KIT航空宇宙ニュース2022WK40
海外のニュース
1. エアバス、A350Fのデザイン公募 パリ航空ショーで披露、24年初飛行へ
エアバスは、開発を進めている貨物型A350Fの機体デザインを公募している。締め切りは現地時間11月28日で、デザインは2023年6月に開催されるパリ航空ショーでお披露目する。プロのデザイナーに限らずアマチュアや学生なども応募でき、エアバスの特設ページで受け付ける。採用されたデザインの担当者を3月15日に発表し、2024年に予定する初飛行などにも招待する。A350Fは大型旅客機A350の貨物型で、2021年11月に計画を発表した。最大離陸重量は319トン、ペイロードは最大109トン、航続距離は8700キロメートル(4700海里)全長は70.8メートルで、標準型のA350-900の66.8メートルと、長胴型のA350-1000の73.79メートルの間の長さとなる。エアバスによると、胴体の長さと容量は、業界標準のパレットや貨物コンテナに最適化したといい、機体後部左側に貨物ドアを設けた。【Aviation Wire New】
【Yahooニュース提供:エアバス貨物機のイメージ図】
2. 7月の航空需要、国内市場で回復加速 国際・国内利用率83.5%=IATA旅客実績
IATA(国際航空運送協会)の2022年7月世界旅客輸送実績によると、国際線と国内線の合計は、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は前年同月比37.3%増(19年同月比23.6%減)、有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)が58.8%増(25.4%減)となった。ロードファクター(座席利用率、L/F)は11.3ポイント上昇(2.0ポイント低下)の83.5%だった。各国の国内線は、新型コロナウイルス前の水準を下回っているものの回復が加速し、9割程度まで戻っている。対象は日本を含むアジア太平洋と、欧州、北米、中東、中南米、アフリカの6地域で、航空会社の国籍を基準に調査。国際線と国内線の合計を地域別で見ると、アジア太平洋地域はASKが28.1%、RPKが47.5%それぞれ増加。L/Fは10.0ポイント上昇の76.4%だった。L/Fは6地域すべてで上回った。欧州は16.6ポイント上昇の87.0%、北米が4.0ポイント上昇の88.2%、中東が29.8ポイント上昇の81.2%、中南米が3.1ポイント上昇の83.1%、アフリカが13.9ポイント上昇の75.3%だった。【Aviation Wire New】
3. Volocopterの試験飛行で、イタリアローマのバーティポートの可能性が示される
ドイツのボロコプター社は、ローマのフェミチノ空港で、開発中のイタリアのVertiport(バーティポート)からのテスト飛行に参加した。10月6日に実施された有人試験飛行は、2024年までに空港とイタリアの首都間の航空移動サービスを可能にするプログラムの一部。公開デモンストレーション中に8の字飛行経路を飛行しながら、高さ40mで飛行した。Volocopter の最高コマーシャル責任者である Christian Bauer 氏は、同社が1年足らずでパートナーシップ契約から主要空港での飛行試験に進んだと述べている。このテストは、空港運営会社のアエロポルティ・ディ・ローマ、合弁会社のインフラストラクチャ・プロバイダーである UrbanV、および戦略的な輸送持株会社である Atlantia との共同試験でした。【Flightglobal News】
【Flightglobal提供:ローマのフェミチノ空港のVertiportから離陸するVolocopter】
4. Joby Aviationと Skyports が提携し、エア タクシー「Vertiport」のデモンストレーションを行う
エア・タクシーの開発者である Joby Aviation とエア・タクシー・ターミナルの設計者である Skyports Infrastructure は、ターミナルが実際にどのように機能するかを研究し、実証するため提携し、でも飛行を計画している。【Flightglobal News】
【Jobby Aviation提供:Vertiportのイメージ】
5. ゼロエミッション輸送を可能にする水素燃料飛行船「H2 Clipper」がファンドを立上げ資金調達
クリーンで持続可能、効率的な再生可能エネルギーで運用される社会を目指すH2 Clipperは、飛行機の4分の1のコストで貨物輸送が可能な、水素燃料飛行船「H2 Clipper」の実用化に取り組んでいる。飛行船はかつて航空輸送手段として活躍したものの、20世紀前半に起こったいくつかの事故のために、現在では広告や観測手段などその用途は限定的だ。同社は、安全、速度、効率性という過去に成し得なかった目標を達成するため、H2 Clipperには、より丈夫で軽量の材料、量産技術、3Dプリンティング、コンピュータによるシミュレーションや制御といった最新の技術を取り入れた。H2 Clipperの巡航速度は時速280km、航続距離は9656km、最大積載量は15万kg、貨物スペースは7530立方メートル。貨物船の4~5倍のスピードと貨物機の4分の1のコストで工場から直接輸送可能だとしている。水素自体も、例えばハワイやオーストラリアなど、地熱や風力を利用して安く製造できる地域から、日本などクリーンエネルギーを必要とする地域へ直接輸送できる。また、高高度で長時間ホバリングできるため、災害地域やスポーツイベントにおいて一時的な基地局としても利用できる。さらに、垂直離着陸が可能なので、混雑した港や空港、またはインフラが整っていない場所の輸送手段としても活用できる。【Flightglobal News】
【Flightglobal提供:水素燃料飛行船「H2 Clipper」想像図】
6. Wisk Aeroが最新の「空飛ぶタクシー」デザインを発表
Wisk Aeroは、第6世代の半自律型エア・タクシーのデザインを発表し、「自律型eVTOL機のFAA による型式認定の最初の候補」と呼んでいる。このデザインは、2018年にニュージーランドで最初に飛行とホバリングを実施した「Cora」エア・タクシー機を大幅に更新したバージョンのように見える。Wiskによると、4人乗りのこの航空機は、地上2,500~4,000フィートの高さで110~120ノット(138 MPH)の速度で巡航できる。これは12個のプロペラを備えたVTOL(垂直離着陸)航空機で、前部に傾斜推進ユニット、後部に揚力用の固定ユニットを備えている。プレスリリースによると、最大90マイルの航続距離を提供し、以前のバージョンよりも制御と効率的なエネルギー管理が改善されている。同社は自動運転技術を強調し、それが空中移動の「鍵」であると信じていると述べた. そのために、彼らは、障害物を検出して回避するための改良されたセンサーと、「すべての飛行を人間が監視し、必要に応じて制御できる複数の機体監視体制」を備えることを目指している。【Flightglobal News】
【Wisk社提供:「エア・タクシー」仕様のWisk最新デザイン】
日本のニュース
1. JAL、山口宇部空港で水素フォークリフト実証実験
日本航空は、山口宇部空港で、水素燃料電池で動くFCフォークリフトの実証実験を10月6日から始めた。31日までで、豊田自動織機のFCフォークリフトを使用する。山口県が実施している実証実験の一環で、水素ステーションに隣接していない事業所などに「カードル」と呼ばれる水素充てん容器と簡易水素充填機を設置し、FCフォークリフトを使用する際の課題抽出や解決策の検討につなげる。JALは山口宇部空港内の貨物エリアで、県の実証実験に協力する。【Aviation Wire New】
【Aviation Wire提供:豊田自動織機製水素燃料電池フォークリフト】
2. エア・ドゥとソラシド、持株会社設立 草野会長、経営の独立性強調
エア・ドゥとソラシドエアは10月3日、共同持株会社「リージョナルプラスウイングス」(RegionalPlus Wings)を設立した。代表権のある会長にはエア・ドゥの草野晋社長が、社長にはソラシドの高橋宏輔社長が就任した。エア・ドゥとソラシドは事業会社として持株会社の傘下に収まるが、経営の独立性は維持する。エア・ドゥとソラシド両社の筆頭株主は日本政策投資銀行(DBJ)で、両氏は同行出身。リージョナルプラスウイングスの資本金は1億円。本社は両社が拠点とする羽田空港内に設置した。運航に必要な航空運送事業許可(AOC)と事業免許はそのまま保持し、両社のブランドも継続する。本社機能の一部を集約するほか、地上係員など一部職種の共通化も進める。また将来的には整備機能も持株会社へ集約する。業務・規定の共通化や共同化・共同調達などによるスケールメリットで、コスト削減や生産性向上を図り、2026年度に両社で45億円以上の協業効果を目指す。2026年度の営業収入は約1000億円、経常利益は約90億円を目標とする。【Aviation Wire New】
【Aviation Wire提供】
3. ヤマハ発動機、自動飛行機能を搭載した農業用無人機2モデルを発表
ヤマハ発動機は10月6日、オンサイトとオンラインのハイブリッド形式で記者会見を開催。同社が展開する産業用マルチロータシリーズの新製品で自動飛行機能を標準搭載した「YMR-II」の2023年春の発売、および、自動飛行機能を追加搭載した産業用無人ヘリコプターの新製品「FAZER R AP」の開発を発表した。日本国内の農業においては、農林水産省が掲げる「みどりの食料システム戦略」が1つの指針となっており、「調達の脱輸入・脱炭素化・環境対応」「イノベーションによる持続的生産体制」「ムリ・ムダの無い加工・流通」「環境にやさしい消費拡大・食育」が目指されている。特に、少子高齢化などに起因する人手不足が喫緊の課題になっている中、農作業の省人化や省力化に対するニーズは大きい。実際に国内の農業現場では、水稲の殺虫殺菌に無人ヘリコプターを活用する事例が増加しており、近年ではより小型なマルチロータ(ドローン)の導入も増えているという。ヤマハ発動機によると、2021年には水稲栽培の現場で無人ヘリコプターやドローンを活用する割合は約49%にまで上っているとのことで、今後はさらなる利用増加が予想される。【マイナビニュース】
【マイナビニュース提供:産業用マルチロータ「YMR-II」(左)と産業用無人ヘリコプター「FAZER R AP」】
4. 若田さん 国際宇宙ステーションに到着 半年間の長期滞在を開始
米航空宇宙局(NASA)と米スペースXは、日本時間10月6日午前1時に若田光一飛行士ら4人が乗る宇宙船「クルードラゴン」5号機の打ち上げに成功した。宇宙船は国際宇宙ステーションに向かい、今後半年間滞在する予定。月や火星の表面を走る探査機を用いる潤滑油の開発に向けた実験や、宇宙環境が加齢や精神に及ぼす影響についても調べる。若田さんは今回が5度目の飛行。米国やロシアなど他の海外の飛行士3人はいずれも初の宇宙飛行で、ベテランの若田さんがチームのまとめ役も務める。もっとも若田さんは日本人宇宙飛行士のなかで最高齢。現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に所属する日本人宇宙飛行士6人の平均年齢は52歳で、このうち3人が55歳以上と宇宙飛行士の高齢化が進んでいるという。【Yahooニュース】
【毎日新聞提供:「クルードラゴン」打上げ前の若田宇宙飛行士】