KIT航空宇宙ニュース2024WK37

エアバスが検討中の、次期ナローボディー機に搭載予定の既存エンジンより25%燃費が改善されるOpen Fan Rotorエンジン
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK37

海外のニュース

1.ボーイング、16年ぶりストで737MAX生産停止 最大労組が暫定合意否決

ボーイング最大の労働組合IAM(国際機械技術者協会)は現地時間9月13日、ストライキに突入した。ストの実施は2008年以来16年ぶりで、組合執行部と会社が暫定合意した労使契約を否決した。この影響で、小型機737 MAXは生産停止したもよう。ストの期間は不明だが、今後の航空会社への引き渡しに影響が出る可能性がある。IAMのブライアン・ブライアント会長は「ボーイングは、今こそ組合員の価値を尊重し、彼らにふさわしい尊厳を与える契約を提示しならない。ボーイングは従業員の過小評価をやめるべきだ」との声明を発表した。ボーイングのステファニー・ポープ民間航空機部門社長兼CEO(最高経営責任者)は7月にロンドンで開いた会見で、品質問題が起きている737 MAXと787の生産レートを年内に戻す方針を示していたが、労使協定が不調に終わったことで増産が困難な状況に陥っている。IAMは北米最大の産業別労働組合のひとつで、約60万人が加盟。このうちボーイングでは、ワシントン州とオレゴン州ポートランドを中心に3万3000人以上の従業員が加盟しているといい、民間機部門は737 MAX、767、777/777X、防衛部門ではKC-46A、P-8、E-7の製造に従事している。【Aviation wire news】

2.ハート社、初のフルスケール飛行試験デモンストレーターHX-1を発表

スウェーデンのハート・エアロスペース社は、同社初の実物大飛行実証機「ハート・エクスペリメンタル1(HX-1)」を公開した。これは、わずか2年前に発表されたばかりのハイブリッド電気航空機ES-30の開発に向けた足がかりとなる。しかし、30人乗り機の就航は、最新の目標である2028年から約1年遅れている。9月12日に公開されたHX-1は、 ES-30の最新構成(2022年に公開されたバージョンでは、支柱で支えられた翼と胴体下のバッテリー収納ベイが特徴)を体現しており、ハートのヨーテボリSave空港施設で大部分が自社製造されている。翼幅32メートル(105フィート)のHX-1は、当初は地上での運用試験(充電、タキシング、ターンアラウンド手順など)に使用され、2025年第2四半期に米国の非公開の場所から初飛行を行う予定です。HX-1には熱サイクルエンジンが搭載されていないため、初飛行は電力のみで飛行することになる。【Flightglobal news】

【Heart Aerospace提供:初の電動飛行を行う予定の「HX-1」】

3.エアバスはCFMのRISEの支援を受けて、次期ナローボディ機の効率を25%向上させることを目標としている。

エアバスのギヨーム・フォーリー最高経営責任者(CEO)は、欧州航空機メーカーの次期ナローボディジェット機が現行モデルより25%効率性が向上すると予想していることを明らかにした。そして、その実現にはCFMインターナショナルが開発中のオープンローターエンジンに期待している。【Flightglobal news】

【CFMインターナショナル提供:開発中のOpen Fan Rotorエンジン】

4.ジョビー、UAEで航空運航者証明書の申請を開始

米国のエアタクシー開発会社、ジョビー・アビエーションは、中東の砂漠地帯の大都市で、まだ認証を受けていない電動垂直離着陸機(eVTOL)の初期運用を引き続き追求している。【Flightglobal News】

【Joby Aviation提供:Jobyが開発中のeVTOL機】

日本のニュース

1. JAL、LINEで国際線搭乗案内 航空業界初「通知メッセージ」活用

日本航空は9月13日、国際線の乗客に搭乗案内などを「LINE」で案内するサービスを18日から始めると発表した。LINEの法人向け機能「LINE通知メッセージ」を活用するもので、航空業界では初めてだという。LINEで国際線の乗客に案内するのは、搭乗便の運航状況や搭乗手続き方法、チェックイン済みでない場合の通知、保安検査通過の案内、予約便の欠航・遅延などの運航状況の4点。「LINE通知メッセージ」で出発前日・当日に配信する。JALはこれまで、LINEでは国際線の搭乗予定便の運航状況に関する情報を通知するサービスのみを提供。予約や搭乗に関する案内には、電子メールやJALアプリなどを使っていた。幅広い世代が利用するLINEを活用し、予約内容に合わせた搭乗手続き方法や出発情報を案内する。今後は国内線の乗客向けのLINE通知メッセージ配信や、保安検査場の混雑状況や混雑を加味した推奨ルートがわかる空港デジタルマップの追加、欠航・遅延時の情報提供などを予定している。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:LINEで国際線搭乗案内の仕組み】

2.JALと東工大、国内線A350や787搭乗順短縮 機内の混雑緩和で定時性向上

日本航空は9月11日、国内線の搭乗方法をエアバスA350-900型機など中大型機で見直した。搭乗時の機内混雑を緩和する取り組みで、東京工業大学との共同研究結果を反映した。従来の方法と比べ搭乗時間が平均約50秒短縮されて定時性向上につなげられるほか、乗客が機内混雑で感じるストレスの緩和につながるという。搭乗方法を変更した機材は、羽田発着の国内幹線を中心に投入されているA350-900やボーイング787-8型機といった、機内の通路が2本ある「ワイドボディー(広胴、双通路)」機。A350-900と787-8のほか、一部便に投入している国際線機材777-300ER、中型機767-300ERなどが対象になる。これまでの搭乗順序は、赤ちゃん連れなどの「事前改札」が最初で、上級会員や国内線ファーストクラス客など「グループ1-2」が対象の「優先搭乗」、後方の座席番号40番以降と非常口座席の「グループ3」、20番以降の「グループ4」と続き、最後はすべての乗客が対象の「グループ5」と計5段階に分かれていた。変更後は「事前改札」と「優先搭乗」までは同じで、「グループ3」で40番以降と窓側席のA列とK列、非常口座席の乗客が搭乗し、「グループ4」ですべての乗客が搭乗する。これにより「グループ5」は対象機材では廃止となり、従来より1段階少ない4段階の搭乗になった。JALは東工大の環境・社会理工学院 建築学系 教育施設環境センター長の大佛(おさらぎ)俊泰教授とともに、2022年度から共同研究を開始。A350-900で運航している羽田-那覇線、福岡線、札幌(新千歳)線の国内線計6便で調査を実施し、独自の搭乗シミュレーションモデルを構築した。このシミュレーションモデルを活用し、乗客の年齢や性別、グループ客か個人客か、手荷物の有無、手荷物の種類や個数など、さまざまなシナリオでシミュレーションを約1000回実施。大佛教授によると、欧米でも搭乗順序に関する基礎研究はあるものの、通路が1本のナローボディー(狭胴、単通路)機の事例だという。今回はワイドボディー機の機内に360度カメラを6台設置することで、搭乗時に乗客が通路のどのあたりで渋滞するかなどを細かく分析したという。【Aviation wire news】

3.JAL、A350向け没入型訓練装置導入 エアバスと5年契約

エアバスは現地時間9月10日、日本航空がA350型機向けの没入型訓練装置「ヴァーチャル・プロシージャ・トレーナー(VPT)」を導入したと発表した。A350を運航する航空会社で、エアバス製VPTを採用したのはJALが初めて。VPTでは、飛行手順や異常事態を想定した訓練を、インタラクティブな操作が可能なリアルな環境で受けられる。JALはエアバスの「MATeスイート(Mobile Airbus Training experience)」を利用し、システムの訓練と練習を実施しており、VPTの導入を決めた。A350VPTを用いた最初の訓練コースには、JALの12人のパイロットが参加。JALの最新訓練コンセプトも組み合わせた取り組みで、VPTの契約は5年間となる。エアバスが開発したVPT は、航空会社の機体に合わせて調整したVR(仮想現実)空間を提供するため、パイロットの技術力と習熟度の強化に効果的だという。柔軟性が高く、時間や場所に縛られずに訓練を実施できることから、訓練費用と航空機の非稼働時間を最小限に抑えて大幅なコスト効率を実現できるとしている。【Aviation wire news】

【Airbus提供:A350向けVPT(バーチャル・プロシジャー・トレーナー)】