KIT航空宇宙ニュース2023WK18
海外のニュース
1. VerticalはVX4の型式認証を2026年まで延期し、業界全体の「タイムライン修正」を予測
英国のeVTOL機開発メーカーであるバーティカル・エアロスペース社は、プロセスの内部レビューを受けて、開発中のeVTOL機(電動垂直離着陸機)VX4の型式証明認証取得予定日を2026年末まで約1年延期した。この延期によって2025年大阪万博で丸紅が予定していたVX4による商用飛行は難しくなった。【Flightglobal News】
【Flightglobal提供:Vertical Aerospace社が開発中のeVTOL機「VX4」】
2. EASAがエアタクシーの騒音の評価と制限に関する世界初の提案を発表
欧州連合航空安全局 (EASA) は、エアタクシーによる騒音の評価に関する世界初の提案を公開し、この新しい都市交通モードに関する最大の社会的懸念の1つに対応した。環境保護技術仕様 (EPTS)は、複数の垂直、非傾斜、均等に分散されたローターを搭載した電動垂直離着陸 (eVTOL) 航空機に適用される。「EASAが2021年後半にアーバンエアモビリティに関するヨーロッパ全体の調査を実施したとき、騒音は、環境への懸念や全体的な安全性とともに、参加者によるエアタクシーに関する主要な懸念の1つとして強調された」とEASAのエグゼクティブディレクターであるパトリック・キーは述べている。 この提案は、これらの懸念に対処し、発生する騒音を測定する方法を説明し、騒音公害が過度にならないように制限を設定する。このEPTS文書は、eVTOL航空機の型式認証に使用できる調和騒音評価基準を定義している。その目的は、EASA基本規則で義務付けられているように、環境保護の高い均一なレベルに到達し、EU内の人間の健康に対する騒音の重大な有害な影響を防止することです。これには、該当する騒音の技術仕様と手順、および最大許容騒音レベルが含まれている。提案された仕様は、規制のギャップを埋めることを目的としており、重量のあるヘリコプターに適用される国際的に調和された騒音認証基準を出発点として採用し、公平な競争条件と技術の比較可能性を可能にしている。定義された手順は、必要に応じてeVTOL航空機の特性に合わせて調整される。たとえば、eVTOLは特定の飛行段階でヘリコプターより静かであることから、最小の信号対雑音品質を維持するために、特定の飛行段階でマイクに近づけて飛行できるようにする必要がある。さらに、これらの航空機が離着陸する場所であるバーチポート付近での運用の騒音評価を支援するために、ホバー騒音評価が開発された。最大許容騒音レベルは、国際民間航空機関 (ICAO 附属書 16、第 1 巻、第 8.4.2 章) による最新のヘビーヘリコプターの制限と同じに保たれているが、EASAは認証プロジェクトを通じてそのような設計からより多くの騒音データを収集する予定です。【EASAニュースレター】
【Flightglobal提供:EASAが発表したeVTOL機の着陸時における騒音規制Flight Pass】
3. FAAがエアタクシーの空域設計図を発表
連邦航空局(FAA)は、将来のエアタクシーやその他の高度な航空モビリティ(AAM)運用に対応するために、空域と手順の変更に関する最新の青写真を発表した。 この設計図の下では、AAM の運用は、今日のヘリコプターと同じようにエアタクシーが低料金で開始されることを前提としている。彼らは、ヘリパッドや初期のバーチポートなどの既存のルートとインフラを使用し、パイロットは、必要に応じて航空管制官と連絡を取ることになる。運用数の増加に伴い、エアタクシーは、主要な空港と都市中心部のバーチポートの間の通路を飛行することが予想され、回廊(コリドー)の複雑さは、単一の一方通行の経路から、両方向に飛行する航空機の複数の流れに対応する経路へと、増加する可能性があるため、時間が経つにつれて、これらのコリドーは、バーティポート間の多くのルートをリンクする可能性がある。 FAAは、航空機技術も同様に進化すると予想し、航空機の自動化と航空機間のリアルタイムのデータ共有は、これらのコリドーで大きな役割を果たす可能性があるとしている。このエアタクシーの運用の青写真は、航空機とパイロットの認定とともに、この次の航空時代を安全に導き、サポートするためのFAAの取り組みにおける重要なステップで、この青写真は、FAA、NASA、および業界に共通のフレームを提供して、研究と意思決定の指針とすることを目的としている。【FAAニュース】
【Flightglobal提供:FAAが発表したエアタクシー運用の青写真】
4.Safranは、ヨーロッパのパートナーと共にOpen Fanデモンストレーションプログラムを主導
フランスの航空機エンジンメーカーSafran Aircraft Engine社は、Clean Aviation Joint Undertaking プロジェクトOFELIA(Open Fan for Environmental Low Impact of Aviationの略)の枠内で、新しいOpen Fanエンジン技術のデモンストレーションを進めている。このフランスのエンジンメーカーは、エアバス、アヴィオ・エアロ、GKNエアロスペースなどのヨーロッパの26の業界主要パートナー、ONERAなどの研究機関、ヨーロッパ各地の研究者と協力している。OFELIA コンソーシアムは、Clean Aviationからヨーロッパの資金で 1億ユーロを受け取る予定。OFELIAの目的は、2050 年までに正味ゼロ炭素排出量を達成するという業界目標に向けた道筋で、2035年頃の近距離および中距離(SMR)航空機の次世代世代のニーズに対応できる効率の観点から、オープン・ファン アーキテクチャの利点を実証することです。今日のナローボディ機用エンジンと比較してOpen Fanは、燃料消費量とCO2排出量の20%を節約することを目指している。Clean AviationのOFELIA イニシアチブの下で、Safran Aircraft Engines社とそのパートナーは、低圧システム及び、高圧コアの開発、又エアバスでの地上および飛行試験デモンストレーションへの道を開くハイブリダイゼーションを含む高度なシステムの一連の技術実装レベルTRL 5迄引き上げることを目的としている。 A380は、今後10年間の半ばまでにオープン・ファンを搭載する予定。このコンソーシアムは、この革新的なアーキテクチャと、持続可能な航空燃料(SAF)および水素との完全な互換性を確保することも目標としている。【Safran ASircraft Engine社ニュースリリース】
【Airbus社提供:A380に取り付けられたOpen Fan Rotor Engine(想像図)】
日本のニュース
1. JAL、貨物機を13年ぶり導入 767旅客機を改修、23年度末から東アジアに
日本航空は5月2日、ボーイング767-300ER型機の旅客機を改修した貨物専用機を3機導入すると発表した。JALが貨物機を導入するのは13年ぶりで、2023年度末から順次運航を開始する。JALが保有する767-300ERを貨物機に改修して導入。貨物郵便事業の成長を目指すもので、物流の2024年問題に対応する。2023年度末から東アジアを中心とした国際線に投入。将来的には国内線にも投入し、機材の稼働率を向上させ、貨物搭載率の最大化を図るとしている。JALの斎藤祐二専務は2日、「昼間に国内の宅配、夜に東アジアのコマースの国内と国際のハイブリッドで、従来の大型機による貨物事業とは異なる形でチャレンジしたい」と語った。JALは2024年4月から、ヤマトホールディングス(9064)と貨物専用機を運航。連結子会社のスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)がエアバスA321ceo P2F型貨物機を運航するが、ヤマトHDが3機リース導入するもので、JALの保有機材ではない。767の貨物機もヤマトHDと協業するが、JALの赤坂祐二社長によると、完全な独占契約ではないという。競合の全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは、2022年7月に次世代大型機777Xの貨物型777-8Fの導入を決め、2028年以降に2機受領する見通しで、3月7日には日本貨物航空を100%子会社化することで、株主の日本郵船と基本合意したと発表。NCAの子会社化の時期は今年10月となる見通し。【Aviation Wire News】
【Yahooニュース提供:JAL767-300ER Converted Freighter(想像図)】
2.国交省、ドローン情報システムで不具合 他者の申請閲覧可能に
国土交通省航空局(JCAB)は、運用するドローン情報基盤システム「DIPS2.0」で、他者の申請情報が閲覧可能な状態になるケースがあったとして、システムを改修した。DIPS2.0の「操縦者技能証明機能」の利用者から、特定の操作を行うと他者の申請情報が閲覧可能な状態になる恐れがあるとの報告が5月2日にあり、JCABが調べたところ、申請者の氏名や住所などが閲覧可能になることが判明し、システムを直ちに停止して改修を実施した。JCABによると、今回のトラブルはシステムの設計上の不具合によるもので、2日に確認後に改修し、3日午前11時すぎに運用を再開した。この不具合で最大3件分の無人航空機操縦者技能証明に関する申請情報が他者に閲覧された可能性があるとし、3日時点では個人情報の閲覧による情報の悪用などの報告はないという。DIPS2.0は4月12日にも不具合が発生している。JCABでは「同一ではないものの派生するものであり、同種の不具合事象が発生し得るケースの精査が十分でなかったことに起因する」と説明。同じようなトラブルが再発したことを重く受け止めるとともに、個人情報などの厳正・適正な管理について、「改めてシステム受注者への指導などをより一層徹底する」とし、発生理由を根本から精査した上で、「今後このような事態が決して生じないよう、万全を期す」と陳謝した。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:ドローン情報基盤システムDIPS2.0】
3.ORC、CA募集 福岡勤務で9月入社
オリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)は5月2日、客室乗務員の募集を始めた。入社日は9月1日を予定している。同社が指定するサイトから25日までにエントリーする。勤務地は福岡空港で、将来は長崎空港配属になる可能性もあるとしており、人数は若干名。短大卒業以上と同等の学力、矯正視力1.0以上などが応募条件となる。1年更新の契約社員として採用。訓練期間中は訓練生として契約し、訓練合格後に客室乗務員として契約する。1回目の契約満了後、正社員として採用する制度もある。選考スケジュールは、Webエントリー選考が5月26日以降、1次選考のオンライン個人面接などが6月17日または18日、最終選考の健康診断と個人面接は7月6日を予定。エントリー選考の通過者のみ、5月末までに1次選考の案内を電子メールで送付する。【Aviation wire news】
4. JAL、3年ぶり最終黒字344億円 1株25円に増配=23年3月期
日本航空は5月2日、2023年3月期通期連結決算(IFRS)の最終損益が344億円2300万円の黒字(前期22年3月期は1775億5100万円の赤字)になったと発表した。2020年3月期以来、3期ぶりの黒字となった。需要回復が早かったアジアと北米間の乗り継ぎ需要や、水際対策緩和後のインバウンド(訪日)需要の取り込みが奏功した。また、国内線の大型機を省燃費のエアバスA350-900型機へ計画通り更新したことで、運航コストの抑制につながった。配当は2021年3月期から2期連続で無配だったが、2023年3月期は1株25円の期末配当を予定しており、2024年3月期は中間と期末合わせて年間40円の配当となる見込み。2023年3月期の売上収益は前期比2.0倍の1兆3755億8900万円、本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前損益)は645億6300万円の黒字(前期は2394億9800万の赤字)となった。売上収益のうち、航空事業のFSC(フルサービスキャリア)は1兆1086億円(前期比2.1倍)で、内訳は国際旅客が4175億円(6.1倍)、国内旅客が4511億円(1.9倍)、貨物郵便が2247億円(2.9%増)だった。LCC(低コストキャリア)は317億円(10.9倍)で、傘下2社の旅客収入はZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が224億4900万円(31.3倍)、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)が82億2400万円(4.1倍)となった。非航空系事業である「マイル・ライフ・インフラ等」は2351億円(55.2%増)となった。【Aviation wire news】