KIT航空宇宙ニュース2024WK33

多くの人工衛星やデブリが存在する宇宙の軌道の現状と、スペースサステナビリティの実現に向けたアストロスケールの取り組みを、宇宙の軌道に関する映像や展示、体験を含む見学コンテンツから学ぶことが出来る「オービタリウム」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK33

海外のニュース

1.Reaction Enginesが極超音速推進システムのマイルストーンを達成

Reaction Engines は、革新的なプリクーラー技術を既存のジェットエンジン技術に統合することに成功し、マッハ 3.5 の持続的な動作条件を達成し、高マッハ/極超音速航空機向けの革新的な推進システム コンセプトの主要要素の実現可能性を実証した。現在の地上試験プログラムでは、Reaction Engines社の革新的な予冷却装置が改造されたロールスロイス社製ジェットエンジンと統合され、無人再利用可能な高マッハ航空機コンセプトの推進システムをシミュレートしている。テストプログラムは、当初、コンコルドの最高運航速度よりも速いマッハ2.3の持続的な運航条件を達成し、その後、マッハ3.5の圧力と温度で運航し、空気吸入エンジンを搭載した世界最速の航空機であるSR-71の既知の最高対気速度記録に匹敵した。プレクーラー技術の開発に加えて、Reaction Engines社は極超音速性能のための新しい高マッハ吸気設計技術の開発とテストを行っている。現在、フルスケールの地上高マッハテスト用のハードウェアの製造と組み立てが行われている。超音速条件の範囲で吸気性能を評価するため、サブスケールの空力風洞テストがすでに実施されている。【Reaction Engine社Press Release】

【Reaction Engines社提供:極超音速推進システムのテストリグ】

日本のニュース

1. 成田空港とJR貨物、関西発輸出貨物の鉄道共同輸送サービス実証実験

成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は、JR貨物(日本貨物鉄道)と同社グループの日本フレートライナー(日本FL)の2社とともに成田空港モーダルシフト推進協議会を立ち上げた。成田空港から輸出される関西圏の貨物を運ぶ鉄道共同輸送サービス「RAIL to NARITA LCLサービス」の実証実験を8月から2025年2月までの予定で実施する。関西で生産された製品を成田から輸出する場合、国内輸送の大半をトラックが担っており、長距離トラックドライバーの確保やCO2(二酸化炭素)排出量の削減が課題となっている。一方、鉄道による貨物輸送は一度に大量輸送が可能で、CO2排出量も少ないが、コンテナ単位で契約しなければ利用できず、重量が軽く、高価値製品が多い航空貨物では利用が難しかった。今回の実証実験では、NAAが航空貨物のフォワーダー(貨物代理店)が利用を働きかけ、JR貨物と日本FLが企画販売と輸送サービスを提供。協議会として、1パレット単位で申し込める小ロットの鉄道共同輸送サービスを検証する。LCLは、1つのコンテナに複数の荷主の貨物を混載する輸送形態で「合積み」とも呼ばれる。対象貨物は、関西圏から成田空港周辺のフォワーダー施設(保税蔵置場)に輸送され、成田空港から輸出される航空貨物で、対象事業者はこれらの輸送手配を行うフォワーダーとなる。補助金を活用したトライアル利用料金は、1パレットあたり内国貨物が5000円(税抜)、外国貨物は非課税で5000円となる。【Aviation wire news】

【成田空港株式会社提供:航空貨物輸送と鉄道貨車輸送の共同輸送サービスのイメージ】

2.日航機事故39年 鳥取社長が御巣鷹山で献花

乗客乗員520人が亡くなった日本航空123便墜落事故から、8月12日で39年が経った。12日は、墜落現場となった群馬県多野郡上野村の御巣鷹山を多くの遺族や関係者らが早朝から訪れた。JALによると12日午後2時の時点で、昨年の同時刻よりも8家族37人少ない67家族228人の遺族が御巣鷹山を訪れた。これまでの過去最多は事故後30年の2015年で、午後4時の時点で106家族406人だった。4月に就任した鳥取三津子二社長は午前11時50分すぎ、山頂付近にある「昇魂之碑」を訪れ、御巣鷹山の2代目管理人、黒沢完一さんにあいさつして献花し、線香をたむけた。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:御巣鷹山の「昇魂の碑」に献花するJAL鳥取社長】

3. 超小型衛星向け姿勢決定制御サブシステムをアークエッジ・スペースが開発

アークエッジ・スペースは8月1日、人工衛星の姿勢および軌道を制御するための基幹部品である姿勢決定制御サブシステム「ADCS(Attitude Determination and Control Subsystem)」について、性能と経済性を両立する国産化システムの開発を完了したことを発表した。同社は、超小型人工衛星の開発を中心とする複数の人工衛星生産体制を有し、超小型人工衛星のほか、地上局整備や関連部品の設計・製作などのハードウェア事業を展開しているベンチャー企業。今回開発が進められた同システムは、経済産業省の委託事業「宇宙開発利用推進研究開発(小型衛星コンステレーション関連要素技術開発(軌道・姿勢制御技術(うちADCS統合ユニット)))」として同社がとりまとめ、セーレン、三菱プレシジョン、シナノケンシ、コシナ、イメージ・テック、宇宙システム開発利用推進機構、東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬・五十里研究室が連携する形で製品化された。6Uサイズなどの小型衛星に搭載できるよう設計されており、高度な姿勢制御が必要となる地球観測や広帯域通信向け小型衛星に適した高精度ユニットと、IoTデータ収集に向けて経済性を高めた汎用型ユニットとしてそれぞれ最適化されており、同社でも今後、自社の小型衛星コンステレーション構築などに積極的に活用していきたいとしている。【マイナビニュース】

【アークエッジ・スペース提供:国産化開発が完了した3U~6U衛星用低価格版ユニット(左)と6U~12U衛星用高精度版ユニット(右)】

4. スカイマーク、25年度入社の新卒採用 総合職と整備士、ランプ

スカイマーク(SKY/BC)は8月16日、2025年度入社の新卒・秋採用を実施すると発表した。20日からエントリーを受け付ける。募集職種は、総合職(総合企画コース)と航空機整備士、ランプハンドリング職の3職種。採用数は総合職と整備士が若干名、ランプが約10人を予定している。総合企画コースは、運航管理をはじめとした空港オペレーション、運航・客室部門の現業サポート、営業部門などコーポレート部門を主に担当する。応募資格は、総合職が今年4月から2025年3月までの間に、大学か大学院を卒業・修了見込みの人。整備士とランプは、これらに加えて専門学校と高専、短大も対象になり、3職種とも学部学科などの指定はなし。選考の流れは、総合職がエントリーシート提出→書類選考→適性検査→グループ面接、グループディスカッション→個人面接→最終面接。整備士とランプは、エントリーシート提出→書類選考→適性検査→グループ面接→最終面接となる。エントリー期間は、3職種とも8月20日午後1時から9月8日午後11時59分まで。【Aviation wire news】

5.アストロスケールと日本旅行、宇宙の環境問題のSTEAM教育プログラムを提供

アストロスケールと日本旅行は8月8日、宇宙の環境問題についてのSTEAM教育プログラムを共同開発し、2024年9月より提供を開始することを発表した。STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。近年は、現実社会の問題を創造的に解決に向けて文理の枠を超えた横断的な学びの機会の推進が重要視されるようになってきている。オービタリウムは、多くの人工衛星やデブリが存在する宇宙の軌道の現状と、スペースサステナビリティの実現に向けたアストロスケールの取り組みを、宇宙の軌道に関する映像や展示、体験を含む見学コンテンツから学ぶことが出来る施設で、2023年7月にオープンしてから1年間で約1000名を超える来場者数を記録している。来場者の中には教育研修で来る人もあるとのことで、そうした経緯もあり、独自の探究体験プログラムを提供し、宇宙教育の知見もある日本旅行と協力することで、スペースサステナビリティについてより理解を深めることを目指して同プログラムの開発を行ったという。両社は、人工衛星は通信やGPSなど、現代に生きる我々の日常生活や経済活動において必要不可欠な存在となっており、そうした人工衛星が運用されている宇宙の軌道について身近に感じてもらい、同プログラムを通じて将来の担い手の育成に貢献したいとしている。開催されるスペースサステナビリティ教室は主に中高生をターゲットにしたもので、座学による宇宙産業を取り巻く環境や宇宙ごみ(スペースデブリ)の問題やその影響について、アストロスケールの取り組みを含めて学ぶほか、オービタリウムの見学(クリーンルームの内部の様子も時期などによるが見ることが可能)、学んだ内容を振り返るワークシートの活用や後日、学校における発表などを通じて、軌道がどのような状態にあるのか、軌道を維持して宇宙活用を続けていくためには何ができるのかなど、宇宙の環境問題について現場での体験を踏まえた学びを深めることを目指したものとなっているとする。なお、申し込みはアストロスケール オービタリウム事務局の専用フォームより行うことができる。【マイナビニュース】

【アストロスケール提供:オービタリウム】