KIT航空宇宙ニュース2023WK16

廃食用油から国産SAF、JAL・ANAら29者参画 「Fry to Flyプロジェクト」のイメージポスター
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1. 4年ぶりパリ航空ショー、初のeVTOLイベント「パリ・エアモビリティ」6月開催

6月に開催される世界最大規模の国際航空宇宙見本市「第54回パリ航空ショー」では、日本で「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)関連企業などに焦点を当てたイベント「パリ・エアモビリティ (Paris Air Mobility)」が初めて開かれる。パリ・エアモビリティは、Aviation Week Networkとの共催。開催場所はパリ航空ショーが開かれるル・ブルジェ見本市会場内のホール5を予定しており、各メーカーやスタートアップ企業が製品やサービスを紹介する展示エリアと、次世代エアモビリティ(AAM)市場のカンファレンスプログラムでイベントを構成している。会期は6月20日から22日の3日間。展示エリアに登録したeVTOL関連企業は、ARCHER(米)、ASCENDANCE FLIGHT TECHNOLOGIES(仏)、EHANG(中国)、EVE AIR MOBILITY(ブラジル)、LILIUM(独)、VOLOCOPTER(独)、パリ航空ショーに登録したeVTOL関連企業はAUTOFLIGHT USA INC.(米)、WISK(米)となる。パリ航空ショーは、コロナの影響で4年ぶりの開催となる。業界関係者(TRADE VISITOR)の入場料は、オンライン購入では1日券が55ユーロ(約7700円)、2日券が108ユーロ、7日券が200ユーロで、当日会場で購入すると1日券は65ユーロ。また、様々な特典が付く「エリート・プロ(Elite Pro)」は1日券が108ユーロ、4日券が323ユーロで数量限定となっており、日本ではフランス見本市協会が窓口になる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:6月のパリエアショーでの「Paris Air Mobility」のポスター】

2. アジア旅客、24年末にコロナ前水準に 回復加速、増便が不可欠=ACI見通し

ACI(国際空港評議会)のアジア太平洋地区を担当するACI Asia Pacificは、5月16日から神戸市内で「第18回ACIアジア太平洋総会」を開催する。関西地区で総会を開催するのは初めてで、同総会は関西空港を運営する関西エアポート(KAP)がホストを務める。ACI Asia Pacificのステファノ・バロンチ事務局長が都内で会見し、アジアの航空需要回復見通しなどを説明した。4月12日に会見したACI Asia Pacificのバロンチ事務局長は、アジア太平洋地域の市場は2011年に北米と欧州を上回り、2021年まで世界のトップ市場となっていたと説明。新型コロナウイルスの影響により旅客が大きく落ち込み回復が遅れた2022年は、2012年と同水準の17億人だったという。各国の規制緩和や撤廃などに伴い、旅客数回復の兆しも見えてきている。バロンチ事務局長は、2024年末にはコロナ前の2019年と同水準に戻るとの予測を発表。中国がゼロコロナ政策を緩和したことで、回復が加速するとしている。また、コロナ明けで顕著となった航空運賃の上昇については「とくに日本の航空運賃は10%以上高くなっている」と説明。「(座席数などの)供給が増えないと価格は下がらない」とした。航空各社にはさらなる増便や復便を求め、旅客数回復の加速には供給量の増加が不可欠との認識を示した。一方で貨物需要は堅調で、2022年の年間貨物取扱量の上位10空港のうち5空港をアジア勢が占めている。1位は香港で、上海、仁川、台北の各空港がランクイン。10位には成田が入った。【Aviation Wire News】

3. JAXAとNASA、火星衛星探査機(MMX)計画で協力に関する了解覚書を署名

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、4月11日の日米政府による交換公文書名を受けて、米・コロラドスプリングスで開催されたスペースシンポジウムにて、4月17日(現地時間)、JAXAの山川宏理事長と、米国航空宇宙局(NASA)のパメラ・メルロイ副長官により、現在JAXAが2024年の打ち上げを目指して開発を進めている「火星衛星探査機(MMX)」に係る協力に関する了解覚書(MOU)が署名されたことを発表した。MMX(Martian Moons eXploration)は、世界初の火星衛星フォボスのサンプルリターンミッションだ。原始太陽系における有機物や水の移動、天体への供給過程の解明に貢献するため、火星の衛星に含まれる含水鉱物・水・有機物などを解析することにより、2つの火星衛星の起源や火星圏(火星・フォボス・ダイモス)の進化の過程を明らかにすることで、太陽系の惑星形成の謎を解く鍵を得ることを目的としている。また、火星圏への往還技術や天体表面上での高度なサンプリング技術、さらには深宇宙探査用地上局を使った最適な通信技術と、これからの惑星や衛星探査に必要とされる技術の向上も行うとしている。【マイナビニュース】

【JAXA提供:覚書に署名したNASAのメルロイ副長官(左)とJAXAの山川理事長】

4. 中国の民間企業「天兵科技」が快挙、初のロケット打ち上げで軌道投入に成功

中国の民間宇宙企業「天兵科技」は2023年4月2日、同社が開発した「天竜二号」ロケットを、酒泉衛星発射センターから打ち上げた。ロケットは正常に飛行し、搭載していた小型衛星を所定の軌道に投入した。同社にとって初のロケット打ち上げであり、天竜二号も初打ち上げながら成功を収めるという、宇宙開発史に残る快挙を成し遂げた。同社はさらに大型の再使用ロケットの開発など、野心的な計画を掲げている。天兵科技(英語名:Space Pioneer)は2019年に、起業家の康永来(Kang Yonglai)氏によって設立された企業である。康氏はロケット技術者として20年以上のキャリアを持ち、同社以前にも「藍箭空間科技(Landspace)」という別の宇宙企業の設立に携わった経歴を持つ。現在の従業員数は約400人で、その多くは国営宇宙企業などからの転職組だという。天竜二号は同社が初めて開発した衛星打ち上げ用ロケットで、全長32.8m、直径3.35 m、離昇時質量153tの3段式ロケットで、高度500kmの太陽同期軌道へ1.5t、地球低軌道へは2tの打ち上げ能力をもつ。また、将来的には性能向上により、地球低軌道への打ち上げ能力を4tにまで増やせるという。ロケットの第1段には、中国国営の宇宙企業、中国航天科技集団(CASC)傘下の航天推進技術研究院が開発した「YF-102」を3基装着する。第2段には、天兵科技が自社開発した「天火11」エンジンを1基、第3段には小型の「天火31」エンジンを1基装備する。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:打ち上げに成功した中国民間企業の「天竜2号」】

5. 世界最大ロケット、試験飛行中に爆発 スペースXの「スターシップ」

米テキサス州で20日、米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が打ち上げた世界最大のロケットが、試験飛行中に爆発した。世界最大のロケットを用いた宇宙船システム「スターシップ(Starship)」は午前8時33分(日本時間午後10時33分)、テキサス州ボカチカ(Boca Chica)にある同社施設「スターベース(Starbase)」からの打ち上げに成功。宇宙船は飛行開始から3分後に第1段ロケットブースターから切り離される予定だったが、切り離しは失敗し、ロケットが爆発した。今回の試験飛行は、宇宙船「スターシップ」と第1段ブースターロケット「スーパーヘビー(Super Heavy)」を組み合わせたものとしては初めてだった。飛行は完了できなかった形だが、スペースXは試験の成功を宣言。イーロン・マスク(Elon Musk)最高経営責任者(CEO)はツイッター(Twitter)への投稿で、自社のチームをたたえ、「数か月後に行う次回の打ち上げ試験に向け、多くを学んだ」と表明した。【Yahooニュース】

【Yahooニュース提供:打上げに成功したが、その後爆発した「スターシップ」ロケット】

日本のニュース

1. ANA、純利益890億円に 23年3月期予想を上方修正、貨物は伸び悩む

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは4月21日、2023年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。日本の水際対策緩和でビジネス需要や訪日需要の回復が進み、国際線旅客収入が堅調に推移したことから純利益は890億円となる見通しで、前回2月2日の発表から290億円上方修正した。国際線は旅客収入が堅調な一方、貨物収入が伸び悩んだことから、売上高は据え置きで1兆7100億円。費用面では燃油市況が計画を下回り、為替も円高に推移したことに加え、コスト管理により費用削減が進んだことから、営業利益は1200億円(前回から250億円の上方修正)、経常利益は1100億円(同250億円の上方修正)を見込む。ANAHDの3月期決算は、27日に発表を予定している。【Aviation Wire News】

2. 世界で1機MD-10「空飛ぶ眼科」関空で初公開 フェデックス寄贈の3発機

ニューヨークを拠点とする眼科医療の国際NGOオービス・インターナショナルは4月21日、世界で1機しかない機内に眼科医院が設けられた「フライング・アイ・ホスピタル」(ボーイングMD-10-30型機)を、関西空港で日本初公開した。日本親善ツアーとして協賛企業の関係者に25日まで公開する。オービスはニューヨークを拠点とする眼科医療の国際NGO。失明の予防や治療に取り組む眼科医療の専門家養成を必要とする地域に、トップレベルの研修を提供するため、40年以上にわたり世界95カ国以上で医療プログラムに参加してきた。機内には手術室、研修室「クラスルーム」、手術前後のためのケアルームがあり、VR(仮想現実)をはじめとした最新のシミュレーショントレーニング技術をそろえた。日本人を含むオービスの医療専門家は全員がボランティアで、現地の眼科医らに知識やノウハウを伝えている。また、オービスの独自遠隔医療プラットフォーム「Cybersight」により、講義などを世界中の提携病院や研修室に配信する取り組みも進めている。今回飛来したフライング・アイ・ホスピタルは3代目の機体。初代が1982年のDC-8、2代目はDC-10で、3代目は米フェデックスの航空貨物子会社フェデックス・エクスプレスが運航していたMD-10-30F貨物機を寄贈し、改修したもの。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:「空飛ぶ眼科」の機内】

3. 福岡空港、保安検査の混雑緩和 深刻な人手不足、事前に搭乗券確認

福岡空港を運営する福岡国際空会社(FIAC)は4月20日、混雑が常態化している国内線の保安検査場で、搭乗券の確認を検査場前で実施する「番台方式」を始めた。南北2カ所のうち、20日から南保安検査場で開始し、25日からは北保安検査場でも実施する。FIACによると、福岡空港では保安検査員の人手不足などで、早朝や週末の夕方を中心に保安検査場には30分程度の行列ができているという。これまでは、搭乗券の確認を手荷物検査のレーンごとに行っていたが、番台方式では保安検査場に入る前に搭乗券を確認する場所を設け、乗客に提示してもらった後、空いているレーンに進んで検査を受けてもらう。国際線の保安検査場は、2021年1月から番台方式で運用。搭乗券の確認と手荷物検査を分離することで、1レーンで検査できる人数を従来の1時間あたり150人程度から、1-2割増の170人程度に増やせると見込んでいる。福岡空港では、複数の乗客が検査レーンを同時利用できる「スマートレーン」を導入する計画。羽田空港などでも導入済みのもので、番台方式はスマートレーン導入時に必要な運用方式であることから、事前に始めることでスマートレーン化をスムーズに進める狙いもある。【Aviation Wire News】

4. 3月の訪日客、コロナ前34.2%減の181万人 個人旅行の解禁後最多、米豪などコロナ前超え

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2023年3月の訪日客数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前となる2019年同月比34.2%減の181万7500人で、個人旅行が解禁となった昨年10月以降の最多記録を更新した。花見シーズンを迎えたことやクルーズ船の再開により、訪日需要が高まった。出国した日本人は64.0%減の69万4300人で、回復が進んでいる。JNTOが重点市場としているのは22カ国・地域。月間の訪日客数は各市場とも例年割れが続いているが、コロナ前の7-9割まで回復した市場が目立った。22市場のうち2019年同月を上回ったのは6カ国・地域で、シンガポールとベトナム、米国、メキシコ、豪州、中東で回復が進んだ。フィリピンとカナダは2019年同月を割り込んだものの、ほぼ同水準まで戻った。【Aviation Wire News】

5. 廃食用油から国産SAF、JAL・ANAら29者参画 日揮が“全員参加”Fry to Flyプロジェクト

日揮ホールディングスは、使用済み食用油から国産の代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料、サフ)」を精製するプロジェクト「Fry to Fly Project」を4月17日に立ち上げた。日揮を含む29の企業・自治体・団体が参画し、資源を国内で循環させることで脱炭素社会の実現を目指す。航空関連では日本航空と全日本空輸、関西空港などを運営する関西エアポート、ボーイング・ジャパンの4社が参画する。同プロジェクトでは、家庭や店舗などから排出される廃食用油を収集。年間10万トン以上が輸出されている廃食用油を国内の工場でSAFへ精製し、内航船で空港へ輸送後、機体へ給油する。さらに自治体と連携しSAFの理解を深める教育活動を展開し、全員参加型のプロジェクトとすることで、資源循環や脱炭素を“我が事”として考える機会を提供する。国産SAFを巡っては、日揮HDとレボインターナショナル(京都市)、ANA、JALらが、有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を2022年3月2日に設立。国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組んでいる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:「Fry to Fly」のイメージポスター】