KIT航空宇宙ニュース2023WK06
海外のニュース
1.ATRとPWカナダ、SAF 100%対応エンジンで協働 25年までに認証へ
仏ATRとプラット・アンド・ホイットニー・カナダ(PWカナダ)は現地時間2月9日、機体に搭載するターボプロップエンジン「PW127シリーズ」について、代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」への100%対応に向けた協働で合意したと発表した。2025年までにATR42型機とATR72で、SAFの100%認証取得を目指す。今年から2024年にかけて試験を進める。現在はSAFを50%使用した混合燃料での認証を取得しており、SAFの100%使用により脱炭素化を加速させる。ATRとPWカナダ、スウェーデン地域航空会社のブラーテンズ・リージョナル・エアラインズ【の3社は2022年6月に、SAFのみを燃料とした飛行試験を実施。ATR72-600に搭載するPW127Mエンジンで試験を成功させた。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:100%SAFで試験したATR72-600型機のPW127型エンジン】
2. パリ航空ショー、6/19から4年ぶり開催 空飛ぶクルマなどスタートアップ注目
フランス航空宇宙工業会(GIFAS)の100%子会社SIAEは、世界最大規模の国際航空宇宙見本市「第54回パリ航空ショー」を6月19日から25日までパリのル・ブルジェ空港で開催する。4年ぶりの開催で、出展スペースは95%以上が成約済みだという。コロナ影響後初となる今回は、スタートアップ企業専用の展示エリアを設け、地域・国際パビリオンにもスタートアップの出展が目立つ。中でも環境、新エネルギー、デジタル関連、ビッグデータ、AI、ニュースペース(宇宙産業への民間企業参入)、未来の工場、新素材、未来の乗り物、航空機のカスタマーエクスペリエンスなど、航空業界の未来を見据えたテーマを手掛けるスタートアップ企業が多いという。期間中に開かれるイベントのうち、「パリ・エアラボ(Paris Air Lab)」では、航空輸送の脱炭素化につながるイノベーションに関して大規模展示を予定。「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)関連企業などに焦点を当てる。業界関係者(TRADE VISITOR)の入場料は、オンライン購入では1日券が55ユーロ(約7700円)、2日券が108ユーロ、7日券が200ユーロ。当日会場で購入すると1日券は65ユーロになる。【Aviation Wire News】
【Aviation Wire提供:2019年に開催されたパリ航空ショーで展示された三菱航空機のSpace Jet】
3.FAAがUniversal Hydrogen社に特別耐空証明を付与
水素エネルギー推進航空機の開発者であるUniversal Hydrogen社は、連邦航空局が実験機カテゴリーで特別な耐空証明書を付与したと述べており、デ・ハビランド・カナダ ダッシュ 8-300型機を改造したデモ機の飛行試験を開始することを会社に許可した。カリフォルニアに本拠を置く同社は2月7日、「地上でのハンドリング品質と燃料電池電動パワートレインの性能を評価するために設計された」航空機でのタクシーテストをすでに開始していると述べた。同社によると、飛行試験はワシントン州モーゼスレイクのグラント郡国際空港で行われるという。ユニバーサルはまた、最初のタクシーテストのビデオを公開し、最初のフライトは「2023年第1四半期」になると述べている。同社は 2020 年に、航空宇宙産業が水素を航空機燃料として採用する可能性が高いと見なされていることを利用するために取り組んでいる新興企業として登場した。ユニバーサルは、水素燃料の供給と流通のインフラストラクチャの作成に取り組んでおり、「モジュール」と呼ばれる交換可能な水素で満たされた燃料タンクを使用する燃料システムを開発している。さらに、ユニバーサルは、ATR およびDash 8ターボプロップ用の水素燃料電池変換キットも開発している。【Flightglobal News】
【Universal Hydrogen社提供:水素燃料電池推進航空機に改造されたDash8-300型機】
4.H2Flyが液体水素燃料電池システムの飛行試験を今年の夏に計画
水素燃料電池パワートレインの開発者である H2Fly社は、新しい液体水素燃料システムの設置に続いて、水素燃料電池駆動のHY4デモンストレーターが夏までに試験飛行を開始することを計画している。燃料システムのテストは現在、フランスのグルノーブル近くのエア・リキードのキャンパスで進行中であると、H2Fly社の最高経営責任者であるジョセフ・カロ博士は述べている。これに続いて、燃料電池システム全体のテストが今後数週間で実行され、3月または4月に地上試験プログラムが行われ、夏にはドイツ南西部のシュトゥットガルト空港にある H2Fly社の基地からHY4デモ機が初飛行を予定している。
【H2Fly提供:水素燃料電池推進デモ機のHY4型機】
日本のニュース
1.長崎県とANA、連携協定締結 空港活用や離島振興、移住促進
長崎県とANAホールディングスは2月10日、連携協定を締結した。長崎空港の利用促進や離島振興、移住促進などに取り組む。長崎空港の利用促進では、県産品の地方販路拡大に向けた実証事業の実施や、チャーターフライト、空港イベントの実施などを挙げた。離島振興では着地型旅行商品の拡充、ANAの先端技術活用、地域航空会社との連携などを検討する。移住促進では、ANAグループ社内ツールでの移住施策の情報発信などを行い、人材育成で相互派遣などの事交流を進め
る。【Aviation Wire News】
【西日本新聞提供:連携協定を締結した長崎県大石知事(左)とANA芝田社長(右)】
2.航空各社、機内マスク着用3月見直しへ
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は2月10日、マスク着用を個人の判断に委ねることを基本とする指針を示した。これを受け、全日本空輸や日本航空など国内の航空各社が加盟する業界団体「定期航空協会(定航協)」も、機内などでのマスク着用は政府の「基本的対処方針」に基づいて見直しを進め、早ければ方針が示す3月13日から適用する見通し。対策本部によると、マスク着用の考え方の見直しは、国民への周知期間や各業界団体・事業者の準備期間などを考慮して3月13日から、学校は4月1日から適用する。一方、着用が効果的な高齢者など重症化リスクが高い人への感染を防ぐため、医療機関の受診時、混雑した電車やバスなどは着用を推奨する。電車やバスの対応は当面の取り扱いとしており、おおむね全員が着席できる新幹線や通勤ライナー、高速バス、貸切バスなどは対象外で、マスク着用は個人の判断に委ねる。国土交通省によると、公共交通機関のうち航空機とタクシー、船は着用推奨の対象外だという。定航協は6日に、機内でのマスク着用は政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に沿った対応を進めていくとのコメントを発表。この時点では、5月8日に予定されているコロナの5類移行後が方針に基づく見直し時期だったが、3月に前倒しとなる。【Aviation Wire News】
3. JAL、シミューレーター体験再販 選べる767と777、国際線クルーミールの昼食も
日本航空傘下のJALUXは2月10日、フライトシミューレーター体験を販売を開始した。昨年夏に続く2回目の販売で、JALのパイロットが訓練で使用しているシミュレーターを操縦するほか、JAL機の運航を集中管理するIOC(インテグレーテッドオペレーションズコントロール)も見学できる。3月末から5月末までの一部日程で20枠設定し、JALUXが運営するJALの通販サイト「JALショッピング」で扱う。シミュレーターは、ボーイング767型機と777のどちらかを選べる。1回6時間40分のツアーで、東京・天王洲のJAL本社でIOCを見学後に羽田の訓練施設・テクニカルセンターでシミュレーターを操縦する。IOC見学は50分、シミュレーター体験・記念撮影は120分を予定。また、パイロットが乗務時に機内で食べる国際線の「クルーミール」を昼食として提供する。定員は1組2人まで。1組36万円(税込み)で販売する。申し込み期間は2月24日午後5時まで。定員に達した場合、受付を終了する。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:JAL777型機のフライトシミュレーター】
4.国交省、スカイマークに業務改善勧告 酒気帯び整備士、不正検査で業務
国土交通省航空局(JCAB)は2月7日、スカイマークに対して業務改善勧告を行った。確認主任者だった同社の整備士が酒気帯び状態で整備業務に就いたことに対するもので、24日までに再発防止策を報告させる。また、安全管理システムの再構築など、安全統括管理者の職務についても改善措置を講じるよう警告書を出した。酒気帯び状態での整備業務は2022年12月25日早朝に発生。羽田にあるスカイマークのライン整備部に当時所属していた男性整備士(66)は、社内規程で義務付けられているアルコール検査で不正を働き、酒気帯び状態のまま出張先の長崎空港で整備業務に就いた。66歳の男性整備士Aは飲酒を終えてから約10時間後の翌25日午前5時20分、出社前のアルコール検査を受け、0.08-0.15mg/lのアルコールが検出された。スカイマークの規定では0.00mg/lが基準値で、アルコールが少量でも検出されると整備業務には就けないという。スカイマークは整備士Aに対し、2月2日付で懲戒解雇処分とした。また、整備士Bとランプ職員D、整備本部長の3人を同日付でけん責処分とした。【Aviation Wire News】
5.三菱重工、スペースジェット開発中止を正式発表
三菱重工業は2月7日、国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発中止を正式発表した。本紙既報のとおり、事業の採算性が見込めないことから開発を断念した。反省点として、高度化した民間航空機の型式認証プロセスへの理解不足、長期にわたる開発を継続して実施するリソースの不足を挙げた。三菱重工は、スペースジェットの開発を2020年10月30日に「一旦立ち止まる」との表現で事実上凍結。国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」を取得しても事業として成立が難しく、取得費用も今後数年間で数千億円規模と膨大になることが見込まれることから、開発断念を決めた。スペースジェットの開発経験者は防衛部門に異動させ、試験設備は産業界での活用などを関係者と協議していく。また、開発する子会社の三菱航空機は、三菱重工に資産を移管するなどの準備を経て清算する見通し。【Aviation Wire News】
6.第2回全国高専宇宙コンテストが開催 高専生の人工衛星「KOSEN-X」開発へ
国立高等専門学校機構は2月9日、新居浜工業高等専門学校の主催で、全国6校の高専から計8チームが参加する「第2回全国高専宇宙コンテスト」を2023年1月9日にオンラインで開催し、最優秀賞を高知工業高等専門学校Bチームが獲得したことを発表した。全国高専宇宙コンテストは、2021年11月に打ち上げられた国立高専初の人工衛星「KOSEN-1」、現在再挑戦を検討中の「KOSEN-2」、そしてそれに続く、高専生参画型の超小型人工衛星開発ミッション「KOSEN-X」に向けたコンテストだ。同コンテストは、文部科学省の宇宙航空科学技術推進委託費・宇宙人材育成プログラムの支援を受けて開催された。優れたアイデアには賞が授与され、KOSEN-Xミッションの実現に向けたテーマとして検討されるという。今回はオンラインで開催され、1チームあたり5分間のプレゼンテーションと、10分間の質疑応答の時間が与えられた。審査員としては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などで衛星開発や宇宙研究に携わるエンジニアや研究者らが参加し、ミッションの意義・独創性・特色と、実現の可能性の2点で審査が行われた。参加したのは、一関工業高専、呉工業高専、呉工業高専 それゆけ!音楽隊宇宙支部、高知工業高専Aチーム、高知工業高専Bチーム、熊本高専 熊本キャンパス、明石工業高専 MIRAI3、香川高専 高松キャンパスの8チーム。結果は以下の通りとなった。
最優秀賞:高知工業高専Bチーム
優秀賞:高知工業高専Aチーム
優良賞:熊本高専 熊本キャンパス
敢闘賞:呉工業高専 それゆけ!音楽隊宇宙支部
努力賞:呉工業高専
奨励賞:一関工業高専、明石工業高専 MIRAI3、香川高専 高松キャンパス
【Yahooニュース提供:高知工業高専の人工衛星「KOSEN-1」】