KIT航空宇宙ニュース2025WK43

10月26日に種子島宇宙センターから打ち上げに成功した日本最大級の新型ロケットH3
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2025WK43

海外のニュース

1. エアバス、キャセイとSAF生産加速へ共同投資 最大7000万米ドル

エアバスは現地時間10月21日、代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」の生産を加速する共同投資へのパートナーシップを、キャセイパシフィック航空を中核とするキャセイグループと締結したと発表した。最大7000万米ドル(約106億2100万円)を共同投資し、アジアをはじめとする全世界でSAFの生産を加速させる。両社が協力して投資し、2030年以降のSAF生産の規模拡大を支援する。プロジェクトでは、商業的な実現可能性、技術的な成熟度、長期的な引取り契約の可能性を評価する。また、アジアの豊富な原料供給源や高い生産能力、活発な航空市場を生かし、SAF支援政策を需給両面で協力。アジアでのSAFの普及と低価格化を実現へ政策作りも支援する。SAFの規模拡大には、政策立案者や投資家、SAF生産者、顧客など、バリューチェーン全体での協力体制が不可欠だ。今回の共同投資契約はエアバスとキャセイが協力し、生産能力を加速させ、SAFの拡大を目指す。【Aviation wire news】

【エアバス提供:パートナーシップを締結するキャセイのアレックス・マクゴーワン チーフ・オペレーション・サービス・デリバリー・オフィサー(左)とエアバスのアナンド・スタンレー アジア太平洋地域プレジデント】

2. リチウム電池が手荷物収納棚で発火 杭州発ソウル行きCA139便、上海へダイバート

現地時間10月18日、中国国際航空(エアチャイナ)の杭州発ソウル(仁川)行きCA139便(エアバスA321型機)が飛行中、乗客が手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)に収納したリチウム電池が機内で自然発火し、上海浦東国際空港へダイバート(目的地変更)した。中国国際航空の声明によると、「乗務員は直ちに手順に従って対応し、負傷者は出ていない」という。同社のウェブサイトによると、CA139便は定刻では杭州を午前9時10分に出発して、ソウルへ午後0時20分に到着する運航スケジュールだが、杭州を18日午前9時47分に離陸し、上海へ午前11時5分に着陸した。その後、別の機材(A321、B-6883)に変更し、上海を午後3時3分に離陸して、ソウルには午後5時33分に着陸し、同44分に到着した。航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、CA139便は杭州を離陸して約40分後、東シナ海上空の高度3万3000フィート(約1万58メートル)を飛行中、左旋回して浦東空港へ向かったことから、その少し前にバッテリー火災が発生したとみられる。乗客がSNSに投稿したとみられる動画では、手荷物収納棚の中で炎が出ている様子が収められていた。モバイルバッテリーが原因の航空機火災やトラブルが相次いだことから、主な製造国とみられる中国では、中国民用航空局(CAAC)が「3C認証」マークのないモバイルバッテリーを中国国内線の機内へ持ち込むことを6月28日から禁止している。日本でも、国土交通省航空局(JCAB)がモバイルバッテリーの機内持ち込み方法を7月8日から変更。頭上の手荷物収納棚には収めず、手元で保管するよう求めている。【Aviation wire news】

3. 新たな報告書は、EU全体で持続可能な航空燃料の導入が進んでいることを示している

欧州連合航空安全機関(EASA)は、 ReFuelEU航空規則の実施に関する初の年次報告書を発表した。この報告書は、2024年におけるEU全体における持続可能な航空燃料(SAF)の普及状況を包括的に概観し、規則に基づく今後の義務履行に向けた市場の準備状況を評価している。調査結果によると、ReFuelEU航空燃料供給プログラムの導入は、EU域内のSAF生産能力の増強をすでに促進しており、この好ましい傾向は、 EUが2030年までにSAF混合義務化目標(6%)を達成する軌道に乗っていることを裏付けている。報告書によると、2024年に使用されたSAFのほぼ全てが、使用済み食用油(81%)と廃棄動物性脂肪(17%)から製造されたバイオ燃料であったことが確認されている。これは、EUにおける合成燃料(eSAF)の開発がまだ初期段階にあることを示している。SAF市場も依然として集中化しており、25の燃料供給業者が12加盟国の33のEU空港にSAFを供給している。しかし、供給量の99%は5加盟国(フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデン)の空港で占められている。欧州委員会は現在、 SAFを含む再生可能で低炭素の輸送燃料への投資を促進することを目的とした持続可能な輸送投資計画(STIP)を策定中である。【EASAニュース】

4. 大韓航空がArcher社の「ミッドナイト」エアタクシー100機を発注

カリフォルニアに拠点を置くeVTOL開発会社アーチャー・アビエーションは月曜日、韓国のフラッグキャリアである大韓航空が最大100機のミッドナイト・エアタクシー機(VTOL機)を購入する計画であると発表した。大韓航空はアーチャーとの独占的パートナーシップの下、政府機関向けアプリケーションをはじめとした複数のアプリケーションとユースケースにわたるミッドナイトの運用基盤の構築を目指すと、プレスリリースで発表している。アーチャーは他の顧客との契約に基づき、ミッドナイトの価値を約500万ドルと評価している。例えば、2024年には、日本航空と住友商事の合弁会社であるソラクルが購入権利を獲得している。ミッドナイトは、パイロットが最大4人の乗客を乗せ、市街地を10~20分、20~50マイル(約20~50km)飛行できる完全電動モデルです。固定翼とVTOL機能を組み合わせることで、巡航飛行の効率を犠牲にすることなく機動性を発揮し電気推進により、飛行時の静粛性も大幅に向上すると期待されている。【Flying Magazine】

【Archer提供:Archerが開発中のeVTOL機「ミッドナイト」】

日本のニュース

1. 国交省、飲酒データ改ざん元機長に行政処分 8月のJALホノルル事案

国土交通省は10月24日、今年8月に飲酒データの改ざんなど問題を起こした日本航空(の元機長(懲戒解雇済み)に対し、航空法に基づく行政処分を行った。当該便の元機長「操縦士A」を同日付で60日間の航空業務停止とした。8月に起きた飲酒問題では、現地時間28日のホノルル発中部行きJL793便(ボーイング787-9型機、登録記号JA874J)に乗務予定だった男性機長(当時、64)が、乗務前日27日の昼ごろ、ステイ先のホテルでアルコール度数9.5%のビール(1本568ミリリットル入り)を3本飲んだ。翌朝には体内にアルコールが残り、ゼロになることを確認するため、出発予定時刻までの間に自主検査を約60回繰り返していた。このうち、約10回分の検査日を改ざんしていた。国交省航空局(JCAB)はJALに対し、9月10日付で行政指導にあたる「厳重注意」を行った。当該機長はJCABの聞き取り調査後、厳重注意の翌日の11日付で懲戒解雇となった。JALは同月30日に再発防止策を提出。専門家を交えて再構築し、11月末までに改訂版を提出する見通し。【Aviation wire news】

2. ANAエアラインスクール、全国6カ所で短期集中コース 26年2月以降に3-5日間

ANAホールディングス傘下のANAビジネスソリューションは、現役の客室乗務員(CA)らが講師を務める「ANAエアラインスクール」の「春の短期集中コース」を2026年2月以降、順次開講する。通常は東京のみで開講する基礎・CA、グランドスタッフの3コースを仙台、名古屋、大阪、福岡、沖縄の5地区でも受講できようにし、全国6カ所で展開する。通常約2カ月間のコースを3-5日間に凝縮した短期集中コースで、同じ内容を短期間で受講できる。ビジネスマナーやコミュニケーション力を学べる「基礎コース」と、CAの仕事を理解する「キャビンアテンダントコース」、旅客サービスに必要なコミュニケーションを学ぶ「グランドスタッフコース」の3コースを用意し、いずれも6地区で開催する。CA・グランドスタッフの2コースには、基礎コースの内容も含まれる。講師はANAの客室乗務員と、グループのグランドスタッフが担当する。開講日は各地により異なり、東京は2月と3月に、名古屋と大阪、福岡は2月に、仙台と沖縄は3月に開催する。【Aviation wire news】

3. JAL、CA・地上係員志望者スクール開講 1月期講座

日本航空は10月22日、現役の客室乗務員(CA)などが講師を務める「JALエアラインスクール」の2026年1月期レギュラー講座を開講すると発表した。東京と大阪の2会場で開く。レギュラー講座は、大学などに通いながら受講できるダブルスクール形式で、5月期、10月期、1月期の年3回開講。客室乗務員コースとグランドスタッフコースがあり、基礎から応用までを3カ月かけて学ぶ。18歳以上で、客室乗務員やグランドスタッフを目指す人を対象としている。2コースとも、航空業界の現状やJALの取り組みのほか、自己分析や面接指導、グループディスカッションなど、就職活動に必要なスキルを学ぶ内容。講座は週1回で、定員は各日程20人となる。客室乗務員コースは東京会場が火曜・木曜の夜間(午後6時から8時30分)と土曜昼間(午後1時から3時30分)、大阪会場が木曜夜間(同)に開講。グランドスタッフコースは東京会場で水曜夜間(同)に開講する。いずれも1月6日から順次開講し、3月下旬まで続く。受講料は東京会場が税込34万6500円、大阪会場が29万1500円。東京会場では、実際の研修施設の見学や体験なども実施する。申し込みは専用サイトで受け付けており、先着順で定員に達し次第締め切る。11月30日までに申し込むと、人数限定で10%割引が適用される「早割」も用意している。【Aviation wire news】

4. “日本最大最強”のH3ロケット7号機打上げ成功 HTV-X軌道投入

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H3ロケット7号機による新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の打上げを実施。10月26日9時00分15秒に種子島宇宙センター 大型ロケット発射場から離昇した7号機は順調に飛行を続け、発射14分後にHTV-Xを分離、所定の軌道に投入。打上げは成功した。H3ロケット初の「24形態」で打上げられる7号機は、日本のロケットとして最も大きく、第1段エンジンLE-9×2基と固体ロケットブースター(SRB-3)×4本の組み合わせで打上げ能力を強化した“最強タイプ”。重量級のペイロードにも対応できるのが最大の特徴だ。さらに最上部には、これまでのH3とは異なり、HTV-Xを収めるためのワイドフェアリングを初めて装着している点も見逃せない。今回のペイロードであるHTV-Xもこれが初飛行。2020年に運用終了した「こうのとり」の後継機にあたり、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送の効率を強化しただけでなく、軌道上技術実証プラットフォームとしての活用といった、新たな役割も担う点が大きな進化ポイントだ。さらに、将来の宇宙探査ミッションへの応用も期待されている。

Screenshot

【JAXA提供:H3ロケット7号機の打上げの様子】

5. 無人飛行艇「XU-MⅡ」が初飛行に成功

新明和工業株式会社(本社:兵庫県宝塚市)は、2025年10月2日(木)、自社開発した無人飛行艇「XU-MⅡ (Experimental Unmanned/ Utility aircraft – Marine type)」の初飛行に成功した。今回行った飛行試験は、10月2日(木)に航空機事業部甲南工場沖において実施し、遠隔操作により双胴飛行艇を離着水させるなど、基本的な性能の確認を目的に行ったもの。同社は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)公募「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の研究開発課題「海空無人機による海洋観測・監視・調査システムの構築」(研究代表機関:国立研究開発法人海洋研究開発機構[JAMSTEC])において、双胴型の無人飛行艇実証機の開発を担っている。「XU-MⅡ」は開発に必要なデータ収集および課題把握を目的として実機の「1/5スケール」で開発した機体。「XU-MⅡ」は2022年9月に初飛行した無人飛行艇「XU-M」で得られた知見を活かし、構造の最適化および軽量化を図るとともに、飛行制御などに関わるシステムも一新し、安全性および拡張性を高めた設計とした。また、K Programの構想に基づき主翼中央へペイロードの懸架および艇体内へのミッション機器搭載を可能とし、多種多様なミッションへの活用を見込んでいる。【新明和発表】

【新明和提供:初飛行に成功した「XU-MⅡ」】