KIT航空宇宙ニュース2023WK04

JALが出資したREGENT社が開発中のシーグライダー「Viceroy」想像図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK04

海外のニュース

1. 2022年の定時性、世界一はガルーダ トップ20にANAとJAL=英OAG

世界の航空関連情報を提供する英国のOAGは、2022年の定時運航率が最も高い航空会社に、ガルーダ・インドネシア航空を選出した。上位20社のうち日本の航空会社は2社で、全日本空輸が6位、日本航空が7位にランクインした。OAGは、定刻より15分以内に到着したものを「定時運航」とし、各社をランク付けした。対象となる航空会社は、2022年暦年の座席供給量(有効座席キロ、ASK)が多かった上位250社。このうち運航数など規模の大きな上位20社を「メガエアライン」とし、「アジア太平洋」と「北米」「欧州」「中南米」「中東・アフリカ」の5地域別でも集計した。ASKが多かった上位250社を対象とした「全体部門」では、ガルーダが首位。定時運航率は95.63%、運航便のキャンセル率は0.61%だった。2位は南アフリカのサフエアーで定時運航率が95.30%、3位はユーロウイングスで95.26%だった。【Aviation Wire News】

2.ボーイング、4年連続最終赤字 防衛部門で拡大、民間機は圧縮=22年通期

ボーイングが現地時間1月25日に発表した2022年通期決算は、純損益が50億5300万ドル(約6526億円)の赤字(21年通期は42億9000万ドルの赤字)で、4年連続での通期赤字となった。主力中型機の787型機の納入再開などにより民間航空機部門で赤字幅を縮小したものの、7-9月期(第3四半期)に計上した防衛・宇宙・セキュリティ(BDS)部門での損失により、全体の赤字幅が拡大した。売上高は7%増の666億800万ドル、営業損益は35億4700万ドルの赤字(同29億200万ドルの赤字)、年金や退職金給付の経費を除外した中核営業損益は46億9000万ドルの赤字(同40億7500万ドルの赤字)だった。民間航空機部門は、売上高が33%増の258億6700万ドル、営業損益は23億7000万ドルの赤字(前年同期は64億7500万ドルの赤字)で、赤字幅を圧縮した。BDSは製造コストやサプライチェーンコストが増加し、通期の営業損益は35億4400万ドルの赤字(21年通期は15億4400万ドルの黒字)を計上した。【Aviation Wire News】

3.スペースXの巨大ロケット「スターシップ」、打ち上げに向けたリハーサルに成功

米宇宙企業スペースXは2022年1月24日、開発中の巨大ロケット「スターシップ」の打ち上げに向けた、「ウェット・ドレス・リハーサル」を完了したと明らかにした。試験では、1段目のスーパー・ヘヴィと2段目のスターシップの両方に、推進剤の液化メタンと液体水素を充填。エンジンには点火されなかったものの、打ち上げカウントダウンのシーケンスの確認や、発射台の性能の検証などを行ったという。今後、スーパー・ヘヴィの地上燃焼試験などを経て、軌道への試験飛行に向けた準備が進むことになる。スターシップ(Starship)は、スペースXが開発中の次世代ロケットである。機体は2段式で、1段目のブースターをスーパー・ヘヴィ、宇宙船や衛星搭載部を兼ねた2段目をスターシップと呼び、両方を総称してスターシップとも呼ばれる。最大の特徴は機体の大きさにあり、全長120m、直径9mもの巨体を誇る。これにより、スターシップには最大100人の乗員乗客、もしくは100t以上の衛星や物資を搭載し、地球を回る軌道へ飛行できる。また、軌道上で推進剤の補給を受けることで、そのまま月や火星へ飛んでいくこともできるなど、従来のロケットをはるかに超える打ち上げ能力をもつ。くわえて、スターシップもスーパー・ヘヴィも機体を完全に再使用でき、何回も飛行することで、従来のロケットより桁違いに安いコストで打ち上げることを目指している。マスク氏はかつて、「1回あたりの打ち上げコストは約100万ドルを目指す」と発言しており、実現すれば現行のロケットの約100分の1のコストになり、ロケット業界にとってゲーム・チェンジャーとなる。【マイナビニュース】

【BIGLOBEニュース提供:スペースXの巨大ロケット「スターシップ」】

4.EASAは、eVTOL機パイロット免許のタイプレーティングの評価についてギャップ分析を提案

欧州の規制当局であるEASAは、カスタマイズされたトレーニングシラバスを開発するための認定を求めるeVTOL機製造業者を支援するために、eVTOL機のパイロット免許の型式評価要件に関する非公式のガイダンスを提案した。EASAは、その型式評価の必要性を判断したが、多くのメーカーでは、ライセンスとトレーニングの基準の設定が開発スケジュールを遅らせている。EASA は、一部のeVTOL機運用会社は、パイロット免許のフレームワークが整備される前にサービスを開始する準備ができていると考えている。ロボコプター社はすでに、eVTOL運用が有資格者によってサポートされることを保証する「ブリッジング・ソリューション」を提唱しており、これにより、商用パイロットライセンスとヘリコプターのライセンス保持者は eVTOL機操縦の承認を受けることができるとしている。これは、包括的なフレームワークが完全に導入されるまで有効で、EASA によると、eVTOL機タイプ・レーティング・トレーニングの最終的なシラバスは、現在のライセンス要件のさまざまなセクション (ヘリコプター、航空機、電動リフトを含む) から引き出す必要があると述べている。機体の型式証明書の申請者は、運用適合性データの一部として承認されるカスタマイズされたシラバスを開発するために「ギャップ分析」を実行する必要があるが、パイロットの型式評価シラバスの作成をサポートするためのギャップ分析の実施について申請者をガイドする認証覚書を提案している。この分析により、コックピット環境、制御ロジック、ハンドリング特性、制限など、特定のeVTOL機の特性に基づいてトレーニング要素を適切に特定できるとしている。【Flightglobal News】

【Volocopter社提供:Volocopter社のeVTOL機「Volocity」】

日本のニュース

1. JAL、電動水上グライダーの米ベンチャーREGENTに出資 25年実用化視野

電動シーグライダーを手掛ける米リージェント(REGENT)は現地時間1月26日、日本航空のファンド「JALイノベーションファンド」から出資を受けたと発表した。リージェントは2025年の実用化を目指している。リージェントによると、開発中の12人乗りシーグライダー「Viceroy(ヴァイセロイ)」は全電動で、既存の埠頭インフラを活用し、既存のバッテリーで最大180マイル(約290キロ)、次世代バッテリーで最大500マイル(約805キロ)を計画。3つの海上運航方式「浮遊」「フォイル」「飛行」に初めて成功した機体だという。2022年9月には、4分の1スケールの技術実証機による飛行に成功しており、2024年には海上での有人飛行を計画している。これまでに4500万ドル(約58億円)以上の資金を調達し、ハワイのモクレレ航空などから仮契約を含めて400機以上、金額ベースで約75億ドルを受注。JALの出資により、共同でシーグライダーのエコシステム開発に関する検討をしていきたいという。JALイノベーションファンドは、2019年に設立されたスタートアップに投資するJALのCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタルファンド)。超音速旅客機を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic)などに出資している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Regent社が開発中のシーグライダー「Viceroy」想像図】

2.  IST、小型衛星コンステレーション用大型ロケット「DECA」の開発計画を公表

インターステラテクノロジズ(IST)は1月24日、民間主導による小型衛星コンステレーション用大型ロケット「DECA」の開発計画を発表した。ISTはすでに打ち上げ実績のある観測ロケット「MOMO」のほか、当初の2023年度から2024年にスライドさせ、打ち上げを目指し、開発が進められている超小型人工衛星用ロケット「ZERO」における低コストロケットの開発技術ノウハウを有しており、DECAは、それらに続く最先端の再使用技術も取り入れることで抜本的な低コスト化を図った大型ロケットという位置づけとなっている。DECAの名前の由来は、デカという単位は国際単位系(SI)における基礎となる単位の10倍の量であることを示すSI接頭語であり、ZERO(=0)に続くロケットにあたること、大量輸送を担うという一桁上の進化を目指すことからとするほか、同社が本社を構える北海道十勝地方の「十」、2023年がインターステラテクノロジズの事業開始から10年の節目であることなども加味したとしている。なお、同社ではDECAについて、宇宙への大量輸送時代に適したサービスを2030年代に実現することを目指し、日本国内への低コストで自立的な将来宇宙輸送システム確保に貢献していきたいとしている。【マイナビニュース】

【IST社提供:IST社が開発予定の大型ロケット「DECA」の想像図】