KIT航空宇宙ニュース2024WK25
海外のニュース
1.GEエアロスペースが電動ハイブリッドエンジンの開発を推進
GEエアロスペースは NASA と共同で電動ハイブリッドデモンストレーター・エンジンを開発していいる。このエンジンは、高バイパスの商用ターボファンに電気モーター/発電機を組み込み、さまざまな運用段階で電力を補う。これは、GEエアロスペースが進めている、より電動化された航空機エンジンの技術を成熟させるための取り組みの1つです。これには、NASAのハイブリッド熱効率コア (HyTEC)プロジェクトを通じてテストするために、ハイブリッド電気コンポーネントを使用して Passportエンジンを改造することが含まれている。これは、GEエアロスペースが航空機エンジンの電動化技術の成熟に向けて進めているいくつかの取り組みの1つであり、CFM International の持続可能なエンジンのための革新的イノベーション(RISE)プログラムの一環として進められている。組み込み型電気モーター/発電機は、バッテリーなどのエネルギー貯蔵の有無にかかわらず機能するシステムを構築することで、エンジン性能を最適化する。これにより、エネルギー貯蔵ソリューションが完全に成り立つ前に、商用航空機向けのハイブリッド電気技術の導入を加速できる。HyTEC ターボファン・エンジン電力抽出デモンストレーションの電気モーター/発電機およびパワーエレクトロニクスの初期コンポーネントレベルのテストが完了した。システムテストは、オハイオ州デイトンの GEエアロスペースのEPISCenterで実施された。さらに、ハイブリッド電気コンポーネントを追加する前にパフォーマンスを特性評価するためのPassportエンジンのベースライン テストが、同じくオハイオ州にある同社のピーブルズ テスト オペレーションで完了した。【Flightglobal news】
【GEエアロスぺース提供:電動ハイブリッドエンジンに改造されたGE Passportエンジン】ドイツ
2.ルフトハンザが支援するSAF製造業者シンヘリオンがドイツで初の合成燃料工場を開設
ルフトハンザグループが支援する新興企業シンヘリオンは、太陽熱を利用して合成燃料を生産する初の工業規模の工場を開設した。ドイツのユーリッヒにある「ドーン」と呼ばれるこの工場は、この種のものとしては世界初であり、「年間数千リットルの燃料を生産する」と同社は6月20日に発表した。2024年には持続可能な航空燃料(SAF)の生産を開始する予定だ。ドーンは高さ20メートル(65.6フィート)のソーラータワーとミラーフィールドを特徴としている。ソーラータワーには太陽光受熱器、熱化学反応器、熱エネルギー貯蔵装置が備わっており、コスト効率の高い太陽燃料の24時間生産が可能になるとシンヘリオンは述べている。【Flightglobal news】
【シンヘリオン提供:ドイツのユーリッヒにある太陽熱を利用した合成燃料製造施設「ドーン」】
3. Jobyが計画中の大規模エアタクシーネットワーク向けソフトウェア導入をFAAから承認
エアタクシーの新興企業Joby Aviationは、将来のエアタクシーの運航を管理し、同社が構想する高頻度のオンデマンド飛行を可能にするために設計された一連の社内ソフトウェア製品を導入するためのFAAの認可を取得した。【Flightglobal news】
【Joby Aviation提供:Jobyが開発中のエアタクシー用eVTOL機】
4. GEがMRO技術加速センターを通じてエンジン部品のX-Ray金属検査システムを発表
シンシナティ—美術品の贋作検出用に開発された技術に基づく金属エンジン部品の非破壊検査システムが、GEエアロスペースがまもなく開設するサービス技術加速センター(STAC)を通じてMROショップに導入される予定です。9月に開設予定のSTACは、GEのMROネットワークへの新しい検査および修理プロセスの導入を加速するように設計されている。GEによると、金属部品の微細構造の変化を検出できる非破壊のオープンビームX線蛍光分光法(XRF)検査装置は、航空宇宙業界で初めてのものです。「高エネルギーX 線は部品の表面または表面下の一部と相互作用し、電子の外殻を励起して既知の化学特性を再放射する」と、GEエアロスペースの主任MRO エンジニアであるニコール・ジェンキンス氏は言います。XRFシステムは、たとえば、異常または汚染された粉末金属で積層造形された下部構造を検出できるため、GE、特にプラット・アンド・ホイットニーにとって最近問題となっている部品検査の軽減に役立つ。この装置は、製造された部品や使用された部品を検査するだけでなく、欠陥のある部品が製造工程に入るのを防ぐことも目的としている。【Aviation Week】
日本のニュース
1. ホンダジェットで新サービス、移動困難地点結ぶ 車で機側へ、国内で法人向け陸空連携
本田技研工業は6月18日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」を活用した新サービス「HondaJetシェアサービス」を国内で始めたと発表した。公共交通機関での移動が困難な地点を小型ジェットで結び、陸上の車移動と合わせ、陸空連携の中長距離移動サービスを提供する。まずは法人向けのサービスとして始め、一般客への拡大も検討する。HondaJetシェアサービスは、ホンダが用意する「HondaJet Elite(エリート)」を活用。出発地から機側まで車で移動でき、空港のターミナル内を通過せずに搭乗できる。到着時は駐機場に待機する車で目的地へ向かう。既存の交通機関では移動が不便な区間で新サービスを活用することで、遠隔地への医師訪問やビジネスでの生産性向上、観光の効率化、移動に伴う負担軽減などを狙う。ホンダによると、サービス提供地域は利用客の要望に応じ、HondaJetが離発着できる国内60前後の空港が対象だという。価格は移動距離に応じて設定し、利用を検討する法人に個別案内する。HondaJetはホンダの米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が製造する小型ビジネスジェット機で、HACI前社長兼CEO(最高経営責任者)の藤野道格氏が設計。2015年12月に初納入し、今年1月31日に納入250機を達成した。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:「Hondaシェアサービス」で使用されるHonda Jet Elite】
2. 操縦士協会、シミュレーター存続へクラファン 6/30まで
公益社団法人・日本航空機操縦士協会(JAPA)は、協会が所有するフライトシミュレーターの維持が難しくなり、クラウドファンディングによる寄付を6月30日まで募っている。JAPAは公益法人として内閣総理大臣の認定を受けた国内唯一のパイロット団体。協会のシミュレーターは、パイロットが自ら作ったもので、実際の飛行感覚に即したものだといい、子供や学生向けの操縦体験などに使用している。シミュレーターは精密機器のため維持費が高額なことに加え、近年は会員減少で会費収入が減少。無料の子供向け操縦体験の有料化や、公益性の観点から長年据え置いてきたシミュレーター利用料の値上げなどの施策を実施してきたが、維持ができなくなる事態を避けるため、クラファンを始めたという。シミュレーターの維持には年間500万円が必要。今回のクラファンでは半額の250万円を集めることが目標で、内訳は保守管理費が約100万円、各種機材リース料が約100万円、オペレーター(講師)費用が約50万円となっている。クラファンの寄付は、寄付金控除の対象となる。寄付金の金額は2000円、5000円、1万円、3万円、5万円、10万円となっている。【Aviation wire new】
【MSN提供:日本操縦士協会が保有するフライトシミュレーター】
3.ElevationSpace、初号機「あおば」回収カプセルの分離衝撃試験に成功
ElevationSpaceは6月20日、同社が開発を進める宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」の回収カプセルについて、分離衝撃試験に成功したことを発表した。国際宇宙ステーション(ISS)が周回するような高度2000km以下の地球低軌道は、アクセスや物資補給・回収が比較的容易であることから、日本政府が2023年に発表した宇宙基本計画の中で「宇宙環境利用のための貴重な場」と位置付けられ、アルテミス計画をはじめとする月以遠への活動にあたり必要となる技術の獲得・実証の場としても利用していくことが明言されている。しかし、そうした中で、高度約400kmを周回しこれまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきた国際宇宙ステーションが、構造寿命などの関係から2030年に運用を終えることが決まっており、今後の宇宙環境利用の場を継続的に確保することが課題となっている。これらの課題を受けElevationSpaceは、無重力環境を活用した実験を無人の人工衛星で行い、その成果物を地球へと帰還させて顧客のもとに届けるサービスとして、宇宙環境利用・回収プラットフォームの実現を目指している。同サービスでは、宇宙での実証・実験の場の提供に加え、成果物を回収できることから、宇宙で実証した材料やコンポーネントを地上で改めて詳細に解析することなどが可能に。より高品質な宇宙実証環境を提供することで、民間事業者などのさらなる宇宙産業参入促進や、日本の宇宙産業力強化に貢献できるとする。ELS-Rでは、ペイロードを搭載した衛星を宇宙へと打ち上げ実証・実験を行った後、高推力のハイブリッドスラスタによって地球低軌道を離脱して大気圏に再突入し、衛星本体から回収カプセルを分離させる。そしてカプセルが大気圏を燃え尽きずに突破し一定の高度に到達してから、カプセルのサイドパネルを展開することで内側のパラシュートが開かれ、緩やかに降下して海上に着水するという。【マイナビニュース】
【Elevation Space提供:ELS-Rのサービス提供の仕組み】