KIT航空宇宙ニュース2023WK24

デルタ航空が、車いすに座ったまま飛行機に乗れる客室シートを開発。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK24

海外のニュース

1. デルタ航空、車いすのまま乗れる航空機シート

デルタ航空の完全子会社デルタ・フライト・プロダクツ(DFP)は、電動車いすを使う乗客が車いすに座ったまま旅行できる世界初の航空機シートを開発し、独ハンブルクで6月に開かれた「エアクラフト・インテリア・エキスポ2023」(AIX2023)に試作品を出展した。DFPが開発したシートは特許を取得済みで、車いすに座ったままヘッドレストやセンターコンソールのテーブル、カクテルテーブルが使える。英国を拠点とするコンソーシアム「Air4All」と共同開発したという。インテリア・エキスポに出展後は、シートの最終設計と検証を実施し、試験や認証取得に向けた作業を始める見込み。【Aviation wire news】

【DFP提供:DFPが開発した車いすのまま飛行機に乗れるシート】

2.  FAAが新型ジェット機に対し「二次」コックピットバリア設置を要求

米国連邦航空局(FAA)は、新型旅客機に「二次」コックピットバリアの設置を義務付ける規則を最終決定した。これは、乗客がコックピットに侵入することをより適切に防止することを目的とした措置である。FAAは6月14日、「航空機メーカーは規則発効後に生産される民間航空機に二次防壁を設置することが義務付けられる」と発表した。新しい二次バリアは「コックピットのドアが開いているとき」コックピットを保護することを目的とし、「航空機、運航乗務員、航空乗客の安全を確保する」と付け加えた。この規則は 60 日後に発効する。この措置は米国の航空会社運航規則と航空機認証規則を変更し、規則発効から2年後、つまりおよそ2025年8月中旬以降に製造された航空機にはこの装置を搭載することを義務付ける。トイレ休憩、食事のサービス、乗務員の交代などのためにコックピットのドアを開けなければならない場合、コックピットは攻撃に対して脆弱になる可能性があり、この規則は、攻撃者がコックピットに到達する前に開いたコックピットのドアを閉めて施錠できるように、そのような攻撃を十分に遅らせることを目的としている。新しいコックピットバリアは、前方方向の荷重 272kg (600 ポンド)、後方方向の荷重 463kg に耐え、コックピットへの人の進入を少なくとも 5 秒遅らせることができなければならない。【Flightglobal News】

【航空新聞社提供:コックピットドアが開いている状態】

日本のニュース

1. 空自F-2・F-15戦闘機、国産SAFで初飛行 ユーグレナ製代替燃料サステオ

ユーグレナは6月16日、航空自衛隊岐阜基地のF-2、F-15両戦闘機に同社が製造・販売する国産の代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」の「サステオ」を給油したと発表した。日本の戦闘機がSAFを使用したのは初めて。SAFは同基地の飛行開発実験団に所属するF-2BとF-15J各1機ずつ計2機に給油。ユーグレナによると、合計5キロリットルのSAFが給油されたという。サステオは、ユーグレナが製造する国産SAF。原料に使用済み食用油と微細藻類ユーグレナから抽出されたユーグレナ油脂などを使用している。従来の石油由来ジェット燃料と混合したもので、国際規格「ASTM D7566」に準拠している。燃料の燃焼段階ではCO2(二酸化炭素)を排出するが、使用済み食用油の原材料である植物とユーグレナは、ともに成長過程で光合成によりCO2を吸収するため、SAF使用時のCO2排出量が実質ゼロになることから、カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)実現に貢献すると期待されている。ユーグレナは、2018年11月にバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを竣工。2021年3月にバイオジェット燃料が完成した。自衛隊機では、これまでに政府専用機B-777でもサステオの使用実績がある。【Aviation wire news】

【ユーグレナ提供:代替燃料「サステナ」で飛行する航空自衛隊F2とF15戦闘機】

2. スターフライヤー、就航前のA320neo体験イベント 北九州格納庫で7/4、先着20人

スターフライヤーは6月16日、就航前の新機材エアバスA320neoを北九州空港にある同社格納庫で体験できるイベントを開催すると発表した。就航日の7月4日に開催し、機体の内外を公開する。見学後には初便にも搭乗する。先着20人限定。「エアバス A320neo Dream Experience」と命名した新機材体験会で、7月4日の午前10時から午後2時まで開催する。搭載するCFMインターナショナル製エンジン「LEAP-1A」や、日本の単通路機で初導入となる大型化した手荷物収納棚などを備えるエアバスの新内装「エアスペース」などを公開。また、当日限定のルートを設定したフルフライトシミュレーターも体験できる。見学後は初便に搭乗。北九州を午後4時30分に出発する7G86便で羽田へ向かう。体験会の料金は1人10万円。料金は税込みで往復の航空券も含まれる。6月16日午後5時から同社のTwitterアカウントで購入方法を案内し、先着20人限定で受け付ける。スターフライヤーはA320neoの初号機(登録記号JA28MC)を、現地時間6月13日に受領。座席数は1クラス162席で、現行機のA320従来型(A320ceo、1クラス150席)よりも12席増えた。Wi-Fiによる機内インターネット接続サービスを無料で提供する一方、A320ceoで導入している個人用モニターは搭載しない。【Aviation wire news】

【スターフライヤー提供:スターフライヤーの新型機材エアバスA320neo】

3. JAL、ロサンゼルス発便でSAF シェルと契約、25年から置き換え

日本航空は6月16日、シェル・アビエーションと代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料、サフ)」の調達契約を締結したと発表した。米ロサンゼルス国際空港で搭載する燃料を、2025年からSAFに置き換える。今回調達するSAFは、通常のジェット燃料と比較しCO2(二酸化炭素)排出量を75%以上削減することができ、年間で4.7万トン以上のCO2削減につながる。JALは現在の中期経営計画で、SAFの利用目標を2025年度に全燃料搭載量の1%、2030年度に10%としており、今回の調達により2025年度の目標を達成する見込み。JALは加盟する航空連合ワンワールド・アライアンス各社と共同で、2024年度以降の米西海岸発便でSAF調達を予定している。日本国内では、国内で混合したSAFを伊藤忠商事から調達。混合前のSAFの原液(ニートSAF)を輸入し国内で混合するもので、4月から中部空港で使用している。またJALと全日本空輸は、SAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を2022年3月2日に設立。日揮ホールディングスとレボインターナショナル(京都市)とともに、国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組んでいる。【Aviation wire news】

4. ホンダジェット、米大陸横断できる新型機 ライト機参入、28年製品化

本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は現地時間6月13日、小型ビジネスジェットのコンセプト機「HondaJet(ホンダジェット)2600 Concept」をベースとした新型機を2028年に製品化すると発表した。従来機の「HondaJet」よりも1つ上の「ライトジェット機」クラスに参入し、同クラスとしては初めて米大陸の横断が可能となる。今回製品化を決定した新型機は、航続距離2625海里(約4862キロ)、巡航速度450ノット(時速約833キロ)。最大11人の乗客乗員が搭乗でき、従来機同様パイロット1人でも運航できる。燃費は通常のライトジェット機より20%、最大離陸重量が2万ポンド以上、3万5000ポンド以下の双発エンジンを搭載する「中型ジェット機」より40%以上向上させる。FAA(米国連邦航空局)からの型式証明(TC)取得は2028年ごろを目指し、今後開発を進めていく。新型機のベースとなったコンセプト機「HondaJet 2600 Concept」は、2021年に米ラスベガスで開催されたビジネスジェット展示会「NBAA(ナショナル・ビジネス・アビエーション・アソシエーション・コンベンション・アンド・エキシビション)」で発表。HACIによると、市場のニーズが高かったことなどから製品化を決定したという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ライトジェットクラスの11人乗りホンダジェット(想像図)】

5. 信州大など、高度9000m相当の低大気密度で羽ばたきロボットの離陸に成功

信州大学(信大)、東北大学、九州大学(九大)、前橋工科大学、米・アラバマ大学ハンツビル校の5者は6月15日、東北大 流体科学研究所(IFS)所有の火星大気風洞の減圧チャンバーを用いて高高度飛行を模擬した低密度環境を構築し、その環境下において「ハチドリ規範型羽ばたき翼型飛行ロボット(ロボハチドリ信州)」の翼が発生する空気力と翼面形状の同時計測を実施したことを共同で発表。同計測により、飛行ロボットの翼の面積を地上のモデルに比べて大きくしゆっくり羽ばたくことにより、大きな羽ばたき振幅と飛翔生物の翼の回転角変化に近い受動的な回転角変化を得られることを示したと発表した。また、大気密度が地上と比べて約3分の1の低大気密度環境下においても、地上での空気力発生機構による大きな揚力の発生を実現させ、羽ばたき翼型飛行ロボットのリフトオフ実験に成功したことも併せて報告された。飛行中に発生する揚力や抗力などの空気力は、大気密度、基準速度の2乗、翼面積、およびそれぞれの空力係数に比例する。つまり、大気密度が減少するにつれて、揚力が乗り物の重量を相殺して浮いた状態を維持するためには、残りの項の積を相応に増加させる必要が出てくる。大気密度は、飛翔体の飛行高度によって変化する温度と圧力の関数であるため、重要な考慮事項だ。さらに流れの特性は、流体の慣性力と粘性力の比を示す流体力学的な無次元数「レイノルズ数」によって特徴付けられるが、この値が翼の大きさと運動速度が一定の場合、大気密度が減少すると低下してしまう。この低レイノルズ数環境下では、固定翼と回転翼によって生成される空気力は、流れの剥離と渦の放出によって低下する可能性が高くなる。一方、昆虫や鳥は通常低レイノルズ数領域(O(102)-O(104))で飛行しており、このレイノルズ数領域で普及している非定常空気力学的メカニズムを効果的に利用することにより、大きな空気力を生成できるとする。これまで、マルハナバチやオオカバマダラの高高度での飛行は確認されているが、そのメカニズムは完全に解明されたわけではないという。【マイナビニュース】

【信州大学提供:ロボハチドリ信州の地上モデル(左)と高高度モデル(右)】

6. アジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2023」が7月4日開幕

2023年7月4日から6日まで、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、宇宙ビジネスの創出や宇宙産業の発展によって将来的な価値創造を目指す、アジア太平洋地域(APAC)最大級の日本発宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2023」が開催される。2015年に初めて開催された同イベント。今回は、20カ国超から1000名以上が参加するなど過去最大規模となる見込みだ。2015年に活動を開始したSPACETIDEは、宇宙以外の業種を主とする大企業や政府・公的機関、中小企業やスタートアップ、そして投資家などといったさまざまレイヤーを巻き込みながら、日本の宇宙産業におけるエコシステムの形成に貢献してきたという。そして、その数多くのステークホルダーが一堂に会するメインイベントが、今般開催されるSPACETIDE 2023だ。SPACETIDEが年に1度開催する大型メインカンファレンスでは、毎回コンセプトが発表される。SPACETIDE 2023のコンセプトは「宇宙ビジネス、新たな経済圏のひろがり」。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:「SPACETIDE2023」の概要】