KIT航空宇宙ニュース2025WK11
海外のニュース
1. シンガポール航空、モバイルバッテリー使用・充電4/1から禁止
シンガポール航空は現地時間3月12日、飛行中の機内でモバイルバッテリーの使用と充電を4月1日から禁止すると発表した。モバイルバッテリーによるスマートフォンなどの充電や、機内の充電用USB端子を使ったモバイルバッテリーの充電が飛行中の全時間帯で禁止される。リチウム電池に分類されるモバイルバッテリーは、機内持ち込み手荷物として携行する必要があり、空港で預ける受託手荷物の中には収納できない。容量100Whまでのモバイルバッテリーは申請せずに持ち込めるが、100Wh以上160Wh以下のものは航空会社の承認が必要になる。モバイルバッテリーの粗悪品が機内火災の原因になる事例が増えていることから、機内でのモバイルバッテリーの取り扱いを見直す航空会社が増えている。直近では、台湾の主要航空会社がモバイルバッテリーの飛行中の使用と充電を3月1日から禁止している。【Aviation wire news】
2.FAA、787の前方圧力隔壁検査を義務化
連邦航空局は、製造上の欠陥によって生じた隙間に関する懸念に対処するため、航空会社に787型機の前部圧力隔壁の検査を義務付ける予定である。ボーイング社は、この問題は数年前から知られているが、787の安全性には影響しないと述べている。また、同社は2024年10月に、FAAが現在義務付ける予定の検査を推奨する警告要件速報を発行してこの問題に対処した。「FAAは、[前方圧力隔壁]の組み立てと設置中に、過度の隙間や引っ張りなど、複数の不適合が見つかったという報告を受けた」とFAAは3月12日に発表した規則制定案の通知で述べている。「これらの状態は、不十分な締め付けと製造工程要件への不適合によって引き起こされた」。隙間は「Yコードとアタッチアングルの間に見つかった」と書かれている。隙間があると「部品の間に異物が挟まったり、ドリルで穴を開けた後に穴の周りにバリができたりする可能性がある」。提案された規則では、この問題に対処しなければ、「検出されない疲労亀裂が生じ、それが成長して主要構造を弱める可能性がある」としている。この要件は米国登録の 787 機 135 機に影響し、米国の全機体に及ぶと思われる。FAA はこの提案について 45 日間コメントを受け付ける。787機の前部圧力隔壁の問題は、少なくとも2021年から知られている。当時ボーイングは、まずは生産済みでまだ納入していないジェット機の欠陥を修正し、現在運航中の787にも修正が必要かどうかを判断する作業を進めていると述べていた。【Flightglobal news】
3.トランプ政権、電動エアタクシー規制の施行を一時停止
米民間航空規制局(FAA)は10日、ドナルド・トランプ政権による規定の見直しを可能にするため、エアタクシーの運航とパイロット訓練に関する新規則の適用を一時停止すると発表した。この規則は1月21日に発効した。同庁は「法律の施行については裁量権を行使し、3月20日までは『動力式維持航空機の統合』と題された規則の規定を施行しない」と述べた。この決定は、トランプ大統領が署名した覚書を受けてのもので、同覚書では各省庁に対し、省庁長または他の指定職員の承認なしに新たな規則を制定しないよう指示している。覚書ではまた、各省庁に対し、すでに施行されている規則も含め、その他の規則の見直しを「60日間延期することを検討する」よう勧告している。【Flightglobal news】
日本のニュース
1.JAL・エアバスら、木材から純国産SAF 5社で脱炭素化加速
日本航空とエアバスら5社は3月17日、国産木材由来のバイオエタノールを用いた純国産の代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」の実現に向けた相互連携で覚書を締結したと発表した。日本製紙と住友商事、Green Earth Instituteの3社のプロジェクトにJALとエアバスが参画し、航空業界の脱炭素化へ、国産SAFのサプライチェーン構築を加速させる。日本製紙ら3社は2月に、バイオエタノールなどを製造販売する合弁会社「森空バイオリファイナリー合同会社」の設立で合意書を締結。国産木材を原料としたバイオエタノールからのSAF精製を目指している。3社のプロジェクトにJALとエアバスが参画し、SAFの需給に関わる事業者が連携することで、国産SAFの普及・拡大を進めていく。国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)は、2050年までにCO2(二酸化炭素)の排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標としている。JALは2030年までに全搭載燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げ、エアバスは、今回のプロジェクトで精製したSAFが、ICAOによる国際航空分野の温暖化防止スキーム「CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」の認証を取得するよう支援する。航空業界ではSAFの導入が進んでいる。JALは全日本空輸らとともに、SAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を立ち上げ、国産SAFへの理解深化を図っている。【Aviation wire news】

【JAL提供:純国産SAFの原料となる(左から)木材チップ、パルプ、発酵培養液、バイオエタノール】
2.JALとNEC、顔認証で業務連絡バス乗車 羽田整備地区でレベル2実証
日本航空と日本電気は3月17日、JALグループ社員が関連施設間の移動で利用する「業務連絡バス」の一部区間で、顔認証による乗車システムなどの実証実験を始めた。NECの通信・AI技術を活用した実証実験で、羽田空港の整備地区で運行する連絡バスの一部区間で、限定された走行区域を走行する自動運転レベル2(部分運転自動化)の運転支援車を導入する。24日まで。【Aviation wire news】

【JAL提供:JALとNECの実証実験で使用する「Minibus」】
3.関空拠点のジェイキャス、ATR72を10月と26年受領へ
地域航空会社の設立を目指す「ジェイキャスエアウェイズ」(JCAS、東京・千代田区)は、仏ATR72-600型機の初号機を10月に受領し、2号機は早ければ2026年4月に受領する見通し。関西空港を拠点に2026年春の就航を目指す。JCASは、シンガポールを拠点とする航空機リース会社Avation PLCと、12年間のリース契約を2024年11月に締結。関西−富山、米子の2路線の開設を計画しており、就航初年度は1機2路線で始め、その後5年間で7機16路線への拡大を目指すという。【Aviation wire news】
4. 鹿児島大・JAC・JAL、初の地域密着型パイロット26年誕生へ 25年度以降も育成継続
鹿児島大学と日本航空グループで鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューター、JALの3者は、2020年に締結した連携協力協定に基づく地域密着型パイロット人財創出プログラムについて、2025年度から5カ年の第II期として継続することを決定し、共同宣言書へ署名した。第I期の2020-2024年度では、39人が実践型インターンシップ「SKYCAMP」に参加し、4年間で7人がパイロット候補生として選抜された。このうち、1期生の2人が約3年間の基礎課程を経て必要なライセンスを取得し、2月にJACのパイロット訓練生として入社。地上業務研修を経て、約1年間の副操縦士昇格訓練を受け、2026年春ごろには副操縦士として乗務を開始できる見通し。2025年度からの第II期では、これまでの取り組みを継続しながら、パイロット候補生の訓練先を変更。従来は熊本県の崇城大学を利用していたが、5期生からはJALグループの自社養成施設(豪州アデレード)に移し、ライセンス取得を目指す。このプログラムは、地域に根差した人材育成を目的に2020年に始まった。JACの拠点である鹿児島を中心に、西日本の地域航空を支えるパイロットの育成を目指しており、鹿児島大学の学生を対象に選抜。航空会社の操縦ノウハウを活かした飛行体験「SKYCAMP」を通じて、パイロットの裾野拡大にも取り組んできた。今回の第II期として継続するにあたり、3月9日に共同宣言書へ署名した。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:共同宣言書へ署名が行われた鹿児島大とJAC、JALによる地域密着型パイロット人財創出プログラム】
5. 大西宇宙飛行士乗せた宇宙船はISSに無事到着、長期滞在開始
JAXAの大西卓哉宇宙飛行士らを乗せたクルー・ドラゴン運用10号機(Crew-10)は、日本時間3月15日8時3分(米東部夏時間14日19時3分)にケネディ宇宙センター 39A射点から打ち上げられ、所定の軌道に投入。翌日には国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングし、長期滞在がスタートした。Crew-10では大西宇宙氏のほか、NASAのアン・マクレーン(Anne McClain)船長、ニコル・エアーズ(Nichole Ayers)パイロットの2名と、ロシア・ロスコスモスのキリル・ペスコフ(Kirill Peskov)ミッションスペシャリストの4人が搭乗。大西卓哉宇宙飛行士は、ISS 第73次長期滞在においてISS船長(コマンダー)を務める予定で、日本人がISS船長を務めるのは若田光一氏、星出彰彦氏に続き3人目。【マイナビニュース】

【JAXA提供:ISSに到着後マイクを手に会見する大西宇宙飛行士(前列左から2人目)】