KIT航空宇宙ニュース2024WK38

超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は、3回目となる超音速飛行の技術実証機「XB-1」の飛行試験に成功した。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK38

海外のニュース

1. ボーイング、サプライヤー発注大半停止へ ストで大幅コスト削減

ボーイングは、最大の労働組合IAM(国際機械技術者協会)が現地時間9月13日から16年ぶりとなるストライキに突入したことを受け、737と767、777のサプライヤーへの発注の大半を停止する方針を固めた。日本のサプライヤーへの影響も懸念される。ブライアン・ウェストCFO(最高財務責任者)が従業員宛の電子メールで説明したもので、採用凍結や出張費用の削減、航空ショーの参加規模縮小など、大幅なコスト削減を進める。ウェストCFOは「このストライキは当社の回復を著しく脅かすものであり、現金確保と将来の安全のために必要な措置を取らなければない」と、従業員宛のメールで16日に説明。ボーイング全体で新規採用を凍結し、役員や管理職の昇進に伴う昇給の一時停止、重要な出張以外はすべて中止、ファーストクラスとビジネスクラスの利用取りやめ、外部コンサルタントへの支出を一時停止、必要不可欠ではない請負業者の一時解雇、慈善活動や寄付、広告、マーケティング支出の一時停止、航空ショーなどイベントの参加規模縮小、顧客対応を除き自社施設でのケータリングや飲食サービスの停止など、多岐にわたる。これらと並行してサプライヤーへの支出を大幅に削減。今後数週間以内には、多くの従業員や管理職、経営陣を対象に一時帰休の実施も検討する。具体的な内容や指針は、今後数日以内に従業員に共有するとしている。ボーイングは、737 MAXや787で相次いだ品質問題に対処するため、偶数年開催である2月のシンガポール航空ショー、7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーは出展規模を大幅に縮小。民間機は開発中の大型機777Xなどの飛行試験機は持ち込まず、防衛部門を中心とした展示に絞っていた。今回の決定で、航空ショーへの出展はさらに縮小される可能性が高くなった。民間航空機部門のステファニー・ポープ社長兼CEO(最高経営責任者)は、ファンボロー開幕前にロンドン市内で会見した際、737 MAXと787の生産レートを年内に戻す方針を示していたが、ストの影響で737 MAXは生産停止に陥っている。【Aviation wire news】

2.超音速実証機XB-1、3回目の飛行試験成功 JAL出資米ブームが開発

超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は、3回目となる超音速飛行の技術実証機「XB-1」の飛行試験に成功した。日本航空も出資しており、年末までに超音速飛行の達成を目指す。3回目の飛行試験は、現地時間9月13日に実施。カリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で行われ、チーフテストパイロットのトリスタン“ジェペット”ブランデンブルグ氏が操縦桿を握った。最高高度は1万5000フィート(約4572メートル)、速度は232ノット(約430キロ)に達し、総飛行時間は32分だった。今回は主要システムと性能の試験が主な目的で、飛行中に予想される最大のピッチとヨーが生じた状況下での操縦も行われた。また、コックピットの温度と圧力を制御する環境制御システム(ECS)の性能も確認した。XB-1は、今年3月22日に初飛行に成功。2回目は8月26日に行われ、2週間強で3回目のフライトを実施した。今回は2回目で実証された安定性増強システムの検証も続けられたほか、着陸装置は2回目の飛行 (215ノット) よりも高速で展開・格納されたという。着陸装置を上下させる最大安全速度の225ノットまで加速する3段階のうち、2段階目に入ったという。XB-1の飛行試験は、マッハ1を超える速度での性能と操縦性を確認するため、飛行範囲を順次拡大しながら続けていく。ブームによると、超音速に達するまでに合計約10回行われる予定だという。【Aviation wire news】

【Boom社提供:3回目の飛行試験に成功したブームの超音速実証機XB-1】

日本のニュース

1.ジェイキャス、3億円追加調達 関空拠点に26年春就航計画

地域航空会社の設立を目指す「ジェイキャスエアウェイズ」(JCAS、東京・千代田区)は、第三者割当増資により3億円を追加調達したと9月18日に発表した。関西空港を拠点に2026年春の就航を目指す。プレシリーズAラウンドのファーストクローズとして調達し、北陸コカ・コーラボトリング(富山・高岡市)など12社が出資した。同社は2023年6月の設立以来、累計で約4億5000万円を調達したという。JCASは関空を拠点に富山と米子の2路線の開設を予定。機材は仏ATR72-600型機で、シンガポールを拠点とする航空機リース会社Avation PLCからリース導入する見通しで、2025年末の機体受領を計画している。就航初年度は1機2路線で始め、その後5年間で7機16路線への拡大を目指すという。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供】

2.成田空港、ICAO認証の代替燃料 伊藤忠商事らと国内初導入

成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は9月19日、代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」のうち、国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)が認証した適格燃料「CEF」の受け入れを開始したと発表した。伊藤忠商事らと供給網を構築し、希望する航空会社へ供給する。CEFの国内空港での受け入れは初めて。使用するCEFは、伊藤忠商事が韓国から輸入した。千葉港にある成田空港の給油施設に直接搬入後、パイプラインで空港へ送油する。SAFの生産はフィンランドのNeste OYJ社が担い、韓国のGS Caltex社がSAFとジェット燃料を混合した。NAAがジェット燃料を直接輸入するのは2例目。1例目は今年7月で、官民による航空燃料不足への対策として約5000キロリットルの燃料を受け入れた。NAAは今回の受け入れにより脱炭素化と航空燃料の安定供給につなげたい考えで、航空需要の回復・増大に伴うCEFの利用拡大を見込む。全長約47キロに及ぶ成田のパイプラインは、開港5年後の1983年8月8日に供用開始。千葉港頭石油ターミナルから千葉市、四街道市、佐倉市、酒々井町、富里市、成田市を経て成田空港へ航空燃料を送油している。【Aviation wire news】

【伊藤忠商事提供:千葉港に着岸するCEF輸入船】

3.羽田空港、C滑走路に誤進入防止灯 位置検知で自動点灯

国土交通省航空局(JCAB)は9月17日、滑走路への誤進入などを防止する「滑走路状態表示灯(RWSL)」を羽田空港に導入すると発表した。今年1月に発生した衝突事故を受け設置した有識者会議での提言を受けたもので、C滑走路(RWY16L/34R)を対象に27日深夜(28日未明)から工事を始める。供用開始は2027年度末を予定する。WSLは、滑走路への誤進入や滑走路横断中の誤出発を防止するシステムで、滑走路進入防止灯や離陸待機灯を点灯させ、パイロットへ知らせる。航空機の位置を検知して自動で点消灯し、管制官の指示とは独立して動く仕組み。工事はC滑走路につながる誘導路で始め、事故が発生したC5から開始。その後、C3、C2、C1へと順次展開する。2025年度からは滑走路への設置も開始し、制御装置や灯器設置後に供用を開始する。今年1月2日に羽田空港で起きた海上保安庁機と日本航空機の衝突事故を受け、設置した有識者会議「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」は、中間取りまとめを6月に公表。中間とりまとめでは、滑走路誤進入対策として、羽田を含む主要空港へのRWSL導入拡大が提言された。【Aviation wire news】

【国交省提供:滑走路状態表示システムの概要】

4.中部空港、自動運転車いす「WHILL」正式導入 T2で10/1から、地域初

中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社(CJIAC)は9月17日、WHILL社(東京・品川区)が開発する1人乗りの自動運転パーソナルモビリティ(自動運転電動車いす)「WHILL(ウィル)」を導入すると発表した。LCC専用の第2ターミナル(T2)で、10月1日から正式運用する。WHILLを導入するのは、中部地域では初となる。国内線・国際線の出発コンコースで運用し、保安検査場・出国審査場通過後から搭乗ゲートまでの移動をサポートする。T2出発客が利用できる無料のサービスで、利用者がWHILLの待機場所で乗車し、搭乗口と免税店を指定すると自動運転で案内する。利用者は座ったまま移動でき、空港スタッフの付き添いも不要。目的地に着くと待機場所まで自動で返却される。運用時間は国内線が午前6時から午後1時まで、国際線が午前11時から午後8時まで。国内線・国際線で2台ずつ導入する。料金は無料。中部空港のT2では2023年12月から、WHILLの実証運行をスタート。利用状況や意見を踏まえ、正式導入を決定した。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:中部空港T2で正式運用するWHILL】

5.ホンダジェット最新エリートII、国内初導入 オンリーユーエアが受領

FPGの100%子会社オンリーユーエア(旧FPGエアサービス)は、小型ジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の2号機を受領し、9月から運航機材に加えた。ホンダジェットの最新型「Elite II(エリートII)」で、国内初導入となった。オンリーユーエアは、今年4月にホンダジェットによるプライベートジェット事業を開始。1機目は性能向上型「Elite S(エリートS)」で、2機目はとなるエリートIIは8月末に導入し、9月から事業機に追加した。エリートIIは燃料タンクの拡張などで、4人搭乗時の航続距離がエリートSの1437海里(約2661km)から1547海里(約2865km)に延びた。最大離陸重量は1万1100ポンドに増え、主翼にグランドスポイラーを初搭載したことで、着陸時の操縦性や着陸性能を向上させた。プライベートジェット事業は、FPGグループの顧客基盤である個人富裕層が主なターゲット。優先的にチャーターできる「優先航空券」などのサービスを展開している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:オンリーユーエアが受領したホンダJet「エリートII」】

6.ispaceが「RESILIENCE」ランダーを報道公開、月面に“家”を建てるペイロードも

ispaceは9月12日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターにおいて、「RESILIENCE」(レジリエンス)ランダーをプレスに公開した。これは、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2で使用する機体。打ち上げ時期については従来「2024年冬」とされていたが、今回、最速で2024年12月に実施する予定であることが明らかになった。ispaceは2023年4月26日に、同社初のミッションで月面への降下を開始。月面まであともう少しというところまで到達したものの、高度推定にミスがあり、着陸に失敗していた。今回は、同社にとって2回目の挑戦。成功すれば日本としては2例目、日本の民間としては初の月面着陸となる。【マイナビニュース】

【iSpace提供:公開された「RESILIENCE」ランダーのフライトモデル】