KIT航空宇宙ニュースWK22

デンソーが開発中の電動航空機用高出力モーター
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK22
海外のニュース
1. NASA、将来の単通路民間航空機をサポートするプログラムを開始
NASA は、現在飛行しているジェット機よりも 25% 効率的な「次世代単通路」輸送機の開発をサポートするために必要な技術を進歩させるプログラムを開始することを目指している。最近発表されたNASAの文書によると、この取り組みには「持続可能な飛行国家パートナーシップ」(SFNP)と呼ばれる「統合システムとその利点をテストおよび検証するための本格的な技術デモンストレーターX-plane」の開発が含まれている。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:ボーイングが構想している将来の短通路機】

2.英国でアイランダー機を改造した電動航空機開発が進む
英国政府が一部出資してCranfield Aerospace Solutions (CAeS) の主導の下で進められているプロジェクトで、Britten-Norman BN-2 Islander機を電動化に改修して、2022年後半に初飛行を行い、2024年までに商業運航を開始することを目指している。最近になって、この電気供給が電動ハイブリッドから水素パワーに転換され、燃料電池と関連システムの供給、管理・制御のために技術コンサルタント会社のRicardo 社が加わり、燃料電池開発会社の選定をすすめている。エンジンナセル内に収まるサイズと重量の燃料電池の設計がキーとなる。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:電動に改造されたアイランダー機の想像図】

日本のニュース
1. 北海道大樹町、宇宙ビジネスのサミット初開催
北海道十勝地方の大樹町など5者で構成する北海道宇宙サミット実行委員会は5月27日、宇宙ビジネスをテーマとする会議「北海道宇宙サミット2021」を8月26日と27日に帯広市などで開催すると発表した。大樹町は、宇宙ロケットや宇宙船の打ち上げ拠点「スペースポート(宇宙港)」の整備を4月から本格化させている。アジア初の民間に開かれた宇宙港を目指し、既存の打ち上げ施設を中核として「北海道スペースポート(HOSPO)」と命名。町と道内6社が出資して宇宙港の運営会社「SPACE COTAN(スペースコタン)」を設立、航空宇宙産業が集積する「宇宙のシリコンバレー」を目標に掲げ、第1弾として2025年までに2つの発射場を町が新設する。8月の宇宙サミットは、26日にHOSPOのオンラインツアー、27日に帯広市民文化ホールで「北海道宇宙サミットカンファレンス」を開催予定。【Aviation Wire News】

2. 空港の搭乗手続き、コロナで長時間化 IATAが証明書の早期デジタル化要請
IATA(国際航空運送協会)は、各国政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陰性証明書やワクチン証明書といった健康証明書類の管理を早急にデジタル化しないと、空港が混乱に陥る可能性があると警告した。コロナ前は乗客が1回の旅行で保安検査や出入国手続きなどに約1.5時間要していたのに対し、現在は旅客需要が大幅に減少しているのに3時間かかるケースがある。国際線の旅客需要が回復した際には8時間かかる可能性もあるとし、早期のデジタル化を各国政府に求めている。
そこで、全日本空輸は、IATA(国際航空運送協会)が開発したスマートフォン用デジタル証明書アプリ「IATAトラベルパス(IATA Travel Pass)」の実証実験を始めた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陰性証明やワクチン接種記録を管理するアプリで、羽田-ニューヨーク線とホノルル線の乗客を対象に、6月6日までの期間中約30人が実験に参加する見込み。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ワクチン接種等医療情報も含めたIATA Travel Pass】

3.デンソーがHoneywellと電動航空機用推進システムのアライアンス契約を締結
電動航空機用推進システムの共同事業をHoneywell International Inc.と開始。共同事業の対象は、電動航空機用推進システム製品の開発・設計、生産、販売、およびアフターサービス。両社は、まずエアタクシーや貨物機などの都市型エアモビリティ分野に注力。2022 年に電動航空機用推進システムの試験飛行を実施する予定。両社で電動航空機用推進システム製品であるEPU(Electrical Power Unit)を開発し、その中でデンソーは、航空機において最も重要な軽量化を実現し、空のモビリティの価値向上に貢献するため、独自の磁気回路を用いた高出力モーターや、内製SiC(シリコンカーバイド)を用いた高効率・高駆動周波数インバーターを開発。【朝日新聞】

【Car Watchニュース提供:デンソーが開発中の高出力モーターとギアボックス】

4.経産省が水素航空機の実現に向けて開発計画を公表
経済産業省は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現を目指す2兆円の研究開発基金「グリーンイノベーション基金」のプロジェクトの内、次世代航空機の研究開発に向けた計画を公表した。液化水素燃料貯蔵タンクやエンジン燃焼器など、水素を燃料にして飛行する「水素航空機」に必要な中核技術を確立する。2035年以降に本格投入が期待される水素航空機への技術の搭載を目指す。マイナス253℃に耐えられる小型で軽い液化水素貯蔵タンクや、水素の安定燃焼と低窒素酸化物(NOx)を両立するエンジン燃焼器、燃料への供給システムなどの技術を開発する。さらに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の構造を工夫し強度を上げることで、既存のアルミニウム合金材料と比べ主翼などの重要構造部材の30%の軽量化を目指す。【ニュースイッチ】

5.JAXAがソニー等と変形型月面ロボットを共同開発、月面データの取得を計画
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月27日、研究を進める月面でのモビリティ「有人与圧ローバ」の実現に向けて、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学と協力して「変形型月面ロボット」を開発し、ispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の2022年実施予定の月着陸ミッションにて、月面でのデータ取得を行う計画であることを発表した。有人与圧ローバが走行する月面は、地球と比べて重力が6分の1であり、かつレゴリス(月の表面を覆う砂)が一面を覆っているなど、地球とは異なる環境であり、JAXAでは2019年度から開始した有人与圧ローバのシステム概念検討の結果、自動運転技術および走行技術の詳細検討に向けて、月面のデータを取得する必要があると判断、今回の計画を実施することを決定。具体的には4者が共同で開発する直径約80mm(変形前)、重量約250gの変形型月面ロボット1機をispaceの月着陸船(ランダー)にて月面に輸送。月面を実際に走行させてレゴリスの挙動や月面での画像データなどの取得を目指すという。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:変形型月面調査ロボット】