KIT航空宇宙ニュース2025WK49

スイスの新興企業Jektaが次の10年間に市場投入することを目指している水陸両用水素電気旅客機の1/9スケールモデル
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2025WK49

海外のニュース

1. A320改修、世界で大多数完了 6000機対象も残り100機未満

エアバスは現地時間12月1日、A320ファミリー(系列)の一部機体に求めていた予防的措置について、対象となった約6000機のうち大多数の改修作業が完了し、残りは100機未満になったと発表した。日本の航空会社は、11月30日までに作業を終えている。この予防的措置は、同社が11月28日に発行したAOT(運航者向け警告伝達)「A27N022-25」に基づき、A320系列の一部機体に対し、即時対応を求めたもの。対象機は、飛行制御コンピューター「ELAC(エレベーター・エルロン・コンピューター)」の「L104」を搭載しており、太陽フレアに伴う宇宙線によりデータの破損につながる恐れがあると判明し、「L103+」へバージョンを下げるソフトウェア更新作業を実施するよう求めている。EASA(欧州航空安全庁)はこれを受け、EAD(緊急耐空性改善命令)「2025-0268-E」を発出した。A318を除く全機種のうち、合わせて約6000機が対象になった。エアバスによると、10月末時点で運航中のA320系列の機体は世界で1万1293機。うち新型エンジンを搭載する「neo」は4220機で内訳はA320neoが2286機、長胴型のA321neoが1896機、短胴型のA319neoが38機となり、従来型「ceo」は7073機で内訳はA320ceoが4154機、A321ceoが1697機、A319ceoが1222機となっている。日本国内の航空会社は、11月30日までに対応を完了。全日本空輸(ANA/NH)は、運航する37機中34機が対象となったことから、29日と30日の2日間で国内線101便が欠航し、約1万3730人に影響が及んだ。【Aviation wire news】

2. ボーイングの宇宙船「スターライナー」、次は無人で打ち上げへ

米国航空宇宙局(NASA)は、ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」による商業クルー輸送計画を見直すと2025年11月24日に発表した。2024年の有人飛行試験で不具合が発生したことを受け、次の飛行ミッション「スターライナー1」(Starliner-1)は宇宙飛行士を乗せない無人ミッションとして実施。最大6回とされていた宇宙飛行士の交代ミッションについては、確定分を4回に調整し、残る2回はオプションとする。スターライナーは、ボーイングが開発している有人宇宙船で、NASAの商業クルー輸送計画の下で、ISSへの宇宙飛行士輸送を担うことをめざしている。宇宙船はカプセル型のクルー・モジュールと、スラスターやバッテリーなどを搭載するサービス・モジュールで構成される。設計上は最大7人の搭乗に対応するが、NASAのISSへの飛行ミッションでは最大4人を運ぶことを想定している。また、クルー・モジュールを最大10回再使用できるとしている。NASAは2010年に、民間企業に宇宙船の開発を委託する計画を立ち上げた。ボーイングはこの計画に参画し、NASAからの資金提供を受けてスターライナーを開発している。同計画には、イーロン・マスク氏率いるスペースXも参加し、「クルー・ドラゴン」宇宙船を開発した。クルー・ドラゴンの開発は比較的順調に進み、2020年から運用を開始しているが、対照的にスターライナーは技術的な問題が相次ぎ、開発が大きく遅れている。2019年には初の無人飛行試験に臨んだが、不具合が発生し、ISSへのドッキングを断念して地球へ早期帰還することになった。2022年に実施した2回目の無人飛行試験では、小規模な不具合は起きたものの、おおむね成功裏に終わった。これを受け、2024年6月には宇宙飛行士を乗せた初の有人飛行試験「CFT」に臨んだ。しかし、打ち上げ前から不具合が続き、打ち上げ後もスラスターの停止やヘリウム系統からの漏れなど、推進系を中心に問題が発生した。最終的にNASAとボーイングは、安全性に懸念が残るとして、宇宙飛行士を乗せたまま帰還させることを断念し、スターライナーを無人で地球に帰還させることを決定した。スターライナーCFTのクルーだった2人の宇宙飛行士は、その後スペースXのクルー・ドラゴン運用9号機(Crew-9)で2025年3月18日に地球へ帰還した。その後、不具合の原因究明を経て、次のミッションに向けた改修が続いている。【マイナビニュース】

【NASA提供:2024年、ISSにドッキング中のスターライナーCFT】

3. ジェクタ(Jekta)社、水素電気水陸両用飛行機のスケールモデルの飛行試験を開始

スイスの新興企業ジェクタは、次の10年間に市場投入することを目指している水陸両用水素電気旅客機のスケールモデルの飛行試験を来月から開始する予定だ。同社は12月3日に1/9スケールの模型の画像を公開し、この実証機は同社が想定する量産機と同様の特性を備えており、この模型を使って設計の性能を評価すると述べた。「最終的な機体構成は、模型を空中および水上で運用することで得られるデータに基づいて進化していきますが、この模型はPHA-ZE 100の最終設計をほぼ忠実に再現しています」とジェクタ氏は語る。「具体的には、8基の電動モーターをベースとした分散型電力供給装置、高度な空力構成、そして大型のコックピットとキャビンの窓などが挙げられます。」ジェクタ社は1月にトスカーナで遠隔操縦モデルの飛行試験を開始する予定だ。ジェクタ社が構想するPHA-ZE 100旅客機は、水素燃料電池システムで駆動する10基の翼搭載型プロペラを搭載する。巡航速度は130ノット(時速241km)、航続距離は270海里(約500km)、乗客12~19名を乗せ、水上または陸上への着陸が可能になるとジェクタ社は述べている。同社はPHA-ZE 100の生産を2030年か2031年に開始することを目指している。【Flightglobal news】

【Jekta社提供:ジェクタ社が開発中のPHA-ZE 100水素電気旅客機のスケールモデル】

日本のニュース

1. JAL、大気観測機「CONTRAIL」787に交代 年度内に5機

日本航空など5者は12月3日、大気中のCO2(二酸化炭素)濃度などを航空機で測定する「CONTRAIL(コントレイル)」プロジェクトの観測体制を、ボーイング787-9型機に4日から移行すると発表した。インドや赤道域での観測再開や、中東での初観測の成果も期待されている。1993年から30年以上続くプロジェクトで、これまでに約2万2000便で3万件以上のデータを取得してきたが、観測装置を搭載した777の退役が進んだことから、国際線機材でも就航都市が多岐にわたる787-9を観測の後継機とした。観測機器を搭載した初号機(登録記号JA868J)は、新しくなった「CONTRAIL」が描かれた特別塗装機となり、あす4日の成田発フランクフルト行きJL407便から観測運航を始める。同機には、今年1月からサメ肌の構造を模して燃費を改善する「リブレット」塗装を施しており、燃費改善効果の検証も続けている。コントレイルは、JALが国際線に投入している旅客機に観測装置を搭載し、成層圏に近い高度で飛行中の機体から、温室効果ガスのデータを収集するプロジェクト。1993年にJALと公益財団法人JAL財団(当時日航財団)、気象庁気象研究所が共同で開始し、2005年からは国立環境研究所(NIES)と航空機内装品メーカーのジャムコも参画した。最初に使用した747-400の退役に伴い、2006年からは8機の777-200ERと2機の777-300ERの計10機に順次引き継がれたが、2020年度から777の退役が進んだことで、現在稼働している観測機は777-300ERの3号機(JA733J)のみ。国立環境研究所 地球システム領域 地球環境研究センターの町田敏暢・特命研究員によると「本当にギリギリだった」と、787-9へのバトンタッチが間に合ったことを喜んだ。4日から787-9による観測が始まることで、観測データの連続性は保たれるという。JAL機の整備を担うJALエンジニアリング(JALEC)技術部システム技術室の前田素規氏によると、747や777はエンジンの圧縮空気を取り込んで観測装置へ供給していたが、787は外気を直接取り込んでエアコンシステムへ導く「ノーブルード構造」であることから流路を変更。コックピットへ向かう空気のダクトを途中で分岐し、観測装置へ外気を供給するように変更し、貨物室に設置された2種類の観測装置へ供給できるようにした。機体の改修期間は約2カ月で、今年度内に4機改修。お披露目された改修初号機のJA868Jと合わせ、5機体制で観測できるようになる。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:「コントレール」による大気観測結果を国立環境研究所担当者】

2. JAL、CAがモバイルバッテリー火災想定し訓練 手元で管理を

日本航空は12月2日、機内でリチウムイオン電池が発火・発熱した際の、客室乗務員による対応策を報道関係者に公開した。モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使った製品は、預け荷物として空港で預けられず、機内でも頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)には収納せず、手元で状態を確認できるよう求めており、年末年始の繁忙期を前に改めて利用者へ呼びかけた。リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーは、国土交通省航空局(JCAB)の要請で今年7月8日からは頭上の手荷物収納棚にはしまわず、手元で保管するよう求めている。機内で異常な発熱やバッテリーが落下などで衝撃を受けた場合は、客室乗務員に知らせるよう求めている。また、空港で預ける「預け入れ荷物(受託手荷物)」に入れることは法律で禁止している。客室乗務員によるデモンストレーションは、同社の羽田空港にある訓練施設にある客室モックアップで実施。手荷物収納棚内での発火や、バッテリーの異常発熱といった緊急時を想定して行われた。発火・発煙時の対応に用いる機内装備品は、火災時に酸素を供給して有害物質や煙の吸入、低酸素状態を防ぐ「スモークフード」をはじめ、ハロン消火器、水消火器、耐熱手袋、耐熱袋の5種類で、JALでは2017年から順次搭載しており、ハロン消火器は今後環境に配慮した消火器に更新していくという。発火を想定した実演では、客室乗務員がスモークフードを装着して消火にあたり、火元となったバッテリーの冷却や水没までの流れを再現した。異常発熱を想定した実演では、耐熱手袋と耐熱袋を使用してバッテリーを回収し、客室後方の機内食などを準備するギャレー(厨房設備)で監視する手順を公開した。JALによると、客室乗務員は毎年1回受ける訓練時に、機内火災対応の一環としてモバイルバッテリーが発火・発熱した際の対応方法を受講しているという。【Aviation wire news】

【JAL提供:羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して消火にあたるJALの客室乗務員】

3. JTA初の国際線、那覇−台北12/3発売 仲間由紀恵さんがPR

日本航空グループで沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空は、同社初の国際線定期便となる那覇−台北(桃園)線の航空券販売を12月3日から始める。2026年2月3日に就航し、週7往復(1日1往復)運航する。沖縄県出身の仲間由紀恵さんをプロモーションに起用した。運賃はプレミアムエコノミークラスが片道3万3500円から、往復5万7000円から。エコノミークラスは片道1万4500円から、往復2万5000円から。いずれも燃油サーチャージ込み。【Aviation wire news】