KIT航空宇宙ニュース2024WK31
海外のニュース
1.ボーイング、新社長にオルトバーグ氏 ロックウェル・コリンズ元社長
ボーイングは現地時間7月31日、デビッド・カルフーン社長兼CEO(最高経営責任者)の後任として、ロックウェル・コリンズ(現米RTX傘下のコリンズ・エアロスペース)の社長兼CEOなどを歴任したケリー・オルトバーグ氏(64)を取締役会が8月8日付で選出したと発表した。オルトバーグ氏はボーイングの取締役も兼務する。オルトバーグ氏は、1983年にテキサス・インスツルメンツ(TI)へエンジニアとして入社。1987年にプログラム・マネージャーとしてロックウェル・コリンズに入社し、2013年に社長兼CEOに就任した。5年間同社を率いた後、親会社となったRTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)を2021年に退職するまでは、ユナイテッド・テクノロジーズとRTXの統合を指揮した。また、米国航空宇宙工業会(AIA)の前理事長を務めた。2020年1月に就任したカルフーン社長は、安全面の責任を取り、今年末で辞任する。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:ボーイングの新社長兼CEOのオルトバーグ氏】
2. 欧州の新型ロケット「アリアン6」が初打ち上げ
欧州の新たな大型ロケット「アリアン6」が、2024年7月10日、南米仏領ギアナのギアナ宇宙センターから飛び立った。アリアン6は、これまで欧州の主力ロケットだった「アリアン5」の後継機で、低軌道から深宇宙まで、さまざまな打ち上げに対応できる高い柔軟性を特徴としている。予定していたミッションすべてをこなすことはできなかったものの、試験飛行としては成功といえる成果を残し、欧州における宇宙輸送の自立性を回復し、そして宇宙ビジネスでシェアを維持するためための、大きな一歩を踏み出した。アリアン6 (Ariane 6)は、欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、そして民間企業のアリアングループなどが共同で開発している次世代ロケットである。2010年代の初頭からさまざまな検討が繰り返され、2014年に開発が承認された。その後、設計をめぐって紆余曲折があったものの、2016年に開発が本格化した。アリアン6は、これまで欧州が運用してきた大型の「アリアン5」と、中型の「ソユーズ」ロケットの後継機に位置付けられている。アリアン5では静止衛星を2機搭載して打ち上げることで、衛星1機あたりにかかる打ち上げ費用を抑える特徴をもち、欧州の自立的な宇宙輸送を担ったほか、商業打ち上げ市場でも高い存在感を発揮し、ビジネスでも大成功した。ソユーズはロシアから輸入して運用していたロケットで、主に中型衛星の打ち上げに使っていた。機体構成は「アリアン62」と「アリアン64」の大きく2種類が用意され、アリアン62は固体ロケット・ブースターを2基、64は4基装着する。このモジュール式の設計により、たとえば62で中型、大型の衛星を1機のみ打ち上げたり、64で衛星を2機同時に打ち上げたりと、さまざまなミッションに対応できる高い柔軟性を特徴としている。【マイナビニュース】
【ESA提供:ギアナ宇宙センターを飛び立ったアリアン6ロケット】
3.ボーイング、2025年までに737 MAX 10の認証取得に自信
ボーイングは2024年第2四半期の決算発表で、量産中の航空機のエンジン吸気口防氷システムの技術的解決策を特定したことを明らかにした。「この解決策は2025年に実装され、認証され、-7および-10 MAXファミリーの初納入をサポートする予定だ」と述べた。737 MAXのまだ認証されていない派生型は、現在運航中の-8型と-9型に影響を及ぼすエンジン防氷システムの問題によって遅れており、この問題は2023年8月に連邦航空局(FAA)の耐空性指令(AD)の一部として初めて正式に明らかにされた。既存のエンジン防氷システムがエンジン吸気口カウルの過熱につながる可能性があることから、パイロットにシステムを1回につき 5分以上使用しないことを条件に、ADは MAX-8 と-9が新しい技術的解決策なしで飛行することを許可した。つまり、同様の免除が採用されなければ、-7と-10の派生型は認証を取得するためにさらなる課題に直面することになった。しかし、2024年1月、ボーイング社はFAAに対して同様の期間限定免除の回避策を採用するよう求める要請を正式に撤回し、「当該システムに対する期間限定免除の提案は、安全な運用を確保するためのFAAの確立されたプロセスに従っていると確信しているが、代わりに認証プロセス中に完了する技術的解決策を組み込む予定である」と述べた。現CEOのデイブ・カルフーン氏は、新しい除氷システムが認証の面で「文字通り、ボトルネックとなっているアイテム」であると指摘し、収益報告の電話会議で「ボーイング社がそれを完成させ、おそらく年末までに技術措置を完了すると確信している」と述べた。【Flightglobal news】
【Flightglobal提供:Boeing737MAX-7型機】
日本のニュース
1. ヤマトとJAL、羽田にクロネコ貨物機就航 生鮮品や宅急便運ぶ
ヤマトホールディングスと日本航空、JALグループのLCC、スプリング・ジャパンは8月1日、羽田空港へエアバスA321ceo P2F型貨物機を就航させた。宅急便の荷物を運ぶほか、北海道や九州で前日集荷した生鮮品を最短で昼前には首都圏の店舗に届けられるという。ヤマトHDは、成田空港を拠点にA321P2Fの運航を4月11日に開始。JALグループが整備などを担い、1日で就航10周年を迎えたスプリング・ジャパンが運航する。羽田路線は札幌(新千歳)と北九州の2路線で、貨物専用便を深夜早朝帯に1日1往復ずつ運航する。羽田就航で、5空港へ1日13日便運航する。羽田-札幌線の運航スケジュールは、羽田行きIJ410便が札幌を午前1時20分に出発し、午前3時着。札幌行きIJ411便は午前4時15分に羽田を出発して、午前5時55分に到着する。北九州線は、羽田行きIJ444便が北九州を午前1時40分に出発し、午前3時15分着。北九州行きIJ445便は午前4時55分に羽田を出発して、午前6時40分に到着する。1日の羽田到着初便は、札幌発のIJ410便(A321P2F、登録記号JA82YA)が午前3時5分に、北九州発のIJ444便(A321P2F、JA83YA)は午前3時14分に到着した。積荷は宅急便のほか、前日に集荷して1日昼前ごろまでに首都圏の飲食店へ運ぶ生鮮品などだった。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:羽田空港に到着したヤマト運輸のA321P2F型機を迎える関係者】
2. トキエア、ランプハンドリング職の説明会 8/2にオンライン開催
トキエアは、空港のグランドハンドリング(グラハン)業務のうち、機体の牽引や誘導、貨物・手荷物の搭降載・搬送などランプハンドリング職の採用説明会を8月2日にオンラインで開催する。開催日時は2日午後6時30分から1時間。参加希望者は同社サイトからリンクされている申し込みフォームから応募する。応募条件は、同社ウェブサイトの採用情報に記載している応募資格を満たしている人。採用情報では「オペレーションスタッフ(ランプ業務、航空保安業務、旅客運送系業務)」が募集中となっており、この応募資格が該当するとみられる。トキエアは約2年遅れとなる今年1月31日に就航。新潟-札幌線が1路線目で、4月26日に2路線目の新潟-仙台線を開設した。今後は中部、神戸、佐渡への就航も計画している。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:トキエアのATR72-600型機】
3. 航空局と英CAA、相互承認の協力拡大 ファンボローで締結
国土交通省航空局(JCAB)とCAA(英国民間航空局)は、日英航空当局間の相互承認に関する協力範囲の拡大に向けた取り決めをロンドン近郊で開催中のファンボロー航空ショーで締結した。本締結により、両国の航空産業の負担の軽減や、民間航空製品の自由な流通の促進、航空の安全に関する日英の協力関係の強化等が期待されるという。日英航空当局間では、2019年に航空製品の耐空性に関して相互承認の実施に向けた詳細手順を記載した「実施取決め(耐空性実施取決め)」を締結している。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:相互承認に関する協力範囲拡大に向けた取り決めを締結する国交省航空局安全部航空機安全課航空機技術基準企画室の江口真室長(左)とCAAのロブ・ビシュトンCEO】
4. BJ新興マイクロジェット、国際チャーター開始 小型BJで日本初
航空大学校の卒業生が起業したビジネスジェット(BJ)運航会社マイクロジェット(東京・新宿)は8月2日、国際チャーター運航を9月から始めると発表した。小型ビジネスジェットを専門に運航する会社では日本初だといい、台湾や韓国、香港など近距離アジアへ運航する。マイクロジェットは、国土交通省航空局(JCAB)から国際運航開始のための認可を1日に取得。法人の海外出張や、富裕層による海外旅行のニーズに応える。機材は双発ジェット機セスナC510「サイテーション ムスタング」で、パイロット2人と乗客4人が乗れる。運賃は8月末ごろに発表を予定している。マイクロジェットは2023年1月に設立し、同年10月から営業開始。プライベート需要では記念日の旅行やペットを連れた家族旅行などを、ビジネス需要では1日に多くの都市を移動する出張や、定期便のない時間帯の利用などのニーズに応じてきた。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:マイクロジェットのビジネスジェット「セスナサイテーションC510・ムスタング」】