KIT航空宇宙ニュース2023WK30

中国民間宇宙ベンチャー企業である北京藍箭空間科技(LandSpace、藍箭航天)が世界初となる、液化メタン燃料ロケット「朱雀二号」の打ち上げに成功
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK30

海外のニュース

1.NASA・ボーイング次世代小型機、2028年飛行試験 極薄主翼で燃費3割減

ボーイングは現地時間7月25日、NASA(米国航空宇宙局)が進める持続可能な実証機プログラム「サステナブル・フライト・デモンストレーター」(SFD、Sustainable Flight Demonstrator)について、米国の航空会社5社がプロジェクトを支援すると発表した。航空各社は運航効率などの意見を提供する。また、研究機「X-66A」の機体デザインも公表した。同プロジェクトは次世代の単通路小型機開発につなげるもので、2028年から飛行試験を計画し、2030年代の実用化を目指す。SFDプログラムで新たに開発するX-66Aは、極薄で長い主翼を胴体から斜めに伸びる支柱で支える「遷音速トラス支持翼」(TTBW、Transonic Truss-Braced Wing)を採用。この設計により空気抵抗が従来機よりも少なくなる。翼幅は145フィート(約44.2メートル)で、旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-90型機をベースとし、カリフォルニア州パームデールにあるボーイングの施設で改造を進める。ボーイングによると、TTBWを採用した単通路機は推進システムや進歩したシステム構築などと組み合わせることで、現在の国内線航空機と比較し、燃料消費とCO2(二酸化炭素)排出量を最大30%抑える効果があるという。SFDプロジェクトにはアラスカ航空とアメリカン航空、デルタ航空、サウスウエスト航空、ユナイテッド航空の米航空5社が参画。運航効率のほか、空港での適合性やメンテナンス、ハンドリング特性などの意見を提供する。米航空5社のパイロットは、フライトシミュレーターでX-66Aを体験し、機体の操縦特性を評価する。飛行試験はカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地にあるNASAのアームストロング飛行研究センターで、2028年と2029年に予定する。【Aviation wire news】

【NASA提供:NASAとボーイングが進める遷音速トラス支持翼機「X-66A」想像図】

2.  世界初、メタンロケット打ち上げに成功 – 中国の宇宙ベンチャー「藍箭航天」

中国の宇宙ベンチャー「北京藍箭空間科技(LandSpace、藍箭航天)」は2023年7月12日、独自に開発した「朱雀二号」ロケットの打ち上げに成功した。昨年12月14日の初打ち上げは失敗に終わっており、2回目にして初の成功となった。朱雀二号は液化メタンと液体水素を推進剤に使うロケットで、この組み合わせのロケットが衛星の打ち上げに成功したのは世界初であり、歴史的な快挙となった。この世界初が、中国の、それも民間企業によって成し遂げられたことは、今後の世界の宇宙開発を占ううえで重要であり、時代の転換点となるかもしれない。北京藍箭空間科技(藍箭航天)は北京に拠点を置く企業で、2015年に清華大学発のベンチャーとして設立された。国や民間のベンチャー・キャピタル、ファンドから投資を受けるなどし、着実に研究開発を続けている。また、北京に研究開発センターを、甘粛省北西部にある酒泉衛星発射センターにも自前の施設を構えるなど、雨後の筍のように出てきている中国のロケット・ベンチャーの中でも、頭ひとつ抜き出た存在である。「朱雀一号」は小型の固体ロケットで地球低軌道に約300kgの打ち上げ能力をもつとされたが、朱雀二号は全長49.5m、直径3.35mの2段式ロケットで、第1段には推力80tf級の「天鵲12」エンジンを4基装備し、第2段には真空用に改修した天鵲12エンジン1基と、天鵲11バーニア・エンジン(飛行の方向を変えるための小型エンジン)を4基装備している。打ち上げ能力は、高度500kmの太陽同期軌道に1.8tで、これは朱雀一号よりも格段に大きく、さらに中国が国として運用している主力ロケットのひとつ「長征二号」にも匹敵する中型のロケットである。そして、朱雀二号の最大の特徴が、天鵲12にも11にも、推進剤に液化メタンと液体酸素を使っているところにある。メタンは、ロケットの性能を比較的高くできるうえに、コストが安いため経済性にも優れ、産出地の点から入手性にも優れている。さらに、燃焼時にススが出ず、取り扱いも簡単なため、再使用しやすいエンジンやロケットにでき、また打ち上げ前後での地上での作業の手間やコストも削減できるという利点もある。こうしたことから、次世代のロケット燃料として注目されており、世界中でメタン・ロケットエンジンの開発が活発になっている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:中国が世界初となるメタン燃料ロケット「朱雀2号」の打ち上げに成功】

3.  Wiskが公開イベントで初めてエアタクシーのコンセプトをデモンストレーション

7月25日、ウィスコンシン州オシュコシュのEAAエアベンチャーイベントで数千人の航空愛好家を前に、Wisk社が開発中の自動操縦無人機がデモフライトを行った。当該機は離陸し、ウィットマン地域空港の滑走路上空を2回低空通過した後、ホバリングして着陸した。Wisk社によると、これまでに1,700回飛行し、ホバリングから前進飛行、そして戻ってくるまで「何千回もの飛行」を行ったという。デモンストレーション飛行の直前に、連邦航空局の航空安全専門家チームがエアショーのWisk社ブースを訪れた。Wisk社は自社航空機の認証手続きを進めており、20年代末までに商業飛行を目指すとしている。【Flightglobal News】

【Wisk社提供:オシュコシュのエアベンチャーイベントでデモ飛行するWisk社自動操縦無人機】

4.  中国のCOMACは電動旅客機の製造を目指している

7月19日、COMAC、CATL、上海交通大学は共同でCOMAC CATL Aviation Co., Ltd.という合弁会社を設立した。企業登録情報によると、COMAC CATL Aviation Co., Ltd.の登録資本金は6億ドルである。スー・ウー氏は、上海の臨港地区で人民元(8,300万ドル)を獲得したとシンプル・フライング紙に報じた。ウー氏は、「新しい合弁会社の設立は、固定翼電動飛行機を開発するための電動飛行機の事前研究プロジェクトを目的としている。しかし、このプロジェクトはまだ最初の事前研究段階にある」と述べている。 電気自動車用バッテリーを生産するパートナーのCATLは、4月に「全固体電池」と名付けた新世代のバッテリー装置を発表したが、ウー氏はこのエネルギー密度が500Wh/kgで、実際には、この数字よりも高いと指摘した。テスラのイーロン・マスク氏は、旅客機の実現可能点は[450Wh/kg]だと述べている。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供】

日本のニュース

1. スカイマーク、6年連続で定時性1位 国交省22年度調査

スカイマークは7月28日、国土交通省が同日公表した特定本邦航空運送事業者10社に関する「航空輸送サービスに係る情報公開」で、2022年度の定時運航率が1位になったと発表した。定時運航率No.1は、2017年度から6年連続となった。定時運航率は、出発予定時刻から15分以内に出発した便数が全体に占める割合。スカイマークの定時運航率は95.90%で、5年連続1位の2021年度の98.44%より2.54ポイント悪化したものの、首位をキープした。初めて1位となった2017年度は93.06%、2018年度は93.91%、2019年度は95.02%、2020年度は99.14%だった。スカイマークは定時運航の追求に加え、手荷物を早く返すなど“利用客の時間を大切にする”ことをサービスの中核に据えている。同社の洞駿社長は「安全を最優先とし、欠航や遅延を最小限にとどめることを心がけている。業務の精度を上げながらノウハウの蓄積を図る」とコメントを発表。搭乗客の協力に謝意を示し、定時運航1位の継続を図るとした。特定本邦航空運送事業者は、客席数が100席または最大離陸重量が50トンを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する日本国内の航空会社を指す。【Aviation wire news】

2.  JAL、夜の北九州空港見学会 9/9にコックピットや空港探訪

日本航空は、「夜の北九州空港見学会」を9月9日に開催する。北九州空港に夜間駐機中の機内や空港施設の裏側をパイロットや客室乗務員、整備士、グランドスタッフが解説し、新北九州空港連絡橋を専門家の解説を聞きながらウォーキングする。北九州市は、2022年に一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューローが選ぶ「日本新三大夜景都市」の第1位に選ばれた。今回の見学会では機内のほか、離着陸する飛行機や滑走路の灯火を間近で見られる。税込1人あたりの参加費用は大人1万円、子供5000円。7月27日から先着100人に販売する。当日は北九州空港に午後7時30分集合で、全長2100メートル、通行料無料の海上橋としては日本一長い新北九州空港連絡橋を専門家の解説を聞きながら歩き、午後9時からは空港で「ヒコーキ講座」「折り紙ヒコーキ教室」を開催後、機体や空港を見学する。当日はコックピットの見学も予定しているという。終了は午後11時30分を予定している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供】

3. トキエア、8月下旬に就航延期 週4日運航

新潟空港を拠点に就航を目指すトキエアは7月26日、就航日を8月10日から延期し、8月下旬を目指すと発表した。国土交通省による検査に必要な準備や調整に時間がかかっているという。また、1路線目となる新潟-札幌(丘珠)線の運航スケジュールと運賃も発表した。当初は週4日運航を計画している。法令に基づく飛行や施設に関する検査は、あす27日から開始予定。予約開始日や就航日は改めて発表するという。当初は2022年の就航を計画していたが、今年6月30日に延期となり、6月に入ると8月10日に再延期となった。その後も就航準備に時間がかかり、7月に入ると複数の関係者が「8月10日の就航は困難」と指摘していた。運航のほか、整備体制の確立などが課題になっているようだ。運航日は金曜と土曜、日曜、月曜の週4日で、1日あたり2往復4便を運航予定。10月29日開始の冬ダイヤは毎日運航を計画している。機材は仏ATR製ATR72-600型機(1クラス72席)を使用する。運航スケジュールは、1往復目の札幌(丘珠)行きBV101便は新潟を午前9時50分に出発し、午前11時30分着。新潟行きBV102便は正午に丘珠を出発して、午後1時45分に到着する。運賃は、予約変更可能で当日まで購入できる空席連動型の「トキビズ」が片道2万4000円から2万9000円、出発時刻の72時間前まで購入でき、予約変更できない「トキトク」が6900円から1万9900円、搭乗日の3日前から購入でき予約変更できない12歳から25歳の利用者限定の「トキユニ」が1万2500円、障がい者割引運賃が1万6900円となっている。トキビズとトキトクは子供運賃を設定する。トキエアに対しては、新潟県が県として融資しており、就航が再び延期となったり、実現しない場合は政治問題化する可能性が以前から指摘されている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:トキエアのATR72-600型機】

4. JAL、パイロットのインターン募集 9-11月にオンライン開催

日本航空は7月26日、パイロットのインターンシップの募集を開始した。日程は最大2日間で、9月から順次オンラインで開催する。自社養成パイロットの業務体験を通じて、パイロットの仕事や航空業界に関する理解を深めてもらう。対象は4年制大学または大学院、高等専門学校(専攻科)の在籍者で、業務紹介やグループワーク、パイロットとの交流を通じて業務を理解する。1・2年生と3年生以上で一部異なる内容で実施する。説明会を8月4日にオンラインで開く。実施期間は、9月5日から15日と、10月17日から11月2日の2コースを用意。エントリーはJALのインターンシップサイトから。例年多数の応募があることから、今回も選考がある。【Aviation wire news】