KIT航空宇宙ニュース2024WK44
海外のニュース
1. エアバス、シェーラー民間航空機CEO退任へ 後任は独MTUワグナーCEO
エアバスは現地時間10月30日、民間航空機事業のクリスチャン・シェーラーCEO(最高経営責任者)が退任すると発表した。後任には独MTUアエロエンジンズCEOのラーズ・ワグナー氏が就任する。ワグナー氏は2025年12月31日までMTUのCEOを務め、その後シェーラー氏の後任に就く。ワーグナー氏は1975年生まれの49歳。以前はエアバスに所属しており、海外勤務を含む管理職を歴任した。その後MTUへ移り、2023年1月からは同社CEOを務めている。シェーラー氏は1984年にエアバスへ入社。グループ防衛宇宙部門のエアバス・ディフェンス・アンド・スペースを中心に要職を務め、2016年にエアバスと伊アレニア・アエルマッキの共同事業体で、ターボプロップ機を手掛けるATRのCEOに就任した。現職は今年1月から務めている。
【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:新たにAirbusのCEOに就任する現MTU CEOワグナー氏】
2.エアバス、2期ぶり増益 最終黒字9.8億ユーロ=24年7-9月期
エアバスが現地時間10月30日に発表した2024年7-9月期(第3四半期)連結決算は、純利益が前年同期比22%増の9億8300万ユーロ(約1636億4900万円)だった。売上高は5%増の156億8900万ユーロ、調整後EBIT(財務・法人所得税前損益)は39%増の14億700万ユーロの黒字となった。民間機の納入微増などより2期ぶりの増益で、15四半期連続で最終黒字となった。また民間航空機事業のクリスチャン・シェーラーCEO(最高経営責任者)が退任し、後任には独MTUアエロエンジンズCEOのラーズ・ワグナー氏が就任する人事も同日に発表した。【Aviation wire news】
3.ホンダ、FAAからeVTOLのデモ飛行開始の承認を取得
ホンダの一部門は、小型の無人電気飛行機の試作機の飛行試験を開始する予定のようだが、開発計画についての詳細はほとんど明らかにされていない。米連邦航空局は10月29日、ホンダのカリフォルニアに拠点を置く技術開発部門であるホンダ・リサーチ・インスティテュートに対し、電動垂直離着陸機(eVTOL)のデモ飛行を完了することを許可する免除を認可した。FAAの承認書では、この航空機は重量が25kg(55ポンド)を超える「R&Dサブスケールモデル試験機N241RX」と呼ばれている。この承認により、ホンダ・リサーチ・インスティテュートは2026年10月までの2年間、この航空機を飛行させる権限を得た。しかし、開発中の航空機についてはほとんど知られていない。ノースカロライナ州に本拠を置くホンダ・エアクラフト社は「現時点では開示したい情報はない」としてコメントを控えた。FAAの記録によると、同局は2022年12月にホンダ・リサーチ・インスティテュートに登録番号N241RXの電動回転翼航空機の認証を発行した。ホンダは以前、航続距離216海里(400キロメートル)のハイブリッド電気乗員輸送機「ホンダeVTOL」を開発する社内プロジェクトを明らかにしていた。【Flightglobal new】
【ホンダ提供:ホンダeVTOLコンセプト・イメージ】
4.リリウム、ニューヨーク証券取引所から上場廃止へ
ナスダックに初めて上場されてから4年後(Qell Acquisition Corpとの事業統合に基づく)、eVTOLメーカーのリリウムの株式は同社の破産申請に伴いナスダック証券取引所から上場廃止される予定である。リリウムがドイツで破産申請し、自己管理を申請したことを受けて、資金難に陥った空飛ぶタクシーの新興企業の株式はナスダック証券取引所で取引されなくなる。先週、リリウムは、「ドイツ政府やその他の資金源から」の追加資金投入がなく、「継続的かつ進行中の資金調達努力」にもかかわらず、リリウムと完全子会社のリリウム・イーエアクラフトが自己管理手続きの申請を進めると発表した。【Flightglobal news】
【Lilium提供:Liliumが開発中のeVTOL機】
日本のニュース
1. ANA、通期予想を上方修正 24年4-9月期純利益は13.3%減807億円
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが10月31日に発表した2024年4-9月期(25年3月期第2四半期)連結決算(日本基準)は、純利益が前年同期比13.3%減の807億7800万円だった。売上高が上期で過去最高となる9.7%増の1兆995億円となり、訪日需要が好調で国際線旅客収入も上期の過去最高を更新した。通期連結業績予想は経常益と純利益を上方修正。補償獲得による営業外収益の増加によるもので、純利益は23.6%減の1200億円(同1100億円)を見込む。4-9月期の売上高は9.7%増の1兆995億8700万円、営業利益は16.5%減の1083億7400万円、経常利益は11.7%減の1123億8300万円で、売上高は上期として過去最高、営業益は当初計画をやや上回る着地となった。営業費用は13.6%増の9912億円で、営業利益率は3.1ポイント下落し9.9%。旅客収入の内訳は、国際線が8.8%増の3901億円、国内線は7.2%増の3462億円、LCCのピーチ・アビエーション(APJ/MM)が5.8%増の712億円、今年2月に就航した新ブランド「AirJapan」が付帯収入も含めて42億円。貨物収入は、国際線が18.7%増の887億円、国内線が2.6%増の112億円となった。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:ANAの第2四半期の決算発表をするANAホールディングス芝田社長】
2.スカイマーク、顧客満足3年連続No.1=JCSI調査
スカイマークは10月30日、国内最大級の顧客満足度調査「2024年度版JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」のうち、国内線を運航する航空会社8社を対象とした国内航空部門で1位を獲得したと発表した。国内線に新幹線を加えた国内長距離交通部門でも1位となり、4回目の首位を3年連続で獲得した。同調査は、公益財団法人・日本生産性本部サービス産業生産性協議会が実施。顧客満足のほか、顧客期待(利用時の期待・予想)、知覚品質(利用した際の品質評価)、知覚価値(価格への納得感)、ロイヤルティ(継続的な利用意向)、推奨意向(他者への推奨)の6項目に加え、経営目標に活用しやすい感動指標(利用時の感動・驚きなど)、失望指標(利用時のがっかり・苦痛など)、CSR指標(自然環境や消費者保護など)の3指標の計9項目を設定し、各項目を10点満点の複数設問で調査する。すべてが満点の場合を100点、すべて最低点の場合は0点として、業界や企業を多面的に評価する。スカイマークは、航空会社と新幹線による13企業・ブランドを対象とした国内長距離交通部門の6項目のうち、顧客満足とロイヤルティの2項目で1位を獲得した。2項目のうち顧客満足が77.2点で最も高く、72.7点のロイヤルティが続いた。顧客満足の2位はソラシドエアで76.8点、3位はスターフライヤーで76.4点だった。4位は日本航空で75.6点、5位は全日本空輸で74.4点、6位は東北新幹線で74.1点、7位はエア・ドゥと九州新幹線で、同点の73.7点だった。【Aviation wire news】
3.AirJapan、ギックスのレベマネ支援導入 運賃戦略を高度化
データ活用支援を手掛けるギックスは10月29日、ANAホールディングス傘下のエアージャパンに「レベニューマネジメント高度化伴走支援」サービスの提供を始めたと発表した。エアージャパンが今年2月から運航を始めた新ブランド「AirJapan」の収益管理を支援する。エアージャパン社では、AirJapan便の運航初年度にあたる今年度は、乗客数や運賃設定などのデータ蓄積が進められている段階。レベマネ強化のため、今後の中長期的な戦略として、ギックスが提供するデータを活用した意思決定支援のノウハウを活用することにした。レベマネは、需要予測や価格変動を活用した利益最大化を図る手法で、航空業界やホテル業界に広く導入されているという。ギックスによると、エアージャパン社の取り組みでは、収益管理で重要となるデータ分析を通じ、効率的な収益構造の構築を目指すという。ギックスは、エアージャパン社の収益管理で、データ収集や分析から支援。蓄積されたデータを活用し、運賃戦略の精度を上げる取り組みを進める。エアージャパン社が運賃設定を調整する際に、乗客数の推移や価格設定の効果などを視覚的にまとめた「ダッシュボード」を活用していく。このダッシュボードにより、収益状況や市場の変化をリアルタイムに把握し、迅速で効果的な意思決定を支援できるとしている。AirJapan便は、FSC(フルサービス航空会社の全日本空輸、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーションに続くANAグループ第3のブランドで、訪日外国人が主なターゲット。1路線目の成田-バンコク(スワンナプーム)線は今年2月9日、ソウル(仁川)線が同月24日、シンガポール線は4月26日に就航した。機材はANAから転籍したボーイング787-8型機が現在2機で、座席数は1クラス324席となる。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:Air Japanの787型機】
4.滑走路誤進入、管制官に音で喚起 レーダー監視要員は解除
国土交通省航空局(JCAB)は、滑走路への誤進入時に管制官へ注意喚起する「滑走路占有監視支援機能」を10月31日から強化する。同日からは、誤進入が発生した場合に注意喚起音が鳴るようにする。喚起音の導入に伴い、現在配置している常時レーダー監視する人員を同日付で解除する。滑走路占有監視支援機能は、管制官の注意を喚起するシステムで、航空機などが滑走路を使用している状態で他機が進入しようとした場合、管制卓のレーダー画面上に表示する滑走路と航空機情報の表示色が変え、注意を促す。2010年以降、成田、羽田、中部、伊丹、関西、福岡、那覇の7空港で順次導入している。機能強化は2段階で、10月31日からの「第1ステップ」では画面表示に加え、注意喚起音を追加する。第1ステップの開始により、7空港でのレーダー監視人員は配置を解除する。2025年度中に予定する「第2ステップ」では、さらに切迫した状況が発生した場合に、警報表示と警報音で知らせるようにする。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:滑走路語進入に対する警報表示の改善】
5.スカイマーク、整備士の既卒募集 25年4月入社
スカイマークは10月29日、整備士の既卒採用を始めた。採用予定人数は約10人で、正社員として採用する。入社時期は2025年4月1日。エントリーは11月25日まで。応募資格は今年9月末時点で工業高校、航空系専門学校、高等専門学校、短大、4年制大学、大学院のいずれかを卒業・修了した人。航空機整備の経験者も応募でき、一等航空整備士の資格保有者は歓迎する。会社が定める通勤圏内に入社までに居住できること、土日祝や年末年始、早朝夜間時間帯などでシフト勤務ができることが条件となる。勤務地は羽田空港か会社が指定する場所で、転勤がある。選考方法は書類選考、適性検査、面接などを予定する。エントリーはスカイマークのウェブサイトで受け付ける。【Aviation wire news】
6.ブリヂストン、月面探査車向けタイヤ開発でアストロボティックと協業
ブリヂストンは11月1日、アストロボティック テクノロジーとの間で、月面探査車向けタイヤ開発における協業契約を締結したことを発表した。90年以上にわたってタイヤ開発を続けるブリヂストンは、その知見を活かして2019年から月面探査車用タイヤの研究開発に取り組んでいる。同社はこれまで第1世代および第2世代のタイヤコンセプトモデルを開発し、地上走行試験やシミュレーションを重ねており、この活度を通じてパートナーに「自ら極限へ挑戦する姿」を示すことで、宇宙ビジネスのネットワーク拡大と共創機会の創出を進めている。今回協業契約を締結したアストロボティックは、6種類の月面探査車開発や米国航空宇宙局(NASA)からのローバー技術契約の37件受託など、17年間にわたる月面探査車の開発実績を誇る企業。両社はタイヤの共同開発において連携し、アストロボティックの月面探査車「24U CubeRover」のタイヤとして装着予定だという。【マイナビニュース】
【ブリジストン提供:ブリヂストンのタイヤを搭載予定の月面探査車「24U CubeRover」】
7.宇宙旅行時代の“宇宙シャワー”実現へ – 「ミラブル」とISSきぼう運用企業がタッグ組み共同研究
これまで国際宇宙ステーション(ISS)などで宇宙空間に滞在する場合、使える水の量が限られており、シャワーや風呂といった設備もないためドライシャンプーやぬれタオルによる拭き取りでの対応を余儀なくされてきた。しかし今後、宇宙旅行者が増えると、「入浴」にまつわる衛生的な生活の確保が大きな課題として浮上する。そこで、節水シャワーヘッド「ミラブル」シリーズを手がけるサイエンスが保有するファインバブル技術と、ISS日本実験棟「きぼう」における有人運用・インテグレーション技術を担ってきたJAMSSが協力。両者の強みを活かし、宇宙環境に置けるQOL(Quality of Life:生活の質)を向上するサービスを担うことをめざす。共同研究の具体的な中身として、ISSの微小重力環境下において有用かつ安全、衛生的な「節水型シャワー」の技術的実現性を検討。開発・技術実証を行ったうえで、2030年前後に商業宇宙ステーションなどでのサービス提供をめざす。現状想定しているのは、立った状態で入室し全身でシャワーを浴びるカプセル形状のものになる模様だ。【マイナビニュース】
【マイナビニュース提供:宇宙シャワーのイメージ】