KIT航空宇宙ニュース2023WK45

機体に空気抵抗を低減する特殊加工「リブレットフィルム」の技術は、既存の塗膜上に水溶性モールドで塗膜に凹凸を形成するオーウエルの「Paint-to-Paint Method」を用い、水溶性の型を大型化したものです。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK45

海外のニュース

1.Joby、「ユニバーサル」充電システムの採用を推進

米国のエアタクシーメーカー、ジョビー・アビエーションは、競合する新興企業アーチャー・アビエーションとベータ・テクノロジーズが提案する自動車ベースの規格ではなく、航空機の充電に同社のシステムを採用するよう電気航空業界に求めている。 主要なエアタクシー開発者間の権力闘争は、今後数年間で電動垂直離着陸(eVTOL)航空機の充電インフラがどのように開発され展開されるかを形作る可能性がある。 Joby社の製品責任者であるエリック・アリソン氏は11月8日、カリフォルニア州サンタクルーズに本拠を置く同社が同業他社の中でバッテリー駆動航空機の運航経験が最も豊富であると語った。同社は最近、充電システムの仕様をeVTOL分野の他の企業に自由に利用できるようにすると発表した。同じ頃、アーチャーとベータは、 共有充電インフラストラクチャに関する独自のビジョンの「広範な展開を促進する」ために協力すると述べた。アーチャーとベータは11月7日、電気自動車の「トップOEMが採用するマルチモーダルで相互運用可能な標準」と説明する複合充電標準を採用するよう業界に求めた。Joby は、その充電インターフェースを「ユニバーサル」と呼んでおり、エアタクシーミッションや電動従来型離着陸 (CTOL) 航空機の高性能要求に対応できる。また、「現在議論されている再利用された自動車規格とは異なり」、航空に特化したものでもある。 このシステムは、ジョビーが最近米空軍エドワーズ空軍基地に納入した量産試作機の充電に使用されています。Joby はカリフォルニア州マリーナにある飛行試験施設でもこのシステムを使用している。Joby は、統合充電システムではその役割を果たせていないと考えており、独自のシステムではその役割を果たしていると考えている。【Aviation wire news】

【Flightglobal提供:Joby AviationのeVTOL機用充電システム】

2.FAA、パイロットのメンタルヘルスを調査する規則制定委員会を設置

米連邦航空局は、パイロットのメンタルヘルス問題を連邦航空局に報告することを義務付けるため、パイロットのメンタルヘルス航空規則制定委員会(ARC)を設立する予定である。 FAA長官のマイク・ウィテカー氏は、「メンタルヘルスケアは近年大きく進歩しており、FAAがパイロットの健康を評価する際にこうした進歩を確実に考慮したいと考えている」と述べた。パイロットは特定の精神的健康状態を航空身体検査官に報告しなければならない。航空身体検査官はパイロットの飛行適性を判断する訓練を受けている。 ARCには医療専門家、航空および労働の代表者が含まれる。FAAは今後数週間以内に規則制定委員会の憲章を最終決定し、専門家委員会を任命する予定。さらに、FAAはARCと協力して、パイロットの精神的健康の課題に関するDOT監察総局の2023年7月報告書の公開勧告に対処する予定である。この報告書では、「パイロットの心理的健康を評価するための包括的な手順」が含まれている。【Flightglobal News】

日本のニュース

1.ANA系avatarinと中部空港、遠隔操作ロボットで案内業務の実証実験

ANAホールディングスが出資するavatarin(アバターイン、東京・中央区)と中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社は、空港内での案内業務の実証実験を11月8日から始めた。アバター(遠隔操作ロボット)を使うことで、広い空港内でのスタッフの移動時間の軽減などの効率化や省人化を目指すとともに、遠隔地にいる人が遠隔操作ロボットを活用して案内業務が可能かなどを検証する。実証実験では、avatarinの遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」を使用。newmeの設置場所は空港内3カ所で、アクセスプラザ案内所、フライト・オブ・ドリームズ案内所、第2ターミナル到着ロビー案内所。newmeの操作は空港内のオフィスと都内にあるavatarinのオフィスから行い、空港内は中部空港のスタッフが、avatarinのオフィスではANAビジネスソリューションのスタッフが操作し、案内業務に就く。案内業務など空港で必要とされるスキルを持つ人が、全国どこからでも必要な時に就労できる環境を整えることで、航空業界で予想される人手不足の解消につなげる。今回の実証実験は、avatarinが愛知県から今年度に受託した「2023年度あいちデジタルアイランドプロジェクト」の下で実施。2030年に世の中での普及が見込まれる近未来の事業やサービスを、中部空港島や周辺地域で先行して実用化を目指す。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:中部空港内に設置された遠隔操作ロボット「newme」】

2. JALとヤマトのクロネコ貨物機、成田到着 A321P2Fをスプリング運航、長距離トラック補完

ヤマトホールディングスと日本航空が2024年4月から運航を予定しているエアバスA321ceo P2F型貨物機が11月6日朝、成田空港に到着した。運航はJAL連結子会社のスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本)が担い、20日から飛行訓練を始める見通し。首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完する。A321P2Fは、中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修したもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。ヤマトHDは3機リース導入する計画で、成田に到着した初号機は6月からシンガポールで改修作業が行われ、台北の桃園国際空港経由で到着した。JALとヤマトHDは、A321ceo P2Fで貨物専用便の運航を2024年4月から開始。東京(成田・羽田)-札幌(新千歳)と北九州、成田-那覇、那覇-北九州の4路線を1日21便運航する。首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完するもので、ヤマトが貨物機を導入するのは初めて。また、国内の航空会社がA321P2Fを運航するのも初となる。また、JALは自社の中型旅客機ボーイング767-300ER型機を改修した貨物専用機も3機導入。2023年度末から順次運航を開始する。JALが貨物機を導入するのは13年ぶり【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:成田空港に到着したヤマトホールディングスのA321P2F機】

3.鹿島とJAXA、月面での水掘削を想定した自動遠隔建設機械の実証実験を実施

鹿島建設と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の両者は11月8日、鹿島建設の実験場「鹿島西湘実験フィールド」(神奈川県小田原市)とJAXA相模原キャンパスを結んで、自動遠隔建設機械による月面環境での作業を想定した実証実験を行い、月面での永久陰領域などでの施工に必要となる構成技術・要素技術の妥当性を確認したことを共同で発表した。同成果は、鹿島を代表としてJAXA、芝浦工業大学の3者が2021年から参画している国土交通省の公募事業「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」の研究開発によるもの。【Aviation wire news】

【鹿島建設提供:月面での水掘削を想定したシミュレーション】

4.JAL、学生向けCA体験ツアー 12月開催

日本航空は、訓練施設での学生向け客室乗務員体験ツアーを自社のショッピングサイト「JALショッピングJAL Mall店」で販売している。開催日は12月16日で、定員は先着24人、申し込みは3日まで。ツアーでは、羽田空港にあるJALの訓練施設「第一テクニカルセンター」にある客室モックアップで、ドリンクカートの操作や機内アナウンスなどを体験。現役客室乗務員との座談会も開く。対象は高校生以上。日時は12月16日午後1時から午後3時45分ごろまで。税込価格は1万3200円。【Avition wire news】

【Yahooニュース提供:学生向けCA体験の様子】

5.JAL、737に空気抵抗低減の特殊加工 胴体下部に拡大、CO2削減へ実証実験

日本航空は11月10日、機体に空気抵抗を低減する特殊加工を施し、燃費改善効果を計る飛行実証実験を開始すると発表した。ボーイング737-800型機の国内線仕様機で2022年7月から進めている特殊加工「リブレット」の面積を拡大して展開するもので、燃費改善のほか耐久性や美観性も検証する。2024年度以降に国際線機材へも展開することで、CO2(二酸化炭素)排出量のさらなる削減を目指す。今回の実証実験では、737の外板塗膜上に直接施した「リブレットフィルム」の面積を拡大。当初は約60平方センチだったが、胴体下部の約25平方メートルに広げる。2022年7月に始めた実証実験では今年2月時点で施工後約1500時間、6月時点で約2300時間が経過し、十分な耐久性を確認できたことから面積を拡大し、通常便での実証実験を始める。実証実験には2022年7月から引き続き、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と塗料関連事業を手掛けるオーウエルの各者が参画する。機体への大面積施工は、水溶性の型の大型化や施工技術の確立などの課題を解決し、施工部分や面積を確定する必要があり、3者で検証を進めた。JAXAは施工部分や面積を確定し、空力シミュレーションや風洞試験で、機体抵抗削減の効果を算出。リブレット技術は、既存の塗膜上に水溶性モールドで塗膜に凹凸を形成するオーウエルの「Paint-to-Paint Method」を用い、水溶性の型を大型化した。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:航空機外板塗装への「リブレット」加工方法】

6.高校生が主体となって開発・運用を目指す人工衛星、打ち上げに成功

Space BDは11月10日、クラーク記念国際高等学校(クラーク国際)、東京大学(東大)、Space BDの3者が進めている高校生を対象として未来のリーダー人材育成を目指した「宇宙教育プロジェクト」で開発された人工衛星「Clark sat-1(愛称:Ambitious)」を搭載したSpaceXのFalcon 9ロケット(NASA 29th Commercial Resupply Service mission:SpX-29)が2023年11月10日10時28分(日本時間)に打ち上げに成功したことを発表した。打ち上げられたClark sat-1は1Uサイズ(10cm角)で重さ約0.94kgの超小型人工衛星。東大大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授が指導を、Space BDが支援を行う形で2021年10月から開発が始まり、各種申請手続きやJAXAによる各種審査などを経て、2023年3月に完成した。また並行して衛星の運用を行うことを目的としてクラーク国際の校舎に管制局の設置工事も行ったという。今後、衛星は国際宇宙ステーション(ISS)に運び込まれ、日本実験棟「きぼう」から予定軌道に投入され、生徒たちによって考案されたミッションを実際に行っていくことになる。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:高校生たちが開発した10cm角の超小型衛星「Clark sat-1」】