KIT航空宇宙ニュース2023WK08
海外のニュース
1. ボーイング、787の納入一時停止
FAA(米国連邦航空局)は現地時間2月23日、ボーイングが787型機の引き渡しを一時停止していることを明らかにした。ウォール・ストリート・ジャーナルやロイター通信などによると、胴体部分の分析作業を追加で実施する必要があり、FAAが了承するまで納入は再開されない。問題となっているのは、787の前方圧力隔壁に関するサプライヤーの分析ミスで、ボーイングが認証記録を調べたところ発見されたという。ボーイングは「運航中の機体について、ただちに飛行の安全に関する懸念はない」とコメントしている。787は、2020年に胴体接合部の不具合が発覚。その後も品質問題が指摘され、2021年10月には過去3年間に使われたチタン製部品の中に、本来の強度に満たないものがあることがわかった。納入ゼロの状態が2021年7月から2022年7月まで13カ月連続で続いたが8月10日に納入を再開し、アメリカン航空(AAL/AA)へ787-8を引き渡した。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:ボーイング787型機】
2. Volocopter がVoloCityの日本の型式証明取得申請
Volocopterは、同社の VoloCity eVTOL (電動垂直離着陸) 航空機の日本での認証に向けて重要な一歩を踏み出した。日本の航空局 (JCAB) は、同社の日本と EASA との同時型式証明認証の申請を受理し、2025年の大阪・関西万博で 2人乗りのVolocityを運用する道を開いたと Volocopterは述べた。日本に加えて、Volocoptersは、米国のFAAおよびシンガポールの民間航空局との同時認証も目指している。VoloCopterは日本の住友商事も投資家として確保しており、住友商事は、VoloCityの日本でのサービス参入のパートナーにもなっている。Volocopterは、日本航空とも提携している。2020年9月、JALはVolocopter と協力して日本でのエアタクシー事業を展開していると発表した。また、2020年2月に、日本航空イノベーションファンドはVolocopters に投資している。 【Flightglobal News】
【Volocopter社提供:東京上空を飛行するエアタクシー「Volocity」想像図】
日本のニュース
1. ANA、採用担当者が3/1ライブ配信 CA・パイロット・総合職
全日本空輸は2月22日、人事部の採用担当者によるライブ配信を3月1日午後7時ごろから実施すると発表した。出演するのは、グローバルスタッフ職(旧総合職)の事務・技術、客室乗務員、自社養成パイロット、エキスパートスタッフ職(障がい者採用)の採用担当者。ANAのInstagramとTikTokで配信する。配信は羽田空港近くの総合訓練施設「ANA Blue Base(ABB、ANAブルーベース)」から。【Aviation Wire News】
2. JAL系ZIPAIR、ホノルル線に代替燃料SAF 世界初の通年使用
ZIPAIRは2月21日、成田-ホノルル線の定期便に代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を4月から通年で使用すると発表した。同社によるとSAFを定期便で通年使用するのは世界初だという。ZIPAIRは日本航空が100%出資する中長距離LCC(低コスト航空会社)。SAFフィンランドのネステからJALグループが調達し、ZIPAIRが運航する成田-ホノルル線の年間燃料料搭載量の約1%相当を置き換える。CO2(二酸化炭素)排出量は年間4万トンの削減になるという。ZIPAIRの西田真吾社長は「最初にホノルル線でSAFを使用するのは理由がある。ハワイ州はレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)のスローガンとして『マラマハワイ』を提唱しており、ハワイの環境を守る活動を支援していきたい」と語った。西田社長は今後の目標として「2025年度には、全路線をカーボンニュートラル化したいという意思を持っている」と述べ、さらなるSAF導入を検討していくという。【Aviation Wire News】
3.大阪万博、空飛ぶクルマの事業者決定 ANA・JAL・丸紅・SkyDriveが運航
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は2月21日、大阪・関西万博で有人運航をめざす「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)について、運航事業の参加事業者4グループと会場内のeVTOL用ポート(発着場)運営の協賛企業を発表した。運航事業はANAホールディングスと米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)連合、日本航空、丸紅、SkyDrive(スカイドライブ)が選ばれ、ポート運営の協賛はオリックスに決まった。空飛ぶクルマは、万博会場内のほか、関西空港と会場近くの湾岸エリア、大阪都心部の会場外3地点を合わせた計4地点にポートを設け、会場内と会場外の2地点間の運航を計画している。協会によると、運航頻度やポートの具体的な設置場所などの詳細は、自治体や参加企業と今後協議していくという。運航する機体は小型の航空機であるため、国が安全性を証明する「型式証明(TC)」を取得する必要。TCのほか、ポートの設置基準などさまざまな法整備が必要になる。監督する国土交通省航空局(JCAB)の久保田雅晴局長は「来年3月末までに、すべての制度整備を完了したい。万博後も次世代のモビリティとして、日本に根付くように環境を整備したい」と語った。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:大阪万博での「空飛ぶクルマ」の運航事業者に決まった各社社長】
4.トヨタ向けeVTOL運航へ 朝日航洋とJoby、空飛ぶクルマのシャトル便計画
トヨタ自動車傘下の朝日航洋は、「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発している米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)と共同で、トヨタ向けのeVTOLによる国内運航サービスの準備を始めた。トヨタ関連の役員や社員、顧客の移動手段としてサービス提供を計画している。米カリフォルニア州に本社を置くJobyは5人乗りのeVTOLを開発中で、最高時速は200マイル(約320キロ)を計画。1回の充電で最長150マイル(約240キロ)飛行でき、騒音を抑えられるようにするという。Jobyは2025年に米国内で商業運航を始める予定で、日本など海外展開を計画している。トヨタは2020年1月にJobyへの出資を発表した。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:Joby AviationがJCABへ型式証明を申請しているeVTOL機「S4」】
5.成田空港にメガソーラー 空港会社と東京ガスが新会社、2050年までに脱炭素化
成田国際空港会社(NAA)と東京ガスは2月20日、成田空港に電気や冷暖房を供給する新会社「Green Energy Frontier(GEF、グリーン・エナジー・フロンティア)」を設立すると発表した。4月1日から事業を開始し、2027年度上期に新中央受配電所、2034年度上期に新中央冷暖房所を完成させ、1000億円規模の投資で2050年の脱炭素化達成を目指す。NAAは成田空港の運営会社で、新会社の出資比率はNAAと東ガスが50%ずつ、社長は3月に開催する株主総会で決定予定。資本金は18億2750万円となる。現在は成田空港への電気や冷暖房といったエネルギー供給をNAAが自社で行っており、新会社のGEFに供給事業を移管する。空港では世界最大規模になるという180メガワットの太陽光発電設備を導入。航空機の発着や管制に影響を与えずに太陽光設備を設置可能な土地が、空港内には滑走路脇など東京ドーム約42個分にあたる約200ヘクタールあり、一般家庭7万世帯分の年間電力量を太陽光でまかなえるようにする。成田市の世帯数である約6万世帯を上回る供給能力で、2030年度末に75メガワット、2045年度末までには105メガワットと段階的に増やしていく。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:成田空港に展開予定のマガソーラー施設想像図】
6.H3ロケット初号機の打ち上げ中止、電源供給系統の遮断が原因と判明
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月22日、同17日に打ち上げを中止したH3ロケット初号機について、文部科学省に原因の調査状況を報告した。異常の発生場所については特定できたものの、その原因についてはまだ調査中。JAXAは、3月10日までの予備期間中の打ち上げを目指すとしているものの、時間的な余裕はあまり無く、見通しはやや不透明だ。JAXAの調査によると、打ち上げの6.3秒前にLE-9エンジンは着火。数秒かけて推力90%まで正常に立ち上がり、各機器にも異常が無かったことから、H3ロケットの頭脳である「2段機体制御コントローラ」(V-CON2)が打ち上げ条件の成立(FLI:フライトロックイン)を確認、SRB-3の点火許可まで予定通りにシーケンスを進めた。通常であれば、この後SRB-3に点火信号を送ることになるが、今回はこの直前に、LE-9の少し上に搭載されている「1段機体制御コントローラ」(V-CON1)が異常を検出。ただちにシーケンスの中断処理が行われ、LE-9に停止信号を送信、フェイルセーフの設計通りに、安全な状態に移行させた。V-CON1で検出した異常についてだが、これは、LE-9用の電池から「エンジンコントロールユニット」(ECU)に繋がる電源供給系統にて発生したとのこと。ECUはLE-9の制御を担当しており、当然ながら飛行時は常時オンになっているべき装置だ。しかし、この電源供給が、LE-9の起動後、数秒レベルで完全に落ちていたそうだ。【マイナビニュース】
【マイナビニュース提供:2月17日に打ち上げを中止したH3ロケット】