KIT航空宇宙ニュース2025WK16

将来宇宙輸送システムは、宇宙往還を想定した小型ロケット離着陸試験機「ASCA hopper」(アスカ ホッパー)ミッションにおいて、液体メタンエンジンの燃焼試験に成功したと4月16日に発表した。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2025WK16
海外のニュース
1. アーチャー、ユナイテッド航空と提携しマンハッタンと近隣空港間の路線を含むニューヨーク・エアタクシー・ネットワーク構想を発表
アーチャーは、ユナイテッド航空と提携してニューヨーク市のエアタクシーネットワーク構想を発表し、ニューヨークの住民と観光客の地域内移動のあり方を変革することを目指す。Archer の目標は、 Midnightを使用して乗客がマンハッタンから近くの空港までわずか 5 ~ 15 分で移動できるようにし、従来の地上交通に比べて移動時間を大幅に短縮し、市内の悪名高い交通渋滞を回避できるようにすることです。ミッドナイトは、アーチャー社の有人電動エアタクシーで、最大4人の乗客を乗せながら、従来のヘリコプターよりも騒音と排出ガスを低減するように設計されている。ミッドナイトは、合計12基のエンジンとプロペラを含む機体全体に冗長システムを採用しており、アーチャー社は民間航空機と同等の安全性を目指している。アーチャー社は、カリフォルニア州サンノゼとジョージア州コビントンの製造施設で、ミッドナイトをアメリカ国内で製造している。アーチャーは、地域内の空港やヘリポートに関連した垂直離着陸場を設立することを目標に、地域周辺の既存の航空施設の活用を検討する。アーチャーは、ミッドナイト機の型式証明取得に向けてFAA(連邦航空局)と協力を続けている。型式証明の取得後、アーチャーとその運航パートナーは、ニューヨーク市周辺などの主要空港を皮切りに、ミッドナイト機を安全かつシームレスに運航開始する予定です。アーチャーは2024年6月にFAA Part 135に基づく航空運送事業許可(ASC)を取得している。この運航コンセプトでは、乗客は従来の航空旅行の補完としてアーチャーのフライトを予約し、ドアツードアの移動時間を短縮する。ユナイテッド航空は既に、アーチャーのミッドナイト機を発注しており、長年にわたり同社に投資を続けている。アーチャーは以前、サンフランシスコとロサンゼルスでエアタクシーネットワークを発表していた。【Archer News】

【Archer Aviation提供:Archerが構想しているニューヨーク市内エアタクシーネットワーク】

日本のニュース
1.神戸空港、国際線就航 新ターミナル開業、スターラックスと大韓航空が到着
神戸空港の第2ターミナルが4月18日に開業し、国際チャーター便の運航が始まった。韓国と台湾、中国の3カ国・地域の5都市から4社合わせて週40往復乗り入れる。到着初便は台湾のスターラックス航空の台北(桃園)発JX834便(エアバスA321neo)で、午前9時46分(定刻は午前10時)に到着。韓国のソウルからは大韓航空(KAL/KE)のKE731便(A321neo)が午前10時9分(定刻は午前10時)に到着し、空港の消防車による放水アーチの歓迎を受けた。第2ターミナルは国際・国内一体型施設で、地上2階建て。場所は従来からある第1ターミナルやポートライナーの神戸空港駅近く。延床面積は1万8700平方メートルで、当初計画の1万7000平方メートルから拡大した。出発・到着ロビーと保安検査場、搭乗待合の旅客機能を1階に集約し、階層移動が少ない構造になっており、搭乗口から航空機まではランプバスで移動する。全体の事業費は約283億円となった。搭乗口は国際線が3つと国内線が1つの計4つで、出発ロビーの席数は国際450席、国内120席で、キッズスペースなどを設けている。一方、物販は国際線側の免税店のみで飲食店はなく、軽食を販売する。就航都市は大韓民国のソウル(仁川)、中国の上海(浦東)と南京、台湾の台北(桃園)と台中の5都市。大韓航空がソウル、上海吉祥航空が上海と南京、スターラックス航空が台北と台中、エバー航空が台北の各便を運航する。また、ゴールデンウイーク期間には、ベトナムのベトジェットエアも乗り入れる。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:オープンした神戸空港第2ターミナル国際線ロビー】

2. 1-3月訪日客、1000万人超え過去最速 単月は13.5%増349万人
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2025年3月の訪日客数は前年同月比13.5%増の349万7600人で、3月の過去最高を記録した。花見シーズンやイスラム教の断食明け休暇などにより、需要が増加した。また、1-3月の累計が過去最速で1000万人を突破した。出国した日本人は16.7%増の142万3400人で、コロナ前の7割超えの回復が続いた。JNTOが重点市場としているのは23カ国・地域で、このうちインド、米国、カナダ、ドイツ、ロシア、中東の6市場で単月の過去最高を記録。韓国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、豪州、英国、フランス、イタリア、スペインの11市場で3月の過去最高となった。【Aviation wire news】

3. JALの移住CA、福岡で女子キャンププランを大学生と企画
日本航空の客室乗務員「ふるさとアンバサダー」が、福岡県東部の赤村にあるキャンプ場「源じいの森」で販売が始まった「女子キャンプラン」を、北九州市にある西南女学院大学の学生と企画した。キャンプ初心者でも安心して楽しめる内容をテーマに、地域の魅力を盛り込んだ体験型商品として打ち出した。企画には、同大の人文学部観光文化学科3年生が参加。JALは赤村と2022年4月、同大とは2024年3月にそれぞれ連携協定を締結しており、今回の取り組みは両者との協力の下で進めた。コロナ以降に減少傾向とされるキャンプ需要の回復や、地域への誘客拡大が地元から期待されている。源じいの森は、キャンプ場や温泉、宿泊施設がそろう複合型のアウトドア施設で、初夏にはホタルが見られるほど自然豊かな立地が特徴。施設の既存プラン「手ぶらでキャンプ体験」を改良し、アンバサダーと学生が「テント設営や火起こしの不安」「キャンプ中の過ごし方」「写真映えする食事」などの課題を掘り下げ、初心者や女性目線で新たな提案を加えたという。【Aviation wire news】

【JAL提供:キャンプを企画したJALふるさとアンバサダー(中央)と西南女学院大学の学生】

4. JAL、IATA航空保安認証「レベル2」世界初取得
日本航空は、IATA(国際航空運送協会)が導入した航空保安管理認証制度「SeMS(Security Management System Certification Program)」で、現時点で取得可能な最高段階の「Operating(レベル2)」を取得した。航空会社として同認証を取得したのはJALが世界初だという。SeMSは、サイバー攻撃や新たなテロの手法、紛争地帯の上空飛行といった複雑化・多様化する航空保安上の脅威に対応するため、IATAが導入した認証プログラムで、航空会社や空港、地上支援会社などが対象。航空保安上のリスクを事前に特定して予防策を講じるとともに、保安管理を継続的に改善する体制を評価する。成熟度は3段階で、JALはレベル2にあたる「Operating」を今年1月17日付で取得した。JALによると、同社の保安体制はグループ全体でのリスク管理体制の整備や、経営層の関与の下での新たな脅威や各国規制への柔軟な対応、業界のベストプラクティスを活用した内部・外部監査や、保安事例の振り返りによる継続的改善の取り組みが評価されたという。【Aviation wire news】

5. ISC、液体メタンエンジン燃焼試験に成功 再使用ロケット開発へ前進
将来宇宙輸送システムは、宇宙往還を想定した小型ロケット離着陸試験機「ASCA hopper」(アスカ ホッパー)ミッションにおいて、液体メタンエンジンの燃焼試験に成功したと4月16日に発表した。今回試験したのは、推進剤に液体メタン、酸化剤に液体酸素を使った液体燃料ロケットエンジン。エンジンの性能確認を目的として実施した初回試験(2024年9月)では着火しなかったため、必要なデータを取得できていなかったが、原因を究明し対策を講じて、2025年3月12~18日に愛知県碧南市で試験を実施。期待する成果を得られたとしている。燃焼試験の結果、着火シーケンス中の推進薬量とバルブの開閉タイミングを変更し、着火可能な条件を確認。着火確認後、燃焼時間と推力を段階的に引き上げた条件で試験を合計6回行い、燃焼時間8.3秒、推力4.3kN(キロニュートン)を達成できたとのこと。液体メタンエンジンの燃焼試験成功は、国内の公表例として、民間企業4社目となる。将来宇宙輸送システム(ISC:Innovative Space Carrier)は、宇宙往還を可能にする次世代輸送システムの実現をめざすスタートアップ企業。前出のASCA hopperミッションは、ISCが開発する再利用可能な宇宙往還機「ASCAプロジェクト」として初めての試験で、ロケットエンジンの燃焼や機体の離着陸、再使用に必要な点検整備といった3要素の確認をめざしている。同社では、今回の試験で得られた成果を踏まえ、ASCA hopperに続く小型衛星打ち上げ機「ASCA 1」や、有人宇宙輸送機「ASCA 2」に向けた再使用型ロケットの開発能力をさらに引き上げることをめざす。【マイナビニュース】

【ISC提供:将来宇宙輸送システムが行った液体メタンエンジン燃焼試験の様子】

6. ElevationSpaceと豊田自動織機、大気圏再突入用の耐熱材料を共同開発へ
ElevationSpaceと豊田自動織機は、宇宙空間の実証機が地球に帰還するときの大気圏再突入システムに使う耐熱材料の共同開発をはじめると4月16日に発表。豊田自動織機が持つ“炭素繊維の3次元織物技術”を活かし、軽くて損耗しにくく、低コストな耐熱材料の研究開発を行う。ElevationSpaceは、宇宙から地球への輸送サービス開発に取り組むスタートアップ企業で、宇宙の微小重力環境で研究開発・製造された物資を地球に持ち帰って顧客に返す“国内初”のサービス提供に向け、宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」の開発を進めている。【マイナビニュース】

【Elevation Space提供:衛星本体から回収カプセルを分離するイメージ】