けた検討等を共同で進めてまいります。ANAHDおよびJobyは、2022年2月のパートナーシップ締結blank後、電動エアモビリティの運航サービス実現に向けた事業検討を進めるとともに、首都圏および関西圏を中心に利便性の高いエリアへの離着陸場設置に向けた各種調査や検討にも取り組んでいます。今後も持続可能な社会の実現に向けて、様々なプレイヤーと協業し、地上インフラの開発、整備を通じた新しい空の移動手段の実現を目指している。野村不動産は、東京都の「東京ベイeSGプロジェクト 令和5年度先行プロジェクト」※においてeVTOL用浮体式ポートを核とした陸海空のマルチモーダルMaaS実現に向けた実証事業を推進するなど、次世代モビリティの早期の社会実装に貢献し、新たなライフスタイルを実現できる次世代の街づくりを目指した取組みを進めている。【ANA Press Release】
【Joby Aviation提供:Joby AviationのeVTOL機】